第26回(H30年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前36~40】

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問題36 筋について正しいのはどれか。

1.平滑筋は横紋構造をもつ。
2.心筋の収縮は常に強縮である。
3.心筋細胞の興奮は絶縁性に伝導する。
4.胃の平滑筋にはギャップ結合がある。

解答

解説
1.× 平滑筋は横紋構造を「持たない」。平滑筋とは、横紋筋と違いサルコメア(筋節)のない筋肉のことである。平滑筋は内臓や血管の壁に存在し、自律神経によって制御されている。ちなみに、横紋構造があるのは、骨格筋心筋である。

2.× 心筋の収縮は、常に「強縮」ではなく単収縮である。強縮は起こらない。1つの活動電位によって生ずる収縮を単収縮という。筋収縮の基本型は単収縮である。骨格筋では、単収縮が加重し融合すると収縮力の大きな強縮となる。なぜなら、骨格筋は活動電位の持続時間(不応期)が短いため。これは、円滑なポンプ作用を保つために重要である。

3.× 心筋細胞の興奮は、「絶縁性」ではなく電気的に伝導する。なぜなら、ギャップ結合がみられるため。ギャップ結合によって興奮が効率よく隣接する心筋細胞に伝わり、心臓全体が同期して収縮する。

4.〇 正しい。胃の平滑筋にはギャップ結合がある。ギャップ結合とは、細胞の介在板にみられる構造で、直径2nmの通路を隣接する細胞間で形成し、その通路をイオンや小分子が通過し、心筋の同期性収縮(繰り返される収縮のこと)に寄与していることである。これは心筋や平滑筋に見られ、この結合を介して興奮伝導が行われる。これが消化管の蠕動運動を助ける。

神経線維の興奮伝導

①絶縁性(隔絶)伝導:1本の神経線維の興奮は、隣接するほかの神経線維を興奮させない。
②不滅衰伝導:興奮は減衰せずに伝わる。
③両方向(両側)性伝導:神経線維の一部を刺激すると、興奮は両方向に伝導する。ただし、シナプスからの出力は原則一方向性である。
(※④等速伝導:1本の軸索上の興奮は一定の速度で伝導していく。ただし、有髄線維では跳躍伝導が起こる。)

 

 

 

 

 

問題37 γ運動ニューロンについて正しいのはどれか。

1.軸索は後根を通る。
2.筋紡錘の感度を調整する。
3.錘内筋線維の中央部分に終末する。
4.α運動ニューロンに比べて細胞体は大きい。

解答

解説

(図引用:「前根」wikiより)

1.× 軸索は、「後根」ではなく前根を通る。運動ニューロン(α・γとも)は、脊髄の前角から出て、前根を通過する。ちなみに、後根は感覚神経線維が通る経路である。

2.〇 正しい。筋紡錘の感度を調整する。γ運動ニューロンは、錘内筋線維の両端を支配しており、筋紡錘が正常に働くように調節する機能がある。

3.× 錘内筋線維の「中央部分」ではなく両端に終末する。

4.× α運動ニューロンに比べて細胞体は、「大きい」のではなく小さい。なぜなら、α運動ニューロンは骨格筋全体を支配するため(下図参照)。

 

 

 

 

 

問題38 潜伏期間が最も長いのはどれか。

1.風疹
2.エイズ
3.A型肝炎
4.インフルエンザ

解答

解説
1.× 風疹の潜伏期間は、14〜21日である。風疹とは、風疹ウイルスに感染することで引き起こされる感染症である。俗に「三日ばしか」と呼ばれる。風疹ウイルスに感染してからおよそ2~3週間の潜伏期間を経て、発疹や発熱などの症状が現れる。ただし、症状がない、もしくは気付かないほど軽いこともある。一般的な症状として、発熱、皮膚の発疹、リンパ節の腫れ、関節痛などである。多くの場合、特別な治療をしなくても自然に治るため、症状を和らげる治療が行われるが、妊娠中に風疹にかかると赤ちゃんに悪影響が出ることもあるため、予防接種をすることがすすめられる。

