第20回(H24年)柔道整復師国家試験 解説【午後106~110】

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問題106.50歳の女性。工場で組み立て作業ラインに従事している。特に受傷した記憶はないが、約2週前から起床時に左手母指IP関節が、屈曲したまま伸びなくなると訴えている。診察時には同関節は伸びていて、抵抗感はあるが自動的に屈曲も可能である。
 認められる主な症状はどれか。

1.起床時に母指がZ字状を呈している。
2.MP関節掌側に硬結を触知する。
3.IP関節に腫脹を認める。
4.IP関節に圧痛を認める。

解答

解説

本症例のポイント

・50歳の女性(工場で組み立て作業ライン)。
・特に受傷した記憶はない。
・約2週前:左手母指IP関節、屈曲位で伸びなくなる
・診察時:同関節は伸びていて、抵抗感はあるが自動的に屈曲も可能である。
→本症例は、ばね指が疑われる。弾発指(ばね指)とは、指を曲げて伸ばそうとしたときに、弾くようなバネに似た動きをする状態のことである。ばね指は、指を曲げるのに必要な腱や腱鞘に炎症が起こり、腱鞘炎が悪化することで発症する。特に手指を使いすぎていたり、スポーツをしたりしているとかかりやすいといわれている。

1.× 起床時に母指がZ字状を呈している「とはいえない」。なぜなら、本症例の症状と合致しないため。また、Z変形は関節リウマチに起こりやすい。

2.〇 正しい。MP関節掌側に硬結を触知する。なぜなら、ばね指は、屈筋腱が腱鞘で引っかかる滑走障害であり、炎症性肥厚による硬結がMP関節掌側で触れるため。

3~4.× IP関節に腫脹/圧痛を「認めないことが多い」。なぜなら、ばね指が炎症(腫脹、圧痛)を起こすことは「まれ」であるため。また、ばね指の部位においても、「IP関節」ではなくMP関節に問題が起きやすい。

 

 

 

 

 

問題107.68歳の男性。左小指の運動制限があり、日常生活動作にも支障をきたしている。MP・PIP関節の伸展制限を認め、同指の手掌部に索状物を触れる。
 考えられるのはどれか。

1.ド・ケルバン(de Quervain)病
2.フォルクマン(Volmann)拘縮
3.デュピュイトラン(Dupuytren)拘縮
4.マーデルング(Madelung)変形

解答

解説

本症例のポイント

・68歳の男性(左小指の運動制限)。
・日常生活動作にも支障あり。
MP、PIP関節の伸展制限を認め、同指の手掌部に索状物を触れる。
→ほかの選択肢が消去できる理由も上げられるようにしよう。

1.× ド・ケルバン病より優先されるものが他にある。なぜなら、ド・ケルバン病は母指側の腱鞘炎であるため。
ド・ケルバン病(de Quervain病、狭窄性腱鞘炎)は、短母指伸筋腱と長母指外転筋腱が原因で起こる腱鞘炎である。母指の使いすぎや妊娠出産期、更年期の女性に多く見られる。手首に腫れと痛みを伴い、母指を小指側に牽引したときに痛みが増強する。また、親指を握って尺屈すると疼痛が出現するフィンケルシュタインテスト(アイヒホッフテスト)で陽性となる。

2.× フォルクマン拘縮より優先されるものが他にある。なぜなら、フォルクマン拘縮は、上肢の虚血性拘縮であり、手掌の索状物は触れないため。
・フォルクマン拘縮とは、前腕屈筋群の虚血性壊死と神経の圧迫性麻痺により拘縮を起こすものである。

3.〇 正しい。デュピュイトラン拘縮が考えられる。なぜなら、デュピュイトラン拘縮は、手掌腱膜の線維性肥厚・収縮により、掌側に索状物を形成し、MPおよびPIP関節が屈曲拘縮する疾患であるため。特に、環指・小指に好発し、男性・高齢者・アルコール多飲・糖尿病患者に多い。
・デュピュイトラン拘縮とは、手掌腱膜の肥厚による屈曲拘縮である。外傷や糖尿病、長期のアルコール多飲などが誘引になりうる。また発生率には人種差があり、遺伝的な要因が関与していると考えられている。

