第22回(H26年)柔道整復師国家試験 解説【午前96~100】

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問題96.病理解剖の意義で正しいのはどれか。

1.正常な状態の形態観察
2.異常死体の検案
3.臨床診断の評価と治療効果の検証
4.犯罪に関連した死因に関する推定

解答

解説
1.× 正常な状態の形態観察は、系統解剖の説明である。
・系統解剖とは、正常な身体の形態と構成を研究する学問が解剖学であり、このために行う解剖のことを指す。つまり、教育目的で行われる。

2.× 異常死体の検案は、法医解剖(司法解剖・行政解剖)の領域である。
・司法解剖とは、犯罪性のある死体またはその疑いのある死体の死因などを究明するために行われる解剖のことである。
・行政解剖とは、異状死体の死因を究明することにより、感染症の発生等を検知し、疾病予防、事故防止等の対策等に資するものであり、公衆衛生等に重要な意味を持つものである。

3.〇 正しい。臨床診断の評価と治療効果の検証は、病理解剖の意義である。
・病理解剖とは、病気が原因のご遺体を解剖し、臓器、組織、細胞を直接観察して詳しい医学的検討を行うことをさす。これによってきわめて精度の高い病理診断ができ、死因を正しく理解し、治療の適切性についても検討することができる。

4.× 犯罪に関連した死因に関する推定は、司法解剖の説明である。
・司法解剖とは、犯罪性のある死体またはその疑いのある死体の死因などを究明するために行われる解剖のことである。

 

 

 

 

 

問題97.奇形と要因との組合せで誤っているのはどれか。

1.先天性風疹症候群:ウイルス感染
2.アザラシ肢症:薬物
3.小頭症:放射線
4.メッケル憩室:酸素欠乏

解答

解説
1.〇 正しい。先天性風疹症候群:ウイルス感染
・先天性風疹症候群とは、風しんウイルスの胎内感染(垂直感染)によって先天異常を起こす感染症である。 3徴は、白内障、先天性心疾患、難聴である。その他先天性緑内障、色素性網膜症、紫斑、脾腫、小頭症、精神発達遅滞、髄膜脳炎、骨のX線透過性所見、生後24時間以内に出現する黄疸などを来しうる。臨床的特徴として、先天異常の発生は妊娠週齢と明らかに相関し、妊娠12週までの妊娠初期の初感染に最も多くみられ、20週を過ぎるとほとんどなくなる。

2.〇 正しい。アザラシ肢症:薬物
・アザラシ肢症とは、アザラシのように見えることから名付けられた先天性疾患の1つである。特徴として、四肢の長骨がない、または短く、手または足が直接胴体についていることなどがあげられる。その他、内臓の配置異常等の広範囲の異常を引き起こしているものもある。原因としてはさまざまなものがあると考えられるが、1950年代後半(日本では1960年代前半)に大量発症した事例は、サリドマイドによる薬害が指摘されている。極端な場合は、無肢症とも呼ばれる。

3.〇 正しい。小頭症:放射線
・小頭症とは、先天異常や胎内ウイルス感染、放射線などにより脳の大きさが小さいために頭蓋も小さい状態をいう。主な先天異常には、①胎児発育不全、②精神発達遅滞や多動などの中枢神経障害、③特異顔貌や小頭症など、④心奇形や関節拘縮などの構造異常がある。ちなみに、診断基準は、①妊娠中の母親の飲酒、②特徴的な顔貌、③出生時低体重・栄養とは関係ない体重減少、身長と釣り合わない低体重などの栄養障害、④出生時の頭囲が小さい・小脳低形成・難聴・直線歩行困難などの脳の障害などがある。

4.× メッケル憩室は、「酸素欠乏」ではなく卵黄管の残存が要因である。
・メッケル憩室とは、小腸の壁が袋状になって外側に突き出たもので、これが生まれつきある小児もいる。主な原因は、胎児期に一時的に存在する「卵黄管」という管が、出生前に完全に退縮せずに小腸に一部が残存してしまうことである。メッケル憩室によって症状が現れる小児はほとんどいない。ときに、痛みを伴わない下血が起こったり、憩室に感染が生じたりすることがある。

 

 

 

 

 

問題98.放射線に対する感受性が低いのはどれか。

1.神経細胞
2.卵母細胞
3.腸管上皮細胞
4.骨髄造血細胞

解答

解説

放射線感受性とは?

