第23回(H27年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後136~140】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

136.「35歳の女性。左側の首の付け根付近のこり感が強い。大杼から上方に引いた線が僧帽筋上部線維の前縁を超えたところの陥凹部に顕著な圧痛・硬結を認めた。頚部の右側屈で左頸部外側から肩甲骨上角にかけて伸張痛がある。上肢症状はない。」
 本症例に低周波鍼通電療法を行う場合、陥凹部の圧痛・硬結部と組合せる刺鍼点として最も適切なのはどれか。

1.風池
2.肩井
3.曲垣
4.肩外兪

解答

解説

本症例のポイント

・35歳の女性(左側の首の付け根付近:こり感が強い)。
・大杼から上方に引いた線が僧帽筋上部線維の前縁を超えたところ:陥凹部に顕著な圧痛・硬結を認めた。
・頚部の右側屈で左頸部外側から肩甲骨上角にかけて伸張痛がある。
・上肢症状はない。
→本症例の罹患筋は、肩甲挙筋である。
・肩甲挙筋の【起始】第1~(3)4頸椎の横突起後結節、【停止】肩甲骨の上角と内側縁の上部、【作用】肩甲骨を内上方に引く、【支配神経】頸神経叢の枝と肩甲背神経:C2~C5である。

1.× 風池は、前頸部、後頭骨の下方、胸鎖乳突筋と僧帽筋の起始部の間、陥凹部に位置する。深部に椎骨動脈が通る。

2.× 肩井は、後頸部、第7頸椎棘突起と肩峰外縁を結ぶ線上の中点に位置する。天髎(三焦経)の上方にあたる。

3.× 曲垣は、肩甲部、肩甲棘内端の上方陥凹部に位置する。

4.〇 正しい。肩外兪は、本症例に低周波鍼通電療法を行う場合、陥凹部の圧痛・硬結部と組合せる刺鍼点である。なぜなら、肩甲挙筋上にあるため。上背部、第1胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方3寸に位置する。陶道(督脈)の外方3寸、肩甲骨上角の内方にあたる。

 

 

 

 

 

137.「65歳の男性。1か月前から右足の冷えと歩行中の痛みが出るようになった。休むと痛みが軽減し、再び歩くことができる。ただし、前屈み姿勢により痛みは変化しなかった。痛みの部位はふくらはぎと足底。動脈の触診では膝窩動脈の拍動を確認できたが、右側下腿の動脈拍動は減弱。」
 歩行中の痛みを起こす原因はどれか。

1.L5神経根の刺激
2.筋肉の虚血
3.末梢神経の炎症
4.筋肉の内圧上昇

解答

解説

本症例のポイント

・65歳の男性。
・1か月前から右足の冷え歩行中の痛みが出る。
休むと痛みが軽減し、再び歩くことができる(間欠性跛行)。
前屈み姿勢により痛みは変化なし
・痛みの部位:ふくらはぎと足底。
・動脈の触診:膝窩動脈の拍動を確認できたが、右側下腿の動脈拍動は減弱
→本症例は、閉塞性動脈硬化症が疑われる。①間欠性跛行、②循環不全、③神経症状が認められないことから考えられる。閉塞性動脈硬化症は、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気である。下肢の慢性虚血による間欠性跛行が発症症状であることが多く、虚血が進行すると壊死に至る。50~70歳代の男性、糖尿病症例に多くみられる。太ももの付け根(大腿動脈)や足の甲(足背動脈)を触診し、脈が触れないことで診断し、確定診断には血管造影検査を行う。

1.× L5神経根の刺激は、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアでみられる。しかし、本症例の場合、「前屈み姿勢により痛みは変化なし」であるため、閉塞性動脈硬化症が疑われる。

2.〇 正しい。筋肉の虚血は、歩行中の痛みを起こす原因である。本症例は、閉塞性動脈硬化症が疑われる。①間欠性跛行、②循環不全、③神経症状が認められないことから考えられる。閉塞性動脈硬化症は、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気である。下肢の慢性虚血による間欠性跛行が発症症状であることが多く、虚血が進行すると壊死に至る。50~70歳代の男性、糖尿病症例に多くみられる。太ももの付け根(大腿動脈)や足の甲(足背動脈)を触診し、脈が触れないことで診断し、確定診断には血管造影検査を行う。

