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問題11.外傷性脊髄損傷による完全対麻痺患者のリハビリテーションの基本方針で適切なのはどれか。
1.要介護状態での施設入所を目標とする。
2.日常生活動作を自立し施設入所を目標とする。
3.要介護状態での自宅退院を目標とする。
4.就業し経済的に自立することを目標とする。
解答4
解説
脊椎損傷とは、脊椎(背骨)に過大な外力が加わって、骨折や脱臼を生じる外傷である。外傷性脊髄損傷の原因(若年者)は、圧倒的に交通事故によるものが多く、原因の40%を超える。若年者ではバイクによる事故が多く、中高年者では自動車事故が多い。次いで、高所からの転落・転倒・スポーツによるものとなっているが、スノーボードによる事故も増えている。データとして、推定年間発生率は100万人あたり49人、頚髄損傷は88.1%、発症年齢中央値70.0歳、男女比3:1、原因(全体の割合)は転倒が38,6%、交通事故が20.1%と報告されている。
(※参考データ:日本脊髄障害医学会による脊髄損傷全国発生調査の結果)
1.× 「要介護状態」での「施設入所」を目標とするより優先されるものが他にある。なぜなら、「要介護状態」が最終目標となると、受動的・依存的な生活を前提となるため。また、「施設入所」を目標とした場合、患者の希望に反している可能性が考えられる。
2.× 日常生活動作を自立し、「施設入所」を目標とするより優先されるものが他にある。なぜなら、「施設入所」を目標とした場合、患者の希望に反している可能性が考えられるため。また、ADLの自立が得られた場合には、むしろ地域社会や家庭での生活が目標となるべきである。
3.× 「要介護状態」での自宅退院を目標とする。なぜなら、「要介護状態」が最終目標となると、受動的・依存的な生活を前提となるため。
4.〇 正しい。就業し経済的に自立することを目標とする。なぜなら、就業による社会的・経済的自立は、リハビリテーションの最終的かつ理想的な目標であるため。本症例のように、外傷性脊髄損傷(完全対麻痺)であっても、上肢機能を活かして自助具・電動車いす・バリアフリー環境を整えることで、十分に社会参加・就業が可能となる手段を模索すべきである。
問題12.頸髄損傷による四肢麻痺患者のリハビリテーションアプローチで、能力低下の改善を目標としているのはどれか。
1.両下肢関節の可動域訓練
2.両上肢筋力訓練
3.車椅子駆動訓練
4.家屋改修
解答3
解説

(※画像引用:Job Medley様HPより)
1~2.× 両下肢関節の可動域訓練/両上肢筋力訓練は、「(身体)機能障害」の改善を目的とするものである。
3.〇 正しい。車椅子駆動訓練は、能力低下の改善を目標としている。なぜなら、車椅子駆動は、「移動」という日常生活動作(ADL)の一部であり、身体機能を使って生活行為を実行する能力そのものを訓練するものであるため。
4.× 家屋改修は、「社会的不利」への環境調整である。
問題13.ICIDH(国際障害分類)で能力低下にあたるのはどれか。
1.膝関節が曲がらず正座ができないので茶会に参加できない。
2.膝関節痛のために歩行ができない。
3.膝関節痛のために自宅の2階の浴槽が利用できない。
4.膝関節痛のために好きだったゴルフに参加できない。
解答2
解説
ICIDHとは、一方向に「疾病変調→機能障害→能力障害→社会的不利」とマイナス面のみを評価するものである。ICIDH(国際障害分類)に対する批判から、医療福祉の専門家と障害者団体が関わって、その結果を結集してICFの改訂へと至っている。
機能障害:病気やけがによる一次的な生物学的障害
能力低下:けがによって歩けないといった個人レベルの障害
社会的不利:けがによって就職できないといった社会レベルの障害
1.× 膝関節が曲がらず、正座ができないので「茶会に参加できない」。
