第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午後61~65】

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問題61 骨端症と発症部位の組合せで正しいのはどれか。

1.セーバー(Server)病-大腿骨骨頭
2.ペルテス(Perthes)病-脛骨粗面
3.ブラント(Blount)病-橈骨近位骨端
4.フライバーグ(Freiberg)病-第2中足骨骨頭

解答

解説
1.× セーバー(Server)病は、「大腿骨骨頭」ではなく踵骨骨端部に生じる。

2.× ペルテス(Perthes)病は、「脛骨粗面」ではなく大腿骨骨頭に生じる。Perthes病は、小児期における血行障害による大腿骨頭、頚部の阻血性壊死が起こる原因不明の疾患である。骨頭・頚部の変形が生じる。初期症状は、跛行と股関節周囲の疼痛や大腿部にみられる関連痛で、股関節の関節可動域制限も生じる。治療は大腿骨頭壊死の修復が主な目標であり、治療後は歩容の異常がなく、通常の日常生活を送れるようになることが多い。男女比は4:1である。好発年齢は、「6~7歳」である。発生率は1万人に1.5人と言われ、そのうち約10%が両側に発症するが、たいていは片方がなってから2年以内の違う時期に反対側が発症する。

3.× ブラント(Blount)病は、「橈骨近位骨端」ではなく脛骨近位部に生じる。ブラント病とは、脛骨が彎曲する病気である。放置すると40%程が手術を必要となる。

4.〇 正しい。フライバーグ(Freiberg)病は、第2中足骨骨頭に生じる。フライバーグ病とは、中足骨頭に阻血性骨壊死が起きる疾患である。骨幹端および成長板の微小外傷によって生じる。阻血性骨壊死により中足骨頭が扁平化する。第2中足骨頭が侵されることが最も多い。痛みは荷重負荷で最も顕著となる。診断はX線により確定する。治療法としては、コルチコステロイド注射、固定、矯正器具などがある。

 

 

 

 

 

問題62 深部静脈血栓症で正しいのはどれか。

1.静脈瘤が続発する。
2.症状に感覚過敏がある。
3.治療に硬化療法がある。
4.下肢手術が原因となる。

解答

解説

深部静脈血栓症とは?

深部静脈血栓症とは、深部静脈に血の塊(血栓)ができることである。血栓が足の静脈から心臓や肺に向かって流され、肺の血管に詰まった場合、肺塞栓症を引き起こす。

1.× 「静脈瘤」ではなく血栓が続発する。静脈瘤と血栓は異なり、静脈瘤は血液のうっ滞が続く病気で、血栓(血の塊)ができやすい状態である。ちなみに、下肢静脈瘤とは、体のすみずみに行きわたった血液が、心臓に戻る血管を静脈といい、足の静脈が太くなって瘤(こぶ)状に浮き出て見えるようになった状態のことをさす。

2.× 症状に感覚「過敏」ではなく低下(鈍麻)がある。深部静脈血栓症の初期症状には、下肢のむくみや痛み、皮膚色の変化(赤黒くなる、暗赤色、青白くなるなど)などが挙げる。

3.× 治療には、「硬化療法」ではなく抗凝固療法や血栓溶解療法などがある。重症の場合は、カテーテルによる手術となる。ちなみに、硬化療法とは、変形した静脈(下肢静脈瘤や食道静脈瘤など)に硬化剤という薬を注入して、血管の内側をくっつけて静脈瘤を潰す治療法である。

4.〇 正しい。下肢手術が原因となる。肺塞栓症とは、肺動脈に血栓が詰まる病気のこと。血栓の9割以上は脚の静脈内にでき、この血栓を「深部静脈血栓症」といい、それが血液の流れに乗って右心房、右心室を経由して肺動脈まで運ばれてきて、肺塞栓症の原因となる。したがって、肺塞栓症と深部静脈血栓症は、極めて関係が深い病気で、二つを合わせて「静脈血栓塞栓症」と呼ばれる。
【肺塞栓症の要因】①高齢(特に60歳以上)、②血液凝固障害、③がん、④薬剤または栄養を投与するためのカテーテルが太い静脈に挿入されている(静脈内カテーテル留置)、⑤心不全、⑥体を動かせない状態、⑦骨盤、股関節、または脚のけが、⑧ネフローゼ症候群と呼ばれる腎疾患、⑨過去3カ月以内の大きな手術、⑩血液の粘り気を高める骨髄の病気(過粘稠度症候群)、⑪肥満、⑫妊娠中または出産後の一定期間、⑬血栓の既往歴、⑭鎌状赤血球症、⑮喫煙、⑯脳卒中、⑰エストロゲン製剤の使用(例えば、更年期症状の治療として使用したり、避妊のために使用したりする場合で、35歳以上の女性や喫煙習慣のある女性では特にリスクが高くなる)、⑱エストロゲン受容体モジュレータの使用(ラロキシフェンやタモキシフェンなど)、⑲テストステロン補充療法の使用などである。(※参考:「肺塞栓症」MSDマニュアル家庭版様HPより)

 

 

 

 

 

問題63 胸郭出口症候群の誘発テストでないのはどれか。

1.ジャクソン
2.モーリー
3.ライト
4.エデン

解答

解説

胸郭出口症候群とは?

