第26回(H30年)柔道整復師国家試験 解説【午前81~85】

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問81 骨格筋細胞の横行小管で正しいのはどれか。

1.筋細胞の表面に並行して存在する。
2.アセチルコリンを受容体へ運ぶ。
3.興奮をトライアッドへ伝える。
4.筋収縮時に短縮する。

答え.3

解説
1.× 筋細胞の表面に、「並行」ではなく直角に存在する。骨格筋細胞の横行小管(T管)は、細胞膜が細胞内に陥没した構造で、筋細胞膜が貫入した管状の細胞内小器官である。筋細胞表面積の80%以上を占め、筋小胞体の間に位置し、筋線維の長軸に直角に存在する。

2.× アセチルコリンを受容体へ運ぶのは、「シナプス前終末からの放出」である。アセチルコリンとは、代表的な神経伝達物質であり、①運動神経の神経筋接合部、②交感神経および副交感神経の節前線維の終末、副交感神経の節後線維の終末などのシナプスで放出される。アセチルコリンは、中枢神経で働く場合と末梢神経で働く場合で作用が異なる。①運動神経の神経筋接合部では、筋収縮に作用する。

3.〇 正しい。興奮をトライアッドへ伝える。トライアッドとは、三連構造といい、横行小管の両側に筋小胞体終末槽が配置している構造のことである。横行小管とは、筋細胞膜の興奮を内部の筋小胞体に伝える役割を持っている。したがって、興奮が横行小管を通って筋小胞体に伝わること(トライアッドへの伝達)で、カルシウムイオンが放出され、筋収縮が引き起こされる。

4.× 筋収縮時に短縮「しない」。横行小管自体は、構造的に短縮することはない。筋収縮時に短縮するのは筋原線維のアクチンとミオシンである。

筋収縮の機序

【筋収縮の機序】
①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。
②ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こる。
③アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

【運動による筋疲労によって起こる事象】
①代謝産物の蓄積(乳酸の増加やpHの低下)
②エネルギー供給率の低下(ATP低下、ADP増加、グリコーゲン低下)
③興奮収縮連関不全(筋小胞体へのCa2+取り込み低下)

 

 

 

 

 

問82 骨格筋の長さと張力の関係で正しいのはどれか。

1.静止長より短くすると静止張力が増加する。
2.静止長より長くすると静止張力が増加する。
3.静止長より短くすると活動張力が増加する。
4.静止長より長くすると活動張力が増加する。

答え.2

解説

まとめ

静止長より短くすると静止張力が減少し、活動張力も減少する。
静止長より長くすると静止張力が増加し、活動張力は減少する。

①静止長とは、静止状態にある筋が受動張力を発生する長さである。筋は長さとともに発揮できる力が変わるという特徴がある。
②静止張力とは、筋が収縮するときに得られる張力である。
③活動張力とは、筋の静止状態でその長さに従って大きくなる張力である。

(※図引用:「図10-8 張力長さ曲線(静止伸展曲線)と等尺性最大張力」東京医科歯科大学HPより)

1.× 静止長より短くすると、静止張力が「増加」ではなく減少する。
2.〇 正しい。静止長より長くすると静止張力が増加する
静止長より筋肉が引き伸ばされると、筋膜や結合組織などが伸展され、静止張力が増加する。静止張力は、筋肉が引き伸ばされることによって生じる受動的な張力である。

3.× 静止長より短くすると活動張力が「増加」ではなく減少する。
4.× 静止長より長くすると活動張力が「増加」ではなく減少する。
筋が生体内での長さ付近のとき活動張力は最大となり、それより短縮・伸張しすぎると低下する特性を持つ。

 

 

 

 

 

問83 ゴルジ腱紡錘(腱器官)で正しいのはどれか。

1.錘外筋線維の間に並列に位置する。
2.Ia群感覚線維が終末する。
3.筋にかかる張力を感知する。
4.応答によって伸張反射を誘発する。

答え.3

解説

自原抑制とは?

自原抑制(自己抑制)とは、筋が過剰に収縮し、健にかかる張力が大きくなったときに腱紡錘(ゴルジ腱器官)がそれを感知し、その健の筋が弛緩しにかかる張力を小さくする反射である。動筋の抑制性2シナプス反射となる。Ⅰb線維による。

1.× 錘外筋線維の間に「並列」ではなく直列に位置する。これにより、筋肉の収縮によって生じる張力を感知することができる。ちなみに、筋紡錘は、錘外筋の筋線維と平行に存在することで、錘外筋が伸ばされた時にそれを感知することができる。

2.× 「Ia群」ではなくIb群感覚線維が終末する。Ia群感覚線維は筋紡錘に関与し、筋の長さの変化を感知する。

3.〇 正しい。筋にかかる張力を感知する。筋の受容器として、バネばかりのように錘外筋線維に対して直列に配置されており、筋の張力を感知する。

4.× 応答によって、「伸張反射」ではなく自原抑制(自己抑制)を誘発する。折りたたみナイフ現象は、上位運動ニューロン障害でみられる。他動的な筋の伸張に対し、はじめは強く抵抗を示すが、力が加えられ続けるとその抵抗が急激に減じる現象である。受動運動の速度で抵抗力が変わり、速く動かすほど抵抗も大きくなる。