3.× 末梢神経の炎症は、一般的に糖尿病でみられる。しかし、糖尿病の場合、間欠性跛行はみられにくい。

4.× 筋肉の内圧上昇は、一般的にコンパートメント症候群などがみられる。しかし、コンパートメント症候群の機序と症状が当てはまらない。
ちなみに、コンパートメント症候群とは、骨・筋膜・骨間膜に囲まれた「隔室」の内圧が、骨折や血腫形成、浮腫、血行障害などで上昇して、局所の筋・神経組織の循環障害を呈したものをいう。症状として6P【①pain(痛み)、②pallor(蒼白)、③paresthesia(知覚障害)、④paralysis(運動麻痺)、⑤pulselessiiess(末梢動脈の拍動の消失)、⑥puffiniss(腫脹)】があげられ、それらを評価する。
①前方コンパートメント症候群:前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋
②外側コンパートメント症候群:長・短腓骨筋
③浅後方コンパートメント症候群:腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋
④深後方コンパートメント症候群:後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋

 

 

 

 

 

138.「65歳の男性。1か月前から右足の冷えと歩行中の痛みが出るようになった。休むと痛みが軽減し、再び歩くことができる。ただし、前屈み姿勢により痛みは変化しなかった。痛みの部位はふくらはぎと足底。動脈の触診では膝窩動脈の拍動を確認できたが、右側下腿の動脈拍動は減弱。」
 拍動の減弱を呈する動脈に向けた刺鍼で、足の冷えと痛みを治療するのに適切な経穴はどれか。

1.衝門
2.委中
3.太渓
4.太衝

解答

解説

本症例のポイント

・65歳の男性。
・1か月前から右足の冷え歩行中の痛みが出る。
休むと痛みが軽減し、再び歩くことができる(間欠性跛行)。
・前屈み姿勢により痛みは変化なし。
・痛みの部位:ふくらはぎと足底
・動脈の触診:膝窩動脈の拍動を確認できたが、右側下腿の動脈拍動は減弱
→本症例は、閉塞性動脈硬化症が疑われる。①間欠性跛行、②循環不全、③神経症状が認められないことから考えられる。閉塞性動脈硬化症は、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気である。下肢の慢性虚血による間欠性跛行が発症症状であることが多く、虚血が進行すると壊死に至る。50~70歳代の男性、糖尿病症例に多くみられる。太ももの付け根(大腿動脈)や足の甲(足背動脈)を触診し、脈が触れないことで診断し、確定診断には血管造影検査を行う。

1.× 衝門は、鼠径部、鼠経溝、大腿動脈拍動部の外方に位置する。

2.× 委中は、膝後面、膝窩横紋の中点に位置する。深部に脛骨神経が通る。

3.〇 正しい。太渓は、拍動の減弱を呈する動脈に向けた刺鍼で、足の冷えと痛みを治療するのに適切な経穴である。
太渓は、足関節後内側、内果尖とアキレス腱の間の陥凹部に位置する。

4.× 太衝は、足背、第1~2指中足骨間、中足骨底接合部遠位の陥凹部、足背動脈拍動部に位置する。
本症例の痛みの部位は、ふくらはぎ足底である。治療部位の対象は、後脛骨動脈や足背動脈である。動脈は、中枢から末梢に流れるため、中枢側のアプローチのほうが優先される。

 

 

 

 

 

139.「57歳の女性。閉経は54歳。最近、顔のほてりと発汗が頻発し、耳鳴り、めまい、手足のほてり、腰部の重だるさ、肩こりを随伴し受診した。ホルモン検査で異常が指摘された。舌質は暗紅、舌苔は少なくやや乾燥。脈は細数。小腹不仁が認められた。」
 患者のホルモン検査で血中濃度が基準値より高いのはどれか。

1.エストラジオール
2.ゴナドトロピン
3.バソプレシン
4.プロスタグランジンF2a

解答

解説

本症例のポイント

・57歳の女性(閉経は54歳)。
・最近:顔のほてり、発汗が頻発、耳鳴り、めまい、手足のほてり、腰部の重だるさ、肩こり。
・ホルモン検査:異常
・舌質は暗紅、舌苔は少なくやや乾燥。
・脈は細数。小腹不仁が認められた。
→本症例は、更年期障害が疑われる。更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

