第26回(H30年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前71~75】

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問題71 甲状腺機能低下症でみられるのはどれか。

1.頻脈
2.眼球突出
3.粘液水腫
4.発汗過多

解答

解説
1~2.4.× 頻脈/眼球突出/発汗過多は、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)で見られる症状である。なぜなら、甲状腺ホルモンの過剰分泌により代謝が亢進するため。バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。ちなみに、眼球突出・甲状腺腫・頻脈をメルゼブルグの三徴候という。

3.〇 正しい。粘液水腫は、甲状腺機能低下症でみられる。甲状腺機能低下症とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。ちなみに、粘液水腫は、甲状腺機能低下症が悪化し、ホルモンが極端に減少している状態である。

 

 

 

 

 

問題72 関節リウマチについて正しいのはどれか。

1.男性に多い。
2.関節のこわばりは夕方に多い。
3.対称性の関節腫脹を認めることが多い。
4.遠位指節間関節の腫脹を認めることが多い。

解答

解説

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は7:3前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

1.× 「男性」ではなく女性に多い。男女比は1:2~3である。原因はいまだに不明だが、遺伝的な要因や女性ホルモンなどの遺伝的要因のほか、環境的な要因としてタバコがあげられる。

2.× 関節のこわばりは、「夕方」ではなくに多い。なぜなら、寝ている間に手足にリウマチの炎症物質や関節液がたまってしまうからと言われているため。

3.〇 正しい。対称性の関節腫脹を認めることが多い。たとえば、両手の同じ関節が腫れるといった、左右対称に関節炎が現れることが多い。

4.× 「遠位」ではなく近位指節間関節の腫脹を認めることが多い。関節リウマチの手指変形は、PIPやMP関節が一般的である。手指の変形性関節症は、大きく2種類あり、①DIP関節の変形(ヘバーデン結節)と、②PIP関節の変形(ブシャール結節)がある。これらの関節と親指の付け根がこわばり、ときに痛みを伴うことがある。一般的に手首・MP関節、手掌の関節は侵されない。治療としては、①関節可動域を改善する訓練を温水中で行う(運動中の痛みを軽減しできるだけ関節を柔軟にしておくため)、②安静にする、③間欠的に副子で固定して変形を予防する、④鎮痛薬や非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を用いて痛みや腫れを軽減するなどがあげられる。

関節リウマチの関節破壊と変形

①環軸椎亜脱臼、②肩関節可動域制限、③肘関節屈曲拘縮、④手関節尺側偏位、⑤手指変形(PIPやMP関節)、⑥股関節屈曲拘縮、⑦膝関節内外反変形・屈曲拘縮、⑨足・足趾変形などがある。

 

 

 

 

 

問題73 股関節の関節可動域の測定について正しいのはどれか。

1.外転は側臥位で行う。
2.内転は坐位で行う。
3.屈曲は立位で行う。
4.伸展は腹臥位で行う。

解答

解説
1~2.× 外転/内転は「側臥位/坐位」ではなく背臥位で行う。股関節外転/内転の【基本軸】両側の上前腸骨棘を結ぶ線への垂直線、【移動軸】大腿中央線(膝蓋骨中心を結ぶ線)、【測定部位及び注意点】①背臥位で骨盤を固定する。②下肢は外旋しないようにする内転の場合は、反対側の下肢を屈曲挙上してその下を通して内転させる。

3.× 屈曲は、「立位」ではなく背臥位で行う。股関節屈曲の【基本軸】体幹と平行な線、【移動軸】大腿骨(大転子と大腿骨外果の中心を結ぶ線)、【測定部位及び注意点】①骨盤と脊柱を十分に固定する、②屈曲は背臥位(膝屈曲位で行う)、③伸展は腹臥位(膝伸展位で行う)。

4.〇 正しい。伸展は腹臥位で行う。股関節屈曲の【基本軸】体幹と平行な線、【移動軸】大腿骨(大転子と大腿骨外果の中心を結ぶ線)、【測定部位及び注意点】①骨盤と脊柱を十分に固定する、②屈曲は背臥位(膝屈曲位で行う)、③伸展は腹臥位(膝伸展位で行う)。

 

 

 

 

 

問題74 ADL評価のFIMに含まれるのはどれか。

1.買い物
2.排尿管理
3.調理
4.ジョギング

解答

解説

FIMとは?

FIMとは、日常生活動作(ADL)を評価する尺度で、運動項目(13項目)と認知項目(5項目)の計18項目を7段階で採点する。【運動項目】セルフケア(食事、整容、清拭、更衣:上・下、トイレ動作)、移乗(ベッド・椅子・車椅子移乗、トイレ移乗、浴槽・シャワー移乗)、排泄コントロール(排尿管理、排便管理)、移動(歩行・車椅子、階段)、【認知項目】コミュニケーション(理解、表出)、社会的認知(社会的交流、問題解決、記憶)で評価する。

1.3~4.× 買い物/調理/ジョギングは、IADL(手段的日常生活動作)に分類される。IADL(手段的日常生活動作)とは、日常生活を送るために必要な動作の中でも基本的なADLよりも複雑で高度な動作をいう。項目として、①電話を使用する能力、②買い物、③食事の準備、④家事、⑤洗濯、⑥移送の形式、⑦自分の服薬管理、⑧財産取り扱い能力である。

2.〇 正しい。排尿管理は、ADL評価のFIMに含まれる。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題75、問題76の問いに答えよ。
「50歳の男性。主訴は下肢の浮腫。血液検査は総蛋白5.2g/dl、アルブミン2.5g/dl、総コレステロール280mg/dl。尿検査は尿糖3+、尿蛋白4+であった。」

問題75 下肢浮腫の触診部位で最も適切なのはどれか。

1.脛骨前面
2.内果
3.外果
4.アキレス腱

解答

解説

本症例のポイント

・50歳の男性(主訴:下肢の浮腫)。
・血液検査:総蛋白5.2g/dl、アルブミン2.5g/dl、総コレステロール280mg/dl。
・尿検査:尿糖3+、尿蛋白4+。
浮腫の評価の方法をおさえておこう。

(※図引用:「下肢の浮腫の評価部位とアセスメントスケールのイラスト」看護roo!看護師イラスト集より)

1.〇 正しい。脛骨前面は、下肢浮腫の触診部位である。圧痕の深さを評価する方法は、脛骨前面末梢側1/3付近や足背を母指で圧迫した後に圧痕の深さを評価する方法である。圧痕が残るかどうか、残った場合は指を離した後にも圧痕が残る「圧痕性浮腫」か、痕が残らずすぐ回復する「非圧痕性浮腫」かを評価する。

2~4.× 内果/外果/アキレス腱より優先されるものが他にある。浮腫の評価として用いられる部位は、①脛骨前面、②足背、③踵部(くるぶし)である。

MEMO

浮腫には2種類ある。指で数秒間強く押したあとに圧痕が残る①圧痕性浮腫と、圧痕が残らない②非圧痕性浮腫である。くるぶしや脛骨前面がわかりやすい。圧痕性浮腫は間質液膠質浸透圧の上昇により、水分が貯留するためで生じる。ネフローゼ症候群、肝硬変、心不全、熱傷でみられる。一方、非圧痕性浮腫は、間質の蛋白濃度(間質液の膠質浸透圧)が増加するリンパ浮腫やムコポリサッカライドが増加する甲状腺機能低下症でみられる。

 

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