問題41 身体測定について正しいのはどれか。
1.上腕周径は肘関節屈曲位で測る。
2.前腕周径は最大膨隆部で測る。
3.大腿周径は膝関節屈曲位で測る。
4.下腿周径は腓骨頭の高さで測る。
解答2
解説
1.× 上腕周径は、肘関節「屈曲位」ではなく伸展位で測る。
上腕周径は上腕の最も太い部位で測定する。ただし、「上腕中点」で測定する参考書もある。
2.〇 正しい。前腕周径は、最大膨隆部で測る。
測定方法として、腕を下垂させ、肘関節のやや下方の最大周径で拳をつくらないで測定する。
3.× 大腿周径は、膝関節「屈曲位」ではなく伸展位で測る。ちなみに、股関節屈曲・外転位で測定する。膝蓋骨上縁(または膝関節裂隙)から中枢10cm(または5、10、15、20cmと複数)で測定する。
4.× 下腿周径は、「腓骨頭の高さ」ではなく最大膨隆部で測る。下腿周径の測定時には、特別に下腿後面をベッドに密着させない。下肢全体をリラックスさせたうえで膝を軽度屈曲させ、下腿三頭筋がベッドに接触しないようにする。
問題42 脈拍について正しいのはどれか。
1.貧血では徐脈になる。
2.脳圧亢進では徐脈になる。
3.パーキンソン病では頻脈になる。
4.甲状腺機能低下症では頻脈になる。
解答2
解説
1.× 貧血では、「徐脈」ではなく頻脈になる。なぜなら、体が組織への酸素供給を維持しようとするため。心臓は、より多くの血液を送り出そうと働き、心拍数を増加させる(頻脈)傾向となる。
・貧血は、血液中の赤血球やヘモグロビンが減少し、全身に酸素を運ぶ能力が低下した状態である。
2.〇 正しい。脳圧亢進では、徐脈になる。なぜなら、脳圧が著しく上昇すると、脳への血流を維持しようとして血圧が上昇し、同時に迷走神経が刺激されることで心拍数が減少する(徐脈)ため。
・頭蓋内圧亢進により、①頭痛、②嘔気・嘔吐、③うっ血乳頭、④複視(外転神経麻痺)などを生じる。脳出血拡大や脳出血後の浮腫のため、脳出血の際には脳圧が亢進しやすい。Cushing現象(脳ヘルニアの直前状態)で、①血圧上昇、②徐脈、③緩徐深呼吸などの症状が出現する。これらは、脳幹下部の脳圧亢進による乏血状態に対する生体の代償作用である。
3.× 必ずしも、パーキンソン病では「頻脈になる」とはいえない。なぜなら、パーキンソン病における自律神経症状は個人差が大きいため。起立性低血圧が強い場合は、代償的に頻脈になる可能性があるが、徐脈となる場合もみられる。
・パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。
4.× 甲状腺機能低下症では、「頻脈」ではなく徐脈になる。なぜなら、甲状腺ホルモンは、心臓の拍動を速めたり、心収縮力を高めたりする作用があるため。
・甲状腺機能低下症とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。
問題43 易感染性をきたす疾患として最も適切なのはどれか。
1.鉄欠乏性貧血
2.特発性血小板減少性紫斑病
3.急性骨髄性白血病
4.巨赤芽球性貧血
解答3
解説
易感染性とは、免疫力が低下し、病原菌に感染しやすい状態のことである。
免疫機能は、白血球(特に好中球、リンパ球など)や抗体、補体など、様々な要素によって成り立っている。
1.× 鉄欠乏性貧血は、易感染性の主要な原因とはなりにくい。
・鉄欠乏性貧血とは、体内に流れている赤血球に多く含まれるヘモグロビンと鉄分が欠乏する事により、酸素の運搬能力が低下し全身に十分な酸素が供給されず倦怠感や動悸、息切れなどの症状がみられる貧血の種類の中でも最も多く特に女性に多い疾患である。原因としては、栄養の偏りなどによる鉄分の摂取不足、消化性潰瘍やがん、痔などの慢性出血による鉄の喪失、腸管からの鉄吸収阻害などがあげられる。
2.× 特発性血小板減少性紫斑病は、易感染性の主要な原因とはなりにくい。
