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86.痙縮の評価に用いるのはどれか。
1.徒手筋力テスト
2.アシュワーススケール
3.内田-クレペリンテスト
4.バーセルインデックス
解答2
解説
徒手筋力テスト(MMT:manual muscle testing)は、筋力を測定するための方法のひとつである。筋収縮のまったくみられない場合「0」、正常を「5」として6段階で評価する。
0(Zero:ゼロ):「筋収縮のまったくみられない」状態である。
1(trace:不可):「関節の運動は起こらないが、筋のわずかな収縮は起こる。筋収縮がみえる、または触知できる」状態である。
2(poor:可):「重力を除けば全可動域動かせる」状態である。
3(fair:良):「重力に打ち勝って全可動域動かせるが、抵抗があれば行えない」状態である。
4(good:優):「ある程度、徒手抵抗を加えても、全可動域動かせる」状態である。
5(normal:正常):「強い抵抗(最大抵抗)を加えても、完全に運動できる」状態である。
1.× 徒手筋力テストとは、筋力を測定するための方法のひとつである。筋収縮のまったくみられない場合「0」、正常を「5」として6段階で評価する。
2.〇 正しい。アシュワーススケールは、痙縮の評価に用いる。Modified Ashworth scale(アシュワーススケール)は、脳血管障害片麻痺患者などの痙縮の程度の評価法である(※詳しい評価判定は下参照)。
3.× 内田-クレペリンテストとは、心理検査のなかでも「作業検査法」と呼ばれる検査である。簡単な一桁の足し算を1分毎に行を変えながら、休憩をはさみ前半と後半で各15分間ずつ合計30分間行う。全体の計算量(作業量)、1分毎の計算量の変化の仕方(作業曲線)と誤答から、受検者の能力面と性格や行動面の特徴を総合的に測定する。
4.× バーセルインデックスは、日常生活動作の評価である。評価項目は10項目(①食事、②椅子とベッド間の移乗、③整容、④トイレ動作、⑤入浴、⑥移動、⑦階段昇降、⑧更衣、⑨排便コントロール、⑩排尿コントロール)あり、100点満点で評価される。
0:筋緊張の亢進がない
1:軽度の筋緊張亢進があり、ひっかかりや可動域の終末でわずかな抵抗がある
1+:軽度の筋緊張亢進があり、ひっかかりと引き続く抵抗感が残りの可動域(1/2以内)にある
2:さらに亢進した筋緊張が可動域ほぼ全域にあるが、他動運動は可能
3:顕著な筋緊張亢進があり、他動運動は困難
4:他動運動では動かない。
87.脳卒中片麻痺患者に用いる装具はどれか。
1.PTB式免荷装具
2.股関節外転装具
3.金属支柱付膝装具
4.靴べら式短下肢装具
解答4
解説
1.× PTB式免荷装具とは、膝蓋腱部で荷重を受けるソケットであり、下腿義足に対する標準的なソケットである。下腿骨骨折の手術後、部分荷重より開始とならないような重度のケースや、早期より免荷での歩行導入が必要な症例で用いられる。
2.× 股関節外転装具とは、股関節外転を保持する目的であり、主に、先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)やPerthes病の治療に用いられる装具である。大腿骨頭が常に寛骨臼に収まるように保持し、大腿骨頭の形態を保つようにする働きを持つ。
3.× 金属支柱付膝装具とは、大腿部から下腿部までの構造で、膝関節のコントロールが必要な方に用いられる。つまり適応疾患としては、前・後十字靭帯損傷や内・外側側副靭帯損傷、変形性膝関節症など、膝の動揺を防止する用途で使用することが多い。麻痺に対しても立脚中期の膝ロッキングに対して効果があるものもあるが、膝装具であるため内反尖足など足部のコントロールまで行えないため優先度は低い。
4.〇 正しい。靴べら式短下肢装具は、脳卒中片麻痺患者に用いる装具である。短下肢装具とは、足首の関節の動きを制限し、固定・動揺・拘縮などの治療を目的とした装具である。脳卒中患者の歩行の際に足首の固定や安定性の向上のために使用される。
88.異常歩行とその原因疾患との組合せで正しいのはどれか。
1.小刻み歩行:パーキンソン病
2.トレンデレンブルグ歩行:変形性膝関節症
