第23回(H27年)柔道整復師国家試験 解説【午前11~15】

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問題11.名称独占はないが業務独占は有する資格はどれか。

1.診療放射線技師
2.柔道整復師
3.理学療法士
4.歯科衛生士

解答

解説

各用語の説明

業務独占とは、国家資格を持たないものが、その名称を用いて当該業務に従事することはできないこと(例:医者など)。

名称独占とは、資格がなくてもその業務に従事する事はできるが、資格取得者のみ特定の資格名称(肩書き)を名乗ることができ、資格を所有していない者が法律に定める特定の名称を名乗ることができない資格のことをいう。

1.× 診療放射線技師は、名称独占+業務独占の両方を持つ国家資格である。
・診療放射線技師とは、放射線技術の専門知識を生かして、放射線や検査の説明、目的に応じた撮影、三次元画像などの作成や読影の補助、診療上の説明を受ける方へ判りやすい画像提供など、手術サポートおよび放射線治療などを行う専門職である。

2.〇 正しい。柔道整復師は、名称独占はないが業務独占は有する資格である。
・柔道整復師とは、骨折、脱臼、打撲、捻挫などの怪我を治療する医療技術職である。骨折や脱臼を手技で元の位置に戻したり、包帯やテーピングで固定したりする。

3.× 理学療法士は、名称独占資格であり、業務独占資格ではない。
・理学療法士とは、医師の指示のもとに治療体操や運動・マッサージ・電気刺激・温熱などの物理的手段を用いて、運動機能の回復を目的とした治療法・物理療法(理学療法)を行う専門職である。つまり、関節可動域や筋力の向上などが役割である。

4.× 歯科衛生士は、業務独占+名称独占の両方を持つ国家資格である。
・歯科衛生士とは、歯や口の健康を守る専門職である。虫歯や歯周病を予防するために、歯の掃除や歯石取りを行い、正しい歯みがきの方法を教える仕事をしている。また、歯科医師の治療を助ける役割もある。

 

 

 

 

 

問題12.物理療法と禁忌との組合せで誤っているのはどれか。

1.超短波:体内金属
2.超音波:眼球
3.寒冷:レイノー(Raynaud)病
4.パラフィン:関節リウマチ

解答

解説
1.〇 正しい。超短波:体内金属
なぜなら、短波療法は、金属があると異常発熱を起こす危険があるため。
・極超短波とは、深部温熱療法である。2450MHzの電磁波を利用し、エネルギーの半価層(エネルギーが半減する深度)は、3~4cm、筋の加温に有効である。一般的に、極超短波療法(マイクロ波)の禁忌は、①温熱療法一般の禁忌(急性炎症部位、悪性腫瘍、出血傾向、知覚麻痺)、②金属部位への照射(衣服、装飾品、体内金属含む)、③心臓ペースメーカー使用者、④眼球、男性生殖器、妊婦の腹部、⑤小児の骨端線である。

2.〇 正しい。超音波:眼球
なぜなら、眼に超音波を照射すると組織の空洞化を起こすため。超音波の禁忌として、①眼への照射、②成長時の骨端、③心臓、生殖器官、内分泌器官、④良性または悪性腫瘍、麻痺部、⑤ペースメーカーの入っている部位、⑥脊髄疾患(多発性硬化症、脊髄灰白質炎、脊髄空洞症)、⑦感覚障害である。
・超音波療法とは、超音波を用いた機械的振動によるエネルギーを摩擦熱に変換することによって特定の部位を温める療法の1つである。1MHzは深部組織、3MHZは皮膚表面に近い組織に照射できる。

3.〇 正しい。寒冷:レイノー(Raynaud)病
なぜなら、レイノー病は、末梢血管の過剰な収縮反応を特徴とする疾患であり、寒冷刺激によって症状が悪化するため。
・レイノー病とは、末梢血管障害である。末梢血管の一過性の収縮により、手指や足趾の蒼白・チアノーゼが発生する。

