第25回(H29年)柔道整復師国家試験 解説【午後61~65】

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問61 骨腫瘍の単純エックス線所見で誤っている組み合わせはどれか。

1.線維性骨異形成:羊飼いの杖変形
2.ユーイング肉腫:玉ねぎ様骨膜反応
3.多発性骨髄腫:打ち抜き像
4.骨巨細胞腫:スリガラス状透明像

答え.4

解説
1.〇 正しい。線維性骨異形成:羊飼いの杖変形
・線維性骨異形成とは、骨の中が線維化して、骨がもろくなる病気である。主に太ももの骨とすねの骨に多く起こる。骨の痛みが主な症状で、悪化すると歩行困難や骨折がおこる。多くが単骨性に発生する。 10~20歳代に好発し、女性にやや多い。
・羊飼いの杖変形とは、大腿骨などの長骨が弓なりに曲がる特徴的な外観をした変形を指す。

2.〇 正しい。ユーイング肉腫:玉ねぎ様骨膜反応
・ユーイング肉腫とは、主として小児や若年者の骨(特に骨幹部)や軟部組織に発生する肉腫である。粘膜や皮膚などの上皮組織に発生する悪性腫瘍は「がん」といい、骨、軟骨、筋肉や神経などの非上皮組織に発生する悪性腫瘍を「肉腫」と呼ぶ。ユーイング肉腫の症状は、病巣部位の間欠的な痛み(一定の時間を置いて起こる痛み)や腫れが特徴である。
・玉ねぎ皮様の骨膜反応とは、腫瘍が骨膜を刺激することで、層状の新生骨が形成される状態を指す。これは、骨膜が層状に反応することで、玉ねぎの皮のように見えることから名付けられた。

3.〇 正しい。多発性骨髄腫:打ち抜き像
・多発性骨髄腫とは、形質細胞がクローン性に増殖するリンパ系腫瘍である。増殖した形質細胞やそこから分泌される単クローン性免疫グロブリンが骨病変、腎機能障害、M蛋白血症などさまざまな病態や症状を引き起こす。多発性骨髄腫の発症年齢は65~70歳がピークで男性が女性より多く約60%を占める。腫瘍の増大、感染症の合併、腎不全、出血、急性白血病化などで死に至る。主な症状として、頭痛、眼症状の他に①骨組織融解による症状(腰痛・背部痛・圧迫骨折・病的骨折・脊髄圧迫症状・高カルシウム血症など)や②造血抑制、M蛋白増加による症状(貧血・息切れ・動悸・腎機能障害)、易感染性(免疫グロブリン減少)、発熱(白血球減少)、出血傾向(血小板減少)などである。
・打ち抜き像とは、多発性骨髄腫の骨病変で、X線検査で骨の一部が黒く抜けて見える像を指す。骨の中に多数の円形の透過性病変が見られる。

4.× 骨巨細胞腫は、「スリガラス状透明像」ではなく多房性の骨透過像がみられる。
・骨巨細胞腫とは、骨端軟骨線が閉鎖した後の20~30歳台に発生する骨腫瘍である。増殖力が強く骨破壊性の腫瘍で、WHOの分類では中間悪性の腫瘍に位置付けられている。長骨の末端(特に膝近く)に発生する。骨巨細胞腫は潜在的に悪性の骨腫瘍であるため、エックス線で多房性の骨透過像を示すことが多く、膨満性で境界が不明瞭である。
・スリガラス状透明像とは、間質性肺炎で見られる所見で、気管支や肺胞などの空気が入る空間を間質といい、間質で炎症が起きると淡いすりガラスのような影が見える。

 

 

 

 

 

問62 第4・第5腰椎椎間板の突出型ヘルニアの臨床所見で正しいのはどれか。

1.FNSテスト陽性
2.足関節クローヌス陽性
3.下腿内側の感覚障害
4.長母趾伸筋筋力低下

答え.4

解説

腰椎椎間板ヘルニアとは?

椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

1.× FNSテスト陽性は、L3・L4の神経根障害である。FNSテスト(大腿神経伸展テスト:Femoral Nerve Stretching Test)は、腹臥位になってもらい、膝を曲げて太ももを背中側に挙げる。ふとももの前に痛みが誘発された場合、陽性となる。第2/3腰椎間、第3/4腰椎間の椎間板ヘルニアに特徴的な検査である。本症例の場合、L5‒S1間(支配神経根S1)の障害が考えられるため、FNSテストが陽性となる可能性は低い。

2.× 足関節クローヌス陽性は、深部反射の著明な亢進により生じ、痙直型四肢麻痺に特徴的な症状である。上位運動ニューロンの障害(錐体路障害)による痙性麻痺を主症状(筋トーヌス亢進、深部腱反射亢進、病的反射出現、クローヌス出現、折りたたみナイフ現象)とする。

