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問題86 橈骨頭脱臼で正しいのはどれか。
1.後方に脱臼することが多い。
2.前腕回外強制で発生する。
3.尺骨骨折を伴うことが多い。
4.前骨間神経損傷を合併する。
答え.3
解説
前骨間神経と後骨間神経は、前腕の橈骨と尺骨という2つ骨の間を繋ぐ骨間膜の前後を走る神経である。両者とも触覚に異常がないのが特徴である。神経炎以外にも、外傷、絞扼性神経障害でも生じる。
【前骨間神経】
・肘の辺りで正中神経から分岐して主に母指(親指)と示指の第1関節を動かす筋肉を支配している。ほかにも、長母指屈筋、方形回内筋を支配する。
→涙のしずくが陽性。
【後骨間神経】
・肘の辺りで橈骨神経から分岐して回外筋にもぐりこみ、指を伸展する筋肉を支配している。
→下垂指(drop finger)となる。
1.× 「後方」ではなく前方に脱臼することが多い。
2.× 前腕「回外」ではなく回内強制で発生する。
3.〇 正しい。尺骨骨折を伴うことが多い。
橈骨頭単独脱臼とは、肘関節脱臼のひとつである。多くは、尺骨近位の骨折を伴う(モンテギア骨折)。また、後骨間神経(橈骨神経)の損傷があることが多い。モンテギア骨折はほとんどが伸展型であり、固定方法として、肘関節鋭角屈曲位、前腕回外位で行う。整復法として、上腕固定、前腕を牽引し肘関節部に内転するように力を加えながら橈骨頭を直圧する。
4.× 「前骨間神経」ではなく後骨間神経損傷を合併する。
Monteggia骨折は、尺骨骨幹部骨折に橈骨頭前方脱臼が起きたものである。手をついて転倒・転落した際、前腕回内力が作用することで起こりやすい。
問題87 手のPIP関節脱臼で正しいのはどれか。
1.掌側脱臼が多い。
2.浅指屈筋腱断裂ではDIP関節を屈曲できない。
3.正中索の損傷の場合は屈曲位で固定する。
4.ボタン穴変形は徐々に発生する。
答え.4
解説
1.× 「掌側」ではなく背側脱臼が多い。
なぜなら、突き指として発生することが多いため。母指IP関節は生じにくい。背側脱臼の場合は、掌側板損傷を合併する。
2.× 「浅指屈筋」ではなく深指屈筋腱断裂ではDIP関節を屈曲できない。
なぜなら、浅指屈筋は、DIP関節屈曲作用を持たないため。浅指屈筋の作用は、第2~5指の中手指節関節と近位指節間関節の屈曲である。ちなみに、【起始】上腕尺骨頭:上腕骨内側上顆、尺骨粗面の内側、橈骨頭:橈骨の上部前面、【停止】第2~5中節骨底の掌面である。
3.× 正中索の損傷の場合は、「屈曲位」ではなく伸展位で固定する。
なぜなら、ボタン穴変形の予防のため。ボタン穴変形とは、DIP過伸展・PIP屈曲する変形である。正中索の断裂によりボタン穴変形が起こる。
4.〇 正しい。ボタン穴変形は徐々に発生する。
ボタン穴変形とは、DIP過伸展・PIP屈曲する変形である。正中索の断裂によりボタン穴変形が起こる。
【種類】
①背側脱臼:掌側板損傷する
②掌側脱臼:正中索損傷する(ボタン穴変形)
③側方脱臼:側副靱帯損傷する(側方動揺性)
【固定法】
①DIP・PIP関節:軽度屈曲位
②正中索損傷の場合:PIP伸展位
③側副靭帯損傷の場合:隣接指間にパットを挟み固定
※示指PIP関節背側脱臼で正中索損傷を合併している稀な症例であるが、基本的に正中索損傷する(ボタン穴変形)に対する固定方法を行う。
問題88 股関節脱臼を腹臥位で整復するのはどれか。
1.牽引法
2.デパルマ法
3.コッヘル法
4.スティムソン法
答え.4
解説
1.× 牽引法は、背臥位で行う。
牽引力とは、引っ張る力のことである。骨折を整復するときに使用されるが、骨の治癒自体を促進する力ではない。骨折により転位している骨を持続的に牽引することで、転位を治し整復する。①直達牽引と②介達牽引の2種類がある。①直達牽引とは、骨に直接牽引力を働かせる方法をという。②介達牽引とは、骨に直接牽引力を加えず、皮膚や筋肉を介して骨に力を加える牽引法である。皮膚に絆創膏や包帯を巻いて牽引を行う。ちなみに、介達牽引中の合併症として、①腓骨神経麻痺、②安静による認知能力の低下、③褥瘡、皮膚の傷などの皮膚科分野のトラブル、④関節の拘縮と筋力の低下、⑤循環障害などが挙げられる。
2.× デパルマ法は、背臥位で行う。
デパルマ法は、肩関節脱臼(後方脱臼)に対して行われる。①術者は肘関節屈曲位とし、患肢の前腕、肘関節部をつかみ、上腕長軸方向へ末梢牽引する。②同時に助手は母指で骨頭を下方へ圧迫し骨頭の移動を助ける。術者は末梢牽引を継続しながら、患肢肩関節を内転して側胸壁に接近させる。③末梢牽引、内転位を維持したまま肩関節を外旋すると整復される。整復後、末梢牽引を緩めて内旋して患肢肩関節を軽度外転位にする。
3.× コッヘル法は、背臥位で行う。
