第21回(H25年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後81~85】

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81.末梢性顔面神経麻痺でみられる症状はどれか。

1.嗅覚障害
2.対光反射消失
3.顔面知覚低下
4.味覚障害

解答

解説

顔面神経とは?

顔面神経とは、表情筋の運動、涙腺や口蓋腺などの分泌作用制御の副交感神経、および味覚を司る感覚神経を含む混合神経である。したがって、顔面神経の障害により、顔面表情筋の障害、角膜反射低下、聴覚過敏、味覚低下(舌前2/3)、涙分泌低下、唾液分泌低下などが起こる。

1.× 嗅覚障害は、嗅神経の障害でみられる症状である。嗅覚は鼻腔上部の嗅部の粘膜上皮(嗅上皮)の嗅細胞で受容される。嗅細胞の中枢性突起が嗅神経となり、篩骨篩板を通って嗅球に入る。嗅球から後方に向かって嗅索が走り、その線維は大部分外側嗅条を通って海馬旁回の嗅覚野に達する。
①嗅細胞→②嗅神経→③嗅球→④嗅索→⑤嗅覚野(1次感覚野)に達する。
・一次中枢:①嗅細胞→②嗅神経→③嗅球まで。
・二次中枢:④嗅索→⑤嗅覚野(1次感覚野)

2.× 対光反射消失は、視神経や動眼神経の障害でみられる症状である。ちなみに、対光反射とは、強い光に対して瞳孔が収縮してまぶしさを防ぐ反射である。【求心路】視神経、【遠心路】動眼神経である。

3.× 顔面知覚低下は、三叉神経の障害でみられる症状である。三叉神経とは、咀嚼運動にかかわる脳神経である。三叉神経は、主に咀嚼筋の咀嚼運動と顔面の皮膚感覚を司る。運動神経と感覚神経を含む。

4.〇 正しい。味覚障害は、末梢性顔面神経麻痺でみられる。なぜなら、顔面神経は、舌の前2/3の味覚を支配しているため。

舌は運動神経および知覚神経

味覚:舌の前2/3「顔面神経」、後1/3「舌咽神経」、喉頭蓋を迷走神経が司っている。

知覚(痛覚):舌の前2/3「三叉神経」、後1/3「舌咽神経」が司っている。

顔面神経傷害:障害側の舌の前2/3に味覚障害が生じる。

(※図引用:「イラストでわかる歯科医学の基礎 第4版 」永未書店HPより)

 

 

 

 

 

82.ギラン・バレー症候群について正しい記述はどれか。

1.中枢神経障害である。
2.対称性の四肢脱力がみられる。
3.髄液検査で細胞数の増加を認める。
4.自然軽快は少ない。

解答

解説

ギラン・バレー症候群とは?

ギラン・バレー症候群とは、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)。

1.× 「中枢神経障害」ではなく末梢神経障害である。障害の主な部位は、末梢神経や神経根の脱髄である。ちなみに、中枢神経とは、脳や脊髄のことである。

2.〇 正しい。対称性の四肢脱力がみられる。なぜなら、先行感染による自己免疫的な機序により、左右の神経が対照的にダメージを受けやすいため。下肢から上行性に広がる弛緩性麻痺がみられやすい。

3.× 髄液検査で細胞数は、「増加」ではなく正常である。なぜなら、Guillain-Barré症候群の髄液所見において蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示すため。したがって、髄液検査は、Guillain-Barré症候群の診断で有用である。髄液検査とは、脳脊髄液を採取する検査である。通常、体を丸めて横向きになり、背骨の間に針を刺し、脊髄腔(骨髄と硬膜の間の空間)に針を進めて5~10ccの脳脊髄液を採取する。髄液の機能として、栄養を補給し老廃物を排除する働きと、脳や神経を保護する役目がある。

4.× 自然軽快は、「少ない」ではなく多い。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い(約8割)。

 

 

 

 

 

83.突発性難聴について正しい記述はどれか。

1.伝音性難聴である。
2.頭痛を伴う。
3.耳鳴りを伴う。
4.抗菌薬が有効である。

解答

解説

突発性難聴とは?