3.× 下腿内側の感覚障害は、L3・L4の神経根障害である。
・L3‒L4間(支配神経根L4)は、膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下がみられる。

4.〇 正しい。長母趾伸筋筋力低下は、第4・第5腰椎椎間板の突出型ヘルニアの臨床所見である。
・L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下がみられる。

 

 

 

 

 

問63 分娩麻痺で正しいのはどれか。

1.腕神経叢損傷である。
2.下位型ではWaiter’s tip Positionが定型的な肢位である。
3.自然回復することはない。
4.節後損傷では手術による神経修復は期待できない。

答え.1

解説

分娩麻痺とは?

分娩麻痺とは、生まれてくる際に、子宮の収縮力だけでは力不足の場合、医師や助産婦による予想以上の力が腕に行く神経にかかり、神経が外傷し麻痺してしまうことをいう。合併症として、鎖骨骨折が最多である。次いで、顔面神経麻痺、頭蓋内出血が多い。骨折は、若木骨折のため後遣症もなく予後良好である。

1.〇 正しい。腕神経叢損傷である。なぜなら、分娩時に医師や助産婦による予想以上に、児の首や肩に強い牽引力がかかり、腕神経叢(特にC5~C6)が伸ばされたり損傷したりするため。ちなみに、腕神経叢とは、頚髄から分枝した神経が鎖骨や肋骨の間を通り、腋窩付近を走行する際に形成する神経の束のことである。腕神経叢麻痺は、腕神経叢の過伸展によって引き起こされることが多い。

2.× 「下位型」ではなく上位型ではWaiter’s tip Positionが定型的な肢位である。ウエイターズチップポジションとは、(waiter’s tip positionとは)、上位型麻痺の典型的な肢位で、肘関節伸展、前腕回内位、手関節屈曲位、手指屈曲位を示した肢位である。ちなみに、下位型麻痺(Klumpke麻痺)は、下位神経根に強い麻痺が残存したものである。下位型は非常にまれで予後は悪い。上位はC5~6、下位はC8~T1である。

3.× 自然回復すること「が多い」。なぜなら、軽度の神経損傷(神経の引き伸ばしや圧迫)の場合、時間とともに神経が再生・回復するため。ただし、重度の場合や回復が遅れる場合もあり、その場合には理学療法や手術が検討される。

4.× 「節後」ではなく節前損傷では手術による神経修復は期待できない。腕神経叢損傷は、①節前損傷と②節後損傷に大別される。節前損傷は、後根神経節より中枢での損傷で、神経根の引き抜き損傷のことである。したがって、節前損傷の機能回復は期待できない。一方、節後損傷は、後根神経節より末梢に発生した末梢神経障害であり、その損傷および術後の経過はSeddon分類に従う。節後損傷であればある適度の機能回復が期待できる。

MEMO

分娩麻痺は臨床症状によって、上位型麻痺(Erb麻痺)、全型麻痺、及び下位型麻痺(Klumpke麻痺)に分類されます。分類はおおむね1か月を経過した時点で行います。これらの典型的な症状は下記の通りですが、実際の症状は損傷の程度、自然回復の混在によって修飾され多彩です。

①上位型麻痺(「Erb麻痺」とも呼ばれます):C5、C6、時にこれらに加えてC7神経根に損傷を受けた場合に生じる麻痺です。肩の外転・外旋、肘の屈曲が主に侵されます。手をそらすことができていればC7神経根は損傷を免れていると考えられます。
②全型麻痺:上位型麻痺に加えてC8、T1神経根にまで損傷が及んだ場合に生じます。典型的には上肢全体が完全麻痺となりますが、T1神経根が損傷を免れている場合は指の屈曲のみ可能で他が完全麻痺となります。
③下位型麻痺(「Klumpke麻痺」とも呼ばれます):生下時より下位型を呈する麻痺は非常にまれで、大部分は全型麻痺で出生し上位神経根に回復が認められ下位神経根に強い麻痺が残存したものです。

(引用:大阪母子医療センター様HPより~分娩麻痺について~)

 

 

 

 

 

問64 アキレス腱周囲炎の所見で誤っているのはどれか。

1.背屈制限が存在する。
2.背屈するとアキレス腱部に礫音が生じる。
3.アキレス腱の付着部に圧痛と腫脹が存在する。
4.足部は回内変形している。

答え.3

解説

アキレス腱周囲炎とは?

