第23回(H27年)柔道整復師国家試験 解説【午後81~85】

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問題81.母指IP関節の伸展障害を合併しやすいのはどれか。2つ選べ。

1.モンテギア(Monteggia)骨折
2.ガレアジ(Galeazzi)骨折
3.コーレス(Colles)骨折
4.掌側バートン(Barton)骨折

解答1・3

解説

前骨間神経と後骨間神経について

前骨間神経と後骨間神経は、前腕の橈骨と尺骨という2つ骨の間を繋ぐ骨間膜の前後を走る神経である。両者とも触覚に異常がないのが特徴である。神経炎以外にも、外傷、絞扼性神経障害でも生じる。

【前骨間神経】
・肘の辺りで正中神経から分岐して主に母指(親指)と示指の第1関節を動かす筋肉を支配している。
→涙のしずくが陽性。

【後骨間神経】
・肘の辺りで橈骨神経から分岐して回外筋にもぐりこみ、指を伸展する筋肉を支配している。
→下垂指(drop finger)となる。

1.〇 正しい。モンテギア(Monteggia)骨折は、母指IP関節の伸展障害を合併しやすい。なぜなら、後骨間神経(橈骨神経深枝)を損傷しやすいため。
・モンテギア骨折とは、尺骨骨幹部骨折に橈骨頭前方脱臼が起きたものである。手をついて転倒・転落した際、前腕回内力が作用することで起こりやすい。

2.× ガレアジ(Galeazzi)骨折は、橈骨骨幹部の骨折と遠位橈尺関節の脱臼を伴う損傷である。前腕を強く回内して受傷した際に多く見られる。

3.〇 正しい。コーレス(Colles)骨折は、母指IP関節の伸展障害を合併しやすい。なぜなら、長母指伸筋腱の断裂が生じやすいため。
・長母指伸筋の【起始】尺骨体中部背面、前腕骨間膜背面、【停止】母指の末節骨底の背側、【作用】母指の伸展、内転、【支配神経】橈骨神経深枝:C6~C8である。

4.× 掌側バートン(Barton)骨折は、橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。

コーレス骨折

合併症:舟状骨骨折、尺骨茎状突起骨折、月状骨脱臼 、遠位橈尺関節離解、神経損傷などが生じる。

続発症・後遺症:長母指伸筋腱の断裂、手根管症候群、変形癒合、変形性関節症、指~肩関節の拘縮、反射性交感神経性ジストロフィー、前腕の回内・回外運動障害、橈骨遠位骨端軟骨損傷による成長障害、橈骨・尺骨・正中神経麻痺などが生じる。

固定肢位:肘関節直角屈曲、前腕回内、手関節軽度屈曲・軽度尺屈位で、上腕近位部からMP関節手前まで4~5週間固定する。

 

 

 

 

 

問題82.ガーデン分類で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.Stage1は外転型骨折を含む。
2.Stage2では骨頭壊死が起こりにくい。
3.Stage3では遠位骨片が前上方に転移する。
4.Stage4は骨頭が回転転移する。

解答1・2

解説

ガーデン分類とは?

ガーデン分類とは、大腿骨頚部骨折の転位の程度を評価する。ステージⅠ~Ⅳまである。

【Garden分類】
ステージⅠ:不完全骨折。 頚部内側は損傷がない状態。
ステージⅡ:転位のない完全骨折。 骨折部の上下がはまっている状態。
ステージⅢ:部分的に転位が回転した状態の完全骨折。 内側大腿回旋動脈に連続性がある。
ステージⅣ:完全に転位した完全骨折。 内側大腿回旋動脈が断裂している。

1.〇 正しい。Stage1は外転型骨折を含む。なぜなら、外転型骨折は、骨片が外側に開くような形で、骨折部が大きくずれにくく、圧迫力がかかることで安定しやすい傾向にあるため。したがって、外反股を呈するが、歩行可能な場合が多い。

2.〇 正しい。Stage2では骨頭壊死が起こりにくい。なぜなら、血流障害は少ない。Stage2では、全周に及ぶものの骨頭と頸部の位置関係が保たれており、骨頭への血管(特に内側大腿回旋動脈後枝)の損傷が軽度で済む。

3.× Stage3では、遠位骨片が「前上方」ではなく後上方(後外側)に転移する。

4.× Stage「4」ではなく3は、骨頭が回転転移する。ステージⅣの場合、完全に転位した完全骨折で、すべての連絡が断裂する。したがって、骨頭の回旋転位はない。

 

 

 

 

 

問題83.膝関節部の骨折で正しいのはどれか。

1.大腿骨顆上骨折では膝窩動脈損傷がみられる。
2.膝蓋骨腱膜下骨折の転位は高度になる。
3.脛骨外顆骨折では外側側副靱帯損傷がみられる。
4.脛骨顆間隆起骨折は成人男性に好発する。

