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56.低カリウム血症がみられるのはどれか。
1.橋本病
2.アジソン病
3.クッシング症候群
4.褐色細胞腫
解答3
解説
1.× 橋本病とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。
2.× アジソン病とは、副腎皮質機能低下症ともいい、るいそう(やせ)と色素沈着など特徴的である。副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。
3.〇 正しい。クッシング症候群は、低カリウム血症がみられる。なぜなら、コルチゾールには、鉱質コルチコイド作用(アルドステロン様作用)があり、ナトリウム保持とカリウム排泄を促進するため。ちなみに、クッシング症候群は、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により起こる内分泌系疾患である。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。主に、副腎腺腫、副腎癌、副腎過形成、ACTH産生下垂体腺腫などによりコルチゾールの過剰分泌が起こる。
4.× 褐色細胞腫とは、交感神経(自律神経の一種)に働きかけるホルモンであるカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)の産生能を有する腫瘍である。主に、腎臓の上に位置する副腎髄質から発生する。カテコラミンは、交感神経に働いて、身体中の血管を収縮させたり、心臓の収縮能を増加させることで、脳や腎臓などの臓器への血流調整に、重要な役割を果たす。褐色細胞腫ではこのカテコラミンが過剰に分泌され、高血圧や頭痛、動悸、発汗、不安感、便秘、腸閉塞(麻痺性イレウス)など多様な症状を呈する。また、糖尿病、脂質異常症を併発することもある。
低カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が3.5mmol/Lを下回っている状態を指し、筋力低下や筋肉のけいれん、麻痺、不整脈などの症状を引き起こすことがある。また、腎臓の機能が低下して尿の排出量が増加する可能性もあり、長期間続くと腎臓に永続的なダメージを与える恐れがある。
57.低身長となる疾患はどれか。
1.バセドウ病
2.マルファン症候群
3.シーハン症候群
4.クレチン症
解答4
解説
1.× バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。ちなみに、眼球突出・甲状腺腫・頻脈をメルゼブルグの三徴候という。
2.× マルファン症候群とは、遺伝性疾患で、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。つまり、全身の結合組織がもろくなるため、大動脈癌や大動脈解離を生じやすい。
3.× シーハン症候群とは、分娩時に大量出血してショックに陥り、脳にある下垂体に血液が行き届かなくなり、下垂体の組織が障害(変性や壊死)されて働きが下がること(下垂体機能不全)によって起こる一連の症状である。したがって、下垂体から分泌されるホルモンの量が低くなるため、産後の乳汁分泌低下などが起こる。
4.〇 正しい。クレチン症は、低身長となる疾患である。クレチン症とは、先天性の甲状腺機能低下症であり、独特の顔貌と低身長、知能低下を来たす。症状として、元気がない、体重が増えない、かすれた声、手足が冷たい、むくみ、皮膚がカサカサ、黄疸が長引く、出べそが目立つ、舌がぼってり大きい、小泉門(後頭部の骨の き間)が大きいなどがみられる。
58.間接ビリルビンの増加する貧血はどれか。
1.溶血性貧血
2.巨赤芽球性貧血
3.鉄欠乏性貧血
4.再生不良性貧血
解答1
解説
総ビリルビンとは、赤血球が壊れたときにできる黄色い色素のことである。総ビリルビンは、①間接ビリルビンと②直接ビリルビンをあわせていう。基準値:0.2〜1.2mg/dLである。肝細胞の障害により、直接ビリルビンが上昇する。急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がん、自己免疫性肝炎などがあげられる。腎臓からも排泄され、主に肝臓で代謝されるため、肝臓や胆嚢の状態を知るための重要な指標となる。
1.〇 正しい。溶血性貧血は、間接ビリルビンの増加する貧血である。溶血性貧血とは、血管の中を流れる赤血球が破壊される(溶血)ことにより起こる貧血の一種である。これにより、血液中の赤血球の数が減少し、貧血状態になる。溶血性貧血は、血液中のビリルビン(赤血球の分解産物)の量が増加することで黄疸となる。
