第22回(H26年)柔道整復師国家試験 解説【午後36~40】

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問題36.チアノーゼがみられるのはどれか。

1.ファロー(Fallot)四徴症
2.心房中隔欠損症
3.大動脈弁狭窄症
4.僧帽弁閉鎖不全症

解答

解説

チアノーゼとは?

チアノーゼとは、皮膚や粘膜が青紫色である状態をいう。 一般に、血液中の酸素が不足することをきっかけとし、 血液中の酸素濃度が低下した際に、爪床や口唇周囲に表れやすい。毛細血管血液中の還元ヘモグロビンが、5g/dL以上に増加すると出現する皮膚の青紫調変化である。

1.〇 正しい。ファロー(Fallot)四徴症は、チアノーゼがみられる。なぜなら、ファロー四徴症では心室中隔欠損と肺動脈狭窄により、右心室圧が上昇し、右→左シャント(静脈血が動脈側へ流入)が起こるため。したがって、酸素化されていない血液が全身に流れ、チアノーゼを生じる。
・ファロー(Fallot)四徴症とは、4つの特徴(「心室中隔欠損」、「肺動脈狭窄」、「大動脈騎乗」、「右室肥大」)がある病気である。大動脈が太く、通常より前方に移動していることで肺動脈が細く狭くなり、「肺動脈狭窄」になる。ファロー四徴症は、先天性心疾患であり、症状としてチアノーゼ、頻脈、多呼吸、哺乳不良などの症状がみられる。原因は不明である。

2.× 心房中隔欠損症は、非チアノーゼ性心疾患である。
・心房中隔欠損症とは、左心房と右心房を仕切る心房中隔に欠損孔と呼ばれる穴が開いている疾患である。この異常により、通常は左心房から右心房へ血液が流れ込む(シャント)が、右心房の圧が上がった際(奇異塞栓時など)には逆流する。静脈系の血栓が右心房から欠損孔を通り左心房に移動し、動脈系に入ることで、脳梗塞などの奇異塞栓が発生する可能性がある。

3.× 大動脈弁狭窄症は、非チアノーゼ性心疾患である。
・大動脈弁狭窄症とは、心臓の左心室と大動脈を隔てている弁の動きが悪くなり、全身に血液を送り出しにくくなる状態になる疾患である。近年、原因は加齢や動脈硬化が原因である割合が増えてきている。三大症状は「労作時呼吸困難・狭心痛・失神」である。

4.× 僧帽弁閉鎖不全症は、非チアノーゼ性心疾患である。
【僧帽弁閉鎖不全症について】
定義:僧帽弁の閉鎖が不十分なため、収縮期に血液が左室から左房へ逆流する。
概要:原因はリウマチ熱、動脈硬化による。
症状:左心不全症状(呼吸困難、動悸、息切れ)、易疲労、進行すると発作性夜間呼吸困難、起坐呼吸など。
検査所見:心電図検査(ECG)→心房細動多発

非チアノーゼ性心疾患とは?

非チアノーゼ性疾患とは、心臓に穴があったり動脈と静脈の間によこ道があり、大量の血液が心臓と肺の間を空回りして心臓や肺に負担がかかるものである。 先天性心疾患の半分以上を占める。左心室から右心室へ血流が流れ込んでしまう。症状として、呼吸が速く苦しそうになり、発汗、ミルクがあまり飲めず、体重が増えないなどがみられる。

 

 

 

 

 

問題37.1型糖尿病で正しいのはどれか。

1.2型糖尿病よりも多い。
2.やせ型よりも肥満型に多い。
3.自己免疫機序によって起こる。
4.経口血糖降下薬で治療する。

解答

解説

1型糖尿病とは?

・1型糖尿病とは、原因が自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる糖尿病である。小児~思春期の発症が多く、肥満とは関係ないのが特徴である。

・2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。

1.× 2型糖尿病より「少ない」。糖尿病全体の約95%は2型糖尿病である。なぜなら、2型糖尿病は、遺伝的要因に加え、現代社会における過食、運動不足、肥満などの生活習慣の変化により発症するため。この環境要因(生活習慣)が多くの人に影響する。

2.× 逆である。「肥満型」よりも「やせ型」に多い。なぜなら、1型糖尿病は、インスリン分泌が完全に失われており、ブドウ糖が細胞内に取り込まれないため。したがって、体脂肪・筋肉が分解されてエネルギーに使われ、体重が減少する。一方、肥満型は2型糖尿病の特徴である。

3.〇 正しい。自己免疫機序によって起こる。なぜなら、1型糖尿病は自己免疫性の膵β細胞破壊が原因であるため。遺伝的素因をもつ人に、ウイルス感染などの環境因子が加わることで、自己免疫反応が誘発され、膵ランゲルハンス島のβ細胞が破壊される。

4.× 経口血糖降下薬で治療するのは、「2型糖尿病」である。一方、1型糖尿病では経口血糖降下薬は無効であり、インスリン注射が必須である。なぜなら、1型糖尿病では膵β細胞が破壊されているため。つまり、経口血糖降下薬で膵臓を刺激してもインスリンが出ない。

 

 

 

 

 

問題38.関節リウマチで正しいのはどれか。

1.男性に多い。
2.ブシャール(Bouchard)結節をきたす。
3.遠位指節間関節が好発部位である。
4.リウマトイド因子が診断に有用である。

解答

解説
1.× 「男性」ではなく女性に多い。なぜなら、女性ホルモン(エストロゲン)との関係が示唆されているため。男女比は約1:4〜5で女性に多い。

2.× ブシャール(Bouchard)結節を「きたさない」。なぜなら、ブシャール結節は、変形性関節症に特有の所見であるため。一方、関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。
【手の変形性関節症の種類】
・Heberden結節(へバーデン結節):DIP関節に生じる。
・Bouchard結節(ブシャール結節):PIP関節に生じる。

