第26回(H30年)柔道整復師国家試験 解説【午前106~110】

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問106 正しいのはどれか。

1.我が国の男性の悪性腫瘍部位別年齢調整死亡率の第一位は胃癌である。
2.我が国の男性の悪性腫瘍罹患率の第一位は肺癌である。
3.我が国で大腸癌の発生の多い部位は直腸、S状結腸である。
4.子宮頸癌はエプスタイン・バーウイルス感染により発症する。

答え.3

解説

癌の発生病理と関係のある感染症

①肝細胞癌:B型、C型肝炎ウイルス
②子宮頸癌:ヒトパピローマウイルス(16,18型)
③上咽頭癌:Burkittリンパ腫、NK細胞リンパ腫:Epstein barrウイルス
④胃癌:ヘリコバクター・ピロリ菌
⑤胆管癌:肝吸虫

1.× 我が国の男性の悪性腫瘍部位別年齢調整死亡率の第一位は、「胃癌」ではなく肺癌である。死亡数の男性1位:肺、2位:大腸、3位:胃、女性1位:大腸、2位:肺、3位:膵臓である。

2.× 我が国の男性の悪性腫瘍罹患率の第一位は、「肺癌」ではなく前立腺である。罹患率の男性1位:前立腺、2位:大腸、3位:胃、女性1位:乳房、2位:大腸、3位:肺である。

3.〇 正しい。我が国で大腸癌の発生の多い部位は直腸、S状結腸(約7割)である。なぜなら、肛門に近い部位で便が長時間留まりやすく負担がかかりやすいためと言われている。発生部位と頻度は、直腸(37.9%)、S状結腸(34.3%)である。ちなみに、上行結腸(10.4%)、横行結腸(7.0%)、盲腸(5.9%)に多く発生する。

4.× 子宮頸癌は、「エプスタイン・バー」ではなくヒトパピローマウイルス感染により発症する。ちなみに、EBウイルス(エプスタイン・バーウイルス、Epsteir Barrウイルス)は、上咽頭癌やバーキットリンパ腫に関連する。バーキットリンパ腫とは、悪性リンパ腫のうち非ホジキンリンパ腫に分類される高悪性度のB細胞リンパ腫である。成人では悪性リンパ腫の1~2%程度あるが、小児では25~40%を占め、比較的若い人に多く発症する。女性1人に対し、男性が2~3人で男性に多い傾向がある。キスを介して感染する。

子宮頸癌とは

子宮頸がんとは、子宮頸部(子宮下部の管状の部分)に生じるがんのことである。子宮頸がんは、子宮がんのうち約7割程度を占める。近年、20~30歳代の若い女性に増えてきており、30歳代後半がピークとなっている。子宮頸がんの原因のほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染である。このウイルスは性的接触により子宮頸部に感染する。初期では無症状だが、進行するにつれて帯下の増加や悪臭のある帯下、周囲臓器の浸潤による疼痛などの症状が現れる。

 

 

 

 

 

問107 正しいのはどれか。

1.伴性劣性遺伝病は男性には発病しない。
2.ダウン(Down)症候群では第5染色体が1本しか存在しない。
3.マルファン(Marfan)症候群は伴性劣性遺伝形式をとる。
4.家族性大腸ポリポーシスは常染色体優性遺伝形式をとる。

答え.4

解説
1.× 伴性劣性遺伝病は男性に発病「しやすい」。なぜなら、男性にはX染色体が1本しかないため。したがって、異常な遺伝子を持つX染色体を受け継いだ場合、必ず発病する。一方、女性の場合はX染色体が2本あり、もう一方のX染色体が正常であれば発病しないか、軽度で済む。

2.× ダウン(Down)症候群では、「第5染色体が1本」ではなく21番染色体が3本存在する。ちなみに、第5染色体が1本の場合は、5p欠失症候群(猫鳴き症候群)である。

3.× マルファン(Marfan)症候群は、「伴性劣性遺伝」ではなく常染色体優性遺伝形式をとる。原因は、15番・3番染色体の異常・変化(常染色体優性遺伝)で起こる。全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。つまり、全身の結合組織がもろくなるため、大動脈癌や大動脈解離を生じやすい。

4.〇 正しい。家族性大腸ポリポーシスは常染色体優性遺伝形式をとる。家族性大腸ポリポーシスとは、前がん病変である大腸ポリープが数百から数千個生じ、そこから大腸がんが発生する腫瘍症候群である。 発症は平均16歳であり、35歳までには95%の家族性大腸ポリポーシス保因者にポリープが生じる。

常染色体劣性遺伝とは?

常染色体劣性遺伝とは、常染色体上の遺伝子の変異が2つある場合に発症する遺伝形式である。男性と女性の両方に現れる。

 

 

 

 

 

問108 奇形成立の臨界期はどれか。

1.妊娠3~10週
2.妊娠11~20週
3.妊娠21~30週
4.妊娠31週以降

答え.1

解説

(※引用:「確定的影響と時期特異性」環境省HPより)

1.〇 正しい。妊娠3~10週は、奇形成立の臨界期である。外因の影響を受けやすい妊娠時期(形態異常の発生しやすい臨界期)は主要な器官形成が起きる受精後3~8週(妊娠5~10週)に一致しており、 その前後の妊娠時期には減少している(※引用:「奇形の赤ちゃんはなぜ生まれるのか」著:野嶽 幸正 様)。

2.× 妊娠11~20週/妊娠21~30週/妊娠31週以降
妊娠11週以降は、既に形成された器官が成長し、成熟する期間にあたる。

発達の臨界期とは?

