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次の文で示す症例について、問題75、問題76の問いに答えよ。
「50歳の男性。主訴は下肢の浮腫。血液検査は総蛋白5.2g/dl、アルブミン2.5g/dl、総コレステロール280mg/dl。尿検査は尿糖3+、尿蛋白4+であった。」
問題76 本症例でみられる浮腫の主な原因はどれか。
1.静水圧の上昇
2.血漿膠質浸透圧の低下
3.血管透過性亢進
4.リンパ液のうっ滞
解答2
解説
・50歳の男性(主訴:下肢の浮腫)。
・血液検査:総蛋白5.2g/dl、アルブミン2.5g/dl、総コレステロール280mg/dl。
・尿検査:尿糖3+、尿蛋白4+。
→本症例は、ネフローゼ症候群が疑われる。ネフローゼ症候群とは、尿から大量の蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少、血液の浸透圧が低下し水分が血管内から血管外へ移動することで、全身の浮腫や腹水・胸水などを引き起こすものである。小児の治療として、ステロイド治療により改善することが多い。ネフローゼ症候群に対する食事に関しては、蛋白尿が陽性の間は減塩食にする。一般的に水分の制限は必要ないとされており、その理由は水分制限による脱水や血栓症の危険性が増加するためである。
1.× 静水圧の上昇は考えにくい。なぜなら、静水圧の上昇は、循環系の問題(心不全など)で見られる浮腫の原因であるため。
2.〇 正しい。血漿膠質浸透圧の低下が、本症例でみられる浮腫の主な原因である。なぜなら、ネフローゼ症候群では、尿中に大量の蛋白が漏出するため。したがって、血中の蛋白(特にアルブミン)が減少し、血漿膠質浸透圧が低下し、浮腫が生じる。ちなみに、血漿浸透圧の低下とは、血液内の栄養が少なくなったり、ナトリウム濃度が低下したりすることで、血管内に水分を保つための力(浸透圧)が低下することである。これにより、水分や塩分が血管の外に増え、身体がむくんだり、脳細胞内に水分が移動して脳浮腫を引き起こしたりする。
3.× 血管透過性亢進は、炎症などによる浮腫の原因である。
4.× リンパ液のうっ滞は、リンパ管の閉塞による浮腫の原因である。
浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起きることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。
【低アルブミン血症の原因】①栄養摂取の不足(低栄養状態)、②肝臓における蛋白質合成能の低下、③腎臓から尿への蛋白質の大量喪失(ネフローゼ症候群)など。
次の文で示す症例について、問題77、問題78の問いに答えよ。
「40歳の女性。数年前より手指のこわばりを自覚していた。最近、症状の増悪と手指の関節痛、腫脹が認められ来院した。冷たいものに触ると手指が白くなることがある。検査では抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70)が陽性であった。」
問題77 本症例の手指の所見はどれか。
1.ゴットロン徴候
2.ばち指
3.レイノー現象
4.スプーン状爪
解答3
解説
・40歳の女性(数年前より手指のこわばり)。
・最近:症状の増悪と手指の関節痛、腫脹。
・冷たいものに触ると手指が白くなることがある。
・検査:抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70)陽性
→本症例は、強皮症が疑われる。強皮症とは、全身性の結合組織病変で、手指より始まる皮膚の硬化病変に加え、肺線維症などの諸臓器の病変を伴う。病因は不明であり、中年女性に多い。症状は、仮面様顔貌、色素沈着、ソーセージ様手指、Raynaud現象(レイノー現象)、嚥下障害、間質性肺炎、関節炎、腎クリーゼなどがある。
1.× ゴットロン徴候は、多発性筋炎(皮膚筋炎)にみられる所見である。多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)
2.× ばち指全ての指先が丸く膨らんで、爪甲が指先を包むように大きくなってくる状態を指す。慢性に経過する心疾患・肺疾患あるいは肝疾患などで見られる。これらの基礎疾患がなくとも先天性に変形していることもある。
