第24回(H28年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前76~80】

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76.「48歳の女性。2年前、左手のこわばりがみられ、その後、近位指節間関節から始まる左指の関節痛と腫れが生じ、さらに右指の関節も痛みだした。現在では、両側の手・膝関節にも関節炎がみられる。光過敏や嚥下障害はない。」
 本疾患でよくみられるのはどれか。

1.ハンマー指
2.ヘバーデン結節
3.Z型変形
4.プシャール結節

解答

解説

本症例のポイント

・48歳の女性(2年前:左手のこわばり)。
・その後:近位指節間関節から始まる左指の関節痛と腫れが生じ、さらに右指の関節も痛みだした。
・現在:両側の手・膝関節にも関節炎がみられる。
・光過敏や嚥下障害はない。
→本症例は、関節リウマチが疑われる。

1.× ハンマー指は、主に腱損傷や外傷によって生じる。マレットフィンガーとは、槌指やハンマー指、ベースボールフィンガー、ドロップフィンガーのことである。DIP関節の過屈曲によりDIP関節の伸筋腱の断裂で起こる。DIP関節が曲がったままで痛みや腫れがあり、自動伸展は不能で、自分で伸ばそうと思っても伸びない。しかし、他動伸展は可能である。
【末節骨骨折・マレットフィンガーの分類】
Ⅰ型(腱断裂):終止腱の断裂
Ⅱ型(裂離骨折):終止腱の停止部での裂離骨折
Ⅲ型(関節内骨折):末節骨の背側関節面を含む骨折

2,4.× ヘバーデン結節/プシャール結節は、変形性関節症(OA)の症状である。手指の変形性関節症は大きく2種類あり、①DIP関節の変形(ヘバーデン結節)と、②PIP関節の変形(ブシャール結節)がある。これらの関節と親指の付け根がこわばり、ときに痛みを伴うことがある。一般的に手首・MP関節、手掌の関節は侵されない。治療としては、①関節可動域を改善する訓練を温水中で行う(運動中の痛みを軽減しできるだけ関節を柔軟にしておくため)、②安静にする、③間欠的に副子で固定して変形を予防する、④鎮痛薬や非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を用いて痛みや腫れを軽減するなどがあげられる。

3.〇 正しい。Z型変形は、本疾患(関節リウマチ)でよくみられる。槌指変形とは、中足趾節関節の背側の亜脱臼に起因するZ型の変形である。
【関節リウマチの変形】①環軸椎亜脱臼、②肩関節可動域制限、③肘関節屈曲拘縮、④手関節尺側偏位、⑤手指変形、⑥股関節屈曲拘縮、⑦膝関節内外反変形・屈曲拘縮、⑨足・足趾変形などがある。下垂指変形、ボタン穴変形、スワンネック変形、手指尺側偏位などがみられる。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

77.「28歳の女性。上肢の痛み、だるさ、しびれを訴える。上肢下垂時に症状が増悪する。首が長く、姿勢が悪い。モーレイテスト、アドソンテスト陽性。」
 最も考えられる疾患はどれか。

1.変形性頸椎症
2.頸椎椎間板ヘルニア
3.頸椎捻挫
4.胸郭出口症候群

解答

解説

本症例のポイント

・28歳の女性。
・上肢の痛み、だるさ、しびれを訴える。
・上肢下垂時に症状が増悪する。
・首が長く、姿勢が悪い。
モーレイテストアドソンテスト陽性
→本症例は、胸郭出口症候群が疑われる。
→Morley test(モーレイテスト、モーリーテスト)は、胸郭出口症候群の誘発テストである。方法は、検者が患者の鎖骨上縁の斜角筋三角部を指先で1分間圧迫する。患側頚部から肩・腕および手指にかけての痛み・しびれ・だるさなどが出現すれば陽性である。
→Adsonテスト(アドソンテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、両手を膝に置き、頚椎を伸展し、患側へ回旋を加え、深吸気位で息を止めさせたときに、橈骨動脈の脈拍をみる。橈骨動脈が減弱もしくは消失すれば陽性である。

1.× 変形性頸椎症とは、頸椎の変形により神経根や脊髄が圧迫される疾患である。原因は、加齢による椎間板の変性であり、40歳以上で発症することが多い。主な症状としては、頭頚部の可動域の悪化、首や肩の痛み、神経圧迫による腕や足への痛み・痺れや筋力低下などである。

2.× 頸椎椎間板ヘルニアは、頸椎椎間板が脱出し、神経根や脊髄を圧迫する疾患である。椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

3.× 頸椎捻挫とは、頸部への急激な外力(交通事故など)による頸椎周囲組織の損傷である。首に一定の力が生じて生じる怪我で、首から背中、後頭部、肩部など広い範囲に痛みや違和感を生じる。 追突事故などの交通事故や転倒などで、首が短時間に前後に振られることで生じることが多い。頸椎に付着する靭帯が急激に伸張されたときに生じる軟部組織の損傷である。

