第22回(H26年)柔道整復師国家試験 解説【午前71~75】

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問題71.発熱物質はどれか。

1.アセチルコリン
2.エリスロポエチン
3.コレシストキニン
4.プロスタグランジン

解答

解説
1.× アセチルコリンは、発熱と無関係である
・アセチルコリンとは、代表的な神経伝達物質であり、①運動神経の神経筋接合部、②交感神経および副交感神経の節前線維の終末、副交感神経の節後線維の終末などのシナプスで放出される。アセチルコリンは、中枢神経で働く場合と末梢神経で働く場合で作用が異なる。①運動神経の神経筋接合部では、筋収縮に作用する。

2.× エリスロポエチンは、発熱と無関係である
・エリスロポエチンとは、赤血球の産生を促進する造血因子の一つである。加齢に伴い、腎臓の機能が低下してエリスロポエチンの分泌が少なくなる。すると赤血球も減少するため、貧血症状があらわれやすくなる。

3.× コレシストキニンは、発熱と無関係である
・コレシストキニンとは、十二指腸と上部小腸から分泌される消化管ホルモンである。膵酵素分泌促進、胆嚢収縮作用がある。コレシストキニンもセクレチンと同じく、膵液の分泌を促すホルモンであるが、この膵液は消化酵素を多く含む。

4.〇 正しい。プロスタグランジンは、発熱物質である。細菌感染などによりマクロファージが放出するサイトカインが、視床下部でプロスタグランジンE₂産生を誘導し、体温調節中枢の「設定温度(セットポイント)」を上昇させる。
一般的なプロスタグランジンとは、子宮の内膜がはがれ落ちるときに増え、子宮を収縮させて、血液(経血)を押し出すはたらきがある。この収縮が過剰になると、子宮内の血流が一時的に減少し、これが痛みの原因となり、機能性月経困難症では、プロスタグランジンの産生や感受性が高まっているため、月経時の痛みが増強される。

 

 

 

 

 

問題72.腎臓における水分のろ過量を増加させるのはどれか。

1.膀胱内圧の上昇
2.血漿の膠質浸透圧の上昇
3.ボーマン嚢内圧の上昇
4.糸球体血圧の上昇

解答

解説
1.× 膀胱内圧の上昇により、ろ過量は減少する。なぜなら、膀胱内圧が上昇すると尿の流れが阻害され、尿管・腎盂・ボーマン嚢内圧が上昇し、糸球体からのろ過圧が減少するため。これは、尿路閉塞(前立腺肥大・結石など)で見られる現象である。
・膀胱内圧とは、膀胱が尿をためているときに内部にかかる圧力のことである。

2.× 血漿の膠質浸透圧の上昇により、ろ過量は減少する。なぜなら、膠質浸透圧(主に血漿中のアルブミンによる浸透圧)は、血管内に水を引き戻す方向に働くため。したがって、糸球体からボーマン嚢へ水が出にくくなり、濾過が抑制される。
・血漿膠質浸透圧とは、血漿中のタンパク質(主にアルブミン)による浸透圧。血漿内へ水分を引き戻す方向に働き、ろ過を防ぐ方向の力。

3.× ボーマン嚢内圧の上昇により、ろ過量は減少する。なぜなら、ボーマン嚢内の圧は、糸球体血圧と反対方向に働き、ろ過を押し戻す力(対抗圧)となるため。
・ボーマン嚢内圧とは、ボーマン嚢内に存在する液体による圧力。血管内への逆流を促し、ろ過を防ぐ方向の力。

4.〇 正しい。糸球体血圧の上昇は、腎臓における水分のろ過量を増加させる。なぜなら、糸球体血圧は、糸球体からボーマン嚢へ水を押し出す主力の力(ろ過圧)であり、これが上昇すれば単純に濾過促進となるため。
・糸球体とは、腎臓に血液を送る動脈が徐々に細くなった先にある毛細血管の球形の塊である。糸球体は、腎臓の機能単位であるネフロンの一部で、腎臓の外側部分である腎皮質に集まっている。腎髄質は腎臓の内側部分で、集合管などが存在する。
・糸球体血圧とは、糸球体毛細血管の内側から外側(ボーマン嚢側)へ液体を押し出す力。ろ過を促進する方向の力である。

 

 

 

 

 

問題73.尿細管で再吸収されるのが最も少ないのはどれか。

1.クレアチニン
2.ナトリウムイオン
3.水
4.ブドウ糖

解答

解説

(図引用: 泌尿器のしくみと働き

ネフロンでの再吸収

ネフロンは、糸球体、近位尿細管、ヘンレ係蹄、遠位尿細管、集合管に分けられる。

①近位尿細管:低分子物質の再吸収(アミノ酸は糸球体で濾過され、100%が近位尿細管で再吸収される)
②遠位尿細管:Na+の再吸収、K+、H+の分泌。
③集合管:水の再吸収など

