第33回(R7年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前66~70】

 

問題66 鉄欠乏性貧血の患者によくみられるのはどれか。

1.爪の変形
2.白髪
3.知覚鈍麻
4.味覚低下

解答

解説

鉄欠乏性貧血とは?

鉄欠乏性貧血とは、体内に流れている赤血球に多く含まれるヘモグロビンと鉄分が欠乏する事により、酸素の運搬能力が低下し全身に十分な酸素が供給されず倦怠感や動悸、息切れなどの症状がみられる貧血の種類の中でも最も多く特に女性に多い疾患である。原因としては、栄養の偏りなどによる鉄分の摂取不足、消化性潰瘍やがん、痔などの慢性出血による鉄の喪失、腸管からの鉄吸収阻害などがあげられる。

1.〇 正しい。爪の変形は、鉄欠乏性貧血の患者によくみられる。なぜなら、鉄の不足が爪の健康に影響するため。鉄欠乏性貧血では、体内の鉄分が不足し、爪の生成に必要な栄養が足りなくなる。そのため、爪が薄くなったり反り返ったりする「スプーン爪」と呼ばれる変形が起こりやすくなる。

2.× 白髪は、鉄不足との直接的な関連はない。一般的に、白髪は、髪の色を作る細胞(メラノサイト)の機能が低下することによって起こる。主な原因は加齢、遺伝、ストレスなどである。

3.× 知覚鈍麻は、鉄不足との直接的な関連はない。一般的に、知覚鈍麻(感覚が鈍くなる、手足がしびれるなど)は、神経系の障害や、特定の栄養素(特にビタミンB12など)の不足によって起こる。

4.× 味覚低下が主にみられる貧血は、巨赤芽球性貧血である。巨赤芽球性貧血とは、ビタミンB12あるいは葉酸の不足が原因の、骨髄に巨赤芽球が出現する貧血の総称である。偏食や過度の飲酒などを背景にビタミン欠乏症の患者がみられる。貧血の症状(動悸や息切れ、疲労感)の他に、萎縮性胃炎やハンター舌炎(味覚障害や舌の痛みを伴う炎症)など消化器系に異常をきたす。ちなみに、再生不良性貧血とは、骨髄の造血幹細胞の減少と、それによる末梢血の汎血球減少を主徴とする症候群で、骨髄で血液が造られないために血液中 の赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減ってしまう病気である。白血球(Tリンパ球)の働きが何らかの原因で異常をきたし、自分自身の造血幹細胞を攻撃して壊してしまうことが原因と考えられている。

 

 

 

 

 

問題67 特発性血小板減少性紫斑病について最も適切なのはどれか。

1.筋肉内に血腫を生じるのが特徴的である。
2.血管に対する自己抗体によって発症する。
3.女性よりも男性に多い。
4.ヘリコバクター・ピロリ除菌療法が有効である。

解答

解説

特発性血小板減少性紫斑病とは?

特発性血小板減少性紫斑病とは、血液中の血小板が減少することにより出血しやすくなる病気である。原因は不明であるが、体の中の免疫反応が過剰になり、自分の血小板を攻撃してしまうために、血小板が減少するといわれている。

1.× 「筋肉内に血腫」ではなく皮膚の表面(点状出血や紫斑)を生じるのが特徴的である。一方、筋肉内の血腫は、血友病など、血液を固める凝固因子に異常がある病気で起こる。

2.× 「血管」ではなく血小板に対する自己抗体によって発症する。特発性血小板減少性紫斑病は、自分の体の中の血小板に対して自己抗体(自分自身の細胞を攻撃してしまう抗体)が作られることで発症すると考えられている。

3.× 逆である。「男性」よりも「女性」に多い。男女比は1:4~5である。特に20~40歳代である。なぜなら、女性は男性より自己免疫疾患にかかりやすく、ホルモンや免疫応答の違いが関与しているといわれているため。

4.〇 正しい。ヘリコバクター・ピロリ除菌療法が有効である。なぜなら、近年、特発性血小板減少性紫斑病と、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染との間に関連があることが報告されているため。特に、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染している場合、除菌療法を行うと、血小板の数が有意に増加し、病状が改善することが多くの臨床研究で報告されている。

 

 

 

 

 

問題68 病初期から人格障害がよくみられるのはどれか。

1.脳血管性認知症
2.前頭側頭型認知症
3.アルツハイマー病
4.レビー小体型認知症

解答

解説
1.× 脳血管性認知症とは、脳血管が詰まったり破れたりすることで突然発症する。その後、脳血管が詰まったり破れたりするたびに、症状が悪化する特徴を持つ。その部位や範囲によって症状は様々である。他の症状として、巣症状(失語、失行、失認など脳の局所性病変によって起こる機能障害)や階段状に認知障害が進行することが特徴である。

