第27回(H31年)柔道整復師国家試験 解説【午前26~30】

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問題26 上腕骨外科頸骨折の初検時にみられないのはどれか。

1.三角筋部の膨隆が消失している。
2.烏口突起下に膨隆がみられる。
3.骨折部で上腕骨軸が前方凸に屈曲している。
4.肩関節外転運動が制限されている。

答え.1

解説

烏口下脱臼とは?

烏口下脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。

1.× 三角筋部の膨隆が消失しない
三角筋部の膨隆が消失は、肩関節前方脱臼の特徴である。上腕骨外科頸骨折と外観が類似しているが、三角筋の膨隆の消失、肩峰下の骨頭空虚は見られず、関節運動もある程度保たれるのが特徴である。

2.〇 正しい。烏口突起下に膨隆がみられる。
なぜなら、烏口突起下の部位に、上腕骨の頭部が転位するため。

3.〇 正しい。骨折部で上腕骨軸が前方凸に屈曲している。
なぜなら、上腕骨が腱板の影響を受けるため。上腕骨外科頸骨折の近位骨片は軽度内転、遠位骨片は軽度外転となる。

4.〇 正しい。肩関節外転運動が制限されている。
なぜなら、骨折により痛みと肩関節の不安定性が生じるため。

上腕骨外科頚骨折外転型について

発生機序:肩外転位で手掌、肘を衝いて転倒
鑑別疾患:肩関節前方脱臼
好発年齢層:高齢者
腱板損傷:棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋
整復前の確認:腋窩動脈(橈骨動脈)、腋窩神経の確認

【上腕骨外科頸外転型骨折の転位・変形】
・近位骨片は軽度内転
・遠位骨片は軽度外転
・遠位骨折端は前内上方へ転位
・骨折部は前内方凸の変形

 

 

 

 

 

問題27 コーレス(Colles)骨折の外観で誤っているのはどれか。

1.フォーク状の変形を呈する。
2.尺骨頭が突出した変形を呈する。
3.中手指節関節が過伸展位を呈する。
4.損傷部の厚さが増大する。

答え.3

解説

(※引用:「イラスト素材:手の骨」illustAC様より)

1.〇 正しい。フォーク状の変形を呈する。
Colles骨折は、折れた橈骨の下端側の骨片が手の甲側にずれた骨折である。フォーク状変形やSudeck骨萎縮などをきたす。

2.〇 正しい。尺骨頭が突出した変形を呈する。
なぜなら、折れた橈骨の下端側の骨片が手の甲側にずれるため、尺骨頭が突出した変形を呈している。

3.× 中手指節関節が過伸展位を呈していない
なぜなら、コーレス骨折は手首部の遠位橈骨の骨折であるため。通常は中手指節関節の位置や配置に影響は少ない。

4.〇 正しい。損傷部の厚さが増大する。
なぜなら、コーレス骨折では、折れた橈骨の下端側の骨片が手の甲側にずれるため。特に、手関節の横径が増大する。また、炎症症状により損傷部の腫れも目立つ。

橈骨遠位端骨折

・Smith骨折(スミス骨折):Colles骨折とは逆に骨片が掌側に転位する。
・Colles骨折(コーレス骨折):Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する。
・Barton骨折(バートン骨折):橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。

主な治療として、骨転位が軽度である場合はギプス固定をする保存療法、骨転位が重度である場合はプレート固定を行う手術療法である。

コーレス骨折(橈骨遠位端部伸展型骨折)は、橈骨遠位端骨折の1つである。 橈骨が手関節に近い部分で骨折し、遠位骨片が手背方向へ転位する特徴をもつ。合併症には、尺骨突き上げ症候群、手根管症候群(正中神経障害)、長母指伸筋腱断裂、複合性局所疼痛症候群 (CRPS)などがある。

 

 

 

 

 

問題28 コーレス(Colles)骨折の遠位骨片の転位で正しいのはどれか。

1.回外・尺側・背側・短縮転位
2.回内・橈側・掌側・延長転位
3.回外・橈側・背側・短縮転位
4.回内・尺側・掌側・延長転位

答え.3

解説
1.× 回外・尺側・背側・短縮転位/回内・橈側・掌側・延長転位/回内・尺側・掌側・延長転位
コーレス骨折の骨片の転位パターンとは異なる。

3.〇 正しい。回外・橈側・背側・短縮転位は、コーレス(Colles)骨折の遠位骨片の転位である。
回外(捻転):受傷機転が手掌を衝いて転倒した際、前腕遠位に長軸圧背屈回外が強制されておこる。
橈側:橈骨の構造上、橈骨茎状突起が斜めに位置するため、橈側に変位しやすい。
背側:掌側の場合、スミス骨折となる。
短縮転位:なぜなら、受傷機転が手掌を衝いて転倒した際、前腕遠位に長軸圧背屈回外が強制されておこるため。掌側から斜め背側近位に骨折線が走ることが特徴で、その骨折線に沿って短縮する。

