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問題121 低張性脱水をきたすのはどれか。
1.大量の発汗
2.起立性の低血圧
3.尿崩症による多尿
4.運動後の水道水大量摂取
解答4
解説
脱水とは、生体において体液量が減少した状態をいう。水やナトリウムの喪失が原因で起こる。この際、ナトリウムの喪失を伴わず水欠乏を起こす病態を高張性脱水(水欠乏性脱水)や一次脱水という。脱水症状とは、体内の水分が2%失われると、のどの渇きを感じ、運動能力が低下しはじめる。3%失われると、強いのどの渇き、ぼんやり、食欲不振などの症状がおこり、4~5%になると、疲労感や頭痛、めまいなどの脱水症状が現れる。10%以上になると、死にいたることもある。
【脱水の3タイプ】
①高張性脱水:水欠乏性脱水や一次脱水ともいう。汗をたくさんかいて喉が渇いているときにみられる脱水で、電解質より水分の方がより多く失われ、体液が濃くなっている状態である。
②等張性脱水:下痢や嘔吐によって体液が一気に失われたときに起こり、水分と電解質が同等の割合で失われる脱水である。
③低張性脱水:たくさん汗をかいているのにお茶や水などの電解質があまり含まれない飲み物を大量に飲んだ時に起こる脱水である。水分よりも電解質が多く失われている状態である。
1.× 大量の発汗は、高張性脱水をきたす(※上参照)。
2.× 起立性の低血圧が原因で、脱水が起こるとはいいにくい。なぜなら、起立性低血圧の機序として、自律神経系の調節障害や循環血液量の不足などがあげられるため。脱水が原因で循環血液量が減少している場合、起立性低血圧は脱水の症状として現れることがあるが、起立性低血圧そのものが脱水を引き起こすとはいえない。
・起立性低血圧とは、急に立ち上がったり、起き上がった時に血圧が低下し、軽い意識障害、いわゆる立ちくらみをおこすことである。機序として、血圧調節機能がうまく働かず血圧が低下し、脳血流が減少して、めまいや立ちくらみなどを起こす。仰臥位・坐位から立位への体位変換後3分以内に、以下のいずれかが認められるとき、起立性低血圧と診断する。①収縮期血圧が20mmHg以上低下、②収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下、③拡張期血圧が10mmHg以上低下。
3.× 尿崩症による多尿は、高張性脱水をきたす。
・尿崩症とは、多尿 (3L/日以上)を呈する状態である。尿崩症には2種類あり、①中枢性尿崩症(抗利尿ホルモンの分泌低下)と、②腎性尿崩症(ホルモンの作用障害)がある。
4.〇 正しい。運動後の水道水大量摂取は、低張性脱水をきたす。
低張性脱水とは、体内の水分量は比較的保たれているか、あるいは増加しているにもかかわらず、ナトリウム濃度が異常に低下してしまう状態を指す。これは、水分摂取に対して電解質の補充が不足している場合に起こりやすい。
水中毒とは、水分を大量に摂取することで血液中のナトリウム濃度(塩分の濃度)が低下し、「低ナトリウム血症」という状態に陥ってしまい、場合によっては命の危険にさらされることである。 主な症状としては、めまいや頭痛、多尿・頻尿、下痢などがあげられる。血中のナトリウムの正常値は、136~147mEq/lであるが、125mEq/L以下となれば、低ナトリウム性脳症が生じる。
問題122 常時再生しているのはどれか。
1.心筋
2.血管内皮
3.中枢神経
4.胃粘膜上皮
解答4
解説
1.× 心筋(心筋細胞:心筋線維)は、一度成熟するとほとんど分裂能力を失う。なぜなら、心筋は、心臓のポンプ機能を担う非常に特殊な細胞であるため。損傷を受けると、その部位は線維化(瘢痕組織の形成)によって置き換えられる(心筋梗塞など)。
2.× 血管内皮より優先されるものが他にある。
・血管内皮細胞とは、血管の内表面を覆う扁平な細胞である。血管内皮細胞になる基の細胞(血管内皮前駆細胞)は、骨髄のなかに多くある。
3.× 中枢神経は、一度成熟するとほとんど分裂能力を失う。なぜなら、中枢神経は、非常に複雑なネットワークを形成しているため。神経細胞が死滅した場合、機能的な回復は残された神経細胞の再編成や他の部位による代償に頼ることが多い。
4.〇 正しい。胃粘膜上皮は、常時再生している。なぜなら、胃の内部は、消化液である強力な胃酸に常にさらされているため。この胃酸から組織を保護するために、胃粘膜が常に新しく生まれ変わる必要がある。
問題123 肉芽腫性炎を引き起こすのはどれか。
1.梅毒
2.間質性肺炎
3.偽膜性大腸炎
4.アレルギー性鼻炎
解答1
解説
肉芽腫性炎症とは、増殖性炎症の一つであり、肉芽腫(マクロファージ、類上皮細胞、多核巨細胞の増生からなる結節性の肉芽)の形成が特徴である。肉芽腫は慢性炎症などで見られる。
