第27回(H31年)柔道整復師国家試験 解説【午前101~105】

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問題101 門脈圧亢進に続発する徴候で誤っているのはどれか。

1.腹水
2.脾腫
3.肝硬変
4.食道静脈瘤

答え.3

解説

門脈圧亢進症とは?

門脈は、だいたいの消化管から得られた栄養を肝臓へと運ぶ働きを持つ機能血管である。胃、腸、膵臓、脾臓、胆嚢の毛細管から静脈血を集める。門脈圧亢進症とは、門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは、肝硬変、住血吸虫症、および肝血管異常である。続発症として、食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い、しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。

1.〇 腹水は、門脈圧亢進に続発する徴候である。
腹水とは、タンパク質を含む体液が腹腔に蓄積した状態である。胃が圧迫されて食事がとれなくなったり吐き気が出ることや肺との境界である横隔膜を押し上げて肺が膨らみにくくなり息切れを感じることもある。それに加え、腹部が膨隆するため足元が見えにくくつまづきやすいため転倒のリスクとなりうる。一方、リンパ浮腫の原因は、主にリンパ管内に回収されなかったために起こる。

2.〇 脾腫は、門脈圧亢進に続発する徴候である。
なぜなら、門脈圧亢進症により血流が妨げられると、その一部が脾臓に流れ込み、これが脾腫(脾臓の肥大)を引き起こすため。ちなみに、脾腫とは、何らかの疾患の症状として、脾臓が肥大することである。

3.× 肝硬変は、門脈圧亢進に続発する徴候で誤っている。
肝硬変自体が門脈圧亢進症の一般的な原因である。ちなみに、肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。

4.〇 食道静脈瘤は、門脈圧亢進に続発する徴候である。
なぜなら、門脈圧亢進症により肝臓への血流が妨げられるため。血液が他の経路(例えば食道の静脈)を通って体に戻ろうとた結果、食道の静脈は過度の血流により拡張し、食道静脈瘤を形成する可能性がある。

 

 

 

 

 

問題102 静脈血栓塞栓症における塞栓部位はどれか。

1.門脈
2.腎静脈
3.冠状動脈
4.肺動脈

答え.4

解説

静脈血栓塞栓症とは?

静脈血栓塞栓症とは、手足の静脈に血栓ができて血管が詰まる深部静脈血栓症(DVT)と、その血栓が血流に乗って運ばれ肺の動脈に詰まる肺血栓塞栓症を合わせた総称である。深部静脈血栓症とは、長時間の安静や手術などの血流低下により下肢の静脈に血栓が詰まってしまう病気である。下肢の疼痛、圧痛、熱感などの症状がみられる。ほかのリスク因子として、脱水や肥満、化学療法などがあげられる。

1.× 門脈
門脈とは、だいたいの消化管から得られた栄養を肝臓へと運ぶ働きを持つ機能血管である。肝臓では、栄養素の代謝や解毒が行われるため、門脈を通ることが重要である。

2.× 腎静脈
腎静脈とは、腎臓から還流する静脈で腎臓と下大静脈をつないでいる。比較的太い血管であるため、塞栓は生じにくい。

3.× 冠状動脈
冠状動脈とは、冠動脈ともいい、心臓を栄養する終動脈(細動脈で吻合をもたない血管)である。心臓自身を栄養するために、心拍出量の約1/20(250mL/分)の血液が冠動脈へ流れている。右冠状動脈(後下行枝)は、洞房結節、房室結節、右心室、心臓の後壁および下壁に、左冠状動脈(左前下行枝・左回旋枝)は、左心房・右心室の前壁・左心室の前壁と後壁・心室中隔の大部分に流入する。

4.〇 正しい。肺動脈は、静脈血栓塞栓症における塞栓部位である。
静脈血栓塞栓症は、一般的には深部静脈血栓症として下肢に発生し、その血栓が血流によって肺へ運ばれ、肺動脈塞栓症を引き起こす。

肺血栓塞栓症とは?

肺血栓塞栓症とは、肺の血管(肺動脈)に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。ロング・フライト血栓症やエコノミークラス症候群などと呼ばれる。離床(車椅子乗車や立位訓練、歩行訓練など)を開始したタイミングで発症するリスクが高くなるため注意が必要である。多く原因は、足の深いところにある静脈(深部静脈)に血液の塊である血栓ができて、その血栓が血流に乗って心臓を介して肺動脈に詰まることである。

 

 

 

 

 

問題103 フィラリア症でみられる浮腫の成因はどれか。

1.血管透過性の亢進
2.毛細血管圧の上昇
3.膠質浸透圧の低下
4.リンパ管の閉塞

答え.4

解説

フィラリア症とは?

フィラリア症とは、蚊によって媒介される寄生虫(線虫)による感染症である。リンパ系を侵すことがあります。感染は、通常、小児期に成立し、リンパ系組織に症状が現れないまま障害を起こし、後に、この疾患による疼痛を伴う外観の大きな変形、リンパ浮腫、象皮病、陰嚢水腫が、生涯のうちに現れてきて、永続的な身体の障害へと進展する。

浮腫とは?

浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起こることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。

1.× 血管透過性の亢進
これは、炎症やアレルギー反応(アナフィラキシーショック)による浮腫の成因である。

2.× 毛細血管圧の上昇
これは、心不全や腎疾患などによる浮腫の成因である。心臓のポンプ機能低下により血液のうっ滞していることが多い。

3.× 膠質浸透圧の低下
これは、肝硬変や慢性腎疾患(低アルブミン血症)などによる浮腫の成因である。血液中の蛋白質濃度が低下すると、血液の浸透圧が低下し、体液が血管から漏出して組織間隙に溜まる。

4.〇 正しい。リンパ管の閉塞は、フィラリア症でみられる浮腫の成因である。
なぜなら、フィラリア症は寄生虫によって引き起こされ、寄生虫がリンパ系を侵害するため。リンパ管が閉塞し、リンパ液の流れが妨げられるため、浮腫が発生する。この状態はしばしば象皮病と呼ばれる。ちなみに、リンパ浮腫とは、がんの治療部位に近い腕や脚などの皮膚の下に、リンパ管内に回収されなかった、リンパ液がたまってむくんだ状態のことをいう。つまり、リンパ浮腫以外の浮腫を惹起する疾患や、癌の転移・再発が除外される必要がある。治療は、複合的理学療法といわれ、以下の4つの治療を組み合わせながら行う。①リンパドレナージ、②圧迫療法、③圧迫下における運動療法、④スキンケアである。リンパ液を流してあげることで突っ張った皮膚を緩め、硬くなった皮膚を柔らかくする。この状態で弾性包帯を巻いたり、スリーブといわれるサポーターのようなものや、弾性ストッキングを着用し、リンパの流れの良い状態を保ち、さらにむくみを引かせて腕や脚の細くなった状態を保つ。そして、圧迫した状態でむくんだ腕や脚を挙上する、動かすことでさらにむくみを軽減・改善をはかる。

 

 

 

 

 

問題104 後天性の免疫不全はどれか。

1.重症複合型免疫不全症
2.デイジョージ(DiGeorge)症候群
3.伴性無ガンマグロブリン血症
4.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症

答え.4

解説
1.× 重症複合型免疫不全症
重症複合型免疫不全症とは、先天的(生まれつき)、体の中の免疫細胞(T細胞やB細胞など)がうまく働かず、感染に対する抵抗力が低下する病気である。細菌やウイルスなどの病原体に感染しやすくなり、重篤な肺炎、中耳炎、膿瘍、髄膜炎などを繰り返す。

2.× デイジョージ(DiGeorge)症候群
デイジョージ症候群とは、胸腺低形成とも言い、免疫不全を起こす先天性の病気で、出生時に胸腺がまったくないか、あっても未発達な状態を指す。小児の場合、心臓の異常、副甲状腺未発達または欠如、胸腺の未発達または欠如、特徴的な顔つきなど、いくつかの異常が生まれつきみられる。

3.× 伴性無ガンマグロブリン血症
X連鎖(伴性)無ガンマグロブリン血症とは、遺伝性の免疫不全疾患で、X(性)染色体上の遺伝子の突然変異に起因した病気であり、B細胞がなく、抗体(免疫グロブリン)の量が極めて少ないか、まったくみられない。したがって、せきを繰り返したり、鼻、耳、皮膚、副鼻腔、肺の感染症を生後約6カ月から繰り返すことが多い。

4.〇 正しい。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は、後天性の免疫不全である。
後天性免疫不全症候群〈AIDS〉は、ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉によって引き起こされ、伝播は主に性行為、血液接触、母子感染によるものである。ちなみに、ヒト免疫不全ウイルスは、人の免疫細胞に感染してこれを破壊し、最終的に後天性免疫不全症候群を発症させるウイルスである。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することで後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症を予防できるようになってきている。しかし、治療を受けずに自然経過した場合、免疫力の低下により様々な障害が発現する。

 

 

 

 

 

問題105 アレルギー反応で正しい組合せはどれか。

1.Rh血液型不適合胎児赤芽球症:Ⅰ型
2.気管支喘息:Ⅱ型
3.バセドウ(Basedow)病:Ⅲ型
4.ツベルクリン反応:Ⅳ型

答え.4

解説
1.× Rh血液型不適合胎児赤芽球症は、「Ⅰ型」ではなくⅡ型である。
Rh血液型不適合胎児赤芽球症は、母親がRh陰性で、胎児がRh陽性である場合に発生する。胎児赤芽球症は、胎児赤血球に対する母体の抗体が経胎盤的に移行することによって起こる、胎児(または新生児では新生児赤芽球症)の溶血性貧血である。ちなみに、Ⅱ型アレルギーとは、細胞障害型や細胞融解型と呼ばれ、抗体はIgG・IgMが関与するアレルギーである。自己の細胞にこれらが結合し、補体の活性化による細胞融解や食細胞による貧食を起こす。血液型不適合輸血による溶血、自己免疫性溶血性貧血などに関連する。

2.× 気管支喘息は、「Ⅱ型」ではなくⅠ型である。
気管支喘息とは、主に気管支に炎症が起きている状態である。炎症により気管支が狭くなったり(狭窄)、刺激に対して過敏な反応を示したりする。喘息は乳幼児期に発症することが多く、全体の60~70%が2~3歳までに発症する。子どもの喘息の多くは思春期の頃には症状がよくなるが、そのうちの約30%は大人になっても続くといわれている。

3.× バセドウ(Basedow)病は、「Ⅲ型」ではなくⅤ型(※一部Ⅱ型)である。
バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。Ⅴ型アレルギー反応とは、ホルモンを分泌する細胞に結合する反応で、甲状腺機能亢進症・低下症を引き起こす。

4.〇 正しい。ツベルクリン反応は、「Ⅳ型」である。
ツベルクリン反応とは、Ⅳ型アレルギーの反応を利用した検査である。細胞性免疫を司るTリンパ球と抗原物質であるツベルクリンとの特異的結合によって発赤などが起こる反応である。結核菌から精製した抗原を皮内投与し、接種部位に出現する発赤・硬結の直径を48時間後に測定して、感染を診断する検査である。結核に罹患している患者では、結核菌の成分(抗原)で感作されたT細胞(Tリンパ球)がすでに体内に存在しているため、投与した抗原に反応してサイトカイン放出と細胞性免疫により、発赤・硬結が出現する。

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

 

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