第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午後76~80】

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問題76 チャンス(Chance)骨折の発生機転はどれか。2つ選べ。

1.椎体全体への圧迫力
2.椎弓への強い牽引力
3.椎体前方支柱部への圧迫力
4.椎体中間支柱部への捻転力

解答

解説

(※図参照:「体幹骨の後遺障害 ⑫ チャンス骨折」秋葉行政書士事業所様HPより)

Chance骨折とは?

チャンス骨折は、脊椎の過剰な屈曲により生じる脊椎骨折である。通常、第1腰椎~第4腰椎におこりやすい。原因は、2点シートベルト装着状態での衝突事故などで起こる。症状には腹部の痣(シートベルトの痕)があげられる。したがって、疼痛による起立・歩行・前屈運動制限、棘突起の限局性圧痛などが起こる。約半数のチャンス骨折は、脾破裂、小腸損傷、腎臓損傷、腸間膜の破裂などの腹部の外傷と関連している。※備考:骨折線は棘突起、椎弓根、椎弓、椎体を通る。

1.× 椎体全体への圧迫力は、圧迫骨折の発生機転である。圧迫骨折とは「いつのまにか骨折」ともいい、比較的弱い反復的な力で、背骨の椎体と言う部分が潰されるように骨折した状態である。尻もちなどの外力による受傷が多く見られる。女性の高齢者に多く見られる代表的な骨折である。

2~3.〇 正しい。椎弓への強い牽引力/椎体前方支柱部への圧迫力は、チャンス(Chance)骨折の発生機転である。原因は、2点シートベルト装着状態での衝突事故などで起こる。

4.× 椎体「中間」ではなく前方支柱部への捻転力は、チャンス(Chance)骨折の発生機転である。

 

 

 

 

 

問題77 上腕骨解剖頸骨折で正しいのはどれか。

1.転倒時に手を衝き受傷する。
2.関節の腫脹は軽微である。
3.変形は触知しづらい。
4.ハンギングキャストを用いる。

解答

解説

上腕骨解剖頸骨折とは?

解剖頸とは、肩関節内、上腕骨骨頭の半球部分に位置するくびれ部分のことである。 上腕骨頭と大結筋、小結筋の間のある浅い溝にあるくびれである。上腕骨解剖頸骨折の原因として、転倒時に肩を強打して生じて起こることが多い。したがって、高齢者に多い。症状は、関節内骨折であるため、著明な関節内血腫・上腕の運動機能障害・自発痛・限局性圧痛、軋轢音などがみられる。噛合骨折の場合は動かせる。基本的に、転位・変形は少ない。噛合骨折の場合はわずかに転位し短縮する。固定する際は、肩関節外転70~80°、水平屈曲30~40°で固定する。予後は、噛合骨折の場合に良好である。ただし、高齢者では癒合困難なことが多く、長期固定による関節拘縮をきたし、肩関節の機能障害を残す。阻血性骨頭壊死、外傷性関節炎などを生じることがある。

1.× 転倒時に、「手」ではなくを衝き受傷する。転倒時に、手をついた場合、橈骨遠位端骨折になりやすい。

2.× 関節の腫脹は、「軽微」ではなく著明である。なぜなら、関節内骨折であるため。症状は、著明な関節内血腫・上腕の運動機能障害・自発痛・限局性圧痛、軋轢音などがみられる。

3.〇 正しい。変形は触知しづらい。なぜなら、肩関節周囲の腫脹や痛みが強いため。また、骨折部位が深部に位置しているため、明確な変形が触知されにくい。

4.× 「ハンギングキャスト」ではなく三角巾と包帯、バストバンドで固定を用いる。なぜなら、上腕骨解剖頸骨折はずれが少ないため。ちなみに、ハンギングキャストは、ずれのある上腕骨近位端骨折に用いられる。脇の下から手部までギブスをまいてその重みで整復する。ちなみに、ずれが少ないもの(上腕骨解剖頸骨折)は、三角巾固定で行う。

 

 

 

 

 

問題78 上腕骨外顆骨折で正しいのはどれか。

1.思春期に多い。
2.腕橈関節は正常に保たれる。
3.外側側副靱帯の断裂を合併する。
4.回転転位は肘関節内反強制で生じる。

解答

解説

上腕骨外顆骨折とは?