2.〇 正しい。前頭側頭型認知症は、病初期から人格障害がよくみられる。なぜなら、脳の前頭葉(人間の人格、行動、社会性、感情のコントロールなどを司る部分)が病気の早い段階から強く障害されるため。
・前頭側頭型認知症とは、前頭葉・側頭葉に限局した萎縮性病変を認める症候群をいう。代表的な疾患にPick病がある。発症は初老期(40~60歳代)にみられる。初期は、自発性の低下、自発語の減少、偏食・過食、脱抑制などの人格変化・行動異常で潜行性に発症する。

3.× アルツハイマー病とは、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑(アミロイドβの蓄積)・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。Alzheimer型認知症の患者では、現在でもできる動作を続けられるように支援する。ちなみに、休息をとることや記銘力を試すような質問は意味がない。

4.× レビー小体型認知症とは、Lewy小体が広範な大脳皮質領域で出現することによって、①進行性認知症と②パーキンソニズムを呈する病態である。認知機能の変動・動揺、反復する幻視(人、小動物、虫)、パーキンソニズム、精神症状、REM睡眠型行動異常症、自律神経障害などが特徴である。実際にはいない人が見える「幻視」、眠っている間に怒鳴ったり、奇声をあげたりする異常言動などの症状が特徴的である。頭がはっきりしたり、ボーッとしたり、日によって変動することもある。レビー小体型認知症そのものを治す治療はなく、現状では症状に対する薬を使用して効果をみる。抗精神薬による精神症状のコントロールと抗パーキンソン病薬による運動症状の改善、自律神経障害に対しての血圧コントロールなどがある。

 

 

 

 

 

問題69 パーキンソン病でよくみられるのはどれか。

1.下痢
2.発汗低下
3.唾液減少
4.起立性低血圧

解答

解説

パーキンソン病とは?

パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

矛盾性運動(逆説的運動)とは、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができること、リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えさせたりすると、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。階段昇降は、歩行の改善、下肢筋力強化の効果も期待される。

1.× 下痢が必ずしも起こる症状とはいえない。なぜなら、パーキンソン病の自律神経の障害は、消化管の動き(蠕動運動)が悪くなることが多いため。したがって、便秘が一般的である。

2.× 発汗低下が必ずしも起こる症状とはいえない。なぜなら、パーキンソン病の自律神経の障害は、運動時の「発汗過多」、室内の温度に対しての体温調整がうまくできず、「発汗低下」の両方がありえるため。

3.× 唾液減少が必ずしも起こる症状とはいえない。なぜなら、パーキンソン病の自律神経の障害は、唾液の分泌量の調節がうまくいかなくなるため。パーキンソン病の運動症状として顔の筋肉の固縮や飲み込みの障害が起こるため、唾液を飲み込む動作がスムーズにできなくなる。したがって、口の中に唾液が溜まりやすくなり、唾「唾液の貯留」や「流涎」が目立つ。

4.〇 正しい。起立性低血圧は、パーキンソン病でよくみられる。なぜなら、血圧や心拍数を調節する自律神経の働きが障害されることが多いため。特に、寝ている状態や座っている状態から急に立ち上がったときに、血圧が十分に上がらずに大きく低下する起立性低血圧がみられる。

起立性低血圧とは?

起立性低血圧とは、急に立ち上がったり、起き上がった時に血圧が低下し、軽い意識障害、いわゆる立ちくらみをおこすことである。機序として、血圧調節機能がうまく働かず血圧が低下し、脳血流が減少して、めまいや立ちくらみなどを起こす。仰臥位・坐位から立位への体位変換後3分以内に、以下のいずれかが認められるとき、起立性低血圧と診断する。①収縮期血圧が20mmHg以上低下、②収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下、③拡張期血圧が10mmHg以上低下。

 

 

 

 

 

問題70 筋萎縮性側索硬化症でよくみられるのはどれか。

1.膀胱直腸障害
2.眼球運動障害
3.嚥下障害
4.褥瘡

解答

解説
1~2.4.× 膀胱直腸障害/眼球運動障害/褥瘡は、筋萎縮性側索硬化症の4大陰性徴候に当てはまる。したがって、終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

3.〇 正しい。嚥下障害は、筋萎縮性側索硬化症でよくみられる。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、延髄にある運動ニューロンが障害されるため。したがって、球症状(言語障害、嚥下障害など)がみられる。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

 

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