第22回(H26年)柔道整復師国家試験 解説【午前106~110】

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問題106.発癌の内因はどれか。

1.放射線被曝
2.免疫不全
3.ウイルス感染
4.アスベスト曝露

解答

解説

病因とは?

病因とは、病気の原因をといい、①内因と②外因に分けられる。

①内因とは、生体側の因子で,病気にかかりやすい準備状態を指す。内因のみでは病気は発現しない。内因は素因ともいう。
例:①生理的素因(年齢、人種、性など)、②病理的素因(個人的素因:皮膚癌を生じやすい紅皮症、アレルギー体質、糖尿病の易感染性など)

②外因とは、外部から生体に対し障害性に働くものをいう。
例:①栄養的外因(蛋白質過剰による痛風、ビタミンB1欠乏による脚気など)、②物理的外因(外傷、熱傷、放射線障害など)、③化学的外因(重金属中毒、医薬品、体内で産生されるエンドトキシン、アンモニア、アセトンなど)、④病原微生物(ウイルス、細菌、原虫など)

1.× 放射線被曝は、外因である。外因の物理的外因に該当する。放射線は細胞やDNAに損傷を与え、発がんや放射線障害などの病気の原因となる。

2.〇 正しい。免疫不全は、発癌の内因である。内因の病理的素因に該当する。

3.× ウイルス感染は、外因である。外因の病原微生物に該当する。

4.× アスベスト曝露は、外因である。外因の化学的外因に該当する。
・アスベストとは、天然にできた鉱物繊維で「石綿(せきめん、いしわた)」とも呼ばれている。石綿関連疾患には、石綿肺、肺がん、中皮腫、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚や、病態として、胸膜プラークなどがある。

 

 

 

 

 

問題107.悪性腫瘍と組織型・機能分類との組合せで誤っているのはどれか。

1.尿路上皮癌:低分化扁平上皮癌
2.カルチノイド:ホルモン産生腫瘍
3.印環細胞癌:粘液産生・貯留性低分化腺癌
4.癌真珠腫:角化型高分化扁平上皮癌

解答

解説

上皮組織の形態による分類

・単層扁平上皮:薄いので物質の交換などに向く。
(胸膜、腹膜、血管内皮、肺胞など)

・単層立方上皮:甲状腺の濾胞細胞など。
(甲状腺の濾胞上皮、尿細管など)

・単層円柱上皮:吸収と分泌を行う場所に向く。
消化器系(胃、小腸、大腸)、卵管・子宮など

・重層扁平上皮:摩擦など機械的刺激に強い。
皮膚、口腔~食道、肛門、膣など。

・多列線毛上皮:表面に線毛があり、杯細胞が豊富。線毛と粘液で塵や異物をからめとる。
鼻腔~気管・気管支(気道)

・移行上皮:伸び縮みすることができる。
腎杯腎~尿管~膀胱(尿路)

1.× 尿路上皮癌は、「低分化扁平上皮癌」ではなく移行上皮由来の癌である。なぜなら、移行上皮は、伸び縮みすることができる特徴を持ち、膀胱・尿管・腎盂などを覆う特有の上皮であるため。

2.〇 正しい。カルチノイド:ホルモン産生腫瘍
・カルチノイド腫瘍とは、神経内分泌細胞由来で、セロトニンなどの活性アミンやペプチドホルモンを分泌する性質をもつ。

3.〇 正しい。印環細胞癌:粘液産生・貯留性低分化腺癌
・印環細胞とは、他の臓器と比較し、胃に高頻度でみられる細胞質内に貯留した粘液が細胞核を辺縁に圧排する状態を指す。細胞内に粘液が大量に蓄積し、核が辺縁に押しやられて印環状に見える。

4.〇 正しい。癌真珠腫:角化型高分化扁平上皮癌
・扁平上皮癌のうち、細胞が角化傾向を示して層状に配列し、中心部に角化物質(ケラチン)を形成すると癌真珠が出現する。皮膚・口腔・食道などの扁平上皮癌でよくみられる。

 

 

 

 

 

問題108.性染色体異常による疾患はどれか。

1.ダウン(Down)症候群
2.クラインフェルター(Klinefelter)症候群
3.先天性巨大結腸症
4.猫鳴き症候群

解答

解説
1.× ダウン(Down)症候群は、「常染色体異常」による疾患である。
・Down症候群とは、染色体異常が原因で知的障害が起こる病気である。常染色体異常疾患の中で最多である。Down症候群になりうる異常核型は、3種に大別される。①標準トリソミー型:21トリソミー(93%)、②転座型(5%)、③モザイク型(2%)である。発症率は、平均1/1000人である。しかし、35歳女性で1/300人、40歳女性1/100人、45歳女性1/30人と、出産年齢が上がるにつれて確率が高くなる。症状として、①特異な顔貌、②多発奇形、③筋緊張の低下、④成長障害、⑤発達遅滞を特徴とする。また、約半数は、先天性心疾患や消化管疾患などを合併する。特異顔貌として、眼瞼裂斜上・鼻根部平坦・内眼角贅皮・舌の突出などがみられる。

