第25回(H29年)柔道整復師国家試験 解説【午前96~100】

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問96 日和見感染の原因でないのはどれか。

1.抗癌薬投与
2.免疫抑制療法
3.抗菌薬投与
4.放射線療法

答え.3

解説

MEMO

日和見感染とは、免疫力が低下した状態(例:HIV感染、がん治療、臓器移植後、加齢など)で通常は病原性が低い微生物が感染を引き起こす現象である。これに該当する病原体は、健康な人では問題を引き起こさないが、免疫抑制状態の人では重篤な感染症を引き起こすものである。

1.〇 抗癌薬投与は、日和見感染の原因である。なぜなら、抗癌薬は免疫系を抑制する作用があるため。

2.〇 免疫抑制療法は、日和見感染の原因である。なぜなら、免疫抑制療法は、免疫系の機能を抑えるため。

3.× 抗菌薬投与は、日和見感染の原因でない。なぜなら、抗菌薬は、免疫力そのものを低下させるわけではないため。しかし、抗菌薬の長期使用(大量使用)は腸内細菌叢を乱し、結果的に免疫バランスを崩すことがある。これにより二次的に日和見感染のリスクが上がる。ちなみに、抗菌薬とは、細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬のことである。細菌による感染症の治療に使用される医薬品である。

4.〇 放射線療法は、日和見感染の原因である。なぜなら、放射線療法は、免疫系細胞にダメージを与えるため。

 

 

 

 

 

問97 変性と疾患の組合せで誤っているのはどれか。

1.硝子滴変性:水銀中毒
2.アミロイド変性:手根管症候群
3.フィブリノイド変性:フォン・ギルケ病
4.脂肪変性:アルコール性肝障害

答え.3

解説
1.〇 正しい。硝子滴変性:水銀中毒
水銀中毒とは、急性症状としては流涎、おう吐、腹痛、下痢、頭痛、悪寒、しびれ、めまい、視覚・聴覚異常など強い中枢神経系への毒性をしめす。特に慢性の場合では、腎臓障害が起こりやすく、近位尿細管の障害やタンパク再吸収が妨げられて硝子滴変性がみられる。ちなみに、硝子滴変性とは、とくに腎尿細管上皮などにタンパク質が蓄積して細胞質が硝子様に見える変性のことである。

2.〇 正しい。アミロイド変性:手根管症候群
手根管症候群とは、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。透析患者さんではβ2ミクログロブリン由来のアミロイドが骨・関節・腱鞘などに沈着し、手根管症候群を引き起こす。ちなみに、アミロイド変性とは、特定の異常蛋白質(アミロイド)が組織に沈着する状態である。

3.× フィブリノイド変性:フォン・ギルケ病
・フィブリノイド変性とは、アレルギー性疾患や膠原病の特徴的病変である。フィブリノイド変性を認める膠原病として代表的なものは全身性エリテマトーデスである。全身性エリテマトーデスではフィブリノイド変性を伴う小動脈血管炎を認める。
・vonGierke病(フォン・ギルケ病)とは、肝型糖原病のⅠ型に分類される酵素の異常の一つである。成人期には肝硬変や肝腫瘍を発症することもある糖原病を肝型糖原病という。肝型糖原病は遺伝性の病気で、IX型(ホスホリラーゼキナーゼ)の一部は男性に発症し、その他の肝型糖原病は男女の差なく起こる。

4.〇 正しい。脂肪変性:アルコール性肝障害
脂肪変性とは、脂肪化ともいい、細胞質内に形態学的に観察可能な脂肪滴が出現している状態である。脂肪変性は中性脂肪の異常蓄積により出現する。アルコール性肝障害の初期症状としてよく見られ、肝細胞内に異常に脂肪が蓄積することを指す。

MEMO

アルコール性肝障害とは、アルコールの飲みすぎによって肝臓に負担がかかり、肝細胞に中性脂肪が蓄積することによって風船状に肥大化し肝機能が障害されてしまう病気である。初期には肝臓全体が腫れてアルコール性脂肪肝の状態となる。

 

 

 

 

 

問98 組織・臓器の循環障害で正しい組合せはどれか。

1.充血:静脈血が貯留した状態
2.うっ血:流れる血液が過剰な状態
3.血栓:血管の支配領域が壊死した状態
4.虚血:動脈の血液供給が減少した状態

答え.4

解説
1.× 静脈血が貯留した状態は、「充血」ではなくうっ血である。充血とは、動脈血が過剰に流れ込む状態である。例えば、炎症が発生すると、まず血管が拡張して血流が増加し、その結果、炎症部位に血液が集まる状態が生じる。これが充血である。組織が赤くなる(発赤)のは、この作用によるものである。

