問題71 ICFの「活動」に該当するのはどれか。
1.呼吸機能
2.利き手交換
3.復職
4.家屋改修
解答2
解説
(※画像引用:Job Medley様HPより)
1.× 呼吸機能は、「心身機能・身体構造」に該当する。
2.〇 正しい。利き手交換は、「活動」に該当する。
3.× 復職は、「参加」に該当する。
4.× 家屋改修は、「環境因子」に該当する。
問題72 脊髄損傷患者に生じる自律神経過反射について正しいのはどれか。
1.血圧上昇にはまず降圧薬を投与する。
2.腰髄損傷患者にみられる。
3.脳内出血を合併することはない。
4.難治性便秘が誘因となる。
解答4
解説
自律神経過反射は、T5~6以上の脊髄損傷患者において、損傷部以下の臓器からの刺激によって起こる自律神経の異常反射である。内臓神経の抑制が解除されるため、主に骨盤内臓器が緊張する促通刺激が原因となり誘発される。原因は①膀胱刺激、②直腸刺激、③内臓刺激、④皮膚刺激などが挙げられる。生命の危険を伴い合併症を伴う。自律神経過反射の症状は、高血圧、ガンガンする頭痛、顔面紅潮、損傷レベルより上部での発汗、鼻詰まり、吐き気、脈拍60以下の徐脈、損傷レベルより下部の鳥肌である。
1.× 血圧上昇には、まず「降圧薬の投与」より体位変換を優先する。反射が出現した際の緊急時の対応としては、血圧を低下させるため、体位を座位とし、必要に応じて降圧薬を投与する。これは、まず原因となっている体の刺激を取り除くため。例えば、膀胱に尿が溜まりすぎていないか、尿道カテーテルが詰まっていないか、直腸に便が溜まっていないか、皮膚に締め付けや痛みがないかなどを確認し、原因となっている刺激を解消する。
2.× 「腰髄」ではなく上位胸髄(T5~6以上)損傷患者にみられる。自律神経過反射は、T5~6以上の脊髄損傷患者において、損傷部以下の臓器からの刺激によって起こる自律神経の異常反射である。
3.× 脳内出血を「合併することはない」と断言できない。なぜなら、自律神経過反射の症状のひとつに、急激かつ著しい血圧の上昇があげられるため。この急激な高血圧は、脳の血管に非常に大きな負担をかけ、脳血管が破綻して脳出血を起こす可能性がある。
4.〇 正しい。難治性便秘が誘因となる。自律神経過反射の原因として、①膀胱刺激、②直腸刺激、③内臓刺激、④皮膚刺激などが挙げられる。
問題73 心臓リハビリテーションの適応となるのはどれか。
1.不安定狭心症
2.急性心筋炎
3.急性大動脈解離
4.心不全
解答4
解説
①胸痛・動悸・呼吸困難などの自覚症状が出現しないこと。
②心拍数が120/分以上にならないこと。または40/分以上増加しないこと。
③危険な不整脈が出現しないこと。
④心電図上1mm以上(0.2mV以上)の虚血性ST低下、または著明なST上昇がないこと。
⑤室内便器使用時までは20mmHg以上の収縮期血圧上昇・低下がないこと。
(2週間以上経過した場合、血圧に関する基準は設けない)
(引用:「2021年改訂版心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」日本循環器学会様より)
1.× 不安定狭心症は、心臓リハビリテーションの適応とはならない。なぜなら、「③危険な不整脈」に該当するため。
・不安定狭心症とは、安定性狭心症と比べて発作の回数が増えたり安静時にも胸痛がみられる重症・増悪型の狭心症である。冠動脈内において動脈硬化に起因する不安定プラークの破綻などにより血栓が形成され、それによって急激に冠動脈内が狭窄し、心筋虚血に至った状態である。また、心臓の栄養血管である冠動脈の高度な狭窄を反映していることが多い。つまり、心筋梗塞の前兆で突然死に至る可能性があり、早急な対処が必要である。
2.× 急性心筋炎は、心臓リハビリテーションの適応とはならない。なぜなら、炎症が強い時期は、心機能が低下したり、重篤な不整脈が起こりやすくなったりするため。
・心筋炎とは、主にウイルスが心臓の筋肉(心筋)に感染し心筋細胞に炎症が起こり、心筋の本来の機能が失われ、ポンプである心筋の収縮不全や不整脈を生じる疾患である。一般的に心筋炎では虚血性心疾患は来さない。
3.× 急性大動脈解離は、心臓リハビリテーションの適応とはならない。なぜなら、急性大動脈解離は、体の中で最も太い血管である大動脈の壁が突然裂けてしまう非常に危険な病気であるため。
・大動脈解離とは、大動脈内膜に生じた亀裂(エントリー)から血液が流入し、中膜部分が解離した状態である。ほとんどの場合、高血圧症を基礎に持つ患者に突如発生する。
4.〇 正しい。心不全は、心臓リハビリテーションの適応となる。心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる状態である。適切な心臓リハビリテーションを行うことで、息切れやだるさといった症状が軽減し、運動能力が向上し、生活の質が高まり、入院回数を減らす効果があることが多くの研究で示されている。