4.× パラフィンは、関節リウマチも適応である。なぜなら、関節リウマチは手の変形を特徴とする疾患であり、パラフィン浴は凹凸の有無に関係なしに均一に温熱効果を得られるため。温熱によって血流を増加させ、疼痛物質の除去や筋の弛緩を促す効果がある。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題13.意識障害を表す用語でないのはどれか。

1.傾眠
2.せん妄
3.昏迷
4.抑うつ

解答

解説

意識レベルの明瞭度

①明識困難状態とは、ごく軽い意識混濁。外界の認知は保たれているが、正常よりやや不活発でぼんやりしている。
②昏蒙とは、軽度の意識混濁。覚醒はしているが、精神活動は浅い眠りに近い状態。外界の認知に混乱が生じ、見当識が障害される。
③傾眠とは、放置すれば眠りに落ちてしまうような状態。刺激されれば容易に覚醒し、短時間なら合目的的な行動もできる。
④嗜眠とは、傾眠よりやや強い意識混濁。強く刺激すれば覚醒し、食事のような合目的的行動も可能。
⑤昏迷とは、中等度の意識混濁。閉眼、横臥し、強い刺激をしなければ覚醒しない。眼球運動も少なくなり失禁がみられる。強い刺激に反応しても発語ははっきりしない。見当識は失われ、健忘が残る。
⑥昏睡とは、重篤な意識混濁。強い刺激に対してもほとんど反応がない。自発運動はなく、深部腱反射・対光反射なども減弱ないし消失する。筋緊張が緩み、失禁状態となる。除脳硬直が起こることもある。呼吸、循環、体温調節などの植物機能にも変化が起こる。

1.〇 傾眠は、意識障害を表す用語である。
・傾眠とは、放置すれば眠りに落ちてしまうような状態。刺激されれば容易に覚醒し、短時間なら合目的的な行動もできる。

2.〇 せん妄は、意識障害を表す用語である。
・せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。

3.〇 昏迷は、意識障害を表す用語である。
・昏迷とは、大声での呼びかけや、体を揺するなどの強い刺激に対して反応する状態である。

4.× 抑うつは、意識障害を表す用語ではなく、気分(情動)の障害である。
・抑うつとは、気分が落ち込んでエネルギーが枯渇してしまった感じがして、意欲が著しく低下している状態をいう。

せん妄とは?

せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。
【原因】脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術などに伴って起こることが多い。他にも、心理的因子、薬物、環境にも起因する。

【症状】
①意識がぼんやりする。
②その場にそぐわない行動をする。
③夜間に起こることが多い。 (夜間せん妄)
④通常は数日から1週間でよくなる。

【主な予防方法】
①術前の十分な説明や家族との面会などで手術の不安を取り除く。
②昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をする。
③術後早期からの離床を促し、リハビリテーションを行う。

 

 

 

 

 

問題14.眼球突出がみられるのはどれか。

1.アジソン(Addison)病
2.クッシング(Cushing)症候群
3.橋本病
4.バセドウ(Basedow)病

解答

解説
1.× アジソン(Addison)病とは、副腎皮質機能低下症ともいい、るいそう(やせ)と色素沈着など特徴的である。副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

2.× クッシング(Cushing)症候群とは、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により起こる内分泌系疾患である。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。主に、副腎腺腫、副腎癌、副腎過形成、ACTH産生下垂体腺腫などによりコルチゾールの過剰分泌が起こる。

3.× 橋本病(甲状腺機能低下症)とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。また、甲状腺クリーゼとは、甲状腺中毒症(甲状腺ホルモン高値)の治療が不十分であったり治療を受けていない場合に、肺炎などの感染症や大怪我・手術などのストレスをうけると、甲状腺ホルモンの過剰な状態に耐え切れなくなり、複数の臓器の機能が低下し、死の危険が切迫した状態になることを指す。症状として、高熱、頻脈、意識朦朧、心臓や肝臓の急速な機能低下、呼吸停止、全身性の黄疸がみられる。生命が危険な状態にあるため、入院し呼吸や血圧の管理、血中の甲状腺ホルモンを減らす必要がある。

