第24回(H28年)柔道整復師国家試験 解説【午前101~105】

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問題101.浮腫のメカニズムで誤っている組合せはどれか。

1.蜂窩織炎:血管透過性の亢進
2.ネフローゼ症候群:膠質浸透圧の低下
3.熱傷:毛細血管圧の上昇
4.フィラリア症:リンパ管の閉塞

解答

解説

浮腫とは?

浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起きることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。
【低アルブミン血症の原因】①栄養摂取の不足(低栄養状態)、②肝臓における蛋白質合成能の低下、③腎臓から尿への蛋白質の大量喪失(ネフローゼ症候群)など。

1.〇 正しい。蜂窩織炎による浮腫は、「血管透過性の亢進」が原因である。なぜなら、蜂窩織炎(皮下組織の化膿性炎症)では、炎症性サイトカインやヒスタミンの作用で血管透過性が高まり、血漿成分が血管外へ漏出(浮腫が生じる)するため。。
・蜂窩織炎とは、皮膚とその下にある皮下脂肪にかけて、細菌が入り込んで、感染する皮膚の感染症である。スキンケアが重要である。

2.〇 正しい。ネフローゼ症候群による浮腫は、「膠質浸透圧の低下」が原因である。ネフローゼ症候群では、蛋白尿により低アルブミン血症となり、膠質浸透圧が低下(血管内の水分保持力が低下)するため。
・ネフローゼ症候群とは、尿から大量の蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少、血液の浸透圧が低下し水分が血管内から血管外へ移動することで、全身の浮腫や腹水・胸水などを引き起こすものである。

3.× 熱傷による浮腫は、「毛細血管圧の上昇」ではなく「血管透過性の亢進」が原因である。なぜなら、熱傷では血管内皮が障害され、血管透過性が亢進し、血漿成分が血管外へ漏出(浮腫が生じる)するため。

4.〇 正しい。フィラリア症による浮腫は、「リンパ管の閉塞」が原因である。なぜなら、フィラリア症は、寄生虫(バンクロフト糸状虫など)がリンパ管を塞ぎ、リンパ液の流れが阻害(浮腫が生じる)されるため。
・フィラリア症とは、蚊によって媒介される寄生虫(線虫)による感染症である。リンパ系を侵すことがある。感染は、通常、小児期に成立し、リンパ系組織に症状が現れないまま障害を起こし、後に、この疾患による疼痛を伴う外観の大きな変形、リンパ浮腫、象皮病、陰嚢水腫が、生涯のうちに現れてきて、永続的な身体の障害へと進展する。したがって、浮腫の原因は、寄生虫によってリンパ管が閉塞し、リンパ流の障害によるものである。

 

 

 

 

 

問題102.良性腫瘍の特徴で正しいのはどれか。

1.浸潤性に増殖する。
2.転移を起こす。
3.悪液質を起こす。
4.核分裂が少ない。

解答

解説

腫瘍とは?

腫瘍とは、体の中にできた細胞のかたまりのことである。悪性腫瘍とは、このような腫瘍のうち、無秩序に増殖しながら周囲にしみ出るように広がったり(浸潤)、体のあちこちに飛び火して新しいかたまりを作ったり(転移)するもののことをいう。一方、良性腫瘍とは、浸潤や転移をせず、周りの組織を押しのけるようにしてゆっくりと増える腫瘍のことをいう。

1.× 浸潤性に増殖するのは、悪性腫瘍の特徴である。したがって、周囲との境界が不明瞭である。

2.× 転移を起こすのは、悪性腫瘍の特徴である。
・良性腫瘍は局所にとどまり、転移はしない。
・悪性腫瘍は血行性・リンパ行性・播種性に転移する。
・遠隔転移とは、がん細胞が最初に発生した場所(原発巣)から、血管やリンパ管に入り込み、血液やリンパの流れに乗って別の臓器や器官に移動し、そこで増殖することである。肺や肝臓、脳、骨など血液の流れが豊富な場所や、リンパの流れが集まる場所であるリンパ節に遠隔転移することが多い。

3.× 悪液質を起こすのは、悪性腫瘍の特徴である。なぜなら、悪性腫瘍では、腫瘍細胞が大量に栄養を消費し、炎症性サイトカインが代謝異常を引き起こすため。したがって、体重減少・筋萎縮・貧血・衰弱を伴う悪液質が生じる。一方、良性腫瘍は、栄養消費が少ないため悪液質は起こさない。
・悪液質とは、がんの病状に伴い体重減少や食欲不振を特徴とする合併症である。進行したがん患者さんに多くみられる症状である。進行を伴う悪性腫瘍に関連する。

4.〇 正しい。核分裂が少ないのは、良性腫瘍の特徴である。良性腫瘍の特徴として、成熟構造になり、膨張性で異型性は軽度であり、分裂は緩やかで転移はみられない。

 

 

 

 

 

問題103.瘢痕の主な構成成分はどれか。

1.マクロファージ
2.好中球
3.毛細血管
4.膠原線維

解答

解説

瘢痕とは?

