第28回(R2年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前36~40】

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問題36 心肺部圧受容器が関わる臓器感覚はどれか。

1.渇き
2.空腹
3.尿意
4.便意

解答

解説
1.〇 正しい。渇きは、心肺部圧受容器が関わる臓器感覚である。
心肺圧受容器とは、心房、心室および肺血管に位置する伸展受容器である。心肺圧受容器反射は、中心血液量の増減をモニターして血 圧を一定範囲内に保つように心臓血管系を調節する機構である。つまり、水分調整(渇き)に関わる。

2.× 空腹は、視床下部が関わる。
視床下部とは、間脳に位置し、内分泌や自律機能の調節を行う総合中枢である。 ヒトの場合は脳重量のわずか0.3%、4g程度の小さな組織であるが、多くの神経核から構成されており、体温調節やストレス応答、摂食行動や睡眠覚醒など多様な生理機能を協調して管理している。つまり、視床下部は自律神経の最高中枢である。

3.× 尿意は、仙髄に位置する排尿中枢が関わる。

4.× 便意は、仙髄に位置する排便中枢が関わる。

 

 

 

 

 

問題37 免疫系の細胞について正しいのはどれか。

1.ヘルパーT細胞は異物を貪食する。
2.キラーT細胞はB細胞の分裂を助ける。
3.B細胞は形質細胞に分化する。
4.NK細胞はヒスタミンを分泌する。

解答

解説
1.× 異物を貪食するのは、「ヘルパーT細胞」ではなくマクロファージである。
T細胞とは、血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種である。胸腺(thymus)でつくられるため、頭文字を取ってT細胞と名付けられた。T細胞は膠原特異的な免疫応答である獲得免疫に関与する。免疫応答を促進するヘルパーT細胞、逆に免疫反応を抑制するサプレッサーT細胞、病原体に感染した細胞や癌細胞を直接殺すキラーT細胞などに分類される。

2.× B細胞の分裂を助けるのは、「キラーT細胞」ではなくヘルパーT細胞である。
B細胞とは、T細胞と同じリンパ球の一種で、免疫機構を担う重要な細胞である。 B細胞は、リンパ球の約20~40%を占め、骨髄で産生され骨髄内で分化、成熟する。

3.〇 正しい。B細胞は、形質細胞に分化する
形質細胞とは、B細胞が成熟したもので、抗体を作って自然免疫の働きを助ける。つまり、体に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する作用を持つ蛋白質(抗体)を産生する。

4.× ヒスタミンを分泌するのは、「NK細胞」ではなくマクロファージである。
NK細胞とは、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞の傷害に働く。抗原を認識するための受容体をもたず、標的細胞を直接攻撃する。ちなみに、マクロファージとは、単球から分化し、貧食能を有する。炎症刺激を受けたときにヒスタミンを産生する細胞の一種である。異物を貪食して抗原提示細胞になり、抗原情報がリンパ球に伝えられる。直径15~20μmの比較的大きな細胞で、全身の組織に広く分布しており、自然免疫(生まれつき持っている防御機構)において重要な役割を担っている。

MEMO

ヒスタミンとは、アレルギー様症状を呈する化学物質である。組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球がアレルギー反応の際に分泌される。血圧降下血管透過性亢進、血管拡張作用がある。

 

 

 

 

 

問題38 感染症はどれか。

1.白内障
2.心筋梗塞
3.ラムゼイハント症候群
4.痛風

解答

解説
1.× 白内障
白内障とは、水晶体が年齢とともに白く濁って視力が低下する病気である。主な原因は加齢である。他にも、糖尿病や妊娠初期の風疹ウイルス感染などにより生じる。

2.× 心筋梗塞
急性心筋梗塞とは、冠状動脈内に血栓が形成され、動脈を閉塞し心筋が壊死することである。リスクファクターとして、①高血圧、②喫煙、③糖尿病、④脂質代謝異常などである。合併症には、不整脈や心不全、脳梗塞がある。そのほかに重篤なものとして心破裂や心室中隔穿孔などがある。

3.〇 正しい。ラムゼイハント症候群は、感染症である。
Ramsay Hunt症候群(ラムゼイ・ハント症候群:耳性帯状疱疹)は、水痘・帯状ヘルペスの顔面神経への感染が原因で発症する。主な症状として、末梢性顔面神経麻痺(障害側の眼輪筋と前頭筋の障害)、耳や口の中の水疱形成、耳鳴り、難聴、めまいなどを伴う。

