第24回(H28年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後156~160】

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156.免疫機能低下の患者に適した灸はどれか。

1.紅灸
2.打膿灸
3.焦灼灸
4.隔物灸

解答

解説
1.× 紅灸は、薬物灸に該当する。したがって、免疫が低下している場合、皮膚炎を発症する可能性がある。ちなみに、薬物灸とは、艾を使用せず、薬物を塗布して刺激を皮膚に加える方法ある。紅灸、うるし灸、水灸、油灸、硫黄灸など。

2.× 打膿灸は、有痕灸である。刺激が強すぎる場合がある。ちなみに、打膿灸(弘法の灸)は、小指~母指頭大程度の艾炷を直接施灸して火傷を作り、膏薬を貼付して化膿を促す灸法。小児や虚弱者には不適である。

3.× 焦灼灸は、有痕灸である。刺激が強すぎる場合がある。ちなみに、焦灼灸は、イボ、ウオノメ、タコなどに用いる灸法。施灸部の皮膚、組織を破壊する。タール成分(カテコール)の作用がある。

4.〇 正しい。隔物灸は、免疫機能低下の患者に適した灸である。隔物灸は、艾炷と皮膚の間に物を置いて施灸する方法である。塩灸、韮灸、墨灸、ニンニク灸、味噌灸、生姜灸、ビワの葉灸、押灸など。

 

 

 

 

 

157.灸刺激の伝導に関与するのはどれか。

1.Ⅱ群線維
2.脊髄後角
3.後索核
4.赤核

解答

解説
1.× Ⅱ群線維は、触圧覚を伝える。

2.〇 正しい。脊髄後角は、灸刺激の伝導に関与する。外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)は、感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野の経路をたどる。

3.× 後索核は、深部感覚(振動覚、位置覚)の伝導路である。後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野をたどる。

4.× 赤核とは、不随意の運動の調節(赤核振戦:粗大な動作で誘発される振戦)を担う。赤核脊髄路とは、運動野と小脳からの求心性線維を受け取るため、間脳と運動ニューロンを通じて脊髄の活動に影響を与える錐体外路として機能するものである。

 

 

 

 

 

158.ラットの背部への施灸において同一脊髄レベルでの神経損傷により軸索反射が消失するのはどれか。

1.脊髄神経を脊髄神経節の末梢側で切断
2.脊髄神経前根を切断
3.交感神経を灰白交通枝で切断
4.脊髄後角を破壊

解答

解説

(図引用:「前根」wikiより)

軸索反射とは?

軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

1.〇 正しい。脊髄神経を脊髄神経節の末梢側で切断は、ラットの背部への施灸において同一脊髄レベルでの神経損傷により軸索反射が消失する。なぜなら、軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象であるため。つまり、シナプスを介さないため。

2.× 脊髄神経前根を切断しても、軸索反射は残存する。なぜなら、軸索反射は、シナプスを介さない反射であるため。ちなみに、脊髄神経前根とは、運動神経根のことで、脊髄からの信号を筋肉に伝えて筋肉の運動(収縮)を引き起こす神経線維のことをさす。

3.× 交感神経を灰白交通枝で切断しても、軸索反射は残存する。なぜなら、軸索反射は、シナプスを介さない反射であるため。ちなみに、灰白交通枝とは、交感神経系の枝の1つで、無髄の節後神経線維から成る束である。汗腺・立毛筋・皮膚血管に分布する交感神経(遠心性神経)である。

4.× 脊髄後角を破壊しても、軸索反射は残存する。なぜなら、軸索反射は、シナプスを介さない反射であるため。ちなみに、脊髄後角は、外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)のひとつである。伝導路は「感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野」である。

 

 

 

 

 

159.ブラジキニン発痛作用を増強させるのはどれか。

1.CGRP
2.エンケファリン
3.サブスタンスP
4.プロスタグランジン

解答

解説
1.× CGRPとは、カルシトニン遺伝子関連ペプチドのことで、片頭痛の痛みの直接の原因とされているタンパク質である。脊髄後根神経節で産生され、中枢および末梢の両側性に作用する。末梢血管を著しく拡張させ、血管透過性を亢進させる働きを持つ。軸索反射(フレア現象)の神経伝達物質には(CGRPサブスタンスP)が考えられている。

2.× エンケファリンは、内因性オピオイドのひとつである。ちなみに、内因性オピオイドとは、体内で作られ、生理的な状況や危機が迫ったときに放出される物質され、脳や脊髄に存在するオピオイド受容体に作用し、鎮痛作用をもたらす。主に、エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィン、エンドモルフィンなどあげられる。また、痛みによる不快な感覚の抑制、下降性抑制神経系の賦活化、恐怖という情動の抑制、脳内報酬系における重要な伝達物質でもある。

3.× サブスタンスPとは、ポリモーダル受容器の興奮で生じる軸索反射により、受容器末端から放出される。軸索反射(フレア現象)の神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

4.〇 正しい。プロスタグランジンは、ブラジキニン発痛作用を増強させる。プロスタグランジンとは、アラキドン酸から産生される物質で、ブラジキニンの発痛作用増強、血管拡張、子宮や気管支の平滑筋収縮、血小板の凝集をもつ。

MEMO

ケミカルメディエーターとは、化学伝達物質ともいい、細胞間の情報伝達に作用する化学物質のことである。肥満細胞が放出するケミカルメディエーターは、さまざまなアレルギー反応(血管透過性の亢進、血流の増加、炎症細胞の遊走など)を起こす。

【例】
・ヒスタミン
・ロイコトリエン
・トロンボキサン
・血症板活性化因子
・セロトニン
・ヘパリンなど。

 

 

 

 

 

160.虚弱体質を改善する灸の作用はどれか。

1.防衛作用
2.免疫作用
3.調整作用
4.転調作用

解答

解説
1.× 防衛作用とは、白血球や大食細胞などを増加させ、生体の防衛力を高めるものを指す。

2.× 免疫作用とは、免疫能を高めるものを指す。

3.× 調整作用(鎮静作用)とは、異常な機能の興奮(疼痛、痙攣など)に対して鎮静させる。

4.〇 正しい。転調作用は、虚弱体質を改善する灸の作用である。転調作用とは、アレルギー体質や自律神経失調症を改善し、体質を強壮にするものを指す。

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