4.× マーデルング変形より優先されるものが他にある。なぜなら、マーデルング変形は、手関節(橈骨遠位部)の成長障害で、小指拘縮との関連性は低いため。
・マーデルング変形とは、遠位橈尺関節の自然脱臼のことである。思春期女性に多い先天性・発育性疾患である。基本的に両側に罹患する。橈骨遠位端の掌側・尺側に傾く骨格変形であり、早期閉鎖による成長障害である。

 

 

 

 

 

問題108.18歳の男子。10日前にバスケットボールの試合中ボールを取り損ない右示指を突いた。放置していたが、今日になって示指が図のような変形を呈していることに気付き来所した。
 最も考えられるのはどれか。

1.深指屈筋腱断裂
2.正中索断裂
3.終止腱断裂
4.浅指屈筋腱断裂

解答

解説

本症例のポイント

・18歳の男子。
・10日前:バスケットボールの試合中ボールを取り損ない右示指を突いた
・放置していた。
・図のような変形:ボタンホール変形
→ほかの選択肢が消去できる理由も上げられるようにしよう。
・ボタンホール変形とは、手指のDIP関節過伸展位、PIP関節屈曲位となる変形である。PIP関節の伸筋腱断裂が原因となる。他の原因として、中央索の切創や皮下断裂などで、また、関節リウマチによる PIP関節の滑膜炎もある。

1.× 深指屈筋腱断裂より優先されるものが他にある。なぜなら、DIP関節の屈曲運動の障害が主であるため。ボタンホール変形は生じにくい。
・深指屈筋の【起始】尺骨の内側面と前面、前腕骨間膜の一部、【停止】第2~5指末節骨底、【作用】第2~5指の両指節間関節の屈曲、【神経】橈側部は正中神経、尺骨部は尺骨神経である。

2.〇 正しい。正中索断裂が最も考えられる。なぜなら、正中索(中央腱膜)断裂によりボタンホール変形が起こるため。
・正中索とは、PIP関節の伸展を担う構造である。断裂するとボタンホール変形となる。機序としては、PIP関節が伸ばせなくなり、代償的に側索が掌側に滑走してPIP屈曲・DIP過伸展を生じるため。

3.× 終止腱断裂より優先されるものが他にある。なぜなら、終止腱断裂は、槌指(マレットフィンガー)が生じる。
・マレットフィンガーとは、槌指やハンマー指、ベースボールフィンガー、ドロップフィンガーのことである。DIP関節の過屈曲によりDIP関節の伸筋腱の断裂で起こる。DIP関節が曲がったままで痛みや腫れがあり、自動伸展は不能で、自分で伸ばそうと思っても伸びない。しかし、他動伸展は可能である。

4.× 浅指屈筋腱断裂より優先されるものが他にある。なぜなら、PIP関節の屈曲運動の障害が主であるため。ボタンホール変形は生じにくい。
・浅指屈筋の【起始】上腕尺骨頭:上腕骨内側上顆・尺骨粗面の内側、橈骨頭:橈骨の上部前面【停止】第2~第5中節骨底、【作用】第2~5指の中手指節関節と近位指節間関節の屈曲、【神経】正中神経:C7~T1である。

 

 

 

 

 

問題109.50歳の男性。ゴルフ中に坂を駆け上がった際、右下腿後部が何かに叩かれた痛みを感じたと跛行で来所した。ふくらはぎ内側部に圧痛があり、足関節背屈を強制すると疼痛が増強する。脛骨内側後緑部に沿った疼痛はなくトンプソンテストは陰性である。
 最も考えられるのはどれか。

1.腓腹筋損傷
2.膝窩筋損傷
3.シンスプリント
4.アキレス腱断裂

解答

解説

本症例のポイント

・50歳の男性。
・ゴルフ中に坂を駆け上がった際、右下腿後部が何かに叩かれた痛みを感じたと跛行で来所。
ふくらはぎ内側部に圧痛があり、足関節背屈を強制すると疼痛が増強する。
・脛骨内側後緑部に沿った疼痛はなし。
トンプソンテストは陰性である。
→ほかの選択肢が消去できる理由も上げられるようにしよう。
・トンプソンテストとは、アキレス腱断裂を診るテストである。患者さんに立て膝をついてもらい、膝を90度曲げ、ふくらはぎを握る。足首より下の部分が動かなければ、陽性となる。

