第27回(H31年)柔道整復師国家試験 解説【午前106~110】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問題106 女性ホルモンの影響を受ける悪性腫瘍はどれか。2つ選べ。

1.乳癌
2.肝癌
3.子宮内膜癌
4.悪性黒色腫

答え.1・3

解説

女性ホルモンの影響を受ける悪性腫瘍

・エストロゲン依存性悪性腫瘍:乳がん、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、下垂体腫瘍や副腎皮質腫瘍など。

1.〇 正しい。乳癌は、女性ホルモンの影響を受ける悪性腫瘍である。
乳がんとは、乳腺や乳管にできたがんであり、乳がんの発生や成長には女性ホルモンのエストロゲンが関与する。乳がん細胞にはエストロゲン受容体というものがあり、この受容体にエストロゲンが作用し乳がんが進行しやすくなる。乳がんの検査では、最初に、目で見て確認する視診と、触って確認する触診、マンモグラフィ、超音波(エコー)検査を行う。乳がんの可能性がある場合には、病変の細胞や組織を顕微鏡で調べて診断を確定する。したがって、確定診断には、細胞診や組織診(針生検)が用いられる。

2.× 肝癌
肝がんとは、肝臓にできたがんであり、主な原因として、B型・C型肝炎ウイルスへの長期感染が挙げられる。そのほか、お酒の飲み過ぎやメタボリックシンドローム、喫煙、糖尿病などが発症に関与している。

3.〇 正しい。子宮内膜癌は、女性ホルモンの影響を受ける悪性腫瘍である。
子宮内膜癌とは、子宮体がんともいい、子宮の内側を覆う子宮内膜と呼ばれる場所に発生するがんである。主な原因として、子宮体がんは女性ホルモンであるエストロゲンが多い状態が続くことで発症すると考えられている。

4.× 悪性黒色腫
悪性黒色腫とは、メラノーマともいい、皮膚がんの一種である。主な原因として、紫外線の過度な曝露、免疫系の弱体化などがあげられる。

更年期障害とは?

更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍子宮内膜癌乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

 

 

 

 

 

問題107 常染色体劣性遺伝形式をとるのはどれか。

1.マルファン(Marfan)症候群
2.デュシェンヌ(Duchenne)型筋ジストロフィー
3.ゴーシェ(Gaucher)病
4.クラインフェルター(Klinefelter)症候群

答え.3

解説
1.× マルファン(Marfan)症候群は、常染色体の顕性遺伝(優性遺伝)である。
Marfan症候群とは、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。つまり、全身の結合組織がもろくなるため、大動脈癌や大動脈解離を生じやすい。

2.× デュシェンヌ(Duchenne)型筋ジストロフィーは、X連鎖(伴性)劣性遺伝である。
Duchenne型筋ジストロフィーとは、幼児期から始まる筋力低下・動揺性歩行・登攀性歩行・仮性肥大を特徴とするX連鎖劣性遺伝病である。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。ちなみに、仮性肥大とは、ふくらはぎが異常に太くなることである。原因は、ふくらはぎに筋肉ではなく、脂肪や結合織が増えることにより、筋肉が再生されなくなるためで起こる。

3.〇 正しい。ゴーシェ(Gaucher)病は、常染色体劣性遺伝形式をとる。
ゴーシェ病とは、細胞内にグルコセレブロシドという物質が過剰にたまってしまう病気である。症状として、骨髄にある細胞にたまると、骨折しやすい、骨の痛みがみられる。神経の障害としても、けいれん、発達の遅れ、斜視、喘鳴、口が開けにくくなって食べ物や飲み物が飲み込みづらいなどがみられる。

4.× クラインフェルター(Klinefelter)症候群は、X連鎖(伴性)劣性遺伝である。
Klinefelter<クラインフェルター>症候群とは、男性の性染色体にX染色体が一つ以上多いことで生じる疾患の総称である。 性腺機能不全を主病態としている。性染色体異常により生じる先天異常で、高身長・精子形成不全・無精子症などの性腺機能不全、言語発達遅延、女性化乳房が特徴である。

 

 

 

 