放射線感受性とは、細胞や組織が放射線に対してどの程度に敏感であるかを示す物理的な指標である。放射線治療において、癌細胞が高い放射線感受性を持つほど、効果的に放射線によって殺すことができるため、放射線治療は高感受性の細胞に対して特に効果的である。

1.〇 正しい。神経細胞は、放射線に対する感受性が低い。なぜなら、神経細胞は分裂しない終末分化細胞(永久細胞)であるため。したがって、選択肢の中では、放射線によるDNA損傷の影響を受けにくい。
・中枢神経細胞とは、中枢神経系を構成する神経細胞である。神経系の中で多数の神経細胞が集まって大きなまとまりになっている領域のことであり、脳と脊髄からなる。脳は大きく大脳、小脳、脳幹の3つに分け、ヒトでは特に大脳が発達しており、思考、知覚、言語、記憶などの大きな役割を持っている。

2.× 卵母細胞とは、卵子のもとになる細胞である。卵原細胞が有糸分裂で増殖した後に肥大したものが卵母細胞である。卵母細胞とは、発生の初期に原始生殖細胞が出現し、雌性の原始生殖細胞の結果である。

3.× 腸管上皮細胞は、放射線感受性が高い。なぜなら、腸管上皮は絶えず分裂して新しい細胞を供給しているため。
・腸管上皮細胞とは、管腔面に接する単層立方上皮を構成する細胞である。主な働きは、栄養と水分の消化吸収、ならびに体内への異物の侵入を防ぐバリア、内分泌機能による消化液の分泌と腸管運動の調節などである。

4.× 骨髄造血細胞は、放射線感受性が高い。なぜなら、造血細胞は絶えず分裂して血球を産生している未分化細胞であるため。

 

 

 

 

 

問題99.アミロイド沈着の検出に用いられる染色法はどれか。

1.グラム染色
2.アザン・マロリー染色
3.コンゴー赤染色
4.チール・ネルゼン染色

解答

解説
1.× グラム染色とは、主として細菌類を色素によって染色する方法の一つである。細菌を分類する基準の一つで、デンマークの学者ハンス・グラムによって発明された。

2.× アザン・マロリー染色とは、結合組織成分(膠原線維や筋線維など)を染め分ける染色法である。コラーゲン線維を青、筋線維や細胞質を赤に染める多染色法である。主に、線維化や瘢痕組織の評価に用いられる。

3.〇 正しい。コンゴー赤染色は、アミロイド沈着の検出に用いられる染色法である。なぜなら、コンゴー赤は、アミロイド線維のβシート構造に特異的に結合し、赤橙色に染まるため。主に、全身性アミロイドーシスやアルツハイマー病の脳で、コンゴー赤染色によりアミロイド沈着部が赤く染まり、偏光下で緑色に光る。

4.× チール・ネルゼン染色は、抗酸菌(例:結核菌)の検出に用いられる染色法である。抗酸菌は、ミコール酸を含む細胞壁を持ち、通常の染色では脱色されにくい「抗酸性」を示す。主に、喀痰や組織切片で赤く染まる桿菌が見られれば抗酸菌(例:結核菌)が疑われる。

 

 

 

 

 

問題100.血管壁の脆弱性により出血傾向を呈する疾患はどれか。

1.血友病A
2.新生児メレナ
3.血小板減少性紫斑病
4.アレルギー性紫斑病

解答

解説
1.× 血友病Aとは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子)が不足・活性低下する病気のことである(第Ⅸ因子のの活性低下は血友病B)。血友病の検査では、血が止まりにくいかどうかを調べるため、はじめに「血小板数」「プロトロンビン時間(PT)」「活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)」の3つを測定する。そこでAPTTだけが正常よりも延長している場合に血友病が疑われる。

2.× 新生児メレナとは、生後数日以内の赤ちゃんに黒色便(タール状の便)が見られる状態で、消化管からの出血が原因である。主にビタミンK不足による出血性疾患で起こる。早期発見とビタミンK投与が重要である。

3.× 血小板減少性紫斑病とは、血液中の血小板が減少することにより出血しやすくなる病気である。原因は不明であるが、体の中の免疫反応が過剰になり、自分の血小板を攻撃してしまうために、血小板が減少するといわれている。

4.〇 正しい。アレルギー性紫斑病は、血管壁の脆弱性により出血傾向を呈する疾患である。
・アレルギー性紫斑病とは、免疫複合体(主にIgA)による小血管の炎症による血管壁障害(血管炎)が原因で出血傾向を呈する疾患である。これにより毛細血管から赤血球が漏出し、皮膚や粘膜に紫斑が出現する。

 

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