胸郭出口症候群は、胸郭出口付近における神経と動静脈の圧迫症状を総称したものである。症状として、上肢のしびれ、脱力感、冷感などが出現する。胸郭出口は、鎖骨、第1肋骨、前・中斜角筋で構成される。原因として、①前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫される斜角筋症候群、②鎖骨と第一肋骨の間で圧迫される肋鎖症候群、③小胸筋を通過するときに圧迫される小胸筋症候群、④頭肋で圧迫される頸肋症候群などがある。

1.× ジャクソンは、胸郭出口症候群の誘発テストでない。Jacksonテスト(ジャクソンテスト)は、頚部神経根障害(頚椎椎間板ヘルニア)を検査する。方法として、被験者は頸部伸展し、検査者が上から下に押し下げる。このとき肩や上腕、前腕、手などに痛みやしびれが誘発されるかどうかで神経根に障害が生じているか否かを診断する。

2.〇 正しい。モーリーは、胸郭出口症候群の誘発テストである。Morley test(モーレイテスト、モーリーテスト)は、胸郭出口症候群の誘発テストである。方法は、検者が患者の鎖骨上縁の斜角筋三角部を指先で1分間圧迫する。患側頚部から肩・腕および手指にかけての痛み・しびれ・だるさなどが出現すれば陽性である。

3.〇 正しい。ライトは、胸郭出口症候群の誘発テストである。Wright テスト(ライトテスト)陽性は、胸郭出口症候群において陽性となる。座位で両側上肢を挙上(肩関節を外転90°、外旋90°、肘関節90°屈曲)させると、橈骨動脈の脈拍が減弱する。

4.〇 正しい。エデンは、胸郭出口症候群の誘発テストである。Edenテスト(エデンテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、患者は座位になり胸を張った状態で両方の肩関節を伸展する。検査者は橈骨動脈の拍動をモニターして約1分程度保持する。橈骨動脈の拍動が減弱または消失した場合、胸郭出口症候群と判断する。

 

 

 

 

 

問題64 環軸関節回旋位固定で正しいのはどれか。

1.成人に多く発症する。
2.超音波検査が有用である。
3.Cock robin positionをとる。
4.胸鎖乳突筋内に腫瘤を触知する。

解答

解説

環軸関節回旋位固定とは?

環軸関節回旋位固定とは、軸関節が回旋亜脱臼し、回旋位で固定される疾患である。幼児から学童期に、比較的唐突に首が痛くなり、まっすぐ前を向けなくなる症状(頚部痛や可動域制限、斜頸)がみられる。特に原因なく起こる場合もあるが、捻ったり首に衝撃を受けた後に起こる場合もある。軽微な外傷や、上気道感染、咽頭炎、喉頭炎などの喉周辺の炎症を起こした後や、中耳炎などが契機になり発症するといわれている。

1.× 「成人」ではなく幼児から学童期に多く発症する。

2.× 「超音波検査」ではなくX線やCT、MRIが有用である。環椎軸椎の状態を確認するため、レントゲンでは口を開けた状態(開口位撮影)で頚椎のレントゲンを撮影する。

3.〇 正しい。Cock robin positionをとる。cock robin positionとは、コマドリ(cock robin)が首を傾けている姿で、顔が横を向いたまま動かせなくなった状態である。

4.× 胸鎖乳突筋内に腫瘤を触知できない。腫瘤とは、医学的には、原因が炎症性か腫瘍性かはっきりしない、限局性の腫脹に用いる用語である。問診や診療に加えて、X線(レントゲン)写真で骨が隆起していたり、ぬけて見えたりするときに疑う。

超音波検査とは?