3.× 「遠位」ではなく近位指節間関節(PIP関節)が好発部位である。なぜなら、近位指節間関節(中手指節関節など)は、滑膜が豊富であるため。

4.〇 正しい。リウマトイド因子が診断に有用である。関節リウマチでは、赤沈・CRP・リウマトイド因子(RA-F)・抗CCP抗体などが高値となる。
・リウマトイド因子とは、関節リウマチのマーカーである。IgGに対する抗体の総称であり、そのほとんどがFc部分に反応するIgM型の抗体である。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題39.羽ばたき振戦を呈するのはどれか。

1.パーキンソン(Parkinson)病
2.肝性脳症
3.甲状腺機能亢進症
4.低カルシウム血症

解答

解説

羽ばたき振戦とは?

羽ばたき振戦とは、手関節を背屈させたまま手指と上肢を伸展させ、その姿勢を保持するように指示すると、「手関節及び中指関節が急激に掌屈し、同時に、元の位置に戻そうとして背屈する運動」が認められる。手関節や手指が速くゆれ、羽ばたいているようにみえるので、このように呼ばれる。肝性脳症やウィルソン病、呼吸不全(CO2ナルコーシス)など代謝性神経疾患で出現する。

1.× パーキンソン(Parkinson)病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

2.〇 正しい。肝性脳症は、羽ばたき振戦を呈する。
・肝性脳症とは、重度の肝疾患がある人において、正常なら肝臓で除去されるはずの有害物質が血液中に蓄積して脳に達することで、脳機能が低下する病気である。長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者に発生する。 原因として、消化管での出血、感染症、処方薬を正しく服用しないこと、その他のストレスによって誘発される。正常な肝なら代謝されるはずの有害物質(アンモニアなど)が脳に達することによって生じる。肝性脳症は多くの場合、治療により予後良好である。主に、①ラクツロース、②抗菌薬が用いられる。①合成糖であるラクツロースは、下剤として作用し、食物が腸を通過する速度を速めることで、体に吸収されるアンモニアの量が減少させる。②口から投与しても腸から吸収されない抗菌薬(リファキシミンなど)を処方することにより、腸に残り、消化中に毒素を作り出す細菌の数を減らす効果が期待できる。(※参考「肝性脳症」MSDマニュアル家庭版)

3.× 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状として、発汗や食欲亢進、体重減少、下痢、振戦、メルセブルグ3徴(眼球突出、甲状腺腫、頻脈)がみられる。放射線性ヨウ素内用療法は、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺がんに対して行われる治療のひとつである。甲状腺機能亢進症では、放射性ヨウ素から放出されるベーター線で正常な甲状腺細胞を破壊し、甲状腺機能亢進症を改善させる。

4.× 低カルシウム血症とは、血漿タンパク質濃度が正常範囲内にある場合に血清総カルシウム濃度が8.8mg/dL(2.20mmol/L)未満であること、または血清イオン化カルシウム濃度が4.7mg/dL(1.17mmol/L)未満となった状態である。 原因には、副甲状腺機能低下症、ビタミンD欠乏症、および腎疾患がある。症状として、しびれ感、テタニー(手指の不随意な筋収縮)、けいれん(すべての形)、喉頭けいれん・気管支けいれん、歯牙発育障害などがある。

 

 

 

 

 

問題40.アキレス腱反射が減弱もしくは消失するのはどれか。

1.変形性頸椎症
2.脳出血
3.糖尿病性神経障害
4.多発性硬化症

解答

解説

錐体路とは

錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。

【錐体路徴候】
・深部腱反射亢進
・病的反射(+)
・表在反射(消失)
・痙性麻痺

【錐体外路症状】
・深部腱反射正常
・表在反射(+)
・病的反射(-)
・不随意運動の出現

1.× 変形性頸椎症では、アキレス腱反射は亢進することが多い。なぜなら、変形性頸椎症は頸髄の圧迫(上位運動ニューロン障害)を起こすことがあるため。
・変形性頸椎症とは、頸椎の変形により神経根や脊髄が圧迫される疾患である。原因は、加齢による椎間板の変性であり、40歳以上で発症することが多い。主な症状としては、頭頚部の可動域の悪化、首や肩の痛み、神経圧迫による腕や足への痛み・痺れや筋力低下などである。

2.× 脳出血では、アキレス腱反射は亢進することが多い。なぜなら、脳出血は上位運動ニューロン障害を起こすため。
・脳出血とは、脳を貫いて走る非常に細い血管が破綻して出血し、出血に巻き込まれた神経細胞が障害される病気である。原因として、高血圧(60%)・脳動静脈奇形・脳動脈癌などである。

3.〇 正しい。糖尿病性神経障害は、アキレス腱反射が減弱もしくは消失する。なぜなら、糖尿病性神経障害は、末梢神経(下位運動ニューロン障害)を起こすため。
・糖尿病の主に3大合併症として、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害があげられる。なかでも糖尿病性神経障害とは、糖尿病に合併する末梢神経障害である。症状は、①眼筋・眼瞼挙筋麻痺、②下肢の腱反射低下、③振動覚障害、④しびれなどが特徴である。上肢よりも下肢,近位部よりも遠位部が障害されやすい。感覚障害は、手部や足部に左右対称におこることが多い。

4.× 多発性硬化症では、アキレス腱反射は亢進することが多い。なぜなら、多発性硬化症は上位運動ニューロン障害(脱髄疾患)を起こすため。

多発性硬化症とは?

 多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。

(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

 

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