第22回(H26年)柔道整復師国家試験 解説【午後21~25】

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問題21.56歳の男性。急に右上下肢が動かしづらくなり、独歩で救急外来を受診し、左被殻出血と診断され入院となった。現在入院から3日が経過している。軽い麻痺は残存しているが、頭部CT検査で出血の増大傾向はなく、バイタルサインは安定している。
 リハビリテーションで正しいのはどれか。

1.1週間ベッド上安静とする。
2.ベッド上安静で左右への体位変換のみ許可する。
3.関節可動域訓練は他動的訓練のみ行う。
4.座位、立位、歩行訓練を進める。

解答

解説

本症例のポイント

・56歳の男性(左被殻出血)。
・急に右上下肢が動かしづらくなり、独歩で受診。
・現在入院から3日経過
・軽い麻痺は残存。
・頭部CT検査で出血の増大傾向はなし。
バイタルサインは安定している。
→3日以降で画像的にも安定していれば早期リハビリを開始する

1.× 1週間ベッド上安静とする優先度は低い
2.× ベッド上安静で左右への体位変換のみ許可する優先度は低い
3.× 関節可動域訓練は他動的訓練のみ行う優先度は低い
なぜなら、近年の脳卒中治療ガイドラインでは、発症48〜72時間で出血が安定していれば離床開始が推奨されているため。長期の安静は、廃用症候群・深部静脈血栓症(DVT)・肺塞栓などの合併症を増加させる。

4.〇 正しい。座位、立位、歩行訓練を進める。なぜなら、早期離床により、①廃用症候群(筋萎縮・拘縮・褥瘡)の予防、②深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓の予防、③ADL(基本動作)の早期回復などが期待できるため。

 

 

 

 

 

問題22.皮膚症状と疾患との組合せで正しいのはどれか。

1.紫斑:血友病
2.ヘリオトロープ疹:肝硬変
3.蝶型紅斑:感染性心内膜炎
4.手掌紅斑:アジソン病(Addison)

解答

解説

皮膚筋炎とは?

多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。

(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)

1.〇 正しい。紫斑:血友病
・血友病とは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。伴性劣性遺伝(男児に多い)で、生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。治療として、凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーションが行われる。
・紫斑とは、皮膚や粘膜に出血によって紫調に変色した病変のことで、大別して血管に原因がある場合(血管炎)と、血小板が減少するか、はたらきの異常(紫斑病)で起こる。

2.× ヘリオトロープ疹は、「肝硬変」ではなく皮膚筋炎でみられる。
・ヘリオトロープ疹とは、上眼瞼の腫れぼったい紅斑のことである。

3.× 蝶型紅斑は、「感染性心内膜炎」ではなく全身性エリテマトーデスでみられる。
・全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の蝶形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。診断基準として、顔面紅斑、円板状皮疹、光線過敏症、口腔内潰瘍、抗核抗体陽性など4項目以上満たすと全身性エリテマトーデス(SLE)を疑う。
・感染性心内膜炎とは、体内の細菌が心臓弁や心内膜で増殖する疾患である。増殖した細菌がかたまり血流に乗って脳や他臓器で塞栓症(脳塞栓症)を引き起こすことがある。

4.× 手掌紅斑は、「アジソン病」ではなく肝硬変でみられる。
・肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。 慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。クモ状血管腫や手掌紅斑などがみられる。
・アジソン病とは、副腎皮質機能低下症ともいい、るいそう(やせ)と色素沈着など特徴的である。副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

 

 

 

 

 

問題23.副腎皮質ステロイド薬を大量に長期間服用したときや、クッシング症候群でみられる特徴的な顔貌はどれか。

1.苦悶様顔貌
2.満月様顔貌
3.ヒポクラテス顔貌
4.仮面様(マスク様)顔貌

解答

解説

クッシング症候群とは?

クッシング症候群は、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により起こる内分泌系疾患である。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。主に、副腎腺腫、副腎癌、副腎過形成、ACTH産生下垂体腺腫などによりコルチゾールの過剰分泌が起こる。

1.× 苦悶様顔貌は、激しい痛みや呼吸困難時にみられる一過性の表情変化である。

2.〇 正しい。満月様顔貌は、副腎皮質ステロイド薬を大量に長期間服用したときや、クッシング症候群でみられる特徴的な顔貌である。
・満月様顔貌とは、顔に脂肪が沈着して満月のように丸くなった状態のことである。ムーンフェイスともいう。 副腎皮質ホルモンの過剰分泌、もしくは副腎皮質ホルモン製剤の過剰投与によって引き起こされる。

3.× ヒポクラテス顔貌は、重篤な脱水・ショック・悪液質(衰弱)でみられる顔貌である。循環不全や体液喪失によって、顔面の皮膚が乾燥し、眼窩が落ち込み、鼻が尖って、顔全体がやつれた印象を与える。

4.× 仮面様(マスク様)顔貌は、パーキンソン病に最もよくみられる症候である。
・仮面様顔貌とは、表情が乏しく、仮面をつけているような顔のこと。これは、顔面の筋肉の動きが減少するために起こる。

副腎皮質ステロイド薬とは?

【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)

ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。

(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)

 

 

 

 

 

問題24.健常者の打診で清音を聴取するのはどれか。

1.心臓
2.肺
3.肝臓
4.腸管

解答

解説

清音とは?

清音とは、通常、空気を含む部位(例えば、)を打診したときに聞こえる。音の振幅が大きく、含気が多いことを意味します。正常な場合、打診によって聴かれる。

1.× 心臓の打診音は、濁音である。なぜなら、心臓は、筋肉の塊であり空気を含まないため。

2.〇 正しい。は、健常者の打診で清音を聴取する。なぜなら、正常な肺は、空気を多く含むため。

3.× 肝臓は、濁音である。なぜなら、肝臓は実質臓器で空気を含まないため。

4.× 腸管は、鼓音である。なぜなら、腸管は空気が広い空洞内に閉じ込められており、打診すると太鼓のように高く響く音(鼓音)が生じるため。
・鼓音とは、ガスが充満しているとき、例えば、腸管内に大量のガスがあるときに聴こえる。気胸および肺に空洞のある患者の一部に胸部打診をしたとき聞こえる変化した鼓のような音調である。

 

 

 

 

 

問題25.健常者の聴診所見はどれか。

1.肺胞呼吸音
2.連続性ラ音
3.断続性ラ音
4.胸膜摩擦音

解答

解説
1.〇 正しい。肺胞呼吸音は、健常者の聴診所見である。
・肺胞呼吸音とは、低調で柔らかい音である。気管支末端から肺胞に至る空気の流れによって生じる正常呼吸音で、吸気のすべてと呼気(初期)で聴取される。

2.× 連続性ラ音は、異常呼吸音である。なぜなら、連続性ラ音は気道の狭窄や分泌物(喘息・気道狭窄など)によって発生するため。

3.× 断続性ラ音は、異常呼吸音である。なぜなら、断続性ラ音は細気管支や肺胞内にある液体・分泌物のはじける音であるため。特に、特発性肺線維症、間質性肺炎、過敏性肺臓炎などでみられる。

4.× 胸膜摩擦音は、異常呼吸音である。
・胸膜摩擦音とは、胸膜炎で胸膜面が粗くなったときに聴取できる靴底の軋む音、雪を握るような音(握雪音、ギュギュ) のことである。

 

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