2.〇 正しい。エイズは、潜伏期間が最も長い。エイズの潜伏期間は、短くて6か月、位長い場合は15年以上の場合もある。

3.× A型肝炎の潜伏期間は、14〜28日である。A型肝炎とは、A型肝炎ウイルス(HAV)感染による疾患である。通常、感染した人の便で汚染されたものを摂取したときに感染する。人の便が流れている海で育った貝類の摂取で感染することもある。初期症状は倦怠感や発熱、頭痛、筋肉痛等で、一過性の急性肝炎が主症状であり、治癒後に強い免疫が残る。治療は、通常、安静を含めた対症療法が中心となる。

4.× インフルエンザの潜伏期間は、1〜3日である。インフルエンザとは、インフルエンザウイルスへの感染を原因に発症する。A型、B型、C型の3種類があり、このうち冬季に流行する「季節性インフルエンザ」はA型とB型によるものである。症状として、38度以上の発熱や寒気、関節痛、全身のだるさなどの全身症状と、喉の痛みや咳などの風邪のような症状が現れる。

ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症について

後天性免疫不全症候群〈AIDS〉は、ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉によって引き起こされ、伝播は主に性行為、血液接触、母子感染によるものである。ちなみに、ヒト免疫不全ウイルスは、人の免疫細胞に感染してこれを破壊し、最終的に後天性免疫不全症候群を発症させるウイルスである。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することで後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症を予防できるようになってきている。しかし、治療を受けずに自然経過した場合、免疫力の低下により様々な障害が発現する。後天性免疫不全症候群(AIDS)の状態にあると判断できる疾患(エイズ指標疾患)は、23種類ある。AIDS指標疾患としてもっとも頻度が高いのは、ニューモシスチス肺炎(39.3%)、ついでサイトメガロウイルス感染症(13.4%)、カンジダ症(13.1%)、活動性結核(7.1%)、カポジ肉腫(4.5%)、非結核性抗酸菌症(3.8%)の順であった。

 

 

 

 

 

問題39 放射線障害を最も受けやすいのはどれか。

1.神経
2.腎臓
3.性腺
4.軟骨

解答

解説
1.2.4.× 神経/腎臓/軟骨より、放射線障害を受けやすいものが他にある。放射線は、未分化で増殖力が活発な細胞ほど強く作用することが知られている(放射線感受性)。

3.〇 正しい。性腺は、放射線障害を最も受けやすい。性腺のほか、骨髄やリンパ節、がん細胞は、放射線に対して非常に敏感な組織である。ちなみに、放射線感受性とは、細胞や組織が放射線に対してどの程度に敏感であるかを示す物理的な指標である。放射線治療において、癌細胞が高い放射線感受性を持つほど、効果的に放射線によって殺すことができるため、放射線治療は高感受性の細胞に対して特に効果的である。

 

 

 

 

 

問題40 植物状態を引き起こす障害部位はどれか。

1.大脳
2.中脳
3.延髄
4.脊髄

解答

解説
1.〇 正しい。大脳は、植物状態を引き起こす障害部位である。植物状態とは、大脳(思考と行動を制御する脳の部位)が機能しなくなったものの、視床下部と脳幹(睡眠サイクル、体温、呼吸、血圧、心拍、意識などの生命維持に必要な機能を制御している脳の部位)はまだ機能し続けている状態のことをいう。

2.× 中脳とは、間脳と橋の間に位置する脳構造である。中脳水道より背側の中脳蓋と、腹側の中脳被蓋、大脳脚の3つの部分に大別される。視覚情報・聴覚情報の処理を行い、体性運動の反射中枢としても働く

3.× 延髄とは、呼吸や心拍などの生命維持に関わる重要な機能を司る部位である。

4.× 脊髄とは、脳から連続する中枢神経であり、運動や感覚の伝導路として寄与する。

(※画像引用:医療法人鉄蕉会様HP)

 

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