コッヘル法とは、肩関節脱臼(前方脱臼)に対して行われる。【方法】患者:仰向け、術者:肘の関節を90度に曲げて引っ張り、ゆっくり肩関節を外旋・内転させる。これを行ない続けると、脱臼の整復が次第に行なわれる。※コッヘル法は、てこの原理を利用しているため、筋力のない高齢者などにも使える。ただ、十分筋力のある成人などに行なう場合は、大きな痛みが残る場合があるので、前もって全身麻酔をしておくことが推奨されている。
4.〇 正しい。スティムソン法は、股関節脱臼を腹臥位で整復する。
スティムソン法とは、患者を腹臥位にしてベッドの横から患肢を垂れさせ、患者の手に重りをつけ、重りの力で自然整復を促す方法である。
問題89 膝関節脱臼で正しいのはどれか。
1.前方脱臼は過度の屈曲が強制され発生する。
2.後方脱臼はダッシュボード損傷で発生することが多い。
3.外側脱臼は下腿が内旋する。
4.内側脱臼は完全脱臼となる。
答え.2
解説
膝関節脱臼には、一般的に動脈損傷または神経損傷が伴う。膝関節脱臼は肢の温存を脅かす。この脱臼は,医学的評価がなされる前に自然に整復する場合がある。診断は通常,X線による。血管および神経学的評価が必要であり,血管損傷はCT血管造影により同定される。非観血的整復および血管損傷の治療を直ちに行う。(※引用:「膝関節(脛骨大腿関節)脱臼」MSDマニュアル様より)
【原因】膝関節過伸展の強制による介達外力、脛骨近位端に後方からまたは大腿骨遠位端に前方からの直達外力によって生じる。膝関節脱臼の中で最も頻度が高い。【固定】軽度膝関節屈曲位。
1.× 前方脱臼は、過度の「屈曲」ではなく伸展が強制され発生する。
膝関節前方脱臼とは、大腿骨が脛骨の後方に、逆に脛骨が大腿骨の前方に逸脱しているものをいう。
2.〇 正しい。後方脱臼はダッシュボード損傷で発生することが多い。
股関節後方脱臼は、坐骨神経麻痺が生じやすい。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。ちなみに、分類として、腸骨脱臼、坐骨脱臼が後方脱臼であり、恥骨上脱臼、恥骨下脱臼が前方脱臼である。
3.× 外側脱臼は下腿が「内旋」ではなく外旋する。
頻度としては、外側脱臼が多く、一方、内側脱臼の場合は下腿が内旋を呈する。
4.× 内側脱臼は、「完全脱臼」ではなく不全脱臼となる。
不全脱臼とは、骨の一部を関節に残したまま、骨が関節からずれた状態のことをいう。 不全脱臼は「亜脱臼」と呼ばれることも多く、一度脱臼を起こした部位に衝撃が加わって起こる症状である。
問題90 膝蓋骨脱臼で正しいのはどれか。
1.膝蓋骨は内方へ転位することが多い。
2.Q角は減少する。
3.膝は軽度屈曲位に弾発性固定される。
4.膝関節90度屈曲位で固定する。
答え.3
解説
概要:膝蓋骨脱臼は、膝蓋骨(膝のお皿の骨)が外傷などにより外側にずれてしまい、関節から外れてしまった状態である。膝関節の形態的特徴により、10代の女性に生じることが多く、受傷者の20~50%の方が脱臼を繰り返す「反復性脱臼」へ移行する。【原因】ジャンプの着地などで、膝を伸ばす太ももの筋肉(大腿四頭筋)が強く収縮した時に起こる。【症状】炎症期は、膝関節の痛みや腫れが生じる。慢性期:脱臼を繰り返す(反復性脱臼)ようになると痛みや腫れなどは少なくなり、不安定感を強く訴える。
【治療】脱臼後、直ちに整復を行う。ほとんどの患者では鎮静や鎮痛は不要である。
1.× 膝蓋骨は、「内方」ではなく外方へ転位することが多い。
これは、内側広筋の脆弱化(大腿四頭筋のベクトルが外方へ向く)が要因の一つである。他にも、Q-angle の増大、つまり、大腿四頭筋収縮の際、膝蓋骨が外側に引かれやすいことがあげられる。
2.× Q角は、「減少」ではなく増大する。
Q角(Quadliceps Angle:Q angle)とは、大腿四頭筋が膝蓋骨を引っ張る力を示す力線のことである。「上前腸骨棘と膝蓋骨の真ん中とを結んだ直線」と「膝蓋骨の真ん中と脛骨粗面の上縁とを結んだ直線」の交わる角度である。
3.〇 正しい。膝は軽度屈曲位に弾発性固定される。
脱臼位として、膝関節軽度屈曲位、歩行不能、膝蓋骨側方偏位がみられる。座位にて、股関節軽度屈曲位で膝関節を徐々に伸展しながら、膝蓋骨を外側から母指で圧迫・整復する。
4.× 膝関節「90度」ではなく軽度屈曲位で固定する。
膝関節伸展で容易に自然整復されるが、反復性になりやすい。内側広筋の強化は再発の予防となる。
①弾発性固定:脱臼した位置で関節が動かなくなる状態をいう。患部を押しても反発するか、動いてもまた脱臼した位置に戻ろうとする特徴がある。
②変形:関節が元の位置から逸脱するために、見た目にも変形がみられる。一度脱臼すると、関節の構造が破壊されてしまったり、靭帯や関節包が緩んでしまったりすることで不安定性が残る可能性がある。特に肩関節は、再負傷しやすいといわれている(反復性脱臼)。