第21回(H25年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前56~60】

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56.計測について正しい記述はどれか。

1.大腿周径は最大周径で計測する。
2.前腕周径は前腕中央部で計測する。
3.下肢長は上前腸骨棘から脛骨内果を計測する。
4.上肢長は肩峰から尺骨茎状突起を計測する。

解答

解説
1.× 大腿周径は、「最大周径」ではなく膝蓋骨上縁(または膝関節裂隙)から中枢10cm(または5、10、15、20cmと複数)で計測する。ちなみに、膝関節伸展位(股関節屈曲・外転位)で測定する。

2.× 前腕周径は、「前腕中央部」ではなく最大周径で計測する。測定方法として、腕を下垂させ、肘関節のやや下方の最大周径で拳をつくらないで測定する。

3.〇 正しい。下肢長は、上前腸骨棘から脛骨内果を計測する

4.× 上肢長は、肩峰から「尺骨茎状突起」ではなく橈骨茎状突起(または中指先端)を計測する。

下肢長の測定方法

①棘果長:上前腸骨棘から内果まで。
→骨盤の影響を含む。

②転子果長:大転子から外果まで。
→骨盤の影響は含まない。

 

 

 

 

 

57.頸椎症性脊髄症について誤っている記述はどれか。

1.痙性歩行がみられる。
2.手指巧緻運動障害を認める。
3.手内在筋の萎縮を認める。
4.深部腱反射が減弱する。

解答

解説

頚椎症性脊髄症とは?

頚椎症性脊髄症とは、頚椎の変形によって内側の脊髄が圧迫されて、巧級性の低下や手足のしびれが生じる疾患である。

1~2.〇 正しい。痙性歩行/手指巧緻運動障害がみられる。なぜなら、脊髄が圧迫され、錐体路が障害されるため。錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―脊髄交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。ちなみに、痙性歩行とは、脚が突っ張ったような歩行である。上位運動ニューロン障害(錐体路障害)を示す典型的な徴候である。

3.〇 正しい。手内在筋の萎縮を認める。なぜなら、脊髄が圧迫・障害されることで、手足に麻痺やしびれなどの症状が現れるため。これにより手内在筋の萎縮が生じる。

4.× 深部腱反射が「減弱」ではなく亢進する。上位運動ニューロン障害が主体となるため。

錐体路障害とは?

錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。

【錐体路徴候】
・深部腱反射亢進
・病的反射(+)
・表在反射(消失)
・痙性麻痺

【錐体外路症状】
・深部腱反射正常
・表在反射(+)
・病的反射(-)
・不随意運動の出現

 

 

 

 

 

58.呼吸音が減弱するのはどれか。

1.気胸
2.気管支炎
3.気管支肺炎
4.肺結核

解答

解説
1.〇 正しい。気胸は、呼吸音が減弱する。なぜなら、肺が虚脱すると、その部分では空気の出入りがなくなるため。ちなみに、気胸とは、肺と胸壁の間の空間に空気が溜まる状態を指す。肺が損傷し、気胸(内開放性気胸)が生じる。背部や前胸部などへの刺鍼で多く、女性に多い。症状には胸痛、刺激性咳、チアノーゼ、労作性呼吸困難などがある。

2.× 気管支炎は、呼吸音が湿性(断続性)ラ音となる。気管支炎とは、ウイルスや細菌などにより、空気を肺に送る気管支を中心に炎症が引き起こされる病気の総称である。気管支炎はさまざまな原因により生じるが、原因の多くはウイルスによる感染症である。そのほかの原因としては細菌などによる感染症、アレルギー、喫煙・大気汚染・化学物質などが挙げられる。慢性気管支炎は、気管支の炎症による病気で、喫煙や大気汚染が主な原因である。

3.× 気管支肺炎は、呼吸音が増強する。気管支肺炎とは、気管支の炎症を伴う肺炎の一形態である。せき・痰の症状が最初からみられ、発熱が加わってくる場合が多い傾向がある。

4.× 肺結核は、必ずしも呼吸音が減弱するとはいえない(症状のステージによって異なる)。一般的に、初期の段階では、呼吸音の変化は目立たず、進行に伴い、乾性ラ音(空洞形成時)や呼吸音の変化(増強または減弱)が挙げられる。ちなみに、肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。

 

 

 

 

 

59.出血性ショックでみられるのはどれか。

1.脈拍数の減少
2.交感神経活性の低下
3.尿量の減少
4.呼吸数の減少

解答

解説

ショックとは?

ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。出血性ショックとは、外傷や、消化管などからの出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。術後出血が原因となることもある。

【ショックの診断】
・心拍数:100回/分以上
・呼吸数:22回/分以上
・低血圧(収縮期血圧90mmHg)、または通常の血圧から30mmHgの低下
・尿量:0.5mL/kg/時
・意識障害が見られる。

1.× 脈拍数は、「減少」ではなく増加する。なぜなら、出血性ショック時は、血圧や循環血液量の低下を補おうとして交感神経が活性化するため。

2.× 交感神経活性は、「低下」ではなく亢進する。なぜなら、出血性ショック時は、血圧や循環血液量の低下を補おうとして交感神経が活性化するため。

3.〇 正しい。尿量の減少は、出血性ショックでみられる。なぜなら、出血性ショックでは、血液量の減少により腎臓への血流が減少するため。腎臓は尿量を減らすことで体液の喪失を防ごうと働く。

4.× 呼吸数は、「減少」ではなく増加する。なぜなら、血圧の低下や組織への酸素供給低下などを受けて、身体は酸素不足を補うため。

 

 

 

 

 

60.生後3ヶ月検診で右股関節の開排制限を認めた。最も考えられる疾患はどれか。

1.ペルテス病
2.先天性股関節脱臼
3.大腿骨頭すべり症
4.大腿骨頭壊死症

解答

解説
1.× ペルテス病とは、小児期における血行障害による大腿骨頭、頚部の阻血性壊死が起こる原因不明の疾患である。骨頭・頚部の変形が生じる。初期症状は、跛行と股関節周囲の疼痛や大腿部にみられる関連痛で、股関節の関節可動域制限も生じる。治療は大腿骨頭壊死の修復が主な目標であり、治療後は歩容の異常がなく、通常の日常生活を送れるようになることが多い。男女比は4:1である。好発年齢は、「6~7歳」である。発生率は1万人に1.5人と言われ、そのうち約10%が両側に発症するが、たいていは片方がなってから2年以内の違う時期に反対側が発症する。

2.〇 正しい。先天性股関節脱臼が、最も考えられる疾患である。発育性股関節形成不全とは、生下時の女児(0~1歳)におこる股関節の脱臼などの状態である。現在では、先天性股関節脱臼のことを発育性股関節形成不全と呼ぶ傾向にある。変形性股関節症の原因となることが多い。片側に発症することが多く、リーメンビューゲル装具(アブミ式吊りバンド)で開排(屈曲・外転)肢位にして治療する。リーメンビューゲル装具で改善しない場合、牽引療法を、さらに治療が困難な場合は、観血的整復術や補正手術を検討する。

3.× 大腿骨頭すべり症は、男女比(3~5:1)で、思春期(10~17歳)の男児に好発する。大腿骨頭すべり症とは、大腿骨近位骨端軟骨の脆弱化、体重負荷により、大腿骨頭が頚部に対して、後下方に転位する疾患である。

4.× 大腿骨頭壊死症は、30~40歳代の男性に多い。大腿骨頭壊死症とは、大腿骨の上端の大腿骨頭の骨組織が壊死し、関節が変形・破壊する病気であり、このうち原因がはっきりしないものをいう。エックス線写真は初期では変化が見られないことが多いが、悪化すると壊死に伴う骨折となり関節面直下の軟骨下に起こりやすく(圧潰)、軟骨下骨に円弧状に走向する線状透亮像として認められる。

 

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