2.× 巨赤芽球性貧血とは、ビタミンB12あるいは葉酸の不足が原因の、骨髄に巨赤芽球が出現する貧血の総称である。偏食や過度の飲酒などを背景にビタミン欠乏症の患者がみられる。貧血の症状(動悸や息切れ、疲労感)の他に、萎縮性胃炎やハンター舌炎(味覚障害や舌の痛みを伴う炎症)など消化器系に異常をきたす。また、ビタミンB12欠乏症において、手足のしびれ、思考力の低下、性格変化などの神経症状もみられる。
3.× 鉄欠乏性貧血とは、体内に流れている赤血球に多く含まれるヘモグロビンと鉄分が欠乏する事により、酸素の運搬能力が低下し全身に十分な酸素が供給されず倦怠感や動悸、息切れなどの症状がみられる貧血の種類の中でも最も多く特に女性に多い疾患である。原因としては、栄養の偏りなどによる鉄分の摂取不足、消化性潰瘍やがん、痔などの慢性出血による鉄の喪失、腸管からの鉄吸収阻害などがあげられる。
4.× 再生不良性貧血とは、骨髄の造血幹細胞の減少と、それによる末梢血の汎血球減少を主徴とする症候群で、骨髄で血液が造られないために血液中 の赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減ってしまう病気である。白血球(Tリンパ球)の働きが何らかの原因で異常をきたし、自分自身の造血幹細胞を攻撃して壊してしまうことが原因と考えられている。
59.白血球の減少がみられる疾患はどれか。
1.全身性エリテマトーデス
2.高尿酸血症
3.関節リウマチ
4.悪性貧血
解答1・4
解説
1.〇 正しい。全身性エリテマトーデスは、白血球の減少がみられる疾患である。なぜなら、免疫系が自己の組織や細胞を攻撃し、白血球の減少が見られるため。ちなみに、全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。診断基準として、顔面紅斑、円板状皮疹、光線過敏症、口腔内潰瘍、抗核抗体陽性など4項目以上満たすと全身性エリテマトーデス(SLE)を疑う。
2.× 高尿酸血症とは、血清尿酸値が7.0mg/dLを正常上限とし、これを超えるものと定義する。男性が圧倒的に多く男女比約20:1の割合である。高尿酸血症の原因は、一般的に生活習慣の乱れによるものが大半である。食事ではアルコールは重要であり、特にビールのとりすぎは高尿酸血症の原因としてよく知られている。続発性高尿酸血症とは、別の病気や薬剤などによって二次的に高尿酸血症となるもの。原因として、白血病、腎不全、骨髄腫、先天性尿酸代謝異常、利尿菜やアスピリンの服用などである。高尿酸血症は、体内における産生亢進(産生過剰型)と腎からの排泄低下(排泄低下型)などに起因する。
3.× 関節リウマチとは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
4.〇 正しい。悪性貧血は、白血球の減少がみられる疾患である。なぜなら、ビタミンB12や葉酸は、赤血球だけでなく、白血球や血小板の生成にも重要な役割を果たしているため。ちなみに、悪性貧血とは、ビタミンB12または葉酸の欠乏によって生じる巨赤芽球性貧血の中である。最も発生頻度が高いビタミンB12欠乏性の貧血が悪性貧血である。ビタミンB12は胃液中の内因子との結合によって小腸下部で吸収され、葉酸とともに骨髄内での赤血球生成に利用される。悪性貧血は、高度の萎縮性胃炎による内因子分泌の欠乏が一次的原因である。その結果、回腸末端部からのビタミンB12の吸収障害をおこす。欠乏症状として①動悸、②めまい、③耳鳴り、④全身倦怠感、⑤舌炎、⑥悪心、⑦嘔吐、⑧下痢、⑨神経症状として四肢の知覚異常、⑩歩行困難、⑪視力障害などがおこる。時には興奮,軽い意識混濁などの精神障害をきたすこともある。
60.JCS(日本昏睡尺度)における意識障害の中で最も軽いのはどれか。
1.普通の大きさの声で呼ぶと開眼する。
2.自分の生年月日を言えない。
3.痛みを加えると顔をしかめる。
4.痛みを加えると開眼する。
解答2
解説
1.× 普通の大きさの声で呼ぶと開眼する。
これは、Ⅱ桁の10に該当する。
2.〇 正しい。自分の生年月日を言えない。
これは、Ⅰ桁の3に該当する。したがって、JCSにおける意識障害の中で最も軽い。
3.× 痛みを加えると顔をしかめる。
これは、Ⅲ桁の200に該当する。
4.× 痛みを加えると開眼する。
これは、Ⅲ桁の30に該当する。
(※図引用:「意識レベル(JCS:Japan Coma Scale)」堺市HPより)