第23回(H27年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後146~150】

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146.有害事象と予防・処置の組合せで正しいのはどれか。

1.刺鍼後の違和感:副刺激術
2.抜鍼困難:返し鍼
3.気胸:丹念な揉捏
4.鍼の抜き忘れ:鍼管数と抜鍼数の照合

解答

解説

有害事象とは?

有害事象とは、あらゆる好ましくない・あるいは意図しない徴候や症状を示す。いわゆる薬の副作用であることを薬の有害事象と呼ぶことがある。治験薬や医薬品などの薬物を投与された被験者・患者に生じる、薬物の投与と時間的に関連した、好ましくないまたは意図しないあらゆる医療上の事柄のことである。

1.× 副刺激術は、「刺鍼後の違和感」ではなく抜鍼困難(渋鍼)の処置である。
・副刺激術は、刺入した鍼の周囲を鍼管や指頭で叩き、響きを与える(気拍法)。
・抜鍼困難(渋鍼)の原因は、回旋による筋組織の巻き付き、筋撃縮や反射的筋収縮などによる銀体の固定、体動による鍼体の弯曲、などである。処置は、リラックス、逆方向への回旋、放置(置鍼術)、副刺激術、示指打法、迎え鍼(周囲に刺鍼する)などである。

2.× 抜鍼困難の処置は、「返し鍼」ではなく副刺激術を行う。
返し鍼は、合谷、足三里などの四肢末端に近い部位への刺鍼である。

3.× 気胸は、丹念な揉捏を実施すると症状が悪化する。気胸とは、肺と胸壁の間の空間に空気が溜まる状態を指す。肺が損傷し、気胸(内開放性気胸)が生じる。背部や前胸部などへの刺鍼で多く、女性に多い。症状には胸痛、刺激性咳、チアノーゼ、労作性呼吸困難などがある。

4.〇 正しい。鍼の抜き忘れ:鍼管数と抜鍼数の照合
鍼の抜き忘れの対応として、ほかにも、①取穴・刺鍼のパターンを決める、②抜鍼する部位の優先順序を決めておく、③置鍼中に服がずれて鍼が隠れないように服をしっかり固定する、④自分が忘れるほどの数の鍼を刺さないなどである。

抜鍼困難(渋鍼)

原因:回旋による筋組織の巻き付き、筋撃縮や反射的筋収縮などによる銀体の固定、体動による鍼体の弯曲、など

処置:リラックス、逆方向への回旋、放置(置鍼術)、副刺激術、示指打法、迎え鍼(周囲に刺鍼する)など

 

 

 

 

 

147.鍼施術における感染症対策として最も有効なのはどれか。

1.エアータオル
2.クリーン・ニードル・テクニック
3.ベースン法
4.逆性石けんを用いた手洗い

解答

解説
1.× エアータオルより、ペーパータオルによる乾燥を行う。
エアータオルとは、ハンドドライヤーともいい、手を風で乾かすための乾燥機である。空気中に菌を飛散させる恐れもある。

2.〇 正しい。クリーン・ニードル・テクニックは、鍼施術における感染症対策として最も有効である。
米国カリフォルニア州の鍼師試験で採用されているクリーンニードルテクニックとは、滅菌した鍼をできるだけ清潔な状態で刺入することを指す。

3.× ベースン法(浸漬法)は、消毒液をベースン(容器)に入れて手指を浸漬する消毒法である

4.× 逆性石けんを用いた手洗いは、手指、粘膜、機器の消毒に使用され、細菌には有効であるが、ウイルスには無効である。

 

 

 

 

 

148.刺鍼した際の重だるいひびき感覚を伝える主な神経線維はどれか。

1.Ⅰ群
2.Ⅱ群
3.Ⅲ群
4.Ⅳ群

解答

解説


1.× Ⅰ群は、Aα線維で、筋・腱の感覚と運動を伝導する。

2.× Ⅱ群は、Aβ線維で、触圧覚を伝導する。

3.× Ⅲ群は、Aδ線維で、痛みを伴う熱刺激を伝導する。

4.〇 正しい。Ⅳ群は、刺鍼した際の重だるいひびき感覚を伝える主な神経線維である。
Ⅳ群は、C線維で、信号伝達が遅く、長く持続する痛み(鈍痛)を伝える。Ⅲ群は髄鞘を持ち、比較的速く鋭い痛みを伝える。