1.× エストラジオールとは、エストロゲンの一種で、母体の肝臓と胎盤、胎児の副腎を経て生成されるため、その血中濃度は胎児の生命状態の指標として用いられる。エストロゲンの中で最も強い卵胞ホルモン作用を持つ物質で、女性の二次性徴に働き、卵巣機能調節、卵胞発育、子宮内膜増殖などの作用を示す。

2.〇 正しい。ゴナドトロピンは、患者のホルモン検査で血中濃度が基準値より高い。hCG<ヒト絨毛性ゴナドトロピン>は、主に絨毛組織において産生され、妊娠初期の卵巣黄体を刺激してプロゲステロン産生を高め、妊娠の維持に重要な働きをしているほか、胎児精巣に対する性分化作用や母体甲状腺刺激作用も報告されている。

3.× バソプレシンは、下垂体後葉から分泌され、水の再吸収を促進する抗利尿作用・血圧上昇が起きる。尿を濃くし尿量を減らす作用がある。

4.× プロスタグランジンF2aとは、細菌感染による急性炎症反応で増加する。プロスタグランジンは、①血管拡張、②気管支平滑筋収縮、③急性炎症時の起炎物質で発痛作用がある。非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>は、炎症などを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、抗炎症作用や解熱、鎮痛に働く。副作用として、消化器症状(腹痛、吐き気、食欲不振、消化性潰瘍)、ぜんそく発作、腎機能障害が認められる。したがって、非ステロイド性抗炎症薬が効果的であるのは、侵害受容性疼痛である。

 

 

 

 

 

140.「57歳の女性。閉経は54歳。最近、顔のほてりと発汗が頻発し、耳鳴り、めまい、手足のほてり、腰部の重だるさ、肩こりを随伴し受診した。ホルモン検査で異常が指摘された。舌質は暗紅、舌苔は少なくやや乾燥。脈は細数。小腹不仁が認められた。」
 患者の病証への治療方針で適切なのはどれか。

1.心血を補う
2.肝陽を抑える
3.腎陰を補う
4.瘀血を除く

解答

解説

本症例のポイント

・57歳の女性(閉経は54歳)。
・最近:顔のほてり、発汗が頻発、耳鳴りめまい手足のほてり、腰部の重だるさ、肩こり。
・ホルモン検査:異常
・舌質は暗紅、舌苔は少なくやや乾燥
・脈は細数。小腹不仁が認められた。
→本症例は、腎陰虚が疑われる。腎陰虚は、気の温煦作用が低下したものである。腎陰虚は、手足心熱、のぼせ、耳鳴、難聴、腰膝酸軟、口乾、舌質紅、脈数などがあげられる。

1.× 心血を補う
これは、心血虚に対して行う。心血虚は、心悸、不眠、眩暈、健忘、淡白色(顏面・口唇・爪など)、脈細弱などを指す。

2.× 肝陽を抑える
これは、肝陽上亢に対して行う。肝陽上亢とは、眩暈、耳鳴、頭痛、目赤、陰虚によるほてり・のぼせ、腰膝酸軟などである。

3.〇 正しい。腎陰を補う
これは、腎陰虚に対して行う。腎陰虚は、気の温煦作用が低下したものである。腎陰虚は、手足心熱、のぼせ、耳鳴、難聴、腰膝酸軟、口乾、舌質紅、脈数などがあげられる。

4.× 瘀血を除く
これは、小腹急結などに用いられる。瘀血(おけつ)とは、血液が汚れたり、滞ったり、固まりやすくなった状態のことである。瘀血になると、血の流れが悪くなり、全身に栄養が行き渡らなくなるため、さまざまな症状が現れやすくなる。

更年期障害

~更年期障害とは~

「閉経」とは、卵巣の活動性が次第に消失し、ついに月経が永久に停止した状態をいいます。月経が来ない状態が12か月以上続いた時に、1年前を振り返って閉経としています。日本人の平均閉経年齢は約50歳ですが、個人差が大きく、早い人では40歳台前半、遅い人では50歳台後半に閉経を迎えます。

閉経前の5年間と閉経後の5年間とを併せた10年間を「更年期」といいます。更年期に現れるさまざまな症状の中で他の病気に伴わないものを「更年期症状」といい、その中でも症状が重く日常生活に支障を来す状態を「更年期障害」と言います(※引用:「更年期障害」日本産婦人科学会様HPより)。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)