4.〇 正しい。胸郭出口症候群は、最も考えられる疾患である。胸郭出口症候群は、胸郭出口付近における神経と動静脈の圧迫症状を総称したものである。症状として、上肢のしびれ、脱力感、冷感などが出現する。胸郭出口は、鎖骨、第1肋骨、前・中斜角筋で構成される。原因として、①前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫される斜角筋症候群、②鎖骨と第一肋骨の間で圧迫される肋鎖症候群、③小胸筋を通過するときに圧迫される小胸筋症候群、④頭肋で圧迫される頸肋症候群などがある。

 

 

 

 

 

78.「28歳の女性。上肢の痛み、だるさ、しびれを訴える。上肢下垂時に症状が増悪する。首が長く、姿勢が悪い。モーレイテスト、アドソンテスト陽性。」
 本症例で治療対象となる筋はどれか。

1.小胸筋
2.斜角筋
3.胸鎖乳突筋
4.肩甲挙筋

解答

解説

本症例のポイント

・28歳の女性。
・上肢の痛み、だるさ、しびれを訴える。
・上肢下垂時に症状が増悪する。
・首が長く、姿勢が悪い。
モーレイテストアドソンテスト陽性
→本症例は、胸郭出口症候群が疑われる。胸郭出口症候群は、胸郭出口付近における神経と動静脈の圧迫症状を総称したものである。症状として、上肢のしびれ、脱力感、冷感などが出現する。胸郭出口は、鎖骨、第1肋骨、前・中斜角筋で構成される。原因として、①前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫される斜角筋症候群、②鎖骨と第一肋骨の間で圧迫される肋鎖症候群、③小胸筋を通過するときに圧迫される小胸筋症候群、④頭肋で圧迫される頸肋症候群などがある。

1.× 小胸筋は、胸郭出口症候群の小胸筋症候群の場合、治療対象となる。主に過外転症候群(腕を大きく上げた際に症状が出る)で関与する。小胸筋の【起始】第2(3)~5肋骨表面、【停止】肩甲骨の烏口突起、【作用】肩甲骨を前下に引く。このとき下角が後内側に回旋する。肩甲骨を固定すると肋骨を引き上げる。【支配神経】内側および外側胸筋神経:C7,C8,(T1)である。

2.〇 正しい。斜角筋は、本症例(斜角筋症候群)で治療対象となる筋である。なぜなら、アドソンテスト陽性であるため。Adsonテスト(アドソンテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、両手を膝に置き、頚椎を伸展し、患側へ回旋を加え、深吸気位で息を止めさせたときに、橈骨動脈の脈拍をみる。橈骨動脈が減弱もしくは消失すれば陽性である。

3.× 胸鎖乳突筋は、胸郭出口症候群の肋鎖症候群の場合、治療対象となる。首の回旋や側屈に関与する。ちなみに、胸鎖乳突筋の【起始】胸骨部:胸骨柄前面、鎖骨部:鎖骨の胸骨端、【停止】乳様突起、後頭骨の上項線の外側部、【作用】両側が同時に作用すると首をすくめて顎を突き出す。片側が働けば顔面を対側に回す。吸息の補助、【支配神経】副神経外枝、頸神経叢筋枝(C2,C3)である。

4.× 肩甲挙筋は、胸郭出口症候群の場合、治療対象となりにくい。ちなみに、肩甲挙筋の【起始】第1~(3)4頸椎の横突起後結節、【停止】肩甲骨の上角と内側縁の上部、【作用】肩甲骨を内上方に引く、【支配神経】頸神経叢の枝と肩甲背神経:C2~C5である。

 

 

 

 

 

79.「50歳の男性。大酒家である。軽度の意識障害で受診した。眼球の黄染、胸部のクモ状血管拡張と著明な腹水がみられた。また、上肢の不規則な運動が認められた。」
 本症例でみられる上肢の所見はどれか。

1.けいれん
2.バリスム
3.アテトーゼ
4.振戦

解答

解説

本症例のポイント

・50歳の男性(大酒家、軽度の意識障害)。
・眼球の黄染、胸部のクモ状血管拡張著明な腹水がみられた。
上肢の不規則な運動が認められた。
→本症例は、肝硬変による肝性脳症が疑われる。肝性脳症とは、重度の肝疾患がある人において、正常なら肝臓で除去されるはずの有害物質が血液中に蓄積して脳に達することで、脳機能が低下する病気である。長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者に発生する。 原因として、消化管での出血、感染症、処方薬を正しく服用しないこと、その他のストレスによって誘発される。正常な肝なら代謝されるはずの有害物質(アンモニアなど)が脳に達することによって生じる。肝性脳症は多くの場合、治療により予後良好である。主に、①ラクツロース、②抗菌薬が用いられる。①合成糖であるラクツロースは、下剤として作用し、食物が腸を通過する速度を速めることで、体に吸収されるアンモニアの量が減少させる。②口から投与しても腸から吸収されない抗菌薬(リファキシミンなど)を処方することにより、腸に残り、消化中に毒素を作り出す細菌の数を減らす効果が期待できる。(※参考「肝性脳症」MSDマニュアル家庭版)