 

 

 

 

 

問84 半規管で正しいのはどれか。

1.三つの半規管が平行に配置されている。
2.頭部の直線加速度を感知する。
3.有毛細胞は内リンパの移動を感知する。
4.半規管からの信号は蝸牛神経が伝える。

答え.3

解説

(※画像引用:やまだカイロプラクティック院様)

1.× 三つの半規管が、「平行」ではなくお互いに3軸方向に交わるように配置されている。三半規管は、「外側半規管」「前半規管」「後半規管」の 3つの半規管の総称である。すべての半規管は、頭が回転するときの方向と速さを感知する役割があり、外側半規管は水平回転(左右、横方向の回転)、前半規管と後半規管は垂直回転(上下、縦方向の回転)を感じ取る。 

2.× 頭部の直線加速度を感知するのは、「耳石器」である。耳石器とは、卵形嚢と球形嚢に存在し、頭部の傾きや乗り物やエレベーターに乗った場合に生じる直線加速度を受容する(頭部の傾きの検出も、重力方向、すなわち直線加速度を感知することである)。ちなみに、三半規管は、主に頭部の回転を感知する。

3.〇 正しい。有毛細胞は内リンパの移動を感知する。耳内の前庭と三半規管であり、内リンパ液と外リンパ液が関連する。平衡感覚をつかさどるのは、内耳の前庭と三半規管であり、どちらもリンパ液で満たされている。身体の回転などによりリンパ流が生じると、有毛細胞が刺激され水平・垂直方向の直線加速度と回転加速度(角加速度)を感知する。

4.× 半規管からの信号は、「蝸牛神経」ではなく前庭神経が伝える。蝸牛神経とは、聴神経ともいわれ音を脳へ伝える神経である。蝸牛神経と前庭神経を内耳神経といい、内耳道を通る。

 

 

 

 

 

問85 性周期とホルモン分泌の組合せで誤っているのはどれか。

1.卵胞期:エストロゲン分泌
2.排卵期:黄体形成ホルモン分泌
3.黄体期:プロゲステロン分泌
4.月経期:ヒト絨毛性ゴナドトロピン分泌

答え.4

解説

(※画像引用:日本医師会様HPより)

月経周期

・卵胞期:1回の月経周期が始まると脳の底の方にある下垂体というところから、卵を包んでいる卵胞を刺激する卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されはじめ、卵胞は大きくなると同時に女性ホルモン(エストロゲン)を分泌する時期。
・増殖期:女性ホルモン(エストロゲン)が新しい子宮内膜を成長させていく時期。卵胞期と増殖期とはだいたい同じ時期。
・黄体期:排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期。
・分泌期:子宮内膜が成長を止めて受精卵が着床できるよう準備をする時期。
・月経期:出血が始まってから終わるまでの期間をさす。

1.〇 正しい。卵胞期:エストロゲン分泌
エストロゲンとは、主に卵巣から分泌される女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。

2.〇 正しい。排卵期:黄体形成ホルモン分泌
黄体形成ホルモン とは、下垂体前葉から分泌され、卵巣に影響し排卵を起こす上で重要な役割を担う。また、思春期に増加し、精巣においてテストステロン、卵巣においてエストロゲンの分泌を増加させる。

3.〇 正しい。黄体期:プロゲステロン分泌
プロゲステロン(黄体ホルモン)は、基礎体温を上げ、受精卵が着床しやすい状態にする作用を持つ。プロゲステロン(黄体ホルモン)は、性周期が規則的で健常な成人女性において、着床が起こる時期に血中濃度が最も高くなるホルモンである。着床が起こる時期とは、月経の黄体期である。黄体期は、排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期である。

4.× ヒト絨毛性ゴナドトロピン分泌は、「月経期」ではなく妊娠中にみられる。
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG:human chorionic gonadotropin)とは、妊娠中にのみ測定可能量が著しく産生されるホルモンであり、妊娠の早期発見や自然流産や子宮外妊娠といった妊娠初期によくみられる異常妊娠の診断と管理のために使用される。主に絨毛組織において産生され、妊娠初期の卵巣黄体を刺激してプロゲステロン産生を高め、妊娠の維持に重要な働きをしている。また、胎児精巣に対する性分化作用や母体甲状腺刺激作用がある。絨毛性腫瘍の他に、子宮、卵巣、肺、消化管、膀胱の悪性腫瘍においても異所性発現している例もある。

排卵期とは?

約1ヵ月に1回卵巣から卵管へ卵子が放出されることを「排卵」という。 月経周期が一般的な28日周期の女性の場合、次の月経開始予定日から約14日前に起こる。 (※月経周期によって異なる。)排卵期は、黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの血中濃度が急激に上昇して始まる。黄体形成ホルモンは卵子の放出(排卵)を促すが、排卵は通常、両ホルモンの急激な増加が始まってから16~32時間後に起こる。この時期にはエストロゲンの血中濃度は低下し、プロゲステロンの血中濃度が上昇し始める。

 

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