第24回(H28年)柔道整復師国家試験 解説【午前26~30】

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問題26.手指部の骨折で掌側凸変形を呈するのはどれか。

1.末節骨基部骨折
2.中節骨基部骨折
3.基節骨基部骨折
4.中手骨基部骨折

解答

解説
1.× 末節骨基部骨折は「裂創や開放骨折」を伴いやすい。直接外力によって発生する。例えば、指をドアに挟んだり、重い物が落ちてきたりすることで発生することが多い。

2.× 中節骨基部骨折は非常にまれで、浅指屈筋腱が停止している。
「発生頻度は比較的少ない.頚部骨折,骨幹部骨折,基部骨折に分類され,骨折線は横骨折が多い.転位の方向は浅指屈筋腱と総指伸筋腱のバランスにより規定される.」(※引用:「手指骨骨折の治療」著:畑中 渉)

3.〇 正しい。基節骨基部骨折は、手指部の骨折で掌側凸変形を呈する。
【基節骨骨幹部骨折とは?】
・転位:近位骨片は屈曲(虫様筋、骨間筋)、適位骨片は背側(背側腱膜)に転位し、骨折部は掌側凸の変形を呈する。
・固定:手関節30°伸展、M関節30°屈曲、PIP関節70°屈曲、DIP関節20°屈曲位で、前腕中央から骨折した指の先まで約3週固定する。
・備考:比較的発生頻度は高い。

4.× 中手骨基部骨折は、ベネット骨折ともいう。ベネット骨折とは、第一中手骨基部の関節内骨折で、第一中手骨の脱臼を伴いやすい。母指先端にボールが当たったり喧嘩やボクシングで母指の先端に力が加わった際に起こりやすい。骨棘は、骨折や関節の摩耗により関節周囲の骨が増殖する現象である。

 

 

 

 

 

問題27.肘関節後方脱臼で弾発性固定の肢位はどれか。

1.屈曲130〜140度
2.屈曲80〜90度
3.屈曲30〜40度
4.伸展20〜30度

解答

解説

肘関節後方脱臼とは?

好発:青壮年
原因:①肘関節過伸展の強制:肘関節伸展位で手をつく(転倒などの強い衝撃)
【症状】関節包前方断裂、疼痛、肘関節屈曲30度で弾発性固定、自動運動不可、肘頭の後方突出、上腕三頭筋腱が緊張(索状に触れる)、ヒューター三角の乱れ(肘頭高位)、前腕の短縮
【固定肢位】肘関節90°屈曲、前腕中間位(回内位も)
【固定範囲】上腕近位部からMP関節手前まで
【固定期間】靭帯損傷なし:3週間、不安定性がある場合4週間
【整復法】
・患者:側臥位
・助手:手関節部を把持し、脱臼肢位の角度のまま前腕長軸末梢方向に徐々に牽引する。
・術者:4指を用い牽引しつつ、腕がもっていかれないように上腕を支えながら、母指にて肘頭が鉤状突起を乗り越えるイメージで上へ押し上げながら直圧し整復する。

1~2.5.× 屈曲130〜140度/屈曲80〜90度/伸展20〜30度において、弾発性固定は起こりにくい。

3.〇 正しい。屈曲30〜40度において、肘関節後方脱臼で弾発性固定が起こりやすい。なぜなら、肘関節30〜40度屈曲位は、靭帯が緩み骨と骨が嚙み合わなくなるため。
・弾発性固定とは、脱臼した位置で関節が動かなくなる状態をいう。患部を押しても反発するか、動いてもまた脱臼した位置に戻ろうとする特徴がある。

 

 

 

 

 

問題28.肘内障で正しいのはどれか。

1.手掌を衝いて転倒した際に発生する。
2.患側の前腕を回外位で下垂する。
3.単純エックス線像で橈骨頭の前方脱臼がみられる。
4.前腕の回内・回外自動運動で整復確認を行う。

解答

解説

肘内障とは?

