第33回(R7年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前61~65】

 

問題61 内分泌疾患と症状の組合せで正しいのはどれか。

1.アジソン病:色素沈着
2.バセドウ病:テタニー
3.クッシング病:眼球突出
4.原発性アルドステロン症:満月様顔貌

解答

解説
1.〇 正しい。アジソン病:色素沈着
・アジソン病とは、副腎皮質機能低下症ともいい、るいそう(やせ)と色素沈着など特徴的である。副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

2.× テタニーは、「バセドウ病」ではなく低カルシウム血症(アジソン病)である。
・テタニーとは、自分の意志とは関係なく手足などの筋肉が 痙攣している状態である。甲状腺全摘術にて副甲状腺も一緒に切除された場合、(二次性)続発性副甲状腺機能低下症が起こる。続発性副甲状腺機能低下症では、副甲状腺ホルモン低下により低カルシウム血症となり、テタニーなどの症状が現れる。

3.× 眼球突出は、「クッシング病」ではなくバセドウ病である。
・バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。ちなみに、眼球突出・甲状腺腫・頻脈をメルゼブルグの三徴候という。

4.× 満月様顔貌は、「原発性アルドステロン症」ではなくクッシング病である。
・クッシング病とは、下垂体にACTHを産生する腺腫ができてACTHの過剰分泌を生じる。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。

 

 

 

 

 

問題62 小児で体前屈時に肋骨隆起を認めた場合、疑う疾患はどれか。

1.側弯症
2.肺腫瘍
3.鳩胸
4.肋骨骨折

解答

解説

側弯症とは?

側弯症とは、背骨が左右に弯曲した状態で、背骨自体のねじれを伴うことがある。通常、小児期にみられる脊柱変形を指す。左右の肩の高さの違い、肩甲骨の突出、腰の高さの非対称、胸郭の変形、肋骨や腰部の隆起(前かがみをした姿勢で後ろから背中をみた場合)、などの変形を生じる。診断基準として、「コブ角」が 10°以上の場合が一般的である。コブ角とは、脊柱の上下で最も曲がりの強い椎体 から直線を伸ばし、その 2 本の直線の交差する角度のことである。

1.〇 正しい。側弯症は、小児で体前屈時に肋骨隆起を認めた場合、疑う疾患である。この測定方法を、アダムテスト(Adam’s Test)という。側弯症が進むと、背骨が曲がるだけでなく、ねじれも加わります。このねじれによって、胸郭(あばら骨でできたかご状の部分)が変形し、片側の肋骨が背中側に突き出たり、胸側に隆起したりする。

2.× 肺腫瘍とは、腫瘍が肺の中にできている状態である。通常、胸郭の外側の形や肋骨に直接的な影響を与えることはない。

3.× 鳩胸(※読み:はとむね)
鳩胸とは、鳩胸は前胸部の骨が突出した状態で、漏斗胸の5%以下の頻度でみられる。漏斗胸とは、胸板を形成する胸骨と肋軟骨の一部が、背中側の脊柱に向かって漏斗状に陥没している状態のことで、発生頻度は1000人に1人程度で、男子に多い特徴がある。

4.× 肋骨骨折とは、肋骨が折れた状態であり、通常は転倒や打撲などの外傷によって急激に発生する。骨折した場所には強い痛みや腫れが生じることが多い。ほかの症状として、息を深く吸ったり、咳をしたり、体を動かしたりするたびの痛みである。

 

 

 

 

 

問題63 発育性股関節形成不全について誤っているのはどれか。

1.男児に多い。
2.分娩時の胎位異常で発生率が高い。
3.家族内発生がみられる。
4.治療は装具療法が主体となる。

解答

解説

発育性股関節形成不全とは?

発育性股関節形成不全とは、生下時の女児(0~1歳)におこる股関節の脱臼などの状態である。現在では、先天性股関節脱臼のことを発育性股関節形成不全と呼ぶ傾向にある。変形性股関節症の原因となることが多い。片側に発症することが多く、リーメンビューゲル装具(アブミ式吊りバンド)で開排(屈曲・外転)肢位にして治療する。リーメンビューゲル装具で改善しない場合、牽引療法を、さらに治療が困難な場合は、観血的整復術や補正手術を検討する。

1.× 「男児」ではなく女児に多い(男女比は、1:5~9倍)。なぜなら、男児より女児の方が関節の靭帯が柔らかいことや、女性ホルモンの影響などが関連していると考えられているため。

2.〇 正しい。分娩時の胎位異常で発生率が高い。なぜなら、お腹の中にいる赤ちゃんの姿勢(胎位)に異常がある場合、特に骨盤位(逆子)での分娩は、赤ちゃんがお腹の中で足を伸ばしたような姿勢になりやすく、股関節に通常とは異なる物理的な力がかかるため。
・骨盤位とは、子宮口に対して胎児が下半身を下に向けた体位(いわゆる逆子)である。

3.〇 正しい。家族内発生がみられる。なぜなら、遺伝的な要因も関与していると考えられているため。遺伝的要因は70%、環境要因は30%程度とされている。

4.〇 正しい。治療は装具療法が主体となる。リーメンビューゲルなどの装具を装着することで、股関節を適切な位置に保ち、骨や関節の正常な発育を促すことができる。

 

 

 

 

 

問題64 変形性関節症の単純エックス線所見で誤っているのはどれか。

1.荷重部軟骨下骨の硬化
2.関節裂隙の拡大
3.骨棘形成
4.骨囊胞形成

解答

解説

変形性関節症とは?