1. 積極的なリハを実施しない場合
[1] 安静時脈拍 40/分以下または 120/分以上
[2] 安静時収縮期血圧 70mmHg 以下または 200mmHg 以上
[3] 安静時拡張期血圧 120mmHg 以上
[4] 労作性狭心症の方
[5] 心房細動のある方で著しい徐脈または頻脈がある場合
[6] 心筋梗塞発症直後で循環動態が不良な場合
[7] 著しい不整脈がある場合
[8] 安静時胸痛がある場合
[9] リハ実施前にすでに動悸・息切れ・胸痛のある場合
[10] 座位でめまい,冷や汗,嘔気などがある場合
[11] 安静時体温が 38 度以上
[12] 安静時酸素飽和度(SpO2)90%以下
2. 途中でリハを中止する場合
[1] 中等度以上の呼吸困難,めまい,嘔気,狭心痛,頭痛,強い疲労感などが出現した場合
[2] 脈拍が 140/分を超えた場合
[3] 運動時収縮期血圧が 40mmHg 以上,または拡張期血圧が 20mmHg 以上上昇した場合
[4] 頻呼吸(30 回/分以上),息切れが出現した場合
[5] 運動により不整脈が増加した場合
[6] 徐脈が出現した場合
[7] 意識状態の悪化
3. いったんリハを中止し,回復を待って再開
[1] 脈拍数が運動前の 30%を超えた場合。ただし,2 分間の安静で 10%以下に戻らないときは以後のリハを中止するか,または極めて軽労作のものに切り替える
[2] 脈拍が 120/分を越えた場合
[3] 1 分間 10 回以上の期外収縮が出現した場合
[4] 軽い動悸,息切れが出現した場合
問題74 摂食嚥下機能について正しいのはどれか。
1.先行期では食物を認識する。
2.口腔期では食物を咀嚼し食塊を形成する。
3.咽頭期では食塊が咽頭へ送り込まれる。
4.食道期では食塊が食道へ送り込まれる。
解答1
解説
①先行期・・・飲食物の形や量、質などを認識する。
②準備期・・・口への取り込み。飲食物を噛み砕き、飲み込みやすい形状にする。
③口腔期・・・飲食物を口腔から咽頭に送り込む。
④咽頭期・・・飲食物を咽頭から食道に送り込む。
⑤食道期・・・飲食物を食道から胃に送り込む。
1.〇 正しい。先行期では食物を認識する。したがって、認知機能が低下すると、食べ物へ認識が不十分で誤嚥のリスクが高まる。
2.× 食物を咀嚼し食塊を形成するのは、「口腔期」ではなく準備期である。
3.× 食塊が咽頭へ送り込まれるのは、「咽頭期」ではなく口腔期である。
4.× 食塊が食道へ送り込まれるのは、「食道期」ではなく咽頭期である。
問題75 大腿骨頸部骨折に対する人工骨頭置換術後のリハビリテーションで、最も適切なのはどれか。
1.術直後から患側下肢の抵抗運動を開始する。
2.術後疼痛緩和のために極超短波療法を行う。
3.患側股関節の回旋運動を行う。
4.術後早期から荷重訓練を開始する。
解答4
解説
1.× 「術直後」ではなく手術1~2週間後から患側下肢の抵抗運動を開始する。なぜなら、患側下肢の抵抗運動は、炎症が納まり、痛み少なくなった時期に始めるべきであるため。術直後に、手術した側の足に強い抵抗をかけた運動を行うと、手術した部分に過度な負担がかかり、痛みが強くなったり、炎症が悪化する恐れがある。リハビリテーションは、まずベッド上での足関節の運動や、股関節・膝関節の軽い自動運動や他動運動(支えてもらいながら動かす)から始め、筋力維持のための軽い等尺性運動(関節を動かさずに筋肉に力を入れる)などが中心となる。
2.× 術後疼痛緩和のために、「極超短波療法」ではなく寒冷療法を行う。一般的に、炎症部位に極超短波療法(温熱療法)は、炎症症状が悪化するため禁忌である。
・マイクロ波療法(極超短波療法)は、深部組織を温めるために用いられる電磁波療法である。極超短波とは、深部温熱療法である。2450MHzの電磁波を利用し、エネルギーの半価層(エネルギーが半減する深度)は、3~4cm、筋の加温に有効である。一般的に、極超短波療法(マイクロ波)の禁忌は、①温熱療法一般の禁忌(急性炎症部位、悪性腫瘍、出血傾向、知覚麻痺)、②金属部位への照射(衣服、装飾品、体内金属含む)、③心臓ペースメーカー使用者、④眼球、男性生殖器、妊婦の腹部、⑤小児の骨端線である。
3.× 患側股関節の回旋運動を行うのは、慎重に行う必要がある。なぜなら、脱臼のリスクがあるため。主治医から許可や相談する必要がある。
【禁忌肢位】
・後方アプローチ:股関節の過屈曲 + 内転 + 内旋である。
・前方アプローチ:股関節の伸展 + 内転 + 外旋である。
4.〇 正しい。術後早期から荷重訓練を開始する。術後1週目程度から、徐々に荷重歩行訓練を行っていくことができる。術後早期からの荷重訓練や歩行訓練は、筋肉の萎縮を防ぎ、関節の動きを保ち、骨粗鬆症や深部静脈血栓症などの合併症を予防し、早期の離床や日常生活動作(ADL)の自立を促すことができる。