突発性難聴とは、突然、片方の耳(ごくまれに両耳)の聞こえが悪くなる病気である。突然発症した感音難聴(音をうまく感じ取れない難聴)のうち、原因がはっきりしないものをいう。原因の説としては、①有毛細胞に血液を送っている血管の血流障害や②ウイルス感染、③生活習慣(ストレスや過労、睡眠不足など)が考えられている。

1.× 「伝音性」ではなく感音性難聴である。伝音性難聴とは、外耳や中耳などの「伝音器」と呼ばれる部分の障害によって起こる難聴である。一方、感音性難聴とは、内耳や聴神経など「感音器」と呼ばれる部分の障害によって起こる難聴である。

2.× 頭痛は伴わないことが多い。突発性難聴の主な症状は、①突然の難聴、②耳鳴り、③めまい、④耳の詰まった感じなどである。

3.〇 正しい。耳鳴りを伴う。蝸牛(内耳)で音の振動を電気信号に変換し、脳に伝える役割をしている有毛細胞が、何らかの原因で傷害されることで起こる。ちなみに、耳鳴りとは、周囲に音が鳴っていないにもかかわらず、耳や頭の中で雑音が聞こえる状態のことである。

4.× 抗菌薬が有効であるとは言えない。なぜなら、耳鳴りの原因ははっきりしていないため。一般的に治療は、ステロイド療法が主に用いられ、内耳の炎症や免疫反応を抑制する。ちなみに、抗菌薬とは、細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬のことである。細菌による感染症の治療に使用される医薬品である。

メニエール病とは?

Ménière病とは、膜迷路を満たしている内リンパ液の内圧が上昇し、内リンパ水腫が生じる内耳疾患である。4大症状として、①激しい回転性のめまい、②難聴(感音難聴)、③耳鳴り、④耳閉感を繰り返す内耳の疾患である。主な原因は「内リンパ水腫」で、 その根底にはストレス・睡眠不足・疲労・気圧の変化・几帳面な性格などがあると考えられている。耳発作時では安静を第一に考えた指導を行い、間欠期では発作が起こらないようにするための指導をする。

(※画像引用:やまだカイロプラクティック院様)

 

 

 

 

 

84.身体障害者手帳の種類と原因疾患の組合せで正しいのはどれか。

1.平衡機能障害:変形性関節症
2.肢体不自由:ベル麻痺
3.そしゃく機能障害:筋萎縮性側索硬化症
4.内部障害:パーキンソン病

解答

解説

身体障害者手帳とは?

身体障害者手帳とは、身体障害者がそれを対象とする各種制度を利用する際に提示する手帳で、身体障害者が健常者と同等の生活を送るために最低限必要な援助を受けるための証明書にあたる。障害者手帳を提示することで、障害者雇用枠での就労が可能になるほか、医療費の負担減や税金の控除、割引等のサービスが受けることができる。

【認定対象になる障害】
・視覚障害
・聴覚障害
・平衡機能、音声機能・言語機能又はそしゃく機能障害
・肢体不自由
・心臓機能障害
・じん臓機能障害
・呼吸器機能障害
・ぼうこう又は直腸機能障害
・小腸機能障害
・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害
・肝臓機能障害

1.× 変形性関節症は、「平衡機能障害」ではなく肢体不自由である。平衡機能障害は、内耳や前庭系の障害により、身体のバランスを維持できない状態を指す。原因疾患は、メニエール病や突発性難聴などである。

2.× ベル麻痺は、「肢体不自由」には該当しない。したがって、ベル麻痺で、身体障害者手帳の申請は難しいことが多い。ベル麻痺とは、特発性の末梢性顔面神経麻痺のことである。他の麻痺(中枢性、感染によるRamsay-Hunt症候群、外傷、中耳炎、腫瘍など)を除いたものをさす。顔の片側の筋肉に起こる突然の筋力低下または麻痺がおこる。ちなみに、顔面神経は顔面の筋肉を動かし、唾液腺と涙腺を刺激し、舌の前方3分2の部分で味覚を感じることを可能にし、聴覚に関わる筋肉を制御している。

3.〇 正しい。筋萎縮性側索硬化症は、そしゃく機能障害に該当する。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)。

4.× パーキンソン病は、「内部障害」ではなく肢体不自由である。パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

 

 

 

 

 

85.関節可動域測定法について正しい記述はどれか。

1.自動運動で測定する際はその旨を明記する。
2.10度単位で測定する。
3.基本肢位を90度として表示する。
4.筋の短縮をみるには多関節筋を弛緩させる。

解答

解説
1.〇 正しい。自動運動で測定する際はその旨を明記する。なぜなら、関節可動域の測定は、基本は他動運動で行うため。

2.× 「10」ではなく5度単位で測定する。

3.× 基本肢位を「90度」ではなく0度として表示する。例えば、肘関節の屈曲の測定では、肘関節が伸展位を0度とし、屈曲の角度を測定する。

4.× 必ずしも、筋の短縮をみるには多関節筋を弛緩させる必要はない。例えば、足関節背屈に関して、単関節筋のヒラメ筋と、多関節筋の腓腹筋のいずれかの短縮を調べるとき、膝関節伸展・屈曲位で検査することで、どちらかの筋の短縮を見ることができる。膝関節伸展位で足関節背屈制限がみられ、膝関節屈曲位で足関節背屈制限がみられないとき、多関節筋の腓腹筋の短縮が疑われる。

 

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