2.× 流れる血液が過剰な状態は、「うっ血」ではなく充血である。うっ血は、静脈血が正常に排出されずに組織や臓器に貯留する状態を指す。心不全や静脈閉塞などが原因で発生する。肺うっ血とは、心不全などの循環不全により、肺に血流がうっ滞する状態を示す。

3.× 血管の支配領域が壊死した状態は、「血栓」ではなく(脳)梗塞である。
血栓とは、血管内において形成される凝血塊。血栓によって生じる病態を総称して血栓症という。 正常な状態では血液の凝固の促進が体内で調節されており、出血時に血栓を形成して止血される。止血が完了し障害された部位が修復されると血栓は消える。これを線溶作用という。

4.〇 正しい。虚血:動脈の血液供給が減少した状態
虚血は、動脈血の供給が減少することで、組織や臓器が酸素不足になる状態を指す。心臓に血液が十分行き渡っていない状態は、虚血性心疾患という。

 

 

 

 

 

問99 門脈圧亢進症の症状で正しいのはどれか。

1.肺うっ血
2.ニクズク肝
3.下肢静脈瘤
4.メズサの頭

答え.4

解説

門脈圧亢進症とは?

門脈は、だいたいの消化管から得られた栄養を肝臓へと運ぶ働きを持つ機能血管である。胃、腸、膵臓、脾臓、胆嚢の毛細管から静脈血を集める。門脈圧亢進症とは、門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは、肝硬変、住血吸虫症、および肝血管異常である。続発症として、食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い、しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。

1.× 肺うっ血とは、心不全などの循環不全(心臓のポンプ機能の低下)により、肺に血流がうっ滞する状態を示す。このため、呼吸困難や倦怠感、むくみなどが生じる。

2.× ニクズク肝とは、鬱血性肝障害のひとつで、慢性うっ血によって、肝臓の小葉中心部が暗赤色、辺縁部が黄色化し暗赤色と黄色が入り混じった状態のことである。

3.× 下肢静脈瘤とは、静脈の弁機能不全や静脈圧の上昇により、下肢の静脈が拡張する状態である。足の静脈が太くなって瘤(こぶ)状に浮き出て見えるようになった状態のことをさす。

4.〇 正しい。メズサの頭は、門脈圧亢進症の症状である。なぜなら、門脈圧亢進症による腹壁静脈の拡張し、門脈圧が上昇し、血液が側副路を通って腹壁の静脈に流れ込むため。メドゥーサの頭とは、お腹の皮膚の静脈が膨れ上がり、放射状にコブのような模様のことを指す。

 

 

 

 

 

問100 浮腫の成因でないのはどれか。

1.血管透過性の亢進
2.体腔へのリンパ液の貯留
3.血漿膠質浸透圧の低下
4.リンパ管の閉塞

答え.2

解説

浮腫とは?

浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起きることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。
【低アルブミン血症の原因】①栄養摂取の不足(低栄養状態)、②肝臓における蛋白質合成能の低下、③腎臓から尿への蛋白質の大量喪失(ネフローゼ症候群)など。

1.〇 血管透過性の亢進は、浮腫の成因である。なぜなら、血管透過性が亢進すると、血管内の液体や蛋白質が組織間に漏れやすくなるため。これは炎症やアレルギー反応などで見られる。ちなみに、血管透過性とは、血管とその周りの組織との間で起こる水分や栄養分などの移動のことである。

2.× 体腔へのリンパ液の貯留は、浮腫の成因でない。これは、胸水や腹水などと呼ばれる。なぜなら、体腔は、胸腔、腹腔などを指すため。

3.〇 血漿膠質浸透圧の低下は、浮腫の成因である。なぜなら、血漿膠質浸透圧(主にアルブミンによって保たれる)が低下すると、血管内に水分を引き止める力が弱まり、組織へ水分が移動するため。ちなみに、血漿膠質浸透圧とは、血漿中のタンパク質(主にアルブミン)による浸透圧である。血漿内へ水分を引き戻す方向に働き、ろ過を防ぐ方向の力である。

4.〇 リンパ管の閉塞は、浮腫の成因である。なぜなら、リンパ管が閉塞すると、本来リンパ管が回収すべき組織中の余分な水分や蛋白質が排出できず、組織(間質)に液体がたまるため。これは、リンパ浮腫と呼ばれる。

 

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