アキレス腱周囲炎とは、アキレス腱を覆うパラテノンと呼ばれる組織に炎症が生じた状態を指す。スポーツなどで走ったり、ジャンプしたりすることにより、アキレス腱周囲が過度に引っ張られることなどが原因で発症する。高校生から社会人までの幅広い年代で発生がみられるが、比較的若い世代に多い。

1.〇 正しい。背屈制限が存在する。なぜなら、アキレス腱は下腿三頭筋に付着しているため。足関節背屈すると、アキレス腱(下腿三頭筋:足関節底屈筋)が伸張され痛みが発生しやすい。
下腿三頭筋とは、下腿の強大な筋の総称で、膨隆する2頭をもつ浅側の腓腹筋と、深側にある平たいヒラメ筋とからなる。
・腓腹筋:【起始】外側頭:大腿骨外側上顆、内側頭:大腿骨内側上顆、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節屈曲、足関節底屈、踵の挙上、【神経】脛骨神経である。
・ヒラメ筋:【起始】腓骨頭と腓骨後面、脛骨のヒラメ筋線と内側縁、腓骨と脛骨間のヒラメ筋腱弓、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節底屈、踵の挙上、【神経】脛骨神経である。下腿三頭筋の筋力低下による歩行障害として、歩行の推進力の低下があげられる。

2.〇 正しい。背屈するとアキレス腱部に礫音が生じる。なぜなら、炎症や変性によって腱内の繊維が乱れ、滑走時に微細な摩擦が生じるため。

3.× アキレス腱の「付着部」ではなくアキレス腱そのものに圧痛と腫脹が存在する。なぜなら、アキレス腱周囲炎とは、アキレス腱を覆うパラテノンと呼ばれる組織に炎症が生じた状態を指すため。ちなみに、アキレス腱の付着部は、踵骨部に該当する。

4.〇 正しい。足部は回内変形している。なぜなら、アキレス腱周囲炎の原因として、扁平足や足関節回内変形などのアライメント異常があげられるため。

 

 

 

 

 

問65 63歳の女性。特に誘因なく3週前から腰痛が出現したため受診した。単純エックス線写真で第1腰椎の圧迫骨折を認め、骨密度を計測したところ、T値(若年成人の平均値:YAM値)に対する比率は74%であった。
誤っているのはどれか。

1.定期的な骨密度の測定を行う。
2.骨密度の数値から骨粗鬆症と診断する。
3.適度な運動を指導する。
4.選択的エストロゲン受容体調整薬の適応となる。

答え.2

解説

本症例のポイント

・63歳の女性(特に誘因なし)。
・3週前:腰痛が出現した。
・単純エックス線写真:第1腰椎の圧迫骨折。
・骨密度:T値(若年成人の平均値:YAM値)比率74%。
→本症例は、骨粗鬆症へ進展する恐れがある状態である。「対YAM(%YAM)」は、若年成人(20~44歳の健康な人)平均値を100としたときの現在の自分の骨量の割合を表した数値である。 80%未満は要注意、70%以下まで減ると骨粗鬆症と判定される。

1.〇 正しい。定期的な骨密度の測定を行う。なぜなら、本症例は、骨粗鬆症へ進展する恐れがある状態であるため。定期的な骨密度の測定により、治療の効果や進行状況をモニタリングできる。

2.× 骨密度の数値から骨粗鬆症と診断することはできない。なぜなら、WHOの骨粗鬆症診断基準では、T値(YAM値に対する比率)70%以下を骨粗鬆症とするため。

3.〇 正しい。適度な運動を指導する。なぜなら、適度な運動は骨密度を維持し、筋力を強化することで骨折リスクを低減できるため。

4.〇 正しい。選択的エストロゲン受容体調整薬の適応となる。選択的エストロゲン受容体調整薬とは、骨のエストロゲン受容体に選択的に作用し、閉経によるエストロゲン分泌の低下によってバランスが崩れた骨代謝を調整することで、骨量の低下を改善する効果をあらわす薬剤である。ちなみに、エストロゲンとは、主に卵巣から分泌される女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。エストロゲンが減少することで、骨吸収を抑制し骨粗鬆症につながる。

骨粗鬆症について

①原発性骨粗鬆症とは、閉経後や高齢者にみられる骨粗鬆症のことである。

②続発性骨粗鬆症とは、結果として二次的な骨量喪失が起こる骨粗鬆症のことをいう。例えば、骨代謝に影響を及ぼすホルモンやサイトカイン異常、不動など骨への力学的負荷の減少、骨構成細胞や物質の異常、全身的および血管障害などの局所的栄養障害などによって起こる。これら骨粗鬆症は原疾患に基づいて発症する続発性骨粗鬆症であるため、原疾患の適切な治療により正常化することが期待しうるが、骨代謝の正常化を期待するには不十分であることが多く、また先天性異常では改善は望めず、多くの症例で骨量喪失に対する治療を要することが多い。

 

 

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