・特発性血小板減少性紫斑病とは、血液中の血小板が減少することにより出血しやすくなる病気である。原因は不明であるが、体の中の免疫反応が過剰になり、自分の血小板を攻撃してしまうために、血小板が減少するといわれている。
3.〇 正しい。急性骨髄性白血病は、易感染性をきたす疾患である。なぜなら、白血病細胞が骨髄を占拠し、正常な血液細胞(特に細菌感染防御の主役である好中球や、ウイルス感染防御などに関わるリンパ球)といった重要な免疫細胞の産生が著しく抑制されるため。
・急性骨髄性白血病とは、骨髄の中にある幼若な血液細胞が癌化して白血病細胞となり骨髄の中で急速に分裂して数を増やす疾患である。はっきりした原因は不明である。白血病細胞が骨髄の中で増えてくる結果、骨髄の本来の機能である造血能が著しく障害される。初期症状として、発熱・貧血・出血傾向・骨痛・倦怠感がみられる。
4.× 巨赤芽球性貧血は、易感染性の主要な原因とはなりにくい。
巨赤芽球性貧血とは、ビタミンB12あるいは葉酸の不足が原因の、骨髄に巨赤芽球が出現する貧血の総称である。偏食や過度の飲酒などを背景にビタミン欠乏症の患者がみられる。貧血の症状(動悸や息切れ、疲労感)の他に、萎縮性胃炎やハンター舌炎(味覚障害や舌の痛みを伴う炎症)など消化器系に異常をきたす。また、ビタミンB12欠乏症において、手足のしびれ、思考力の低下、性格変化などの神経症状もみられる。
問題44 便秘の原因で最も適切なのはどれか。
1.オピオイド内服
2.胃切除
3.ノロウイルス感染
4.乳糖不耐症
解答1
解説
1.〇 正しい。オピオイド内服は、便秘の原因である。なぜなら、オピオイド系の鎮痛薬(モルヒネ、コデインなど)は、痛みを抑える効果がある一方で、消化管の壁にも存在するオピオイド受容体に作用し、腸の蠕動運動を抑制するため。
2.× 胃切除は、むしろ下痢傾向へとなりやすい。なぜなら、胃を外科的に切除すると、胃の機能(食物の貯留、消化の一部、小腸への送り出しの調節など)が失われるため。したがって、食物が速やかに小腸へ移行し、消化不良や下痢を引き起こす。
3.× ノロウイルス感染は、むしろ下痢傾向へとなりやすい。なぜなら、ノロウイルスに感染すると、胃や腸の粘膜が炎症を起こし、腸の動きが活発になり、水分吸収が十分に行われなくなるため。
・ノロウイルスは、もっとも一般的な胃腸炎の原因である。感染者の症状は、非血性下痢、嘔吐、胃痛(悪心・嘔吐、水様性下痢腹痛、発熱等の急性胃腸炎)が特徴である。発熱や頭痛も発生する可能性がある。症状は、通常ウイルス曝露後12〜48時間で発症し、回復は通常1〜3日以内である。合併症はまれだが、特に若人、年配者、他の健康上の問題を抱えている人では、脱水症状が起こることがある。原因として、①カキ等の二枚貝、②感染者の嘔吐物等への接触や飛沫による二次感染である。感染経路は、経口感染、接触感染、飛沫感染、空気(飛沫核)感染による。
4.× 乳糖不耐症は、むしろ下痢傾向へとなりやすい。なぜなら、摂取した乳糖が、小腸で十分に分解・吸収されずに大腸に達するため。これにより、大腸内の細菌によって分解されたり、浸透圧によって腸管内に水分を引き寄せたりする(お腹がゴロゴロする)。したがって、ガスが発生したり下痢を引き起こしたりする。
・乳糖不耐症とは、ミルクに含まれる糖質である乳糖をグルコースとガラクトースに分解する乳糖分解酵素(ラクターゼ)の活性が低下しているために、乳糖を消化吸収できず、著しい下痢や体重増加不良をきたす疾患である。つまり、腸内のラクターゼの不足により牛乳を飲むと下痢を起こす状態である。
ダンピング症候群とは、胃切除後、摂取した食物が急速に小腸に流入するために起こる。2種類に分類され、①早期ダンピング症候群:食事中や直後(30分程度)にみられる早期と、②後期ダンピング症候群:食後2~3時間たってみられる後期(晩期)に分けられる。早期ダンピング症候群は、食物が腸に急速に流れ込むことで起こる。主な症状は、動悸、めまい、冷汗、顔面紅潮、全身倦怠感など。腹痛、下痢、悪心、嘔吐などの腹部症状がみられる場合もある。
