第23回(H27年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後156~160】

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156.施灸により蛋白質の変性が起き始める温度はどれか。

1.45℃
2.60℃
3.75℃
4.100℃

解答

解説
1.〇 正しい。45℃は、施灸により蛋白質の変性が起き始める温度である。人体のタンパク質は、体温が42℃以上になると変性して細胞死に至る。

2.× 60℃/75℃/100℃より低い温度で、蛋白質の変性が起き始める。

 

 

 

 

 

157.施灸により局所の鎮痛に作用するのはどれか。

1.交感神経活動の亢進
2.ストレス蛋白質の産生
3.皮膚血流の増加
4.筋収縮

解答

解説

鎮痛作用

【下行性痛覚抑制系】

下行性疼痛抑制系とは、脳幹部から神経線維が脊髄後角に下行し、そこで痛みの伝達を遮断するシステムである。下行性疼痛抑制線維は、主にノルアドレナリンやセロトニンなどである。

1.× 交感神経活動の亢進は、施灸との関連が低い。むしろ、逆の交感神経の抑制の効果で、局所の鎮痛に作用する。施灸の温熱刺激は交感神経活動を抑制し、血管拡張を促し血流が増加することで局所の鎮痛効果をもたらす。

2.× ストレス蛋白質の産生は、施灸との関連が低い。ストレス蛋白質とは、ストレスがかかったときに合成され、細胞を修復する役割を担うタンパク質のグループである。

3.〇 正しい。皮膚血流の増加は、施灸により局所の鎮痛に作用する。なぜなら、施灸による温熱刺激は、局所の皮膚血管を拡張させ、血流を増加させるため。血流の増加により、局所の代謝が促進され、痛みの原因物質(例えばブラジキニンやプロスタグランジンなど)が洗い流されることで鎮痛効果が得られる。

4.× 筋収縮は、施灸との関連が低い。むしろ、逆の筋弛緩の効果で、局所の鎮痛に作用する。なぜなら、筋弛緩の効果で、血流が増加され鎮痛効果を発揮するため。

 

 

 

 

 

158.「45歳の女性。両下腿に冷えを訴えて来院。愁訴を改善する目的で、両側の三陰交に半米粒大の透熱灸5壮の施術を行った。」
 目的とした治療的作用はどれか。

1.防衛作用
2.矯正作用
3.鎮静作用
4.誘導作用

解答

解説
1.× 防衛作用は、白血球や大食細胞などを増加させ、生体の防衛力を高める。

2.× 矯正作用は、鍼治療にない。

3.× 鎮静作用(調整作用)は、異常な機能の興奮(疼痛、痙攣など)に対して鎮静させる。

4.〇 正しい。誘導作用は、目的(両下腿に冷え)とした治療的作用である。誘導作用は、血管に影響を及ぼして充血させ、患部の血量を調節する。患部誘導法(局所血行障害)、健部誘導法(充血、炎症など)のことをいう。

 

 

 

 

 

159.「45歳の女性。両下腿に冷えを訴えて来院。愁訴を改善する目的で、両側の三陰交に半米粒大の透熱灸5壮の施術を行った。」
 施灸部に生じた膨隆に関与するのはどれか。

1.エンケファリン
2.伸展受容器
3.サブスタンスP
4.高閾値機械受容器

解答

解説

フレア現象とは?

フレア現象とは、お灸の熱刺激によって細胞レベルで微細な火傷が起こり、神経から脳に「ここにケガがあるから治すために血液を送ってください」と連絡が入ることで起こる軸索反射のこと。軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

1.× エンケファリンは、内因性オピオイドのひとつである。ちなみに、内因性オピオイドとは、体内で作られ、生理的な状況や危機が迫ったときに放出される物質され、脳や脊髄に存在するオピオイド受容体に作用し、鎮痛作用をもたらす。主に、エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィン、エンドモルフィンなどあげられる。また、痛みによる不快な感覚の抑制、下降性抑制神経系の賦活化、恐怖という情動の抑制、脳内報酬系における重要な伝達物質でもある。

2.× 伸展受容器(心肺圧受容器)とは、心房、心室および肺血管に位置する伸展受容器である。心肺圧受容器反射は、中心血液量の増減をモニターして血圧を一定範囲内に保つように心臓血管系を調節する機構である。つまり、水分調整(渇き)に関わる。

3.〇 正しい。サブスタンスPは、施灸部に生じた膨隆に関与する。サブスタンスPとは、ポリモーダル受容器の興奮で生じる軸索反射により、受容器末端から放出される。軸索反射(フレア現象)の神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

4.× 高閾値機械受容器とは、侵害受容器のひとつである。特徴として、①侵害性機械刺激に対し強度に応じた反応を示す、②繰り返し刺激で反応は減弱する、③刺激が終了すれば後発射を示さないことなどがあげられる。

 

 

 

 

 

160.透熱灸により好中球の遊走性を最も高めるのはどれか。

1.ロイコトリエンB4
2.ブラジキニン
3.プロスタグランジンE2
4.ヒスタミン

解答

解説
1.〇 正しい。ロイコトリエンB4は、透熱灸により好中球の遊走性を最も高める。ロイコトリエンとは、生理活性物質(ケミカルメディエーター)の一つである。役割として、好中球の走化性を活性化し、気管支収縮作用、血管拡張作用、血管透過性の亢進などを担う。

2.× ブラジキニンとは、生理活性ペプチドともいい、炎症やアレルギー反応に関与する。発痛作用、血管拡張(血圧降下作用)、血管透過性亢進といったさまざまな作用をもつ。ブラジキニンは、プロテアーゼの作用により血漿中のグロブリン前駆体から生成される物質である。

3.× プロスタグランジンE2
プロスタグランジンは、細菌感染による急性炎症反応で増加する。プロスタグランジンは、①血管拡張、②気管支平滑筋収縮、③急性炎症時の起炎物質で発痛作用がある。特に、プロスタグランジンE2(PGE2)は、視床下部に作用し、体温調節セットポイントを上昇させることで発熱を引き起こす。

4.× ヒスタミンとは、アレルギー様症状を呈する化学物質である。組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球がアレルギー反応の際に分泌される。血圧降下血管透過性亢進、血管拡張作用がある。

MEMO

ケミカルメディエーターとは、化学伝達物質ともいい、細胞間の情報伝達に作用する化学物質のことである。肥満細胞が放出するケミカルメディエーターは、さまざまなアレルギー反応(血管透過性の亢進、血流の増加、炎症細胞の遊走など)を起こす。

【例】
・ヒスタミン
・ロイコトリエン
・トロンボキサン
・血症板活性化因子
・セロトニン
・ヘパリンなど。

 

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