1.〇 正しい。梅毒は、肉芽腫性炎(ゴム腫)を引き起こす。
・梅毒は、スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマによって引き起こされる感染症である。梅毒の第三期や先天梅毒では、全身の様々な臓器にゴム腫と呼ばれる特徴的な肉芽腫性病変を形成する(※下参照)。
2.× 間質性肺炎とは、肺の間質組織の線維化が起こる疾患の総称で、慢性的かつ進行性の特徴を持つ。病因は、喫煙、職業上の曝露、感染、免疫不全などである。症状は咳、痰、呼吸困難などで、早期には特徴的な症状がないこともある。
3.× 偽膜性大腸炎とは、主に抗菌薬の使用によりクロストリジウム・ディフイシル菌(Clostridium difficile:CD)という菌が異常に増殖して起きる感染性大腸炎の1種である。内視鏡検査で大腸の壁に小さい円形の膜が見られる。薬剤服用後数日から2~3週間後に下痢、発熱、腹痛など の症状が出始める。
4.× アレルギー性鼻炎とは、アレルゲンが鼻粘膜から侵入し免疫反応が起こることによって、鼻水・鼻づまり・くしゃみなどの症状が引き起こされる病気である。通年性アレルギー性鼻炎(一年を通して症状が出るタイプ)と、季節性アレルギー性鼻炎(特定の季節に症状が出るタイプ、いわゆる花粉症)とがあり、両者を合併しているタイプもみられる。出血性炎症とは、炎症巣の滲出性炎症のことであり、著しい出血がみられる。多量の赤血球細胞を含んでいる炎症細胞なので、血管壁は傷害を受けている。 小児のインフルエンザ肺炎、劇症型肝炎、日本脳炎、肺出血で見られる。
梅毒とは、5類感染症の全数把握対象疾患であり、スピロヘータ(細菌)の一種である梅毒トロポネーマ感染により発症し、この梅毒トロポネーマが脳の実施まで至ると、進行性麻痺となる。性行為や胎盤を通じて感染する。梅毒に特徴的な症状として、陰茎・外陰部を中心に生じる無痛性の硬結(指で触れることのできる硬い丘疹)やバラ疹(全身にできる淡い紅斑)などがあり、進行すると神経系の病変を生じて死に至ることもある。
【臨床的特徴】
Ⅰ期梅毒:感染後3~6週間の潜伏期の後に、感染局所に初期硬結や硬性下疳、無痛性の鼠径部リンパ節腫脹がみられる。
Ⅱ期梅毒:感染後3か月を経過すると皮膚や粘膜に梅毒性バラ疹や丘疹性梅毒疹、扁平コンジローマなどの特有な発疹が見られる。
経過晩期:感染後3年以上を経過すると顕症梅毒としてゴム腫、梅毒によると考えられる心血管症状、神経症状、眼症状などが認められることがある。なお、感染していても臨床症状が認められないものもある。先天梅毒は、梅毒に罹患している母体から出生した児で、①胎内感染を示す検査所見のある症例、②Ⅱ期梅毒疹、骨軟骨炎など早期先天梅毒の症状を呈する症例、③乳幼児期は症状を示さずに経過し、学童期以後にHutchinson3徴候(実質性角膜炎、内耳性難聴、Hutchinson歯)などの晩期先天梅毒の症状を呈する症例がある。また、妊婦における梅毒感染は、先天梅毒のみならず、流産及び死産のリスクとなる。(※一部引用:「梅毒」厚生労働省HPより)
問題124 細胞性免疫が低下しないのはどれか。
1.伴性無ガンマグロブリン血症
2.後天性免疫不全症候群(AIDS)
3.重症複合型免疫不全症(SCID)
4.ディジョージ(DiGeorge)症候群
解答1
解説
(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)
アレルギー反応の分類法としては、免疫反応による組織傷害の機序から分類したGellとCoombsの分類が使われることが多い。本分類はその反応に関与する抗体や細胞の違いにより分類されるが、現象的には皮膚反応出現にかかる時間と反応の性状により分けられる。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ型は血清抗体が関与する体液性免疫(humoral immunity)、Ⅳ型は感作リンバ球による細胞性免疫(cellularimmunity)と大別される。
(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)
1.〇 伴性無ガンマグロブリン血症は、細胞性免疫が低下しない。X連鎖(伴性)無ガンマグロブリン血症とは、遺伝性の免疫不全疾患で、X(性)染色体上の遺伝子の突然変異に起因した病気であり、B細胞がなく、抗体(免疫グロブリン)の量が極めて少ないか、まったくみられない。したがって、せきを繰り返したり、鼻、耳、皮膚、副鼻腔、肺の感染症を生後約6カ月から繰り返すことが多い。
2.× 後天性免疫不全症候群(AIDS)は、細胞性免疫が低下する。