変形性関節症とは、軟骨下骨、関節裂隙、関節周囲構造の変化を伴う関節軟骨の異常に関連した疾患である。 手関節症、膝関節症、股関節症など、部位によって臨床症状が異なるが、一般的な症状として、圧痛、筋力低下、骨棘と呼ばれる突起があり、骨に当たってすれることなどがあげられる。

1.〇 正しい。荷重部軟骨下骨の硬化
・軟骨下骨とは、成人の関節軟骨(4層構造:表層、中間層、深層、石灰化層)の最深層の石灰化層の下のことを呼ぶ。骨組織があり骨と連続している。

2.× 関節裂隙の拡大は、変形性関節症の単純エックス線所見ではない。関節裂隙は、「拡大」ではなく縮小が生じる。なぜなら、変形性関節症は、関節軟骨が徐々にすり減っていく病気であるため。
・関節裂隙とは、エックス線写真上で骨と骨の間に見える隙間のことである。

3.〇 正しい。骨棘形成
・骨棘とは、骨同士の摩擦や変形によって発生する骨のトゲのことである。変形性膝関節症などでよく見られるが、変形性股関節症でもみられる。レントゲンによって判断が可能で、変形性関節症の進行度合いの確認指標となる。

4.〇 正しい。骨囊胞形成(※読み:こつのうほう)
・骨囊胞とは、変形性関節症が進行して軟骨下骨に大きな負荷がかかるようになると、その部分の骨の中に液体成分が溜まった袋状の空洞ができることである。

 

 

 

 

 

問題65 前立腺肥大症の初期症状はどれか。

1.血尿
2.尿失禁
3.夜間頻尿
4.排尿時痛

解答

解説

前立腺肥大症とは

前立腺肥大症は、前立腺移行領域が肥大する病気である。前立腺部の尿道が圧迫され排尿困難が生じる。発症には、男性ホルモンの作用亢進が関与している。病態改善には、男性ホルモン作用を抑制することが重要である。そのため、治療にはα1阻害薬や、抗アンドロゲン薬も用いられる。

1.× 血尿は、初期症状とはいえない。なぜなら、前立腺肥大症の初期症状は、前立腺部の尿道が圧迫されるものであるため。
・血尿とは、尿に血液が混ざっている状態を指す。主な原因として、悪性腫瘍や結石、膀胱炎などの炎症、腎臓の内科的な病気などが考えられる。

2.× 尿失禁は、初期症状とはいえない。なぜなら、前立腺肥大症が原因で尿失禁が起こる場合、膀胱の機能が大きく障害されたり、尿道が強く圧迫されて尿が出しにくくなり、膀胱に溜まりきれない状態まで進行したときであるため。つまり、病気がかなり進行したときに起こる。
・尿失禁とは、簡単に言うとお漏らし、粗相である。尿が自分の意思によらず排泄してしまうことである。一般的に、①腹圧性尿失禁、②切迫性尿失禁、③溢流性尿失禁、④機能性尿失禁があげられる。

3.〇 正しい。夜間頻尿は、前立腺肥大症の初期症状である。なぜなら、前立腺が肥大すると、尿道が圧迫されることによる排尿困難だけでなく、膀胱の機能にも影響が出るため。特に、膀胱が過敏になったり、夜間に尿を作りやすくなったり、膀胱にためられる尿の量が減ったりすることで、夜中に何度も目を覚ましてトイレに行きたくなる頻尿が見られるようになる。
・昼間頻尿とは、昼間(朝起きてから就寝まで)については概ね8回より多い場合を指す。夜間頻尿とは、夜間は就寝後1回以上排尿のために起こる場合を指す。

4.× 排尿時痛は、初期症状とはいえない。なぜなら、排尿時痛は、尿路感染症(膀胱炎や尿道炎など)や前立腺炎など、尿路や前立腺に炎症が起こった際に典型的に見られる症状であるため。

尿路感染症とは?

尿路感染症は、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。それら病態を見極めるための検査として、画像診断(超音波断層、静脈性腎盂造影、X線CTなど)が必要となる。感染症としての診断には、適切な採尿法による検尿で膿尿を証明すること、尿培養にて原因菌を同定し
薬剤感受性を検査することが基本である。

【疑うべき臨床症状】
尿路感染症の症状は、急性単純性膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、急性単純性腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。複雑性尿路感染症では膀胱炎、腎盂腎炎それぞれにおいて、単純性と同様の症状が見られるが、無症状に近いものから、強い症状を呈するものまで幅が広い。上部尿路閉塞に伴う膿腎症では高熱が続くこともある。

(※引用:「尿路感染症」総合南東北病院より)

 

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