肘内障とは、乳幼児に特有の外傷で、橈骨頭が引っ張られることによって、橈骨頭を取り巻いている輪状靭帯と回外筋が橈骨頭からずれた状態(亜脱臼)になったものである。5歳くらいまでの子どもに発症する。 輪状靭帯の付着がしっかりする6歳以降では起こりにくい。

1.× 手掌を衝いて転倒した際に発生するのは、主に橈骨遠位端骨折である。肘内障の受傷起点は、母親が児の腕を引っ張られた後にみられやすい。

2.× 患側の前腕を「回外位」ではなく回内位で下垂する。なぜなら、強い引っ張りによる外力(前腕回内力)が加わり、受傷されるため。多くは、前腕回内位・肘関節軽度屈曲位で来院する。

3.× 単純エックス線像で橈骨頭の「前方脱臼」ではなく亜脱臼がみられる。亜脱臼であるため、骨折や明らかな脱臼ではない。したがって、X線で異常所見はほとんど見られない。

4.〇 正しい。前腕の回内・回外自動運動で整復確認を行う。整復後の確認方法で、橈骨頭が輪状靭帯に収まり、疼痛が消失する。したがって、整復が成功すると、すぐに痛みがなくなり、自然に腕を動かすことができる。

 

 

 

 

 

問題29.腱板断裂の新鮮例で正しいのはどれか。

1.自動外転運動で疼痛が増強する。
2.筋萎縮がみられる。
3.結節間溝部に圧痛を認める。
4.診断にはヤーガソンテストが有用である。

解答

解説

回旋筋腱板とは?

腱板(回旋筋腱板:ローテーターカフ)とは、肩甲骨と上腕骨をつないでいる4つの筋肉の腱の総称である。① 棘上筋、②棘下筋、③小円筋、④肩甲下筋から成る。肩関節の安定性に寄与する。

1.〇 正しい。自動外転運動で疼痛が増強する。なぜなら、腱板(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋)の中でも、特に棘上筋は肩外転開始に重要な役割を担うため。肩峰や上腕骨頭とのインピンジメント(衝突)で損傷されやすい棘上筋腱の損傷がほとんどである。

2.× 筋萎縮は「みられにくい」。なぜなら、新鮮例では、受傷直後〜数週以内を指すことが多いため。腱板断裂で棘上筋・棘下筋が機能不全となると、慢性化すれば筋萎縮がみられる。

3.× 結節間溝部に圧痛を認めるのは、「上腕二頭筋長頭腱炎」の所見である。なぜなら、上腕二頭筋長頭腱が、上腕骨の大結節と小結節の間の結節間溝を通過するため。一方、腱板断裂では主に肩峰下部や肩外側に圧痛が出る。

4.× 診断にはヤーガソンテストが有用であるのは、「上腕二頭筋長頭腱炎」の所見である。
・上腕二頭筋腱炎(上腕二頭筋長頭炎)は、上腕二頭筋長頭腱が、上腕骨の大結節と小結節の間の結節間溝を通過するところで炎症が起こっている状態のことである。腱炎・腱鞘炎・不全損傷などの状態で肩の運動時に痛みが生じる。Speedテスト(スピードテスト)・Yergasonテスト(ヤーガソンテスト)で、上腕骨結節間溝部に疼痛が誘発される。治療は保存的治療やステロイド局所注射となる。

 

 

 

 

 

問題30.前距腓靭帯損傷で疼痛が著しく増強するのはどれか。

1.距骨後方押し込み強制
2.足部内がえし強制
3.足関節外転強制
4.足関節背屈強制

解答

解説

前距腓靱帯とは?

前距腓靱帯とは、足関節の外側に付着し、内がえし方向の捻挫を防いでいる。したがって、外返しに働く筋群を強化することで、足関節内反傾向を回避することができる。

1.× 距骨後方押し込み強制は、後距腓靭帯や後方関節包の損傷で疼痛が著しく増強する。

2.〇 正しい。足部内がえし強制は、前距腓靭帯損傷で疼痛が著しく増強する。なぜなら、前距腓靱帯は、内がえし方向で最も緊張するため。

3.× 足関節外転強制は、三角靭帯(内側靭帯)損傷で疼痛が著しく増強する。

4.× 足関節背屈強制は、主に後距腓靭帯損傷で疼痛が著しく増強する。

外側靭帯とは?

外側靭帯は、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯を合わせていう。

【足関節靭帯損傷の受傷原因】
足関節の内反や外反が強い外力でかかる捻挫が最も多い。
内反捻挫は、足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)が損傷される。
外反捻挫は、足関節内側靭帯(三角靭帯)が損傷される。

【頻度】
外反捻挫より内反捻挫が多い。
足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)の中でも前距腓靭帯が多く損傷される。
なぜなら、足関節の可動域が、外反より内反の方が大きく、内反・底屈に過強制力がかかるため。

 

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