2.〇 正しい。クラインフェルター(Klinefelter)症候群は、性染色体異常による疾患である。
・クラインフェルター症候群とは、男性の性染色体にX染色体が一つ以上多いことで生じる一連の症候群で性染色体異常ある。高身長、やせ型、長い手足になることが多い。

3.× 先天性巨大結腸症(ヒルシュスプルング病)とは、消化管の蠕動の役割を果たすために必要な神経細胞が、肛門から連続して欠如するために、その範囲の消化管の運動がおこらず、腸閉塞をきたす病気である。つまり、胎児期に腸管壁へ移動する神経堤由来の神経節細胞が欠損することにより、腸管運動が障害される。男女比では3:1で男児(男性)に多い。症状として、便秘、嘔吐、腹部膨満などを呈する。治療は手術が選択され、神経細胞がない腸を切除して、神経細胞の存在する腸を肛門のぎりぎりにつなぐ。

4.× 猫鳴き症候群(5p欠失症候群)は、「常染色体異常」による疾患である。5番染色体の欠失によって発症する。

 

 

 

 

 

問題109.医療計画で正しいのはどれか。

1.市区町村が策定する。
2.基準病床数を算定する。
3.地域保健法に定められている。
4.診療所で提供される医療のレベルを三次医療と呼ぶ。

解答

解説

医療法とは?

医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。

医療法における医療計画とは、医療提供体制の確保を図るための計画である。地域における体系的な医療の提供を実現することを目的として、都道府県が策定する計画である。医療計画は6年ごと(平成29年度までは5年ごと)に見直される。

1.× 「市区町村」ではなく都道府県が策定する(※上参照)。

2.〇 正しい。基準病床数を算定する。医療計画の記載事項である⑬基準病床数(一般病床、療養病床、結核病床、精神病床、感染症病床)に該当する(※下参照)。

3.× 「地域保健法」ではなく医療法に定められている。これは、医療法の第30条の6に規定されている。

4.× 診療所で提供される医療のレベルを「三次医療」ではなく一次医療と呼ぶ。医療計画の記載事項である⑪医療圏の設定(二次、三次医療圏を定める)に該当する。一次医療圏とは、医療圏の中でもっとも小さい単位で、健康管理、予防、一般的な病気や怪我などに対応して住民の日常生活に密着した医療、保健、福祉サービスを提供する区域のこと。一般的には市区町村の単位で設定されている。

医療計画とは?

医療計画とは、地域における体系的な医療の提供を実現することを目的として、都道府県が策定する計画である。医療計画は6年ごと(平成29年度までは5年ごと)に見直される。

~医療計画の記載事項~
【5疾病】①がん、②脳卒中、③心筋梗塞などの心血管疾患、④糖尿病、⑤精神疾患
【5事業】①救急医療、②災害医療、③へき地医療、④周産期医療、⑤ 小児医療(小児救急を含む)

【記載事項】
①5疾病の治療または予防に係る事業、5事業の医療の確保に必要な事業。
②5疾病5事業に関する目標、医療連携体制(施設間の機能分担・業務連携の確保)、情報提供の推進。
③居宅等における医療の確保。
④地域医療構想に関する事項。
⑤地域医療構想の達成に向けた病床の機能の分化及び連携の推進。
⑥病床の機能に関する情報提供の推進。
⑦外来医療の確保。
⑧医師の確保。
⑨医療従事者(医師を除く)の確保
⑩医療の安全の確保
⑪医療圏の設定(二次、三次医療圏を定める)
⑫医師少数区域等の設定
⑬基準病床数(一般病床、療養病床、結核病床、精神病床、感染症病床)
⑭地域医療支援病院等の整備目標。
⑮その他医療提供体制の確保に関する必要事項。

(※参考:「医療計画について」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題110.エビデンスレベルの最も高い疫学研究方法はどれか。

1.横断研究
2.症例対照研究
3.コホート研究
4.無作為化比較対照試験

解答

解説

(※図引用:Minds診療ガイドライン作成の手引き2014に記載されている「エビデンスのレベル分類」)

1.× 横断研究は、エビデンスレベルⅣbである。
・横断研究とは、一時点での疾病の頻度と分布をありのままに記述し、疾病の発生要因の仮説を立てる方法である。

2.× 症例対照研究は、エビデンスレベルⅣbである。
・症例対照研究とは、時間軸:後ろ向き研究で、観察期間はない。信頼性は低いが費用・労力が小さい。

3.× コホート研究は、エビデンスレベルⅣaである。
・コホート研究とは、時間軸:前向き研究で、観察期間は長期間行う。信頼性は高いが費用・労力が大きい。

4.〇 正しい。無作為化比較対照試験は、エビデンスレベルの最も高い疫学研究方法である。なぜなら、エビデンスレベルであるため。
・無作為化比較対照試験とは、予防・治療の効果を科学的に評価するための介入研究のことをいう。対象者を無作為に介入群(治療などの介入実施群)と対照群(従来通りの治療群、もしくは介入しない群)とに割付け、その後の健康現象(罹患率・死亡率)を両群間で比較するもの。無作為割付によって、既知・未知の交絡を制御することが期待されることから、他のデザインと比べて最もエビデンスレベルが高い手法である(RCT:Randomized Controlled Trial、ランダム割付比較試験ともいう)。

 

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