4.× 痛風
痛風とは、体内で尿酸が過剰になると、関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気である。風が患部に吹きつけるだけで激しい痛みが走ることから痛風と名づけられたといわれている。男性に頻発する単関節炎で、下肢、特に第1中足跳関節に好発する。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生され、代謝異常があると尿酸の産生過剰・排泄障害が生じ高尿酸血症となる。高尿酸血症は痛風や腎臓などの臓器障害を引き起こすほか、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣を合併しやすい。

 

 

 

 

 

問題39 慢性肺うっ血の原因はどれか。

1.左心不全
2.肝硬変
3.消化管出血
4.広範な熱傷

解答

解説

肺うっ血とは?

肺うっ血とは、心不全などの循環不全により、肺に血流がうっ滞する状態を示す。

1.〇 正しい。左心不全は、慢性肺うっ血の原因である。
左心不全は、左心室のポンプ機能が低下し、血液が肺に滞留して肺うっ血を引き起こす状態である。

2.× 肝硬変
肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。

3.× 消化管出血
消化管出血とは、食道から直腸までに起こる出血を指す。症状としては、吐血、下血、黒色便、血便などがある。消化管出血の原因は、胃・十二指腸潰瘍、食道・胃静脈瘤、出血性胃炎、食道炎・食道潰瘍などであげられる。

4.× 広範な熱傷
広範な熱傷の原因には、熱、電気、放射能、化学薬品などである。

心不全とは?

心不全とは、組織が必要とする循環血液量を心臓が拍出できない病態である。
心拍出量の低下を起こす原因として、
・左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの
・右心不全:体循環系にうっ血が著明なもの。
右室拡張末期圧の上昇(体循環の静脈系のうっ血)により右心不全は引き起こされる。

 

 

 

 

 

問題40 創傷の治癒過程で最も遅い時期にみられるのはどれか。

1.水腫
2.好中球浸潤
3.毛細血管の増生
4.膠原線維の増生

解答

解説

創傷の治癒過程とは?

①血液凝固期(術後~数時間後):出血による凝固塊が欠損をふさいで止血する時期である。
②炎症期(術直後~3日目ころ):炎症性細胞(好中球、単球、マクロファージなど)が傷に遊走して、壊死組織や挫滅組織などを攻める時期である。
③増殖期(3日目~2週間後):線維芽細胞が周辺から遊走して、細胞外マトリックスを再構築し、血管新生が起こり、肉芽組織が形成される時期である。
④成熟期(2週間~数か月後)(再構築期:リモデリング期):線維芽細胞が減り、線維細胞へと成熟し変化するじきである。コラーゲンの再構築が起き、創部の抗張力が高くなることで創傷が治癒していく。

1.× 水腫
水腫とは、筋肉の間に余分な体液が溜まっている状態を指す。一般的にはむくみとも呼ばれ、浮腫と同義語である。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。

2.× 好中球浸潤
炎症細胞浸潤とは、炎症細胞が病巣へ向かって集中的に移動(遊走)することである。 炎症がおきた初期には、炎症部位に好中球(白血球)が遊走して集まり、異物を排除しようと働く。

3.× 毛細血管の増生
炎症が起こると、毛細血管が拡張し、局所の血流が増加する。拡張した血管から血液成分が滲出し、組織に浮腫が起こり、線維芽細胞や血管の増生が起こり、肉芽組織が形成される。

4.〇 正しい。膠原線維の増生は、創傷の治癒過程で最も遅い時期にみられる。
膠原線維の増生は、瘢痕化(線維化)ともいわれ、傷が治った後の状態である瘢痕(傷跡)の形成過程のことである。膠原線維とは、結合組織を構成する線維の一種で、コラーゲンからなり、腱・ 靭帯・骨などに多く含まれる。組織の粘弾性の改善する。

慢性炎症の特徴

慢性炎症の背景は、自己免疫、急性炎症からの移行、微生物の細胞内持続感染がある。
【特徴】
①大食細胞やリンパ球および形質細胞などの浸潤
②炎症細胞の浸潤による組織破壊
③新生血管の増生を含む修復と線維化・瘢痕形成
線維化とは、実際には線維芽細胞の増殖と過剰な細胞外基質の貯蓄のことである。
線維化は、多くの慢性炎症性疾患に共通する所見であり、臓器の機能障害の重要な原因である。

 

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