第22回(H26年)柔道整復師国家試験 解説【午後31~35】

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問題31.腱反射が亢進するのはどれか。

1.上位運動ニューロン障害
2.末梢神経障害
3.脊髄前角障害
4.脊髄後索障害

解答

解説

錐体路障害とは?

錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。

【錐体路徴候】
深部腱反射亢進
・病的反射(+)
・表在反射(消失)
・痙性麻痺

【錐体外路症状】
・深部腱反射正常
・表在反射(+)
・病的反射(-)
・不随意運動の出現

1.〇 正しい。上位運動ニューロン障害は、腱反射が亢進する。なぜなら、上位運動ニューロンは、脊髄レベルの反射を抑制する働きをもっているため。したがって、この抑制が障害されると、反射弓が過剰に反応する。
・上位運動ニューロンとは、大脳皮質から内包、脳幹、脊髄を経て脊髄前角細胞に至る経路のことである。
・下位運動ニューロンとは、脊髄前角細胞から末梢部で筋に至るまでの経路のことである。

2.× 末梢神経障害では、腱反射は消失または減弱する。なぜなら、末梢神経障害では、反射弓そのもの(求心路・遠心路)が損傷されるため。

3.× 脊髄前角障害では、腱反射は消失または減弱する。なぜなら、脊髄前角は、反射弓の出力側(下位運動ニューロン)であるため。

4.× 脊髄後索障害は、腱反射の変化と直接関係しない。なぜなら、脊髄後索は、感覚伝導路(深部感覚:位置覚・振動覚)を通る経路であるため。

 

 

 

 

 

問題32.ヘリコバクター・ピロリ菌が発症に関与する疾患はどれか。

1.食道癌
2.胃癌
3.胆嚢癌
4.大腸癌

解答

解説

ヘリコバクター・ピロリ菌とは?

ヘリコバクター・ピロリ菌は、慢性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃癌などに関与している菌である。ヘリコバクター・ピロリ菌は、井戸水などにより経口感染するヒトなどの胃に生息するらせん型のグラム陰性微好気性細菌である。単にピロリ菌と呼ばれることもある。アンモニアを遊離し、局所をアルカリ化することによって胃粘膜の障害をきたす病原菌である。胃炎や胃潰瘍の発生に関与する。

1.× 食道癌は、ピロリ菌との関連性は低い
・食道癌とは、食道に発生した上皮性腫瘍のことである。組織学的に約90%が扁平上皮癌である。好発部位は、胸部中部食道、胸部下部食道の順で、胸部中部食道が約50%を占める。アルコール、喫煙、熱い食事、Barret食道、アカラシアなどが誘因である。

2.〇 正しい。胃癌は、ヘリコバクター・ピロリ菌が発症に関与する疾患である。
・胃がんは、胃の内面を覆う粘膜の細胞ががん化することで発生する。早期胃がんの症状は、胃の痛み、不快感、違和感、胸焼け、吐き気、食欲不振などである。ちなみに、下痢は腸の疾患(例えば感染性腸炎や炎症性腸疾患)に関連することが多い。

3.× 胆嚢癌は、ピロリ菌との関連性は低い。胆嚢癌の主な原因は、胆石症・慢性胆嚢炎・先天性胆道拡張症などである。
・胆石症とは、胆汁の流れる胆道に石(胆石)ができてしまう病気の総称である。原因となる胆石は、胆汁に含まれる成分が溶けきれず石のように固まることで発生する。もっとも頻度が高いコレステロール石は胆汁のコレステロール濃度が高くなることで発生する。症状として、放散痛や吐き気、嘔吐である。胆石症の放散痛は、右肩甲骨部、腰、上腹部への放散痛が生じる。

4.× 大腸癌は、ピロリ菌との関連性は低い
・大腸癌の危険因子として、潰瘍性大腸炎や生活習慣に関わる大腸がんのリスク要因として、運動不足、野菜や果物の摂取不足、肥満、飲酒などが挙げられる。生活習慣の欧米化(高脂肪・低繊維食)が関与していると考えられている。

 

 

 

 

 

問題33.結核菌はどれか。

1.マイコプラズマ
2.リケッチア
3.抗酸菌
4.真菌

解答

解説
1.× マイコプラズマとは、「肺炎マイコプラズマ肺炎」をきたす細菌のことである。肺炎マイコプラズマ肺炎は、呼吸器感染症で、小児や若い人の肺炎の原因としては、比較的多いものの1つである。例年、患者として報告されるもののうち約80%は14歳以下であるが、成人の報告もみられる。

2.× リケッチアとは、細胞内寄生性のグラム陰性桿菌であり、ダニ・ノミ・シラミなどを介して感染する細菌である。リケッチア感染症は、高熱・発疹・倦怠感・頭痛などを引き起こし、重症化すると命に関わるため、テトラサイクリン系抗菌薬による早期治療が重要で

3.〇 正しい。抗酸菌は、結核菌である。
・抗酸菌とは、酸に強い特殊な細菌のグループである。通常の細菌は酸で染色が落ちるが、抗酸菌は細胞壁が非常に厚く、ミコール酸という脂質を多く含むため、色が落ちにくい特徴をもつ。代表的なものに結核菌らい菌があり、増殖が遅いため治療には長期間の薬が必要となる。チール・ネルセン染色は、この抗酸菌を見分けるための方法である。

4.× 真菌とは、真核生物ともいい、カビ、酵母、キノコの仲間である。核の他にミトコンドリアや小胞体など多くの小器官をもっている。核酸(DNAやRNA)を持つ。核を持つ。細胞膜を持つ。細胞壁を持つ。

肺結核とは?

肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。

 

 

 

 

 

問題34.心疾患と所見との組合せで誤っているのはどれか。

1.ファロー(Fallot)四徴症:ばち状指
2.僧帽弁狭窄症:拡張期雑音
3.狭心症:心電図のST低下
4.心房中隔欠損症:左心系負荷増大

解答

解説
1.〇 正しい。ファロー(Fallot)四徴症:ばち状指
なぜなら、ファロー四徴症では慢性低酸素血症により、ばち状指を呈するため。
・ファロー(Fallot)四徴症とは、4つの特徴(「心室中隔欠損」、「肺動脈狭窄」、「大動脈騎乗」、「右室肥大」)がある病気である。大動脈が太く、通常より前方に移動していることで肺動脈が細く狭くなり、「肺動脈狭窄」になる。ファロー四徴症は、先天性心疾患(原因は不明)であり、症状としてチアノーゼ、頻脈、多呼吸、哺乳不良などの症状がみられる。
・ばち状指とは、長期的な末梢の毛細血管増生と軟部組織肥厚が起こることにより、指先が太鼓のバチのように丸くなる状態である。

2.〇 正しい。僧帽弁狭窄症:拡張期雑音
なぜなら、僧帽弁狭窄により左房から左室への血流が障害され、拡張期に血液が乱流を起こすため。
・僧帽弁狭窄症とは、僧帽弁の開口部が狭くなり、左心房から左心室への血流が妨害(閉塞)されている状態である。

3.〇 正しい。狭心症:心電図のST低下
・狭心症は心臓への酸素供給量が減少することで、一時的な胸痛や圧迫されたような不快感を感じる疾患である。狭心症は酸素需要量が増大する運動時に発症しやすく、安静にすると回復する傾向がある。診断には血液検査や画像所見、自覚症状に基づいて下される。
・ちなみに、心筋梗塞の時間経過とともにみられる特徴として、①T波の増高、②ST上昇異常、③Q波、④陰性T波の順番でみられるようになる。

4.× 心房中隔欠損症は、「左心系」ではなく右心系負荷増大が起こる。
なぜなら、心房中隔に欠損があると、左心房(高圧)→右心房(低圧)に血液が流れ込み、結果として右心房・右心室の容量負荷が増加し、肺動脈血流も増えるため。したがって、左心系(左房・左室)はむしろ容量が減少する。
・心房中隔欠損症とは、左心房と右心房を仕切る心房中隔に欠損孔と呼ばれる穴が開いている疾患である。この異常により、通常は左心房から右心房へ血液が流れ込む(シャント)が、右心房の圧が上がった際(奇異塞栓時など)には逆流する。静脈系の血栓が右心房から欠損孔を通り左心房に移動し、動脈系に入ることで、脳梗塞などの奇異塞栓が発生する可能性がある。

 

 

 

 

 

問題35.心筋梗塞で誤っているのはどれか。

1.脂質異常症は危険因子である。
2.胸痛の持続時間が長い。
3.心筋の壊死を伴う。
4.白血球数減少がみられる。

解答

解説

心筋梗塞とは?

心筋が壊死に陥った状態のこと。
心電図の特徴は、STの上昇である。
リスクファクターとして、①高血圧、②喫煙、③糖尿病、④脂質代謝異常などである。

1.〇 正しい。脂質異常症は危険因子である。なぜなら、脂質異常症は動脈硬化を促進するため。血中LDLコレステロールや中性脂肪の増加により、冠動脈内膜に脂質が沈着してプラークを形成し、これが破綻して血栓を生じることで心筋梗塞が発症する。
・脂質異常症とは、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド(TG)血症を指し、動脈硬化の原因となる。その治療で重要なのは、薬物療法のほか、食事指導による適正体重の維持や内臓脂肪の減量である。まず食事指導の基本は、総摂取エネルギーと栄養素配分を適正化することである。

2.〇 正しい。胸痛の持続時間が長い。(※ただし、なんの病気と比較して、持続時間が長いのか判断に困る選択肢である)。心筋梗塞の胸痛は、長時間(20分以上)持続するのが特徴である。なぜなら、狭心症と異なり心筋梗塞では冠動脈が完全閉塞し、虚血が解除されないため。

3.〇 正しい。心筋の壊死を伴う。なぜなら、冠動脈血流が遮断されると、酸素欠乏により心筋細胞が不可逆的に壊死するため。

4.× 白血球数は、「減少」ではなく増加がみられる。なぜなら、心筋梗塞は冠動脈閉塞による心筋壊死(細胞死)が起こり、それに対して炎症反応を起こすため。

 

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