超音波検査とは、「高い周波数の音」を用いる検査で、肝臓や胆のう、膵臓、腎臓、膀胱、卵巣、子宮、前立腺などの腹部にある臓器や、甲状腺や乳腺などさまざまな臓器にできたがんで検査する。主な禁忌としては、血管の疾患(血栓性静脈炎など)、急性敗血症(感染の拡大や塞栓剥れの為)、放射線療法(少なくとも6ヶ月は禁忌)、腫瘍(成長促しや転移が生じる為)、心疾患(心臓を刺激する為、星状神経節や迷走神経部位は避ける)、妊婦、成長期の子供の骨端線への照射などである。

 

 

 

 

 

問題65 肩関節疾患と合併症の組合せで正しいのはどれか。

1.肩関節周囲炎-橈骨神経麻痺
2.肩鎖関節脱臼-血栓症
3.肩関節脱臼-腱板断裂
4.野球肩-異所性骨化

解答

解説
1.× 肩関節周囲炎の際は、橈骨神経麻痺は起こりにくい。橈骨神経麻痺とは、母指背側の感覚障害と上腕三頭筋・腕橈骨筋・長、短橈側手根伸筋、総指伸筋などの伸筋群の麻痺(下垂手)を認める。感覚領域は、親指から中指の背側、手背の橈側(親指側)、前腕の背側、上腕の背側と外側である。

2.× 肩鎖関節脱臼の際は、血栓症は起こりにくい。肩鎖関節脱臼とは、肩鎖関節がぶつけるなどのけがで靱帯を損傷し、病状が重くなると骨がずれてしまっている状態をさす。肩鎖関節脱臼全体の2/3は経過を見るのみで治る軽症であるが、全体の1/3では手術が必要になる。主な合併症は肩の不安定性や慢性的な痛みなどである。ちなみに、血栓とは、血管内において形成される凝血塊。血栓によって生じる病態を総称して血栓症という。

3.〇 正しい。肩関節脱臼は、腱板断裂が起こりやすい。なぜなら、肩関節脱臼の際に、一緒に腱板を傷つけるため。ちなみに、腱板断裂とは、肩のインナーマッスルである棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の腱が損傷・断裂していることをいう。肩峰や上腕骨頭とのインピンジメント(衝突)で損傷されやすい棘上筋腱の損傷がほとんどである。画像所見やインピンジメントの誘発テストによって診断される。

4.× 野球肩の際は、異所性骨化は起こりにくい。野球肩とは、反復した投球動作によって起こる。使いすぎ障害として徐々に発症する場合が多い。滑液包炎、棘上筋腱炎、上腕二頭筋腱炎、肩甲上神経麻痺による棘下筋萎縮、インピンジメント症候群、上腕骨骨端線障害(リトルリーグ肩)など多くが含まれる。ちなみに、異所性骨化とは、本来骨組織が存在しない部位、すなわち筋・筋膜・靱帯・関節包などに異常に骨形成が起こる現象である。骨梁構造を認める点が石灰化との違いである。 好発部位は骨盤・股関節(最も多い)・膝関節(2位)・肩関節(4位)・肘関節(3位)などである。脊髄損傷受傷後1~6か月くらいに発症することが多い。

肩関節周囲炎とは?

肩関節周囲炎(五十肩)は、慢性炎症に分類される。肩関節周囲炎(五十肩)は、肩関節とその周辺組織(肩峰下滑液包や腱板など)の退行性変性が原因となり肩関節の痛みと運動の制限を伴うものである。加齢による退行変性を基盤に発症し、疼痛(運動時痛、夜間時痛)と運動障害を主徴とする。肩関節周囲炎は痙縮期、拘縮期、回復期と分けられ、筋萎縮は拘縮期に肩甲帯筋の廃用性萎縮としてみられる。リハビリとして、Codman体操(コッドマン体操)を実施する。肩関節周囲炎の炎症期に使用する運動であり、肩関節回旋筋腱板の強化や肩関節可動域拡大を目的に使用する。患側の手に1~1.5㎏の重錘を持ち、振り子運動を行う。

①痙縮期(約2~9か月):急性期で疼痛が主体となる。明らかな誘因はなく、肩の違和感や痛みで出現。運動時痛や安静時・夜間時痛が出現し、急速に関節が硬くなる。局所の安静、三角巾固定痛みの出る動作は避ける。

②拘縮期(約4~12か月):亜急性期で拘縮が主体となる。徐々に安静時痛・夜間痛は軽減しますが、肩関節は拘縮し、可動域制限が残りやすくなる。過度に動かすと強いつっぱり感が出現する。徐々に運動範囲を広げる(お風呂やホットパックでの保温、愛護的に関節可動域の拡大)

③回復期(約6~9か月):慢性期で、症状は徐々に改善する。可動域制限も徐々に回復し、運動時痛も消失する。積極的な運動(ストレッチング)を実施する。

 

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