第33回(R7年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後146~150】

 

問題146 耳鳴り・難聴に対して、循経取穴により治療する場合、最も適切なのはどれか。

1.中渚
2.太淵
3.三間
4.神門

解答

解説

MEMO

・耳鳴り、難聴
手の少陽三焦経:耳が聞こえにくく、耳が燃え上がるような感じがしたり、耳鳴りがする。咽頭が腫れ、喉を起こす。汗が出て、経絡の流注上に沿って病症が現れる。

1.〇 正しい。中渚は、耳鳴り・難聴に対して、循経取穴により治療する。なぜなら、中渚は、手の少陽三焦経であるため。
・中渚は、手背、第4~5中手骨間、第4中手指節関節近位の陥凹部に位置する。

2.× 太淵は、手の太陰肺経に属する経穴である。
・太淵は、手関節前外側、橈骨茎状突起と舟状骨の間、長母指外転筋腱の尺側陥凹部に位置する。

3.× 三間は、手の陽明大腸経に属する経穴である。
・三間は、手背、第2中手指節関節橈側の近位陥凹部に位置する。

4.× 神門は、手の少陰心経に属する経穴である。
・神門は、手関節前内側、尺側手根屈筋腱の橈側縁、手関節掌側横紋上に位置する。

 

 

 

 

 

問題147 次の症例でみられる痰の性状で最も適切なのはどれか。
「27歳の男性。主訴は咳と痰。咳は無力で、声に力がない。息切れ、倦怠感を伴い、疲れると症状が悪化する。舌質は淡、舌苔は薄白、脈は弱を認める。」

1.稀薄で透明な痰
2.白色で大量の痰
3.黄色く粘りのある痰
4.血の混じった痰

解答

解説

本症例のポイント

・27歳の男性(主訴は咳と痰)。
・咳は無力で、声に力がない
・息切れ、倦怠感を伴い、疲れると症状が悪化する。
・舌質は、舌苔は薄白、脈はを認める。
→本症例は、肺気虚が疑われる。肺気虚は、無力な咳嗽・息切れ、倦怠感、鼻汁、痰、易感冒、自汗などがみられる。

1.〇 正しい。稀薄で透明な痰が最も考えられる。
・肺気虚による痰は、さらさらとした水っぽい性状で、色は透明か薄い白色である。

2.× 白色で大量の痰は、気虚による水液代謝障害に加え、寒湿の邪が肺に停滞している場合にみられやすい。

3.× 黄色く粘りのある痰は、熱邪が肺にこもった病態である熱痰である。

4.× 血の混じった痰(血痰)は、肺の絡脈(細い血管)が損傷された場合にみられる。肺に強い熱邪や燥邪がこもった場合にみられる。

 

 

 

 

 

問題148 次の症例に対し、難経六十九難に基づき補法を行う治療穴はどれか。
「82歳の女性。主訴は尿漏れ。くしゃみをしたり、重い荷物を持ったりするときに起こる。尿の回数は多く、足腰のだるさ、倦怠感を伴う。」

1.足臨泣
2.曲泉
3.束骨
4.復溜

解答

解説

本症例のポイント

・82歳の女性(主訴は尿漏れ
・くしゃみをしたり、重い荷物を持ったりするときに起こる
・尿の回数は多く、足腰のだるさ、倦怠感を伴う。
→本症例は、腹圧性尿失禁(腎虚証)が疑われる。
・腹圧性尿失禁とは、腹圧をかけるような運動時(重い荷物を持ち上げたときなど)に尿が漏れる状態で、男性よりも女性に多くみられる。尿道括約筋を含む骨盤底の筋肉が弱くなることが原因で、加齢、出産、喫煙、肥満などと関連している。

【難経六十九難の治療法則】
「虚すればその母を補い、実すればその子を瀉せ」に基づく。
【部位】虚証(補法):実証(瀉法)
【腎】復溜・経渠:湧泉・大敦

1.× 足臨泣は、小腸・三焦の虚証(補法)膀胱の実証(瀉法)である。
・足臨泣は、足背、第4~5中足骨底接合部の遠位、第5指の長指伸筋腱外側の陥凹部に位置する。

2.× 曲泉は、肝の虚証(補法)である。
・曲泉は、膝内側、半腱・半膜様筋腱内側の陥凹部、膝窩横紋の内側端に位置する。

3.× 束骨は、膀胱の実証(瀉法)である。
・束骨は、足外側、第5中足指節関節の近位陥凹部、赤白肉際に位置する。

4.〇 正しい。復溜は、難経六十九難に基づき補法を行う治療穴である。なぜなら、復溜は、腎の虚証(補法)で用いられるため。
・復溜は、下腿後内側、アキレス腱の前縁、内果尖の上方2寸に位置する。