橈骨遠位端骨折

・Smith骨折(スミス骨折):Colles骨折とは逆に骨片が掌側に転位する。
・Colles骨折(コーレス骨折):Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する。
・Barton骨折(バートン骨折):橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。

主な治療として、骨転位が軽度である場合はギプス固定をする保存療法、骨転位が重度である場合はプレート固定を行う手術療法である。

コーレス骨折(橈骨遠位端部伸展型骨折)は、橈骨遠位端骨折の1つである。 橈骨が手関節に近い部分で骨折し、遠位骨片が手背方向へ転位する特徴をもつ。合併症には、尺骨突き上げ症候群、手根管症候群(正中神経障害)、長母指伸筋腱断裂、複合性局所疼痛症候群 (CRPS)などがある。

 

 

 

 

 

問題29 肘関節脱臼後の骨化性筋炎で誤っているのはどれか。

1.上腕部にみられる。
2.肘関節可動域が制限される。
3.無謀な徒手矯正が原因となる。
4.直ちに外科的な処置に委ねる。

答え.4

解説

骨化性筋炎とは?

骨化性筋炎とは、打撲などの外傷によって、筋肉の中に骨と同じような組織ができてしまう疾患のことである。外傷性骨化性筋炎、骨化性筋炎とも言う。 損傷を受けた筋肉が出血して血腫ができたところに、カルシウムが沈着し、石灰化しておこる。大腿部前面に強い打撲を受けた後によくみられる。

1.〇 正しい。上腕部にみられる。
骨化性筋炎は、肘関節脱臼後に筋肉や他の軟部組織内で骨が形成される病態であり、上腕部に発生することがある。

2.〇 正しい。肘関節可動域が制限される。
なぜなら、骨化性筋炎は、新たに形成される骨組織が関節の正常な動きを阻害するため。

3.〇 正しい。無謀な徒手矯正が原因となる。
なぜなら、骨化性筋炎は、外傷、手術、神経損傷などの組織のダメージが原因となるため。基本的に、無謀な徒手矯正はさらなる炎症症状の悪化となるため適さない。

4.× 直ちに外科的な処置に委ねる必要はない
なぜなら、外傷性骨化性筋炎は通常、自然治癒されるため。痛み止めを服用することが多い。治療は、痛みと相談しながら、関節可動域運動訓練から始めることが多い。ちなみに、外科的治療とは、手術治療であり、メスでがん組織を切り取ってしまう治療法である。

 

 

 

 

 

問題30 肘内障で正しいのはどれか。

1.腕尺関節の亜脱臼である。
2.肘関節に運動痛がある。
3.患部の腫脹が著しい。
4.整復後は副子固定が必要である。

答え.2

解説

肘内障とは?

肘内障とは、乳幼児に特有の外傷で、橈骨頭が引っ張られることによって、橈骨頭を取り巻いている輪状靭帯と回外筋が橈骨頭からずれた状態(亜脱臼)になったものである。5歳くらいまでの子どもに発症する。 輪状靭帯の付着がしっかりする6歳以降では起こりにくい。

1.× 「腕尺関節」ではなく近位橈尺関節の亜脱臼である。
腕尺関節とは、上腕骨と尺骨で構成されている関節である。近位橈尺関節とは、橈骨と尺骨で構成されている関節である。

2.〇 正しい。肘関節に運動痛がある
なぜなら、橈骨頭を取り巻いている輪状靭帯と回外筋が橈骨頭からずれた状態であるため。特に肘関節外側部に運動時痛がみられる。

3.× 患部の腫脹が「著しい」とはいえない
なぜなら、肘内障とは、橈骨頭が引っ張られることによって発症するため。出血を呈するほどの軟部組織の損傷まで及ばないため、著明な炎症症状(特に腫脹と発赤)はみられにくい。

4.× 整復後は副子固定が「不要である」。
なぜなら、肘内障は、輪状靭帯と回外筋が橈骨頭からずれた状態で、著明な軟部組織の損傷まで及ばないため。きちんとした整復後は、その場で腕を普段通りに動かすことが可能である。

 

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