・後天性免疫不全症候群は、ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉によって引き起こされ、伝播は主に性行為、血液接触、母子感染によるものである。ちなみに、ヒト免疫不全ウイルスは、人の免疫細胞に感染してこれを破壊し、最終的に後天性免疫不全症候群を発症させるウイルスである。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することで後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症を予防できるようになってきている。しかし、治療を受けずに自然経過した場合、免疫力の低下により様々な障害が発現する。
3.× 重症複合型免疫不全症(SCID)は、細胞性免疫が低下する。
・重症複合型免疫不全症とは、先天的(生まれつき)、体の中の免疫細胞(T細胞やB細胞など)がうまく働かず、感染に対する抵抗力が低下する病気である。細菌やウイルスなどの病原体に感染しやすくなり、重篤な肺炎、中耳炎、膿瘍、髄膜炎などを繰り返す。
4.× ディジョージ(DiGeorge)症候群は、細胞性免疫が低下する。
・デイジョージ症候群とは、胸腺低形成とも言い、免疫不全を起こす先天性の病気で、出生時に胸腺がまったくないか、あっても未発達な状態を指す。小児の場合、心臓の異常、副甲状腺未発達または欠如、胸腺の未発達または欠如、特徴的な顔つきなど、いくつかの異常が生まれつきみられる。
問題125 Ⅰ型アレルギーはどれか。
1.血清病
2.気管支喘息
3.接触性皮膚炎
4.自己免疫性溶血性貧血
解答2
解説
(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)
Ⅰ型アレルギーとは、肥満細胞や好塩基球からの化学伝達物質の放出によって起こる即時型アレルギーで、アレルゲンに接触した数分後に、皮膚・粘膜症状が出現する。まれにアナフィラキシーショックとなり重篤化(血圧低下、呼吸困難、意識障害を伴う)することがある。
1.× 血清病は、Ⅲ型アレルギーに分類される。
・血清病とは、動物由来の抗毒素などのタンパク質を体内に入れたとき、免疫反応により発熱・発疹・関節痛などが起こるアレルギー反応である。主に投与から1〜2週間後に症状が現れ、一時的なものですが注意が必要である。
・Ⅲ型アレルギーとは、免疫複合体型やArthus型と呼ばれ、抗体はIgG・IgMが関与するが、免疫複合体も関与するアレルギーである。免疫複合体が血管内皮などの組織に沈着すると補体を活性化し、結果として組織障害を生じる。血清病、全身性エリテマトーデスなどに関連する。遅発型で3~8時間で最大の紅斑と浮腫が生じる。
2.〇 正しい。気管支喘息は、Ⅰ型アレルギーである。
・気管支喘息とは、主に気管支に炎症が起きている状態である。炎症により気管支が狭くなったり(狭窄)、刺激に対して過敏な反応を示したりする。喘息は乳幼児期に発症することが多く、全体の60~70%が2~3歳までに発症する。子どもの喘息の多くは思春期の頃には症状がよくなるが、そのうちの約30%は大人になっても続くといわれている。
・Ⅰ型アレルギーとは、肥満細胞や好塩基球からの化学伝達物質の放出によって起こる即時型アレルギーで、アレルゲンに接触した数分後に、皮膚・粘膜症状が出現する。まれにアナフィラキシーショックとなり重篤化(血圧低下、呼吸困難、意識障害を伴う)することがある。
3.× 接触性皮膚炎は、Ⅳ型アレルギーに分類される。
・接触性皮膚炎とは、アレルゲンや刺激物質(化学薬品、植物、金属など)が、皮膚に触れた物質に対して免疫系が反応を起こすことで発生する。 皮膚が問題の物質に最初に触れると、皮膚がその物質に対して敏感になる。これを感作という。 物質に一度触れただけで感作が生じることもあれば、何度も触れなければ生じないこともある。
・Ⅳ型アレルギーとは、遅延型細胞性免疫やツベルクリン型とも呼ばれ、感作T細胞が関与するアレルギーである。感作T細胞と抗原の反応によって産生・放出されたサイトカインが局所の細胞性免疫反応を活性化し、炎症と組織障害が生じる。ツベルクリン反応、接触性皮膚炎などに関連する。
4.× 自己免疫性溶血性貧血は、Ⅱ型アレルギーに分類される。
・自己免疫性溶血性貧血とは、体の免疫が誤って自分の赤血球を攻撃・破壊してしまう病気である。これにより赤血球が減少し、貧血や黄疸、だるさなどの症状が現れる。原因不明のこともあるが、治療にはステロイドなどが使われる。
・Ⅱ型アレルギーとは、細胞障害型や細胞融解型と呼ばれ、抗体はIgG・IgMが関与するアレルギーである。自己の細胞にこれらが結合し、補体の活性化による細胞融解や食細胞による貧食を起こす。血液型不適合輸血による溶血、自己免疫性溶血性貧血などに関連する。