難経六十九難に基づく取穴

【部位】虚証(補法):実証(瀉法)
【肝】曲泉・陰谷:行間・少府・労宮
【肺】太淵・太白:尺沢・陰谷
【心】少衝・大敦:神門・太白
【腎】復溜・経渠:湧泉・大敦
【脾】大都・少府・労宮:商丘・経渠
【心包】中衝・大敦:大陵・太白
【胆】侠渓・足通谷:陽輔・陽谷・支溝
【大腸】曲池・足三里:二間・足通谷
【小腸】後渓・足臨泣:小海・足三里
【膀胱】至陰・商陽:束骨・足臨泣
【胃】解渓・陽谷・支溝:厲兌・商陽
【三焦】中渚・足臨泣:天井・足三里

 

 

 

 

 

問題149 鍼治療が骨盤位の矯正に効果的とされる膀胱経の要穴はどれか

1.井穴
2.滎穴
3.兪穴
4.経穴

解答

解説

骨盤位とは?

骨盤位とは、子宮口に対して胎児が下半身を下に向けた体位(いわゆる逆子)である。

1.〇 正しい。井穴は、鍼治療が骨盤位の矯正に効果的とされる膀胱経の要穴である。なぜなら、末端の井穴を刺激することで、骨盤内の血流改善や子宮の緊張緩和が期待され、胎児の自然な回転を促すとされているため。
・膀胱経の井穴は、至陰である。至陰は、足の第5指、末節骨外側、爪甲角の近位外方1分(指寸)、爪甲外の垂線と爪甲基底部の水平線の交点に位置する。

2.× 滎穴(膀胱経)は、足通谷である。
・足通谷は、足の第5指、第5中足指節関節の遠位外側陥凹部、赤白肉際に位置する。

3.× 兪穴(膀胱経)は、束骨である。
・束骨は、足外側、第5中足指節関節の近位陥凹部、赤白肉際に位置する。

4.× 経穴(膀胱経)は、崑崙である。
・崑崙は、足関節後外側、外果尖とアキレス腱の間の陥凹部に位置する。

 

 

 

 

 

問題150 次の症例の経脈病証はどれか。
「53歳の男性。空腹感があるが食欲がない。呼吸が苦しくせき込む。寝ることを好んで起きたがらない。」

1.足の太陰経病証
2.足の少陰経病証
3.足の陽明経病証
4.足の少陽経病証

解答

解説

本症例のポイント

・53歳の男性。
・空腹感があるが食欲がない。
・呼吸が苦しくせき込む。
・寝ることを好んで起きたがらない。
→本症例は、足の少陰経病証が疑われる。足の少陰腎経の病証として、空腹感があるが食べられない。顔面が黒くすすけて艶がない。咳をして唾を吐くと血が混じっている。咳をしてあえぐ。目がボーっとしてハッキリしない、不安感や煩悶感を覚え、よく恐れを抱き、恐れたり、驚いたり、不安を覚えたりする。口の中や喉の渇き上実下虚になり、咽頭が乾いたり痛んだりする。足底全体に熱感を感じて痛む。

1.× 足の太陰経病証は、舌が強ばりやすくなり、食べるとからえずきし、胃の辺りが痛み、腹部が張ってよくゲップが出る。大便や放屁すると今まであった不快感がなくなり楽になる。身体全体が重くなる。舌本が痛み、身体が動かしにくく、食べた物がつかえてなかなか下に降りていかない。横になっても不快感や胸苦しさで寝付きが悪くなり、無理に立とうとすると膝の内側が腫れて引きつってくる。足の親指が動かしにくい。

2.〇 正しい。足の少陰経病証は、本設問の経脈病証である。
・足の少陰腎経の病証として、空腹感があるが食べられない。顔面が黒くすすけて艶がない。咳をして唾を吐くと血が混じっている。咳をしてあえぐ。目がボーっとしてハッキリしない、不安感や煩悶感を覚え、よく恐れを抱き、恐れたり、驚いたり、不安を覚えたりする。口の中や喉の渇き上実下虚になり、咽頭が乾いたり痛んだりする。足底全体に熱感を感じて痛む。

3.× 足の陽明経病証は、顔面神経麻痺、喉や膝の皿が腫れたり痛んだりする。胃腸が張る。気衝~髀関、足の甲と流注上に痛みや熱感が出る。食べても食べてもお腹が空き、濃黄色の小便が出る。びっくりして不安な状態になる。独り塞ぎこんで窓を閉め家の中に閉じこもっている。高い所に登って歌を歌いだす。羞恥心を無くしたように裸になって走り出す。

4.× 足の少陽経病証は、口苦が起こり、大きなため息をつく、寝返りが打てない。顔に少し垢が付いたように黒くなる。体の艶が無くなる。足外反しほてる。頭やエラの所が痛む。まなじりが痛む。首に結核性のリンパ節炎ができる。往来寒熱の状態になり、あらゆる関節が痛む。

 

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