1.× けいれんとは、自分の意志とは無関係に勝手に筋肉が強く収縮する状態である。けいれんの原因はさまざまで、慢性の脳疾患である「てんかん」の発作として起こるけいれんのほか、脳血管疾患や頭部外傷、身体疾患の急性症状としてみられるけいれん、薬物やアルコールに関連して発生するけいれん、発熱をきっかけに発生するけいれん、心因性に発生するけいれんなどさまざまである。

2.× バリスムとは、舞踏病より激しい腕や手の不随意運動のことである。主に脳血管障害による視床下核の障害に関連する。

3.× アテトーゼとは、顔や手足をゆっくりと動かしてしまうものである。主に脳性麻痺でみられる。身体が突っ張ったり捻じれたりするジストニア、顔や手足をゆっくりと動かしてしまうアテトーゼ、踊るように身体を振ってしまう舞踏運動、上肢や下肢をいきなり大きく振り回してしまうバリズムなどがある。

4.〇 正しい。振戦は、本症例でみられる上肢の所見(羽ばたき振戦)である。羽ばたき振戦とは、手関節を背屈させたまま手指と上肢を伸展させ、その姿勢を保持するように指示すると、「手関節及び中指関節が急激に掌屈し、同時に、元の位置に戻そうとして背屈する運動」が認められる。手関節や手指が速くゆれ、羽ばたいているようにみえるので、このように呼ばれる。肝性脳症やウィルソン病、呼吸不全(CO2ナルコーシス)など代謝性神経疾患で出現する。

 

 

 

 

 

80.「50歳の男性。大酒家である。軽度の意識障害で受診した。眼球の黄染、胸部のクモ状血管拡張と著明な腹水がみられた。また、上肢の不規則な運動が認められた。」
 本疾患でよくみられる合併症はどれか。

1.大動脈瘤
2.食道静脈瘤
3.マロリー・ワイス症候群
4.大腸憩室炎

解答

解説

本症例のポイント

・50歳の男性(大酒家、軽度の意識障害)。
・眼球の黄染、胸部のクモ状血管拡張著明な腹水がみられた。
上肢の不規則な運動が認められた。
→本症例は、肝硬変による肝性脳症が疑われる。肝性脳症とは、重度の肝疾患がある人において、正常なら肝臓で除去されるはずの有害物質が血液中に蓄積して脳に達することで、脳機能が低下する病気である。長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者に発生する。 原因として、消化管での出血、感染症、処方薬を正しく服用しないこと、その他のストレスによって誘発される。正常な肝なら代謝されるはずの有害物質(アンモニアなど)が脳に達することによって生じる。肝性脳症は多くの場合、治療により予後良好である。主に、①ラクツロース、②抗菌薬が用いられる。①合成糖であるラクツロースは、下剤として作用し、食物が腸を通過する速度を速めることで、体に吸収されるアンモニアの量が減少させる。②口から投与しても腸から吸収されない抗菌薬(リファキシミンなど)を処方することにより、腸に残り、消化中に毒素を作り出す細菌の数を減らす効果が期待できる。(※参考「肝性脳症」MSDマニュアル家庭版)

1.× 大動脈瘤とは、動脈硬化や高血圧などが原因で、大動脈が拡大し破裂の恐れを呈する病気である。大動脈瘤破裂は極めて死亡率の高い疾患であり緊急手術を行っても助かる見込みが少ない非常に重篤な病気である。

2.〇 正しい。食道静脈瘤は、本疾患(肝硬変)でよくみられる合併症である。なぜなら、門脈圧亢進症により肝臓への血流が妨げられるため。血液が他の経路(例えば食道の静脈)を通って体に戻ろうとた結果、食道の静脈は過度の血流により拡張し、食道静脈瘤を形成する可能性がある。

3.× マロリー・ワイス症候群とは、激しい嘔吐や咳により胃と食道の接合部の粘膜が裂け、ここから出血が起こる病態である。アルコール摂取後の嘔吐でよく見られる。

4.× 大腸憩室炎とは、大腸の壁の一部が袋状に飛び出した憩室(けいしつ)に炎症が起こる病気である。憩室炎の主な症状は、腹痛、発熱、吐き気・嘔吐、下痢などである。

肝硬変とは?

肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。 慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。

 

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