1.〇 正しい。クレアチニンは、尿細管で再吸収されるのが最も少ない。なぜなら、老廃物の一つ(タンパク質をエネルギーとして使ったあとの代謝最終産物)であるため。
・クレアチニンとは、筋肉を動かすためのエネルギーを使った後に出てくる老廃物の一つで、体にとって不要なもので、尿として体の外に出す必要がある。したがって、尿の成分の一つである。腎不全の指標となる。本来は、尿素窒素と同様に腎臓の糸球体で濾過され尿中に排泄されるが、腎臓の機能が低下すると尿中に排泄される量が減少し、血液中にクレアチニンが溜まる。

2.× ナトリウムイオンは、尿細管で約99%再吸収される。
・ナトリウムは、細胞外液中の陽イオンの90%を占め、血漿浸透圧や酸塩基平衡、細胞外液量の調整に重要である。 成人の人体の約60%はナトリウムなどの電解質を含む水分で構成されている。

3.× 水は、尿細管で約99%再吸収される。なぜなら、水の再吸収はナトリウムの再吸収に伴う浸透圧移動で起こるため。

4.× ブドウ糖は、尿細管で約99%再吸収される。近位尿細管に存在する「Na⁺-グルコース共輸送体」によって、糸球体でろ過されたブドウ糖はすべて再吸収される。

尿細管で吸収されるもの

◎近位尿細管で再吸収されるもの
グルコース・アミノ酸・ビタミン・水・ナトリウムイオン・カリウムイオン・カルシウムイオン・リン酸イオン・重炭酸イオン

◎ヘンレループで再吸収されるもの
水・ナトリウムイオン・クロールイオン

◎遠位尿細管で再吸収されるもの
水(抗利尿ホルモンにより促進される)・ナトリウムイオン(アルドステロンにより促進される)

 

 

 

 

 

問題74.ホルモンを分泌するのはどれか。

1.心臓
2.虫垂
3.脾臓
4.膀胱

解答

解説
1.〇 正しい。心臓は、ホルモンを分泌する。
心臓(特に心房)は、ホルモン「心房性ナトリウム利尿ペプチド」を分泌する。
・心房性ナトリウム利尿ペプチドとは、主として心房で合成・貯蔵され、血液中に分泌されるホルモンである。水・ナトリウムの利尿、血管の拡張、レニン・アルドステロンの分泌抑制、循環血漿量の減少など多彩な生理作用を介して、生体の体液バランスならびに血圧調整に関与する。

2.× 虫垂は、ホルモン分泌しない。虫垂とは、盲腸からしっぽのように出ている部分をいう。

3.× 脾臓は、ホルモン分泌しない。脾臓とは、①古くなった血球(白血球、赤血球、血小板)の処理や、②感染に対する防御など免疫に関係する働きを担う。

4.× 膀胱は、ホルモン分泌しない。膀胱とは、骨盤の中にある袋状の臓器で、腎臓で作られた尿を貯めたり、排出したりする役割を担っている。

 

 

 

 

 

問題75.糖質コルチコイドで正しいのはどれか。

1.細胞の糖の取り込みを抑制する。
2.炎症を促進する。
3.糖新生を抑制する。
4.グリコーゲン合成を抑制する。

解答

解説

糖質コルチコイドとは?

糖質コルチコイドとは、副腎皮質の束状帯の細胞で産生されるステロイドホルモンのことである。副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。コルチゾールは、血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがある。過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

1.〇 正しい。細胞の糖の取り込みを抑制する。糖質コルチコイドは、全身の筋肉のタンパク質を分解し、グルコースの合成を促進させ、血糖値を上げさせる。

2.× 炎症を「促進」ではなく抑制する。糖質コルチコイドは、細胞膜を通り抜けて受容体と結合し、さらに核内に移行して、遺伝子発現のレベルで影響を与える。これによって合成されるタンパク質のひとつは、アラキドン酸カスケードの最初の段階、すなわち細胞膜からアラキドン酸を切り出す過程を抑制して、抗炎症作用を発揮する。

3.× 糖新生を「抑制」ではなく促進する。これにより、エネルギー供給を維持し、血糖値を上昇させる。
・糖新生とは、肝臓などで血中のブドウ糖が低下した場合に、ブドウ糖以外の物質からブドウ糖を産生する過程である。乳酸やアミノ酸、グリセロールなどの栄養素からグルコースを合成する反応で、解糖系の逆反応とも呼ばれる。

4.× グリコーゲン合成を「抑制」ではなく促進する。なぜなら、コルチゾールは、肝臓において糖新生で作られたグルコースをグリコーゲンとして貯蔵する作用を持つため。
・グリコーゲンとは、多糖類の一種で、エネルギーを貯蔵し人間の活動に欠かせないものである。普段は、肝臓や骨格筋等に蓄えられており、急激な運動を行う際のエネルギー源として、あるいは空腹時の血糖維持に利用される。

 

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