臨界期とは、ある年齢を過ぎると言語の習得が不可能になる時期のことである。多くの場合、子どもが思春期に達する前後の12〜15歳が臨界期の終わりと考えられているが、これに対しては一致した結論はまだ出ていない。

 

 

 

 

 

問109 症例対照研究と比較した場合のコホート研究の長所はどれか。

1.調査費用が少ない。
2.短時間で実施できる。
3.稀な疾病に応用できる。
4.疾病の発生頻度が観察できる。

答え.4

解説

コホート研究と症例対照研究の比較

研究の種類には、研究者が調査対象集団に対して何らかの働きかけ(介入)を行うか否かで、介入を行う「介入研究」と、介入を行わない「観察研究」とに大きく分類される。介入研究には、「臨床試験・地域研究」などがある。一方、観察研究には、大きく「①記述疫学・②分析疫学」に大別され、①記述疫学には、横断研究・時系列研究などがある。②分析疫学には、生態学的研究・横断研究・症例対照研究・コホート研究などがある。ちなみに、観察研究とは、対象とする集団に対して研究者が、治療や指導などの介入をしないで、健康・疾病に関するデータを集めて、その詳細を分析して、新しい知見(診断・治療法等の開発につながる情報や推定していた仮説の検証等)を得るための研究のことである。

コホート研究とは、時間軸:前向き研究で、観察期間は長期間行う。信頼性は高いが費用・労力が大きい。

症例対照研究とは、時間軸:後ろ向き研究で、観察期間はない。信頼性は低いが費用・労力が小さい。症例群と対照群に分け、両群の過去の曝露状況を比較する方法である。曝露と疾患発症の関連を明らかにする。

1.× 調査費用が少ない。
2.× 短時間で実施できる。
3.× 稀な疾病に応用できる。
これらは、コホート研究より症例対照研究のほうが優れる。コホート研究とは、時間軸:前向き研究で、観察期間は長期間行う。信頼性は高いが費用・労力が大きい。コホート研究では、稀な疾病が発生するまでの追跡が必要なため、効率が悪い。

4.〇 正しい。疾病の発生頻度が観察できる。なぜなら、コホート研究では、最初に疾病がない集団を特定の期間追跡し、疾病の発生を観察するため。したがって、疾病の発生頻度を直接観察することができる。一方、症例対照研究は既に疾病が発生した集団とそうでない集団を比較するため、発生頻度を直接観察することはできない。

 

 

 

 

 

問110 国際疾病分類(ICD)で正しいのはどれか。

1.国際連合が制定している。
2.基本コードは3桁の数字で表される。
3.現在は第9回修正版が使用されている。
4.我が国の死亡統計の死因分類に用いられている。

答え.4

解説

国際疾病分類とは?

国際疾病分類(ICD-10:疾病及び関連保健問題の国際統計分類)とは、異なる国や地域から、異なる時点で集計された死亡や疾病のデータの体系的な記録・分析・解釈および比較を行うため、世界保健機関憲章に基づき、世界保健機関(WHO)が作成した分類である。最新の分類は、10回目の改訂版として、1990年の第43回世界保健総会において採択されたものであり、ICD-10 (1990年版)と呼ばれている。

1.× 「国際連合」ではなく世界保健機関(WHO)が制定している。世界保健機関とは、「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的として設立された国連の専門機関である。人間の健康を基本的権利のひとつととらえ、その達成を目的として設立された国連の専門機関であり、感染症およびその他の疾病の撲滅事業の促進や、保健分野における研究の促進・指導などを行っている。一方、国際連合はと、正式名称は「United Nations(UN)」で、世界の平和と経済・社会の発展のために協力することを誓った独立国が集まってできた国際機関である。

2.× 基本コードは、3桁の「数字」ではなくアルファベットと数字で表される。例えば、百日咳は、A37である。コードによって疾病や傷害の部位、げ3ン員などを表すことができるため、4桁や5桁へとなる。

3.× 現在は、「第9回修正版」ではなく第11回修正版が使用されている。ICD-11は2022年1月に発効し、国内および国際的な病名や死因の記録・報告などに使用されている。

4.〇 正しい。我が国の死亡統計の死因分類に用いられている。主に、死因分類や疾病分類に使用されている。(※参考:「ICDのABC」厚生労働省大臣官房統計情報部より)

世界保健機関(WHO:World Health Organization)とは?

世界保健機関とは、「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的として設立された国連の専門機関である。

設置年:昭和23(1948)年
本部:ジュネーブ(スイス)
協力形態:多国間交流
事業内容:発展途上国への国際保健協力、感染症およびその他の疾病(エイズ・結核・マラリア等)の撲滅事業、国際疾病分類(ICD)の作成
備考:①WHOの構成組織である地域的機関は、6つ(アフリカ、アメリカ、東南アジア、ヨーロッパ、東地中海、西太平洋)あり、日本は西太平洋に所属している。②194か国加盟 (2018年4月時点)、③たばこ規制枠組み条約:たばこの消費等が健康に及ぼす悪影響から現在および将来の世代を保護することを目的とし、たばこに関する広告、包装上の表示等の規制及びたばこの規制に関する国際協力について規定。

(※参考:「日本とWHO」厚生労働省HPより)

 

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