3.〇 正しい。レイノー現象が本症例の手指の所見である。レイノー現象とは、四肢(特に手指)が蒼白化、チアノーゼを起こす現象である。手指の皮膚が寒冷刺激や精神的ストレスにより蒼白になり、それから紫色を経て赤色になり、元の色調に戻る一連の現象をいう。
4.× スプーン状爪とは、鉄欠乏性貧血にみられやすく、鉄分の不足により爪が薄くなり、中央が凹んでスプーン状になることである。鉄欠乏性貧血とは、体内に流れている赤血球に多く含まれるヘモグロビンと鉄分が欠乏する事により、酸素の運搬能力が低下し全身に十分な酸素が供給されず倦怠感や動悸、息切れなどの症状がみられる貧血の種類の中でも最も多く特に女性に多い疾患である。
次の文で示す症例について、問題77、問題78の問いに答えよ。
「40歳の女性。数年前より手指のこわばりを自覚していた。最近、症状の増悪と手指の関節痛、腫脹が認められ来院した。冷たいものに触ると手指が白くなることがある。検査では抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70)が陽性であった。」
問題78 本疾患の合併症として最も多いのはどれか。
1.ブドウ膜炎
2.ネフローゼ症候群
3.逆流性食道炎
4.シェーグレン症候群
解答3
解説
・40歳の女性(数年前より手指のこわばり)。
・最近:症状の増悪と手指の関節痛、腫脹。
・冷たいものに触ると手指が白くなることがある。
・検査:抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70)陽性
→本症例は、強皮症が疑われる。強皮症とは、全身性の結合組織病変で、手指より始まる皮膚の硬化病変に加え、肺線維症などの諸臓器の病変を伴う。病因は不明であり、中年女性に多い。症状は、仮面様顔貌、色素沈着、ソーセージ様手指、Raynaud現象(レイノー現象)、嚥下障害、間質性肺炎、関節炎、腎クリーゼなどがある。
1.× ブドウ膜炎とは、ぶどう膜に炎症をきたしている状態を指す。ブドウ膜炎は、ベーチェット(Behcet)病で見られる炎症である。Behçet病(ベーチェット病)は、自己免疫疾患である。四徴として、①口腔粘膜のアフタ性潰瘍、②ぶどう膜炎、③皮膚症状(結節性紅斑や皮下硬結)、④外陰部潰瘍である。皮膚症状として、下腿に後発する。発赤や皮下結節を伴う結節性紅斑、圧痛を伴う皮下の遊走性血栓性静脈炎、顔面・頚部・背部などにみられる毛嚢炎様皮疹または痤瘡様皮疹などが出現する。
2.× ネフローゼ症候群とは、尿から大量の蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少、血液の浸透圧が低下し水分が血管内から血管外へ移動することで、全身の浮腫や腹水・胸水などを引き起こすものである。小児の治療として、ステロイド治療により改善することが多い。ネフローゼ症候群に対する食事に関しては、蛋白尿が陽性の間は減塩食にする。一般的に水分の制限は必要ないとされており、その理由は水分制限による脱水や血栓症の危険性が増加するためである。
3.〇 正しい。逆流性食道炎が本疾患の合併症(強皮症)として最も多い。なぜなら、強皮症では、食道下部が硬くなり、食道の運動機能が低下し、食道下部括約筋の弛緩が起こるため。したがって、胃酸が食道に逆流しやすくなる。
4.× シェーグレン症候群(Sjögren症候群)は、涙腺・唾液腺などの外分泌腺炎を特徴とする自己免疫疾患である。男女比(1:9)で女性に多い(特に、40歳代の中年女性)。唾液腺・涙腺の慢性炎症が生じる膠原病で、乾性角結膜炎(ドライアイ)、口腔乾燥(ドライマウス)を主症状とする。皮膚症状は環状紅斑など多彩であるが、全身の紅斑・水庖は生じない。これらの乾燥症状に対し、人工涙液点眼や水分摂取といった対症療法を行う。
次の文で示す症例について、問題79、問題80の問いに答えよ。
「62歳の男性。右側の腰から下肢にかけての痛み、しびれがある。歩くと痛みは強くなり歩けなくなるが、休むと再び歩けるようになる。足関節・上腕血圧比は1.0であった。」
問題79 本症例の徒手検査所見で陽性を示すのはどれか。
1.SLRテスト
2.ケンプ徴候
3.大腿神経伸展テスト