瘢痕とは、けがや手術などで皮ふや内臓の組織が傷ついたあとにできる「治ったしるし」である。元の組織が完全には再生せず、かわりに硬く強い膠原線維がたくさん作られて埋められることでできる。しなやかさは失われるが、穴をふさぐパッチのような役割を果たすのである。

1.× マクロファージは、創傷治癒の炎症初期段階で重要な役割を持つ。
・とは、単球から分化し、貧食能を有する。異物を貪食して抗原提示細胞になり、抗原情報がリンパ球に伝えられる。直径15~20μmの比較的大きな細胞で、全身の組織に広く分布しており、自然免疫(生まれつき持っている防御機構)において重要な役割を担っている。

2.× 好中球は、創傷治癒の炎症初期段階で重要な役割を持つ。
・好中球とは、白血球の中で一番多く、細菌免疫の主役である。マクロファージが好中球に指令し、好中球は活性化・増殖する。末梢血白血球の40~70%を占め、生体内に細菌・真菌が侵入すると、まず好中球が感染部位に遊走し、菌を貧食する。

3.× 毛細血管は、肉芽組織の主要成分である。
・肉芽組織は「線維芽細胞+新生毛細血管+炎症細胞」で構成される。
・肉芽組織とは、炎症細胞、線維芽細胞、細胞外マトリックス(膠原線維や蛋白質など)、新生血管などが一塊となり、創を埋めていったものを指す。

4.〇 正しい。膠原線維は、瘢痕の主な構成成分である。瘢痕は創傷治癒の最終段階で形成され、線維芽細胞が産生する膠原線維が沈着して硬く強靭な組織となる。これにより組織の強度は回復するが、元の構造・機能は失われる(瘢痕組織は非機能的)。
・膠原線維とは、結合組織を構成する線維の一種で、コラーゲンからなり、腱・ 靭帯・骨などに多く含まれる。組織の粘弾性の改善する。

 

 

 

 

 

問題104.偽膜性大腸炎の原因菌はどれか。

1.黄色ブドウ球菌
2.クロストリジウム・ディフィシル菌
3.スピロヘータ
4.らい菌

解答

解説
1.× 黄色ブドウ球菌は、食中毒化膿性疾患の原因菌である。
・黄色ブドウ球菌とは、食中毒の原因となるだけでなく、おでき、にきびや、水虫等に存在する化膿性疾患の代表的起因菌である。健康な人でものどや鼻の中などに高率で検出され、動物の皮膚、腸管、ホコリの中など身近にも存在している。5類感染症のひとつである。

2.〇 正しい。クロストリジウム・ディフィシル菌は、偽膜性大腸炎の原因菌である。
・偽膜性大腸炎とは、主に抗菌薬の使用によりクロストリジウム・ディフイシル菌(Clostridium difficile:CD)という菌が異常に増殖して起きる感染性大腸炎の1種である。内視鏡検査で大腸の壁に小さい円形の膜が見られ、偽膜(粘膜の壊死物質が集まった膜)が大腸の粘膜に形成されることが特徴である。薬剤服用後数日から2~3週間後に下痢、発熱、腹痛などの症状が出始める。

3.× スピロヘータは、梅毒などの原因菌である。スピロヘータとは、血流を介して拡散し、広範囲の粘膜皮膚病変とリンパ節腫脹が生じるほか、頻度はより低いが他の臓器にも症状が生じる(梅毒スピロヘータ)。典型的には下疳が出現した6~12週間後から症状がみられるようになり、25%の患者では、その時点でも依然として下疳がみられる。

4.× らい菌は、ハンセン病の原因菌である。
・ハンセン病とは、らい病とも呼ばれ、らい菌が体内に入り(感染)、引き起こされる(発症)病気である。痒みや痛みなどの自覚症状のない治りにくい皮疹で、白斑、紅斑、環状紅斑、結節など多彩である。成人の場合、日常生活の中で感染することはない。また感染したとしても発症は非常にまれである。

 

 

 

 

 

問題105.シェーグレン(Sjögren)症候群の組織学的所見で正しいのはどれか。

1.慢性リンパ球性甲状腺炎
2.唾液腺の腺房細胞萎縮
3.近位筋の萎縮
4.増殖性滑膜炎

解答

解説

シェーグレン症候群とは?

シェーグレン症候群(Sjögren症候群)は、涙腺・唾液腺などの外分泌腺炎を特徴とする自己免疫疾患である。男女比(1:9)で女性に多い(特に、40歳代の中年女性)。唾液腺・涙腺の慢性炎症が生じる膠原病で、乾性角結膜炎(ドライアイ)、口腔乾燥(ドライマウス)を主症状とする。皮膚症状は環状紅斑など多彩であるが、全身の紅斑・水庖は生じない。これらの乾燥症状に対し、人工涙液点眼や水分摂取といった対症療法を行う。

1.× 慢性リンパ球性甲状腺炎は、橋本病(慢性甲状腺炎)の所見である。
・橋本病とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。

2.〇 正しい。唾液腺の腺房細胞萎縮は、シェーグレン症候群の組織学的所見である。シェーグレン症候群では、唾液腺にリンパ球浸潤が起こり、腺房細胞が萎縮・消失する。

3.× 近位筋の萎縮は、多発筋炎や皮膚筋炎の所見である。炎症性筋疾患では筋線維の壊死・再生がみられ、近位筋優位の筋力低下をきたす。

4.× 増殖性滑膜炎は、関節リウマチの所見である。関節リウマチでは滑膜に慢性炎症が起こり、滑膜細胞の増殖により、関節破壊が進行する。

皮膚筋炎とは?

多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。

(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)

 

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