4.× 膝関節痛のために好きだった「ゴルフに参加できない」。
「茶会に参加できない」「ゴルフに参加できない」は、社会的不利にあたる。
・社会的不利とは、けがによって就職できないといった社会レベルの障害を指す。
2.〇 正しい。膝関節痛のために、「歩行ができない」。
 「歩行ができない」は、能力低下にあたる。
・能力低下とは、けがによって歩けないといった個人レベルの障害を指す。
3.× 膝関節痛のために、「自宅の2階の浴槽が利用できない」。
「自宅の2階の浴槽が利用できない」は、「能力低下」と「社会的不利」の中間にあたるが、生活環境との相互作用による社会的不利に近い状態である。
問題14.関節運動方向の表現で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.上腕の回旋を肩関節の内旋・外旋という。
2.前腕の回旋を肘関節の内転・外転という。
3.大腿の回旋を股関節の内旋・外旋という。
4.下腿の回旋を足部の内かえし・外かえしという。
解答1・3
解説
1.〇 正しい。上腕の回旋を肩関節の内旋・外旋という。
2.× 前腕の回旋を、「肘関節の内転・外転」ではなく前腕の回内・回外という。
3.〇 正しい。大腿の回旋を股関節の内旋・外旋という。
4.× 下腿の回旋を、「足部の内かえし・外かえし」ではなく下腿の内旋・外旋という。ただし、随意的には起こらず、例えば膝関節の屈曲・伸展に伴って回旋する程度である(終末強制回旋運動)。
・膝関節はらせん関節のため、屈曲位から完全伸展すると脛骨の外旋が起こる。これを終末強制回旋運動(スクリューホームムーブメント)という。
問題15.ロンベルグ徴候陽性となる病態はどれか。
1.小脳性運動失調
2.脊髄性運動失調
3.両側腓骨神経麻痺
4.パーキンソン(Parkinson)病
解答2
解説
Romberg徴候(ロンベルグ徴候)は、被験者に足をそろえ、目を閉じて直立する検査で、陽性(閉眼時)では、脊髄性障害(脊髄癆)では動揺が大きくなる。ちなみに、開眼時・閉眼時ともに動揺がみられる場合は小脳障害を考える。
1.× 小脳性運動失調の場合、ロンベルグ徴候は陰性である。なぜなら、小脳性失調では開眼・閉眼のどちらでも動揺が生じるため。小脳は姿勢・平衡の統合中枢であり、視覚情報の有無に関係なくバランスが崩れる。
・小脳性運動失調とは、小脳の機能でもある複数の筋肉をバランスよく協調させて動かすことができなくなる失調である。具体的には箸を使う、字を書くなどの細かい動きがしにくい、ふらついて歩きにくい、呂律が回らず言葉が滑らかに出ない、などの症状が出る。
2.〇 正しい。脊髄性運動失調は、ロンベルグ徴候陽性となる。
・脊髄後索性運動失調とは、脊髄後索病変により深部感覚が障害されて四肢・体幹の運動失調が生ずるもので、閉眼により立位保持ができなくなる(Romberg徴候)など、視覚の代償がなくなると運動失調が悪化するという特徴がある。
3.× 両側腓骨神経麻痺の場合、ロンベルグ徴候は陰性である。なぜなら、腓骨神経麻痺は深部感覚(位置覚)には影響しないため。
・腓骨神経麻痺とは、腓骨頭部(膝外側)の外部からの圧迫などによって、腓骨神経の機能不全をきたしている状態である。腓骨神経は、感覚(下腿外側、足背)や運動(足関節および足趾の背屈)を支配しているため、下腿の外側から足背ならびに足趾背側にかけて感覚が障害され、しびれたり、触った感じが鈍くなる。また、足首と足の指が背屈(上に反る)できなくなり、下垂足となる。
4.× パーキンソン(Parkinson)病の場合、ロンベルグ徴候は陰性である。なぜなら、パーキンソン病は、錐体外路障害で深部感覚は保たれているため。
・パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。
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