解答

解説
1.〇 正しい。大腿骨顆上骨折では、膝窩動脈損傷がみられる。なぜなら、膝窩動脈は膝関節の後方を走行しており、大腿骨遠位端に密着しているため。したがって、骨折片の後方転位や過伸展によって直接損傷・圧迫・血栓形成を起こしやすい。

2.× 膝蓋骨腱膜下骨折の転位は、「高度」ではなくほとんど生じないことが多い。なぜなら、膝蓋骨の上下を連結する大腿四頭筋腱および膝蓋靱帯が保たれているため。
・腱膜下骨折とは、膝蓋骨を覆う腱膜に断裂がなく、骨片の転位も軽度である骨折である。

3.× 脛骨外顆骨折では、外側側副靱帯損傷が「みられにくい」。一方、内側側副靱帯損傷が多い。なぜなら、内側半月板は内側側副靱帯に固定され、外側半月板は外側側副靱帯から遊離して可動性を持つため。

4.× 脛骨顆間隆起骨折は、「成人男性」ではなく小児(特に学童〜思春期)に好発する。なぜなら、脛骨顆間隆起骨折は、前十字靱帯の牽引によって生じるため。脛骨顆間隆起骨折は、膝関節の急激な屈曲や伸展により前十字靱帯が強く牽引された結果、脛骨の顆間隆起部分に力が加わって引き起こされる。8~12歳の小児に多い。

 

 

 

 

 

問題84.膝蓋骨中央部に著明な陥凹を認め、膝関節自動伸展運動不能な患者を医療機関へ搬送する際、応急的な固定の膝関節肢位はどれか。

1.鋭角屈曲位
2.90°屈曲位
3.軽度屈曲位
4.過伸展位

解答

解説

本症例のポイント

・膝蓋骨中央部に著明な陥凹
・膝関節自動伸展運動不能
→本症例は、膝蓋骨横骨折が疑われる。

1~2.× 鋭角屈曲位/90°屈曲位は、禁忌である。なぜなら、膝関節過屈曲により、大腿四頭筋腱の牽引力が膝蓋骨断端をさらに離開させ、骨折部の転位を増悪させてしまうため。

3.〇 正しい。軽度屈曲位が、本症例の応急的な固定の膝関節肢位である。なぜなら、軽度屈曲位では、大腿四頭筋の緊張が緩み、骨片離開を防止できるため。

4.× 過伸展位より優先されるものが他にある。なぜなら、過伸展位により、膝蓋骨が膝関節へ圧迫する力が働き、症状増悪につながりかねないため。

 

 

 

 

 

問題85.デュピュイトラン(Dupuytren)脱臼骨折で起こらないのはどれか。

1.内果裂離骨折
2.遠位脛腓関節離開
3.腓骨骨幹部螺旋骨折
4.距骨内側脱臼

解答

解説

MEMO

回内・外旋骨折は、①デュピュイトラン骨折、②ポット骨折、③チロー骨折などでみられる。

①デュピュイトラン骨折とは、内果骨折遠位脛腓関節の完全離開腓骨骨幹部または頭部の螺旋状骨折を合併したものである。

②ポット骨折とは、三角靱帯断裂、遠位脛腓関節の完全離開、腓骨骨幹部または頸部の螺旋状骨折を合併したものである。

③チロー骨折とは、前脛腓靱帯付着部(脛骨側)のチロー結節の裂離骨折である。

1.〇 内果裂離骨折は、デュピュイトラン骨折で起こる
・内果裂離骨折の原因は、靭帯や腱の無理な牽引である。組織が損傷して治癒する過程で「癒着」が発生する。周囲の軟部組織を癒着が巻き込むことで関節の可動域が制限される関節拘縮が起きやすくなる。
・裂離骨折とは、剥離骨折ともいい、靭帯や筋肉の牽引によってその付着部が引きはがされて損傷してしまった状態を指す。

2.〇 遠位脛腓関節離開は、デュピュイトラン骨折で起こる。なぜなら、回内・外旋力によって腓骨が外側に牽引され、脛腓靭帯に過伸展力が加わって断裂するため。したがって、脛腓間の離開(開大)が生じる。

3.〇 腓骨骨幹部螺旋骨折は、デュピュイトラン骨折で起こる。なぜなら、回内・外旋力が腓骨に伝わると、腓骨がねじれ方向の応力を受けるため。
・螺旋骨折とは、捻じれる力がかかることで生じる骨折である。スキーでの転倒など捻りが加わる外傷を負ったときや、ボールの投球、腕相撲といった運動の動作の際に起こることもある。

4.× 距骨内側脱臼は、デュピュイトラン脱臼骨折で起こらない。なぜなら、外力の方向が逆であるため。むしろ、Pott骨折や内反型足関節骨折にみられる。

 

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