4.K・ボンネットテスト
解答2
解説
・62歳の男性。
・右側の腰から下肢にかけての痛み、しびれがある。
・歩くと痛みは強くなり歩けなくなるが、休むと再び歩けるようになる(間欠性跛行)。
・足関節・上腕血圧比は1.0。
→本症例は、腰部脊柱管狭窄症が疑われる。腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰部で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状(しびれや疼痛、脱力など)が出現する。歩行時には腰痛があまり強くならない事が多く、歩行と休息を繰り返す間欠性破行が特徴である。
1.× SLRテストより陽性と考えられるものが他にある。SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)は、脊髄後根で圧迫を受ける疾患(坐骨神経痛、椎間板ヘルニアなど)の有無、ハムストリングス損傷や短縮をみる。背臥位で、下肢を挙上し痛みが生じたら陽性である。
2.〇 正しい。ケンプ徴候は、本症例の徒手検査所見で陽性を示す。Kempテスト(ケンプテスト)の陽性は、脊椎管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアを疑う。検者は患者の両肩に手を置き、患者の体幹を回旋しながら左右の斜め後方に伸展させる。
3.× 大腿神経伸展テストより陽性と考えられるものが他にある。FNSテスト(大腿神経伸展テスト:Femoral Nerve Stretching Test)は、L3・L4の神経根障害(腰椎椎間板ヘルニア)で陽性となる。腹臥位になってもらい、膝を曲げて太ももを背中側に挙げる。ふとももの前に痛みが誘発された場合、陽性となる。第2/3腰椎間、第3/4腰椎間の椎間板ヘルニアに特徴的な検査である。本症例の場合、L5‒S1間(支配神経根S1)の障害が考えられるため、FNSテストが陽性となる可能性は低い。
4.× K・ボンネットテストより陽性と考えられるものが他にある。Kボンネットテストとは、状筋症候群の診断に使用される誘発テストである。やり方は、背臥位の被検者は、検査側の膝関節屈曲位にて、対側の脚の上に乗せる(梨状筋に伸展ストレスを加える)。殿部から太ももにかけて、放散痛が出た場合は陽性である。
椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。
L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。
次の文で示す症例について、問題79、問題80の問いに答えよ。
「62歳の男性。右側の腰から下肢にかけての痛み、しびれがある。歩くと痛みは強くなり歩けなくなるが、休むと再び歩けるようになる。足関節・上腕血圧比は1.0であった。」
問題80 歩行中に右下肢痛が起こったときの対応として、体幹の姿位で最も適切なのはどれか。
1.前屈
2.後屈
3.右側屈
4.左側屈
解答1
解説
・62歳の男性。
・右側の腰から下肢にかけての痛み、しびれがある。
・歩くと痛みは強くなり歩けなくなるが、休むと再び歩けるようになる(間欠性跛行)。
・足関節・上腕血圧比は1.0。
→本症例は、腰部脊柱管狭窄症が疑われる。腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰部で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状(しびれや疼痛、脱力など)が出現する。歩行時には腰痛があまり強くならない事が多く、歩行と休息を繰り返す間欠性破行が特徴である。
(※図引用:「イラスト素材:脊柱(側面)」illustAC様より)
1.〇 正しい。前屈は、歩行中に右下肢痛が起こったときの対応である。なぜなら、前屈することで、脊柱管の圧迫が軽減するため。一方、後屈すると脊柱管が狭くなり、神経への圧迫が強まるため、痛みが悪化する。
2.× 後屈は、症状悪化がみられる。なぜなら、脊柱管が狭くなり、神経への圧迫が強まるため。したがって、腰部脊柱管狭窄症では避けるべき姿勢である。
3~4.× 右側屈/左側屈は、神経の圧迫の軽減は期待できない。