第23回(H27年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後86~90】

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86.慢性閉塞性肺疾患患者に対する在宅での自主訓練で最も適切なのはどれか。

1.口すぼめ呼吸
2.叩打法
3.スクイージング
4.バイブレーション

解答

解説

慢性閉塞性肺疾患とは?

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の最大の原因は喫煙であり、喫煙者の約20%がCOPDを発症する。慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。

増加:残気量・残気率・肺コンプライアンス・全肺気量・PaCO2

減少:一秒率・一秒量・肺活量・肺拡散能・PaO2

1.〇 正しい。口すぼめ呼吸は、慢性閉塞性肺疾患患者に対する在宅での自主訓練である。口すぼめ呼吸とは、呼気時に口をすぼめて抵抗を与えることにより気道内圧を高め、これにより末梢気管支の閉塞を防いで肺胞中の空気を出しやすくする方法である。鼻から息を吸い、呼気は吸気時の2倍以上の時間をかけて口をすぼめてゆっくりと息を吐く。これにより末梢気道の閉塞を防いで肺胞中の空気を出しやすくなる。①気道の虚脱を抑える、②呼吸数の減少と一回換気量の増大、③動脈血ガス所見の改善、④換気血流の不均等分布の改善などの効果がある。

2.× 叩打法とは、気道に溜まった痰の排出を促進するための物理療法である。特に、気道分泌物が多い場合に用いられる。専門家が患者に対して行うことが多く、設問では、「在宅での自主訓練」を問われているため不適切である。

3.× スクイージングとは、胸郭の呼気時圧迫により呼気流速を増し排痰を促進し、反動による吸気時の拡張を促す手技である。専門家が患者に対して行うことが多く、設問では、「在宅での自主訓練」を問われているため不適切である。

4.× バイブレーションとは、手技を用いて胸郭に振動を加え、痰を気道から排出しやすくする方法である。専門家が患者に対して行うことが多く、設問では、「在宅での自主訓練」を問われているため不適切である。

 

 

 

 

 

87.関節リウマチ患者によく用いる自助具はどれか。

1.リーチャー
2.筆談ボード
3.ユニバーサルカフ
4.トランスファーボード

解答1?
※3も正解だと思いますが、分かる方いらしたらコメントください。

解説

関節保護の原則とは?

関節リウマチ患者に対する日常生活の指導は、関節保護の原則に基づき行う。関節保護の原則とは、疼痛を増強するものは避けること、安静と活動のバランスを考慮すること、人的・物的な環境を整備することがあげられる。変形の進みやすい向きでの荷重がかからないように手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具が求められる。

1.△ リーチャーは、関節リウマチ患者によく用いる自助具である。リーチャーとは、脱臼の恐れのある人工股関節や車いす患者が、床のものや遠くのものを拾ったり操作したりするときに使用する手が届かない物を取るための道具である。洗濯物を干すときやカーテンの開閉に関節の保護として寄与できる。

2.× 筆談ボードは、発声が困難な患者(例:構音障害)に使用される道具である。

3.△ ユニバーサルカフは、関節リウマチ患者によく用いる自助具である。ユニバーサルカフとは、指の届曲の障害、ものが掴めない・握れないなどの動作を補助する自助具である。頚椎損傷やリウマチなどに適応となる。洗濯物を干すときやカーテンの開閉に関節の保護として寄与できる。

4.× トランスファーボードとは、座った姿勢を保持したままベッドから車椅子に移譲するための福祉用具である。介助者は少ない力で無理なく介助できる。主に、脊髄損傷などの下肢の麻痺や筋力低下がある患者に使用される。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

88.重症の筋萎縮性側索硬化症のリハビリテーションとして最も必要なのはどれか。

1.低出力レーザーによる温熱療法
2.ペグボードによる巧緻動作訓練
3.バランスボードによるバランス訓練
4.意思伝達装置によるコミュニケーション訓練

解答

解説

重症の定義については「3週間以上の入院加療を必要とするもの以上のもの」となっている(厚生労働省より)。つまり、「重症の筋萎縮性側索硬化症」というのは、筋萎縮性側索硬化症の終末期という意味で読み取るのが良いだろう。筋萎縮性側索硬化症の終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

1.× 低出力レーザーによる温熱療法より優先度が高いのものが他にある。低出力レーザーによる温熱療法は、鎮痛作用がある。低出力レーザー照射は、熱作用を与えないレベルのレーザー光を照射することにより、レーザーの光作用を利用して神経伝導の抑制、血行改善、痛みを緩和する治療法である。

2.× ペグボードによる巧緻動作訓練を行うことは困難である。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症の終末期は、巧緻動作が行えないことが多く、むしろ、無理な訓練は筋疲労を助長し、患者の負担となる可能性があるため。

3.× バランスボードによるバランス訓練を行うことは困難である。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症の終末期は、転倒のリスクが高いため。終末期のケアは、患者のQOLや安全確保、環境整備に重点を置くことが多い。

4.〇 正しい。意思伝達装置によるコミュニケーション訓練は、重症の筋萎縮性側索硬化症のリハビリテーションである。筋萎縮性側索硬化症の終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

89.生体リズムに関する陰陽学説で最も適切なのはどれか。

1.陰陽消長
2.陰陽対立
3.陰陽制約
4.陰陽互根

解答

解説
1.〇 正しい。陰陽消長は、生体リズムに関する陰陽学説である。陰陽消長とは、陰陽の量的変化である。陰虚すれば陽実し、陽虚すれば陰実する(例:真夜中から陰が減り、陽が増えることで昼となる。)。

2.× 陰陽対立とは、陰と陽が互いに対立する性質を持ちながら、バランスをとる関係を指す。体内の相反する作用(例:交感神経と副交感神経)を説明する。

3.× 陰陽制約とは、陰と陽は対立するものであり、互いに制約し合っている(例:暑い日には静かにすることで熱くなりすぎないようにする)。

4.× 陰陽互根とは、陰陽の相互依存である。相反する属性により成り立っている。

 

 

 

 

 

90.後天の精から得られた水穀の悍気はどれか。

1.胃気
2.営気
3.衛気
4.宗気

解答

解説

MEMO

気血生成の源とは、水穀の精微(後天の精)ともいい、気や血となって全身を巡る作用のことをさす。脾胃(中焦)の働きにより、飲食物(水穀)より得られる精である。

水穀の悍気とは、水穀の精微から生成されるエネルギーの一種で、衛気の基盤となる。

1.× 胃気とは、胃の消化機能に基づく気を指す。

2.× 営気とは、津液を血に変化させ、脈中を巡らせる。豊かな栄養分により組織・器官の活動を支える気である。

3.〇 正しい。衛気は、後天の精から得られた水穀の悍気である。衛気とは、体表(昼)と体内(夜)をめぐる活動性の高い気のことである。全身を温め、腠理の開闔により、発汗を調節し、外邪の侵襲を防ぐ。その性質が「悍気」とされる。

4.× 宗気とは、呼吸で得られる気(水穀の精微と精気)によって化生された気である。胸中に集まり、心肺の活動(呼吸・血の推動)を支える。

 

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