1.〇 正しい。腓腹筋損傷が最も考えられる。なぜなら、局所に圧痛・軽度腫脹・皮下出血を伴うが、アキレス腱は連続性があるため。「断裂」の場合、トンプソンテストは陽性となるが、「損傷」の場合は陰性のままである。
・腓腹筋の【起始】外側頭:大腿骨外側上顆、内側頭:大腿骨内側上顆、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節屈曲、足関節底屈、踵の挙上、【支配神経】脛骨神経:S1,S2である。

2.× 膝窩筋損傷より優先されるものが他にある。なぜなら、膝窩筋は、膝関節後面に走行する筋であり、膝窩筋損傷の場合、膝関節後面が出現するため。本症例のふくらはぎ内側部に圧痛と部位が異なる。
・膝窩筋の【起始】大腿骨外側上顆の外側面、【停止】脛骨後面上内側部(ヒラメ筋線より上)、【作用】膝関節屈曲、脛骨内旋、【神経】脛骨神経:L4~S1である。

3.× シンスプリントより優先されるものが他にある。なぜなら、シンスプリントは、脛骨内側後縁部の慢性過労性炎症で、急性発症ではないため。
・シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)とは、脛骨に付着している骨膜(筋肉)が炎症している状態である。運動中や運動後にすねの内側に痛みが出る。超音波にて治療を行う際は、下腿中央から遠位1/3部の脛骨後内方、前脛骨筋部、骨間膜などに照射する。

4.× アキレス腱断裂より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例は、トンプソンテスト陰性であるため。したがって、アキレス腱の断裂は否定できる。

 

 

 

 

 

問題110.19歳の女性。陸上競技長距離選手。2週間前から走行中に右下腿前面部の疼痛や下腿の圧迫感を感じるようになった。最近では、走行中につま先を引っかけてつまずくことが多くなり、図に示す部位にしびれ感が認められる。走るのを中止して、しばらくすると右下腿の痛みや感覚異常は認められなくなる。
 発症に関与する神経はどれか。

1.脛骨神経
2.深腓骨神経
3.浅腓骨神経
4.内側足底神経

解答

解説

本症例のポイント

・19歳の女性(陸上競技長距離選手)。
・2週間前:走行中に右下腿前面部の疼痛や下腿の圧迫感。
・最近:走行中につま先を引っかけてつまずくことが多くなった。
・図に示す部位(第1・2趾間):しびれ感が認められる。
・走るのを中止して、しばらくすると右下腿の痛みや感覚異常は認められなくなる。
→ほかの選択肢が消去できる理由も上げられるようにしよう。本症例は、慢性コンパートメント症候群が疑われるが、選択肢の神経の働きを覚えていれば解ける問題となっている。

1.× 脛骨神経より優先されるものが他にある。なぜなら、脛骨神経は、足底の感覚と足関節底屈・内反(下腿後面)の筋を司るため。

2.〇 正しい。深腓骨神経は、発症に関与する神経である。なぜなら、深腓骨神経は、下腿全面(前脛骨筋・長母趾伸筋・長趾伸筋など)を支配し、足関節背屈第1・2趾間の感覚を担当するため。

3.× 浅腓骨神経より優先されるものが他にある。なぜなら、浅腓骨神経は、下腿外側(長・短腓骨筋)を支配し、感覚は足背の大部分(ただし第1趾間は除く)を担当するため。

4.× 内側足底神経より優先されるものが他にある。なぜなら、内側足底神経は、脛骨神経の枝で、足底内側(母趾~第3趾半)の感覚と足底内在筋の一部を支配するため。

コンパートメント症候群とは?

コンパートメント症候群とは、骨・筋膜・骨間膜に囲まれた「隔室」の内圧が、骨折や血腫形成、浮腫、血行障害などで上昇して、局所の筋・神経組織の循環障害を呈したものをいう。症状として6P【①pain(痛み)、②pallor(蒼白)、③paresthesia(知覚障害)、④paralysis(運動麻痺)、⑤pulselessiiess(末梢動脈の拍動の消失)、⑥puffiniss(腫脹)】があげられ、それらを評価する。

①前方コンパートメント症候群:前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋
②外側コンパートメント症候群:長・短腓骨筋
③浅後方コンパートメント症候群:腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋
④深後方コンパートメント症候群:後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋

 

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