問題45 チアノーゼの原因とならないのはどれか。
1.貧血
2.左心不全
3.ファロー四徴症
4.COPD
解答1
解説
チアノーゼとは、皮膚や粘膜が青紫色である状態をいう。 一般に、血液中の酸素が不足することをきっかけとし、 血液中の酸素濃度が低下した際に、爪床や口唇周囲に表れやすい。毛細血管血液中の還元ヘモグロビンが、5g/dL以上に増加すると出現する皮膚の青紫調変化である。
1.× 貧血は、チアノーゼの原因とならない。なぜなら、チアノーゼは「還元ヘモグロビンの量」に依存するため。貧血では、ヘモグロビン総量が少ない状態である。ヘモグロビン総量が少ない場合、たとえ動脈血の酸素飽和度が低下して還元ヘモグロビンの「割合」が増加しても、還元ヘモグロビンの「絶対量」がチアノーゼを呈する閾値(5 g/dL)に達しにくいため、チアノーゼが現れにくい、あるいは目立たないことが多い。
・貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンの総量が減少した状態である。
・還元へモグロビンとは、脱酸素化ヘモグロビンともいい、酸素が結合していない状態のヘモグロビンである。静脈血の色である暗赤色を示す。酸素供給不足や循環障害が原因となってチアノーゼが発生する。
2.〇 左心不全は、チアノーゼの原因となる。なぜなら、肺から左心房へ戻る血液の流れが滞り(肺うっ血)、肺に水分が溜まったり(肺水腫)、肺胞でのガス交換が障害されたりするため。その結果、血液に十分な酸素が取り込めなくなり、動脈血の酸素飽和度が低下し、還元ヘモグロビンが増加するし、チアノーゼが現れる(肺性チアノーゼの一種)。
3.〇 ファロー四徴症は、チアノーゼの原因となる。なぜなら、右心室から肺への血流が制限されるとともに、心室中隔の欠損孔を通して右心室の静脈血が左心室に流れ込み、酸素化されていない血液がそのまま全身に送り出されるため。したがって、動脈血の酸素飽和度が著しく低下し、還元ヘモグロビンが多量に存在する。生後早期から強いチアノーゼが現れる(中心性チアノーゼ)。
・ファロー(Fallot)四徴症とは、4つの特徴(「心室中隔欠損」、「肺動脈狭窄」、「大動脈騎乗」、「右室肥大」)がある病気である。大動脈が太く、通常より前方に移動していることで肺動脈が細く狭くなり、「肺動脈狭窄」になる。ファロー四徴症は、先天性心疾患であり、症状としてチアノーゼ、頻脈、多呼吸、哺乳不良などの症状がみられる。したがって、原因は不明である。
4.〇 COPDは、チアノーゼの原因となる。なぜなら、肺胞でのガス交換が障害されるため。したがって、血液中に十分な酸素を取り込むことが難しくなり、動脈血の酸素飽和度が低下し、還元ヘモグロビンが増加する(肺性チアノーゼ)。
・慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。
心不全は心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血液量を供給できない状態である。肺循環系にうっ血が著明なものを左心不全、体循環系にうっ血が著明なものを右心不全という。体液の著明やうっ血を生じ、主な症状として呼吸困難、咳嗽、チアノーゼ、血性・泡沫状喀痰(ピンクの痰)などがある。
心拍出量の低下を起こす原因として、
・左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの(呼吸困難、起座呼吸、尿量減少など)
・右心不全:体循環系にうっ血が著明なもの(頸静脈怒張、胸水・腹水、下腿浮腫、肝腫大など)
右室拡張末期圧の上昇(体循環の静脈系のうっ血)により右心不全は引き起こされる。