3.失調性歩行:脊髄損傷
4.痙性歩行:ギラン・バレー症候群
解答1
解説
1.〇 正しい。小刻み歩行:パーキンソン病
・小刻み歩行とは、その名の通り、小刻みかつ足を引きずるような歩行である。
・パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。
2.× トレンデレンブルグ歩行:変形性膝関節症
・トレンデレンブルグ歩行とは、動揺歩行やアヒル歩行ともいい、肢帯筋の筋力低下(中殿筋の筋力低下やDuchenne型筋ジストロフィー)で起こる。
・変形性膝関節症は、①疼痛、②可動域制限、③腫脹、④関節変形などがみられる。進行度にかかわらず、保存療法が第一選択となる。減量や膝に負荷のかかる動作を回避するような日常生活動作指導、筋力トレーニングやストレッチなどの運動療法、装具や足底板などの装具療法、鎮痛薬や関節内注射などの薬物療法が行われる。
3.× 失調性歩行:脊髄損傷
・失調性歩行(酩酊歩行、よろめき歩行、ワイドベースとも)は、運動失調(小脳障害・前庭障害)で起こる歩行障害である。
・脊椎損傷とは、脊椎(背骨)に過大な外力が加わって、骨折や脱臼を生じる外傷である。外傷性脊髄損傷の原因は、圧倒的に交通事故によるものが多く、原因の40%を超える。若年者ではバイクによる事故が多く、中高年者では自動車事故が多い。次いで、高所からの転落・転倒・スポーツによるものとなっているが、スノーボードによる事故も増えている。データとして、推定年間発生率は100万人あたり49人、頚髄損傷は88.1%、発症年齢中央値70.0歳、男女比3:1、原因は転倒が38,6%、交通事故が20.1%と報告されている(※参考データ:日本脊髄障害医学会による脊髄損傷全国発生調査の結果)。
4.× 痙性歩行:ギラン・バレー症候群
・痙性歩行とは、ハサミ歩行ともいい、膝を伸ばしたまま振り出す歩行である。上位運動ニューロン障害にみられる。
・ギラン・バレー症候群とは、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)。
89.脳卒中片麻痺患者の対応で適切な記述はどれか。
1.患側の可動域訓練では素早く関節を動かす。
2.麻痺側の肩関節亜脱臼は徒手的整復を行う。
3.杖の高さは床から臍部の高さまでとする。
4.利き手が完全麻痺の場合は利き手交換訓練を行う。
解答4
解説
1.× 患側の可動域訓練では、「素早く」ではなくゆっくり関節を動かす。なぜなら、患側は感覚が低下している可能性が高く、素早く動かすと、痙縮を誘発したり、筋や軟部組織に損傷を与える可能性があるため。ゆっくりとした動きで、安全かつ正確に可動域を広げることが重要である。
2.× 麻痺側の肩関節亜脱臼は、「徒手的整復」ではなく三角巾を行う。なぜなら、亜脱臼に対して徒手的整復を行うことは、患者に痛みやさらなる損傷を与えるリスクがあるため。
3.× 杖の高さは、床から「臍部」ではなく大転子の高さである。患者が杖を握ったときに肘が15~30度程度屈曲する高さにすることも多い。
4.〇 正しい。利き手が完全麻痺の場合は、利き手交換訓練を行う。利き手交換訓練とは、健側の方を利き手としての役割を果たす訓練である。これは、脳卒中片麻痺で利き手が完全麻痺した場合、生活の質(QOL)を維持するため行われる。例えば、書字や食事動作などの日常生活動作を健側で行えるように練習することである。
90.脊髄損傷による完全対麻痺患者に対する社会復帰支援で正しいのはどれか。
1.電動車いすでの屋外移動
2.下肢装具での実用歩行
3.自動車運転免許の取得
4.入浴サービスの手配
解答3
解説
(※画像引用:Job Medley様HPより)
1~2.4.× 電動車いすでの屋外移動/下肢装具での実用歩行/入浴サービスの手配は、「活動(日常生活の支援)」に関する支援である。活動とは、個人による課題や行為の遂行を示す。ただし、完全対麻痺では、下肢の機能が完全に喪失しているため、下肢装具を使用しても実用的な歩行は困難な可能性が高い。
3.〇 正しい。自動車運転免許の取得は、脊髄損傷による完全対麻痺患者に対する社会復帰支援である。社会復帰支援とは、患者が機能を回復し、生活の質(QOL)を向上させ、社会復帰を果たすことを目指す。