第33回(R7年)柔道整復師国家試験 解説【午後31~35】

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問題31 十二指腸潰瘍でみられるのはどれか。

1.嚥下困難
2.食後の上腹部痛
3.鮮血を伴う下痢便
4.ヘリコバクター・ピロリ菌感染

解答

解説

十二指腸潰瘍とは?

胃・十二指腸潰瘍とは、胃液という強い酸の刺激によって、胃・十二指腸の組織が剥がれ落ち、内部からえぐられた状態をいう。仕事、家庭などでの人間関係、過労や睡眠不足など、精神的・肉体的ストレスが自律神経を乱し、胃酸の分泌が過剰になることで、十二指腸潰瘍を引き起こす。

1.× 嚥下困難は起きにくい。なぜなら、十二指腸は食道よりも下流にあるため。ちなみに、嚥下困難は、食べ物や飲み物が食道を通って胃に運ばれる過程で障害が生じる状態を指す。

2.× 食後の上腹部痛は起きにくい。なぜなら、食事をすると胃酸が薄まったり、食べ物が潰瘍部位を覆ったりすることで一時的に痛みが和らぎやすいため。十二指腸潰瘍の痛みは、胃酸が十二指腸に到達したときに刺激される。

3.× 鮮血を伴う下痢便は起きにくい。なぜなら、鮮血便は、横行結腸以下の出血で起こるため。十二指腸からの出血の場合、血液は消化液によって変性し、黒色便(タール便)として排泄される。色が黒くなるのは胃酸などの消化液で血液が酸化されるためである。

4.〇 正しい。ヘリコバクター・ピロリ菌感染は、十二指腸潰瘍でみられる。ヘリコバクター・ピロリ菌は、慢性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃癌などに関与している菌である。ヘリコバクター・ピロリ菌は、井戸水などにより経口感染するヒトなどの胃に生息するらせん型のグラム陰性微好気性細菌である。単にピロリ菌と呼ばれることもある。アンモニアを遊離し、局所をアルカリ化することによって胃粘膜の障害をきたす病原菌である。胃炎や胃潰瘍の発生に関与する。

 

 

 

 

 

問題32 肺癌で誤っているのはどれか。

1.男性に多い。
2.好発年齢は40~50歳代である。
3.腫瘍マーカーは診断の補助として用いる。
4.治療に免疫チェックポイント阻害薬が使われる。

解答

解説

肺癌とは?

肺癌とは、肺の気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化した病気である。肺がんは、肺細胞の遺伝子に傷がつくことで発生し、喫煙との関連が非常に深い。初期には自覚症状がないことが多く、他の呼吸器疾患との区別がつきにくい。主な所見として、咳、痰、血痰、発熱、息苦しさ、動悸、 胸痛などがあげられる。

1.〇 正しい。男性に多い。なぜなら、肺癌の最も主要な危険因子は喫煙であるため。男性の方が女性より喫煙率が高い。

2.× 好発年齢は、「40~50歳代」ではなく60~70歳代である。なぜなら、喫煙・大気汚染・アスベストなどの発がん物質への曝露期間が長くなるほど発症リスクが高まるため。

3.〇 正しい。腫瘍マーカーは、診断の補助として用いる。なぜなら、肺癌の診断において、腫瘍マーカー(CEAなど)は、がんが存在することを示唆する生体物質であるが、良性疾患でも上昇することがあるため。したがって、画像診断(X線、CTなど)や病理診断(組織検査)と組み合わせて、診断の補助や、治療効果の判定、再発のモニタリングなどに活用される。

4.〇 正しい。治療に免疫チェックポイント阻害薬が使われる。近年、肺癌治療において、免疫チェックポイント阻害薬が画期的な薬剤として登場している。免疫チェックポイント阻害薬とは、がん細胞にブレーキをかけられている免疫細胞の働きを回復させる薬である。

 

 

 

 

 

問題33 肥満を呈するのはどれか。

1.アジソン(Addison)病
2.褐色細胞腫
3.クッシング(Cushing)症候群
4.先端巨大症

解答

解説
1.× アジソン(Addison)病とは、副腎皮質機能低下症ともいい、るいそう(やせ)と色素沈着など特徴的である。副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

2.× 褐色細胞腫とは、交感神経(自律神経の一種)に働きかけるホルモンであるカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)の産生能を有する腫瘍である。主に、腎臓の上に位置する副腎髄質から発生する。カテコラミンは、交感神経に働いて、身体中の血管を収縮させたり、心臓の収縮能を増加させることで、脳や腎臓などの臓器への血流調整に、重要な役割を果たす。褐色細胞腫ではこのカテコラミンが過剰に分泌され、高血圧や頭痛、動悸、発汗、不安感、便秘、腸閉塞(麻痺性イレウス)など多様な症状を呈する。また、糖尿病、脂質異常症を併発することもある。

