問題176 熱刺激情報の伝導路はどれか。
1.外側皮質脊髄路
2.外側脊髄視床路
3.腹側脊髄視床路
4.外側網様体脊髄路
解答2
解説
1.× 外側皮質脊髄路は、随意運動の伝導路である。
・外側皮質脊髄路 (錐体路・運動)は、大脳皮質—放線冠—内包後脚—中脳の大脳脚—橋縦束―延髄で錐体交叉—脊髄の側索である。
2.〇 正しい。外側脊髄視床路は、熱刺激情報の伝導路である。
・外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)は、感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野である。
3.× 腹側脊髄視床路(前脊髄視床路:粗大な触覚・圧覚)は、感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄前索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野である。
4.× 外側網様体脊髄路とは、脳幹の網様体から脊髄へと下行する神経伝導路であり、主に姿勢の制御、筋緊張の調節、運動の協調といった、随意運動以外の運動制御に関わる「運動伝導路」である。
問題177 施灸局所に起こる脊髄反射について適切なのはどれか。
1.血漿が漏出する。
2.ノルアドレナリンが関与する。
3.Aβ線維の興奮によって生じる。
4.特異的侵害受容ニューロンが関与する。
解答1
解説
1.〇 正しい。血漿が漏出する。なぜなら、軸索反射の作用が起こるため。
・軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。
2.× 「ノルアドレナリン」ではなくヒスタミン(かゆみ)が関与する。
・ヒスタミンとは、酸素が不足すると細胞から放出される「発痛物質」の1つである。また、アレルギー様症状を呈する化学物質である。組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球がアレルギー反応の際に分泌される。血圧降下血管透過性亢進、血管拡張作用がある。
・ノルアドレナリンとは、激しい感情や強い肉体作業などで人体がストレスを感じたときに、交感神経の情報伝達物質として放出されたり、副腎髄質からホルモンとして放出される物質である。ノルアドレナリンが交感神経の情報伝達物質として放出されると、交感神経の活動が高まり、その結果、血圧が上昇したり心拍数が上がったりして、体を活動に適した状態となる。副腎髄質ホルモンとして放出されると、主に血圧上昇と基礎代謝率の増加をもたらす。
3.× 「Aβ線維」ではなくC線維の興奮によって生じる。
4.× 「特異的侵害受容ニューロン」ではなくポリモーダル侵害受容器が関与する。
・ポリモーダル受容器は、侵害受容器のひとつである。主にC線維終末にある皮膚の受容器である。特徴として、①皮膚のみならず骨格筋、関節、内臓諸器官と広く全身に分布している。②非侵害刺激から侵害刺激まで広い範囲で刺激強度に応じて反応する。③侵害刺激を繰り返し与えると反応性が増大し閾値の低下がみられる。
・特異的侵害受容ニューロンとは、脊髄の後角にある神経細胞の一つであり、痛みをもたらす特定の強い刺激(侵害刺激)のみに反応し、脳に痛みの「場所」を伝える役割を担う。
問題178 透熱灸による炎症反応で、アナフィラトキシンとして作用するのはどれか。
1.IgE
2.補体
3.コルチゾール
4.ヒスタミン
解答2
解説
透熱灸、は皮膚に熱による組織損傷を引き起こし、これによって様々な炎症反応が引き起こされる。アナフィラキシンは、炎症反応やアレルギー反応に関わる生理活性物質であり、特定の生体分子の活性化によって産生される。
1.× IgEとは、肥満細胞や好塩基球の細胞表面に存在している。ヒスタミン遊離によりアレルギー疾患を引き起こす。生後6か月以降の乳幼児では、しばしばアトピー性アレルギー疾患の進行に伴って血清中のIgE抗体が上昇する。したがって、I型反応(即時型、アナフィラキシー型)のアレルギー反応に関与する。
2.〇 正しい。補体は、透熱灸による炎症反応で、アナフィラキシンとして作用する。
・アナフィラトキシンは、免疫システムの「補体」というタンパク質が活性化された際に生まれるC3a, C4a, C5aといった断片のことである。これらは肥満細胞などに働きかけ、ヒスタミンなどを放出し、血管の透過性を高めたり平滑筋を収縮させたりすることで、炎症反応やアレルギー反応(アナフィラキシー)に関与する。