上腕骨外顆骨折とは、①pull off型(肘伸展位で手掌を衝いて転倒し、肘に内転力が働き、前腕伸筋群の牽引作用により発生)と②push off型(肘伸展位または軽度屈曲位、前腕回内位で手を衝き転倒して発生)するタイプがある。症状は、疼痛や腫脹、異常可動性、運動障害がみられる。固定は、肘関節80~90°屈曲位、手関節軽度伸展、前腕回外位である。

1.× 「思春期」ではなく幼少期に多い。なぜなら、幼少期は成長板が未熟であるため。

2.× 腕橈関節は正常に保たれることは少ない。なぜなら、骨片の転位が生じ、特に肘関節に運動障害がみられるため。後遺症には、偽関節、外反肘、遅発性尺骨神経麻痺などがみられる。

3.× 外側側副靱帯の断裂を合併することは少ない。なぜなら、外側側副靱帯が断裂せず、外側側副靱帯に付着する骨片が転位することがみられるため。

4.〇 正しい。回転転位は肘関節内反強制で生じる。上腕骨外顆骨折の回転転位とは、骨折片が筋肉に引かれて回転している状態を指す。骨折部のずれが大きい場合は徒手整復が難しく、手術で転位した骨折片を元の位置に戻し、鋼線で固定する。したがって、回転転位が大きいもの、3mm以上の離開などは観血療法が適応となる。

 

 

 

 

 

問題79 モンテギア(Monteggia)骨折で正しいのはどれか。

1.屈曲型は前外方凸変形を呈する。
2.屈曲型は肘関節屈曲位で固定する。
3.伸展型は橈骨頭が後方に脱臼する。
4.伸展型は肘関節鋭角屈曲位で固定する。

解答

解説

Monteggia骨折とは?

モンテギア骨折とは、尺骨骨幹部骨折に橈骨頭前方脱臼が起きたものである。手をついて転倒・転落した際、前腕回内力が作用することで起こりやすい。

種類として、①伸展型と②屈曲型があげられる。①伸展型(前型)とは、尺骨が前方かつ外方凸の屈曲変形を呈し、橈骨頭は前外方へ脱臼する。ほとんどがこの形である。ちなみに、屈曲型(後型)とは、尺骨が後方凸の屈曲変形を呈し、橈骨頭は後方へ脱臼する。固定方法は、①伸展型の場合、肘関節鋭角屈曲位、前腕回外位で行う。②屈曲型の場合は、肘関節伸展位、前腕回外位である。上腕近位端~MP関節手前まで固定する。

1.× 屈曲型は、「前外方凸」ではなく後方凸変形を呈する。屈曲型(後型)とは、尺骨が後方凸の屈曲変形を呈し、橈骨頭は後方へ脱臼する。

2.× 屈曲型は、肘関節「屈曲位」ではなく伸展位で固定する。ちなみに、前腕回外位である。

3.× 伸展型は、橈骨頭が「後方」ではなく前外方に脱臼する。伸展型(前型)とは、尺骨が前方かつ外方凸の屈曲変形を呈し、橈骨頭は前外方へ脱臼する。ほとんどがこの形である。

4.〇 正しい。伸展型は肘関節鋭角屈曲位で固定する。固定方法は、伸展型の場合、肘関節鋭角屈曲位、前腕回外位で行う。

 

 

 

 

 

問題80 ベネット(Bennett)骨折で正しいのはどれか。

1.T字状の骨片骨折をいう。
2.固定保持は容易である。
3.母指は内転屈曲位となる。
4.近位骨片は長母指外転筋によって転位する。

解答

解説

Bennett骨折とは?

ベネット骨折とは、第一中手骨基部の関節内骨折で、第一中手骨の脱臼を伴いやすい。母指先端にボールが当たったり喧嘩やボクシングで母指の先端に力が加わった際に起こりやすい。骨棘は、骨折や関節の摩耗により関節周囲の骨が増殖する現象である。

1.× T字状の骨片骨折をいうのは、ローランド骨折である。ローランド骨折とは、中手骨基部のY字型またはT字型の関節内で生じる複合骨折のことである。2ヵ所の骨折によって中手骨が3つに分かれるという複雑なものである。基本的な3片の骨折の際は「観血的整復固定術(ORIF)」による整復が施されることが多い。

2.× 固定保持は、容易であると断言することはできない。なぜなら、母指の動き(特に長母指外転筋)による影響で骨片が転位しやすいため。ちなみに、固定保持は、手関節伸展・橈屈位、第1中手骨最大外転位で前腕遠位端部から基節骨まで6週間固定する。骨折面が不安定なものは観血療法が適応となる。

3.〇 正しい。母指は内転屈曲位となる。なぜなら、母指内転筋により内転屈曲変形するため。ちなみに、関節包も損傷して、橈側へ短縮し、長母指外転筋の収縮で中枢に引かれる。

4.× 「近位」ではなく遠位骨片は長母指外転筋によって転位する。近位小骨片は、原位置にあり、大菱形骨と正常な関係を保つ。一方、遠位大骨片は関節包を損傷して、橈側へ短縮し、長母指外転筋の収縮で中枢に引かれ、母指内転筋により内転屈曲変形する。

 

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