第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午後91~95】

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問題91 第1中手指節関節の垂直脱臼で正しいのはどれか。

1.IP関節は伸展位になる。
2.尺側側副靱帯は断裂する。
3.MP関節屈曲位で固定する。
4.固定期間は6週とする。

解答

解説
1.× IP関節は、「伸展位」ではなく中間位である。第1中手指節関節の垂直脱臼では、母指はZ型変形になる。

2.× 尺側側副靱帯は断裂するのは、「掌側脱臼」である。掌側脱臼の場合、階段状変形となり、中手骨頭が背側に脱転する。

3.〇 正しい。MP関節屈曲位で固定する。第1中手指節関節の垂直脱臼は、母指の過伸展、外転で発生することが多い。MP関節屈曲位で固定することで、関節や靱帯のストレスの軽減に寄与する。

4.× 固定期間は、「6週」ではなく3〜4週間程度とする。ただし、第1中手指節関節の垂直脱臼では、牽引しても整復できず、ロッキングが発生する。

 

 

 

 

 

問題92 股関節後方脱臼の整復障害の要因とならないのはどれか。

1.骨盤骨骨折の合併
2.大腿骨頭靱帯の断裂
3.関節包裂孔部の狭小
4.骨頭と関節窩の間の筋の介在

解答

解説

股関節後方脱臼とは?

股関節後方脱臼は、坐骨神経麻痺が生じやすい。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。ちなみに、分類として、腸骨脱臼、坐骨脱臼が後方脱臼であり、恥骨上脱臼、恥骨下脱臼が前方脱臼である。

【症状】弾発性固定(股関節屈曲・内転・内旋位)、大転子高位、下肢短縮、関節窩の空虚、股関節部の変形(殿部後上方の膨隆:骨頭を触れる)

【続発症】阻血性大腿骨頭壊死、外傷性股関節炎、骨化性筋炎など

1.3~4.〇 正しい。骨盤骨骨折の合併/関節包裂孔部の狭小/骨頭と関節窩の間の筋の介在は、股関節後方脱臼の整復障害の要因である。整復障害は、軟部組織や骨片の介在、ボタン穴機構、骨折の合併などがあげられる。

2.× 大腿骨頭靱帯の断裂は、股関節後方脱臼の整復障害の要因とならない。大腿骨頭靱帯とは、大腿骨頭と臼蓋を連結しているため股関節内転を制限し、脱臼の予防に働く靭帯である。大腿骨頭靱帯(大腿骨頭)の主要な血液供給源の動脈は、大腿骨頭靭帯動脈である。この動脈は閉鎖動脈から分岐される。大腿骨頭靭帯動脈の特徴として、細い血管であるため、栄養血管としての役割は小さい。

 

 

 

 

 

問題93 外傷性膝関節前方脱臼で正しいのはどれか。

1.大腿骨が前方に脱臼する。
2.ダッシュボード損傷が多い。
3.膝窩動脈損傷に注意する。
4.前方関節包が損傷する。

解答

解説

膝関節脱臼とは?

膝関節脱臼には、一般的に動脈損傷または神経損傷が伴う。膝関節脱臼は肢の温存を脅かす。この脱臼は,医学的評価がなされる前に自然に整復する場合がある。診断は通常,X線による。血管および神経学的評価が必要であり,血管損傷はCT血管造影により同定される。非観血的整復および血管損傷の治療を直ちに行う。(※引用:「膝関節(脛骨大腿関節)脱臼」MSDマニュアル様より)

【原因】膝関節過伸展の強制による介達外力、脛骨近位端に後方からまたは大腿骨遠位端に前方からの直達外力によって生じる。膝関節脱臼の中で最も頻度が高い。【固定】軽度膝関節屈曲位。

1.× 大腿骨が「前方」ではなく後方に脱臼する。前方に脛骨関節面、後方に大腿骨内・外顆が突出する。ちなみに、膝関節前方脱臼は、膝関節脱臼で最も頻度が高く、多くは完全脱臼となる。

2.× ダッシュボード損傷が多いのは、膝関節後方脱臼である。股関節後方脱臼は、坐骨神経麻痺が生じやすい。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。

3.〇 正しい。膝窩動脈損傷に注意する。膝関節脱臼は常に膝関節を支える構造を損傷し、関節不安定性が生じる。膝関節脱臼により膝窩動脈が損傷することが多いため、常に足関節上腕血圧比を測定し、CT血管造影を施行する。膝関節前方脱臼の合併症として、側副・十字靱帯損傷、膝窩動脈、総腓骨神経、脛骨神経の圧迫/断裂などである。

4.× 「前方」ではなく後方関節包が損傷する。膝関節前方脱臼では、主に後方の構造物(後十字靭帯など)が損傷することが多い。

 

 

 

 

 

問題94 中足趾節関節の脱臼で正しいのはどれか。

1.第5趾に好発する。
2.Z字型変形を呈する。
3.底側脱臼することが多い。
4.関節背側に開放創がみられる。

解答

解説

MEMO

中足趾節関節とは、中足骨と基節骨の間にある関節である。

1.× 「第5趾」ではなく母指(第1趾)に好発する。なぜなら、母趾は負担が大きく、外力が集中しやすいため。

2.〇 正しい。Z字型変形を呈する。Z字型変形は、中足指節関節過伸展、指節間関節屈曲位、指が短縮して見える。

3.× 「底側」ではなく背側脱臼することが多い。なぜなら、中足指節関節過伸展が起こるため。

4.× 関節「背側」ではなく底側(足底)に開放創がみられる。

 

 

 

 

 

問題95 顎関節症の分類で単純エックス線上、骨硬化像がみられるのはどれか。

1.Ⅰ型
2.Ⅱ型
3.Ⅲ型
4.Ⅳ型

解答

解説

顎関節症の症型分類(日本顎関節学会)

Ⅰ型(咀嚼筋障害):咀嚼筋障害を主徴候としたもの。
Ⅱ型(関節包・靭帯障害):円板後部結合組織・関節包・靭帯の慢性外性病変を主徴候としたもの。
Ⅲ型(顎関節内障):関節円板の異常を主徴候としたもの。
Ⅳ型(変形性顎関節症):進行性病変を主徴としたもの。
Ⅴ型(精神的因子):上記のⅠ~Ⅳ型のいすれにも分類されないもの。顎関節部の違和感、咀嚼器官にみられる不定愁訴。

1.× Ⅰ型は、咀嚼筋障害を主徴候としたものである。顎運動時の咀嚼筋群の疼痛や圧痛がみられる。

2.× Ⅱ型は、円板後部結合組織・関節包・靭帯の慢性外性病変を主徴候としたものである。開口障害がみられるが、強制開口は可能である。

3.× Ⅲ型は、関節円板の異常を主徴候としたものである。顎関節内障である。

4.〇 正しい。Ⅳ型は、顎関節症の分類で単純エックス線上、骨硬化像がみられる。退行性病変を主徴候とした病態で、その主病変部位は関節軟骨、関節円板、滑膜、下顎頭、下顎窩にあり、その病理変化は軟骨破壊、肉芽形成、骨吸収、骨添加である。

 

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