3.〇 正しい。クッシング(Cushing)症候群は、肥満を呈する。クッシング症候群は、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により起こる内分泌系疾患である。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。主に、副腎腺腫、副腎癌、副腎過形成、ACTH産生下垂体腺腫などによりコルチゾールの過剰分泌が起こる。

4.× 先端巨大症とは、下垂体前葉ホルモンである成長ホルモンの過剰分泌で生じる。身長には影響が出ず、5~10年かけてゆっくり進行する。男女比は、差はなく、40歳代から50歳代の方に多い。アクロメガリーとも呼ばれ、額、鼻、唇や下あごが大きくなる特徴的な顔貌と、手足など体の先端が肥大する病気である。

 

 

 

 

 

問題34 高血圧症で正しいのはどれか。

1.拡張期血圧が90mmHg以上は高血圧である。
2.収縮期血圧が120mmHg以上は高血圧である。
3.家庭血圧は診察室血圧よりも高くなりやすい。
4.本態性高血圧症は高血圧患者の40%以下である。

解答

解説
1.〇 正しい。拡張期血圧が90mmHg以上は高血圧である。くり返し測定し、診察室血圧で最高血圧が140mmHg以上、あるいは、最低血圧が90mmHg以上であれば、高血圧と診断される。

2.× 収縮期血圧は、「120mmHg」ではなく140mmHg以上は高血圧である。

3.× 逆である。「診察室血圧」は「家庭血圧」よりも高くなりやすい。なぜなら、一般的に、医療機関での測定(診察室血圧)は、患者が緊張することで血圧が上昇する「白衣高血圧」と呼ばれる現象があるため。したがって、家庭血圧はリラックスした状態で測定されるため、より日常的な血圧を反映し、診断や治療効果の評価において重要視されている。

4.× 本態性高血圧症は、高血圧患者の「40%以下」ではなく約90%である。高血圧症とは、くり返して測っても血圧が正常より高い場合をいい、①本態性高血圧(原因が生活習慣や環境、遺伝などはっきり特定できないもの:高血圧症全体の9割)と、②二次性高血圧(ホルモン分泌異常や臓器の奇形などで生じ原因が特定できるもの:腎血管性高血圧を含む)に分けられる。

 

 

 

 

 

問題35 閉塞性動脈硬化症でみられるのはどれか。

1.アヒル歩行
2.間欠性跛行
3.失調性歩行
4.分回し歩行

解答

解説

閉塞性動脈硬化症とは?

閉塞性動脈硬化症は、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気である。下肢の慢性虚血による間欠性跛行が発症症状であることが多く、虚血が進行すると壊死に至る。50~70歳代の男性、糖尿病症例に多くみられる。太ももの付け根(大腿動脈)や足の甲(足背動脈)を触診し、脈が触れないことで診断し、確定診断には血管造影検査を行う。

【病期】
Ⅰ期:「しびれ」「冷感」。
Ⅱ期:「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」。一定距離を歩くと脚が傷み、休むとまた歩けるようになる。
Ⅲ期:「安静時疼痛」。安静にしていても脚に痛みが生じる。
Ⅳ期:「潰瘍」「壊疽」。血液が足の先に行かないので、足に潰瘍ができ、ついには足が腐ってしまう。

【治療】
まず動脈硬化の原因である糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療を行う。喫煙者は禁煙する。初期の手足の冷感やしびれには血管拡張薬や血液を固まりにくくする薬(抗血小板剤)を用いる。また歩くことによって、側副血行路が発達し血行の流れの改善をはかる。

(※参考:「閉塞性動脈硬化症」厚生労働省HPより)

1.× アヒル歩行(トレンデレンブルグ歩行や動揺歩行)は、肢帯筋の筋力低下(中殿筋の筋力低下やDuchenne型筋ジストロフィー)で起こる。二次性変形性股関節症とは、何らかの病気(ペルテス病や先天性股関節脱臼)やケガが原因でおこっている。日本では、この二次性が大半を占め、先天性股関節脱臼と臼蓋形成不全によるものが約90%、圧倒的に女性に多い。壊死部は修復過程を経て正常の骨組織に戻るが、形態異常を伴って修復完了した場合、将来的に変形性股関節症を生じる可能性がある。

2.〇 正しい。間欠性跛行は、閉塞性動脈硬化症でみられる。間欠性跛行とは、歩行を続けると下肢の痛みと疲労感が強くなり、足を引きずるようになるが、休むと再び歩けるというものである。休むと改善する。

3.× 失調性歩行は、小脳や脊髄後索の障害時にみられる。酩酊歩行、ワイドベース、よろめき歩行などともいう。

4.× 分回し歩行は、錐体路障害や上位運動ニューロン障害で生じる。

 

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