・補体とは、免疫反応を媒介する血中タンパク質の一群で、動物血液中に含まれる。補体は、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体を攻撃し、体内から排除する働きがある。
3.× コルチゾールとは、副腎皮質で合成・分泌されるホルモンで、血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがある。過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。
4.× ヒスタミンは、施灸刺激の早期より肥満細胞から放出される。
・ヒスタミンとは、アレルギー様症状を呈する化学物質である。組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球がアレルギー反応の際に分泌される。血圧降下血管透過性亢進、血管拡張作用がある。
問題179 透熱灸による反応で最も早期に起こるのはどれか。
1.ポリモーダル受容器の興奮
2.白血球の浸潤
3.温熱感覚の認知
4.施灸局所の血管拡張
解答1
解説
ポリモーダル受容器は、侵害受容器のひとつである。特徴として、①皮膚のみならず骨格筋、関節、内臓諸器官と広く全身に分布している。②非侵害刺激から侵害刺激まで広い範囲で刺激強度に応じて反応する。③侵害刺激を繰り返し与えると反応性が増大し閾値の低下がみられる。
1.〇 正しい。ポリモーダル受容器の興奮は、透熱灸による反応で最も早期に起こる。なぜなら、透熱灸による反応は、まず皮膚に加わった熱刺激が生体によって感知されることから始まるため。
・ポリモーダル受容器は、皮膚などに存在する感覚受容器の一種であり、強い機械刺激、熱刺激、化学物質など、様々な種類の侵害刺激(組織を傷つける可能性のある刺激)に応答する。
2.× 白血球の浸潤は、炎症反応の進行に伴って起こる。なぜなら、白血球の浸潤は、透熱灸による熱刺激によって組織が損傷され、炎症反応が開始し、血管透過性が亢進して、血液中の白血球(好中球やマクロファージなど)が血管壁を通って組織間隙へと移動してくる現象であるため。
3.× 温熱感覚の認知は、皮膚の受容器での感知、神経信号の発生と伝達、そして脳での情報処理といった一連の神経活動が必要である。
4.× 施灸局所の血管拡張は、軸索反射に起こる影響である。
・軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。
問題180 透熱灸により組織損傷部から放出される物質で、末梢性の痛覚過敏に関与するのはどれか。
1.NO
2.アドレナリン
3.アセチルコリン
4.セロトニン
解答4
解説
ブラジキニン、CO2、NO、乳酸、ヒスタミン、アデノシン、ATP、水素イオン
1.× NOは、鍼刺激による皮膚の血流増加に関係する。NOとは、一酸化窒素のことで、窒素(N)と酸素(O)が結合した物質である。常温では無色・無臭の気体で、水に溶けにくく、空気よりやや重い。血管の内皮細胞から放出される物質で、血管を拡張してしなやかにして、血圧を安定させる働きを持つ。
2.× アドレナリンとは、腎臓の上にある副腎髄質で合成・分泌されるホルモンである。主な作用は、心拍数や血圧上昇などがある。自律神経の交感神経が興奮することによって分泌が高まる。
3.× アセチルコリンとは、代表的な神経伝達物質であり、①運動神経の神経筋接合部、②交感神経および副交感神経の節前線維の終末、副交感神経の節後線維の終末などのシナプスで放出される。アセチルコリンは、中枢神経で働く場合と末梢神経で働く場合で作用が異なる。①運動神経の神経筋接合部では、筋収縮に作用する。
4.〇 正しい。セロトニンは、透熱灸により組織損傷部から放出される物質で、末梢性の痛覚過敏に関与する。なぜなら、ケミカルメディエーターであるため。ちなみに、一般的に、セロトニンとは、うつ病と関連が深い神経伝達物質である。脳内だけに分泌される神経伝達物質で、交感神経を刺激し、血圧を上昇させる作用がある。ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、心のバランスを整える作用のある伝達物質でもある。
ケミカルメディエーターとは、化学伝達物質ともいい、細胞間の情報伝達に作用する化学物質のことである。肥満細胞が放出するケミカルメディエーターは、さまざまなアレルギー反応(血管透過性の亢進、血流の増加、炎症細胞の遊走など)を起こす。
【例】
・ヒスタミン
・ロイコトリエン
・トロンボキサン
・血症板活性化因子
・セロトニン
・ヘパリンなど。