 

 

 

 

 

149.右腓腹筋の緊張が亢進しているとき、右承山に刺鍼したところ筋緊張が軽減した。
 関与したと考えられるのはどれか。

1.相反抑制
2.屈曲反射
3.自原抑制
4.伸張反射

解答

解説

本症例のポイント

・右腓腹筋の緊張:亢進。
・右承山に刺鍼:筋緊張が軽減
→承山は、下腿後面、腓腹筋筋腹とアキレス腱の移行部のことをいう(※読み:しょうざん)。

1.× 相反抑制とは、筋を収縮させる際に、その筋の拮抗筋が弛緩することである。例えば、肘関節屈曲する際、拮抗筋である上腕三頭筋が弛緩するといった仕組みである。

2.× 屈曲反射とは、四肢の皮膚に強い刺激(痛み刺激)を加えると、その肢が屈曲する反射である。

3.〇 正しい。自原抑制が関与したと考えられる。自原抑制(自己抑制)とは、筋が過剰に収縮し、健にかかる張力が大きくなったときに腱紡錘(ゴルジ腱器官)がそれを感知し、その健の筋が弛緩しにかかる張力を小さくする反射である。動筋の抑制性2シナプス反射となる。Ⅰb線維による。

4.× 伸張反射とは、外力により急に筋が引き伸ばされるとその筋が収縮する反射のことである。つまり、目的の筋の伸張方向=反対の方向に外力を加えることで、収縮運動が起こりやすくなっている。

 

 

 

 

 

150.鍼鎮痛の発現に関与する物質はどれか。

1.セロトニン
2.アセチルコリン
3.メラトニン
4.トロポミオシン

解答

解説

下行性痛覚抑制系とは?

下行性疼痛抑制系とは、脳幹部から神経線維が脊髄後角に下行し、そこで痛みの伝達を遮断するシステムである。下行性疼痛抑制線維は、主にノルアドレナリンやセロトニンなどである。

1.〇 正しい。セロトニンが鍼鎮痛の発現に関与する物質である。
セロトニンとは、うつ病と関連が深い神経伝達物質である。脳内だけに分泌される神経伝達物質で、交感神経を刺激し、血圧を上昇させる作用がある。ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、心のバランスを整える作用のある伝達物質でもある。

2.× アセチルコリンとは、代表的な神経伝達物質であり、①運動神経の神経筋接合部、②交感神経および副交感神経の節前線維の終末、副交感神経の節後線維の終末などのシナプスで放出される。アセチルコリンは、中枢神経で働く場合と末梢神経で働く場合で作用が異なる。①運動神経の神経筋接合部では、筋収縮に作用する。

3.× メラトニンとは、夜間に脳の松果体から分泌されるホルモンで、体内時計による夜間の身体の休息を促す働きを持つ。メラトニン分泌量が低下するため睡眠障害が起こりやすくなる。

4.× トロポミオシンとは、アクチンの働きを調節する繊維状のアクチン結合タンパク質である。筋小胞体からCa2+放出により筋収縮が開始される。その後、カルシウムイオンはトロポニンと結合し、その立体構造を変えてトロポミオシンをアクチンのミオシン結合部位から引き離す。ちなみに、カリウムイオン(K+)は、細胞内液で最も多い陽イオンである。

MEMO

ケミカルメディエーターとは、化学伝達物質ともいい、細胞間の情報伝達に作用する化学物質のことである。肥満細胞が放出するケミカルメディエーターは、さまざまなアレルギー反応(血管透過性の亢進、血流の増加、炎症細胞の遊走など)を起こす。

【例】
・ヒスタミン
・ロイコトリエン
・トロンボキサン
・血症板活性化因子
・セロトニン
・ヘパリンなど。

 

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