4.〇 正しい。バセドウ(Basedow)病は、眼球突出がみられる。
・バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状として、発汗や食欲亢進、体重減少、下痢、振戦、メルセブルグ3徴(眼球突出、甲状腺腫、頻脈)がみられる。放射線性ヨウ素内用療法は、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺がんに対して行われる治療のひとつである。甲状腺機能亢進症では、放射性ヨウ素から放出されるベーター線で正常な甲状腺細胞を破壊し、甲状腺機能亢進症を改善させる。

 

 

 

 

 

問題15.ショックをきたす病態とその治療との組合せで正しいのはどれか。

1.アナフィラキシー:輸血
2.心タンポナーデ:胸腔ドレナージ
3.外傷性脾損傷:腹腔穿刺
4.重症熱傷:急速輸液

解答

解説

ショックとは?

ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。

末梢血管抵抗が低下するショックは、①アナフィラキシー、②敗血症性、③神経原性の3つである。それ以外は、循環動態を回復しようと代償作用が働き末梢血管抵抗は増大(血管は収縮)する。

1.× アナフィラキシーは、「輸血」ではなくアドレナリン投与(気道確保、酸素投与)が行われる。なぜなら、まずは血管を引き締めて血圧を上げ、気道の腫れを抑える効果があるアドレナリンを投与することが最優先であるため。
・アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応で起こるショックのことである。主にⅠ型アレルギー反応の結果、血管拡張や血管透過性の亢進による血漿漏出が生じ、循環血液量の減少をきたすことで起こる。アナフィラキシーショックの症状として(頻脈、血圧低下、意識障害、喉頭浮腫、呼吸困難)を引き起こす。

2.× 心タンポナーデは、「胸腔ドレナージ」ではなく心嚢ドレナージ(心嚢穿刺)が行われる。なぜなら、心タンポナーデは、心膜腔(心嚢腔)に血液や液体が貯留し、心臓の拡張が妨げられて心拍出量が低下する状態であるため。
・心タンポナーデとは、心臓を包んでいる2層の膜(心膜)の間に体液などの血液が貯留し、心臓が圧迫される。その結果、血液を送り出す心臓のポンプ機能が阻害され、 典型的にはふらつきや息切れを感じ、失神することもある。心膜腔に大量の血液が貯留し、著明な心室拡張障害から静脈還流障害が生じ、血圧低下およびショック状態に至る病態である。開心術後の合併症として生じ得る。

3.× 外傷性脾損傷は、「腹腔穿刺」ではなく止血(血管塞栓術)が行われる。
・脾臓とは、左上腹部にあり、①古くなった血球(白血球、赤血球、血小板)の処理や、②感染に対する防御など免疫に関係する働きを担う。脾損傷(胃の辺りを強打)すると、脾臓が損傷を受け、脾臓を覆う膜や内部の組織が裂けることがある。
・脾損傷とは、小さく裂けただけであれば自然に出血が止まるが、大きく裂けると激しく出血し、死に至るおそれがある。脾臓を覆う膜の内側や脾臓の奥深くに血のかたまり(血腫)ができることもある。したがって、主な合併症は,直ちにみられる出血および遅発性の血腫破裂である。血管塞栓術とは、血管内にカテーテルを挿入し、出血の原因となっている血管を精密に割り出して、そこに塞栓物質で詰めることにより出血部位への血流を遮断する治療である。

4.〇 正しい。重症熱傷:急速輸液
なぜなら、広範囲に熱傷を負った人は、熱傷を起こした組織の血管から体液がにじみ出ていき、また熱傷が深く広ければ全身の血管から体液が失われるため。したがって、最終的に脱水状態に陥る。ほかの熱傷の合併症として、循環血液量減少性ショックや気道熱傷、感染、瘢痕、拘縮などがある。 広範な熱傷(体表面積の20%超)の患者では、急速輸液が必要となる。
・重症熱傷とは、定義として「成人30%以上、幼小児15%以上の熱傷面積」とされている。

 

 

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