 

問題108 催奇形因子の説明で正しいのはどれか。

1.妊娠3か月以降の風疹感染で胎児奇形発生率が高くなる。
2.妊婦は低線量放射線曝露でも避けるべきである。
3.妊娠後期の母体のショック、出血、貧血は催奇形因子である。
4.胎児は薬剤など化学物質に対する感受性が低い。

答え.2

解説

妊娠週数

・妊娠初期:妊娠1か月~4か月(妊娠0~15週)
・妊娠中期:妊娠5か月~7か月(妊娠16~27週)
・妊娠後期:妊娠8か月~10か月(妊娠28週~)

1.× 「妊娠3か月以降」ではなく妊娠初期(特に最初の3か月)の風疹感染で胎児奇形発生率が高くなる。
風疹とは、発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症である。難聴・白内障・心奇形である。妊婦が妊娠初期に風疹に感染すると、不顕性であっても経胎盤的に胎児に影響を与え、先天性風疹症候群と呼ばれる先天異常を引き起こすことがある。風疹にかかると、生まれた赤ちゃんが耳(難聴)や目(白内障、緑内障、網膜症)、心臓などに障害をもつ可能性がある。特に妊娠初期の12週までの時期に、その可能性が高い。

2.〇 正しい。妊婦は低線量放射線曝露でも避けるべきである
医学の進歩とともに放射線診断の機会が増加し、診断量照射(低線量)について注目されるようになっている。胎芽・胎児は、子供や成人に比べ放射線の感受性はより大きく、照射時期や線量によって影響が異なる。胎芽・胎児死亡(流産)、外表・内臓奇形、発育遅延、精神遅滞、悪性腫瘍、遺伝的影響などがあげられる。

3.× 妊娠後期の母体のショック、出血、貧血は催奇形因子とはいえない
一般的な催奇形因子(胎児の奇形を引き起こす因子)として、①感染症、②薬物、③物理的因子がある。器官形成期である受胎後2~8週の間(最終月経後4~10週目)に曝露があると、最も奇形が生じる可能性が高い。

4.× 胎児は薬剤など化学物質に対する感受性が「低い」ではなく高い
なぜなら、胎児は、細胞分裂が盛んで、分化の進んでいない細胞が多いため。ちなみに、放射線感受性とは、細胞や組織が放射線に対してどの程度に敏感であるかを示す物理的な指標である。放射線治療において、癌細胞が高い放射線感受性を持つほど、効果的に放射線によって殺すことができるため、放射線治療は高感受性の細胞に対して特に効果的である。

 

 

 

 

 

問題109 環境要因で正しい組合せはどれか。

1.文化的要因:識字率
2.化学的要因:工場の騒音
3.生物的要因:職場の人間関係
4.物理的要因:空気中の一酸化炭素濃度

答え.1

解説

4つの環境要因

①物理的要因:熱、放射線、圧、空間。
②生物的要因:ウイルス、細菌。
③化学的要因:化学物質。
④社会・文化的要因:ストレス、アルコール、人間関係など。

1.〇 正しい。文化的要因は、識字率が該当する。
なぜなら、識字率は、教育レベルやアクセス可能な情報、そして個々の社会経済的状況など、個々の社会文化的背景に依存するため。人々の健康や生活習慣にも影響を及ぼす。

2.× 工場の騒音は、「化学的要因」ではなく物理的要因に分類される。
なぜなら、騒音が聴覚に直接影響を与え、ストレスを引き起こしたり、心臓病や睡眠障害などの健康問題を引き起こすため。ちなみに、化学的要因とは、空気や水の汚染、毒物、薬物など、化学物質が健康に影響を与えるものを指す。

3.× 職場の人間関係は、「生物的要因」ではなく社会・文化的要因に分類される。
なぜなら、人間関係がストレスを引き起こし、不眠などの健康状態を引き起こすため。

4.× 空気中の一酸化炭素濃度は、「物理的要因」ではなく化学的要因に分類される。
なぜなら、物理的要因は、温度、光、音、放射線など、身体に直接的な影響を及ぼす物理的状況を指すため。

 

 

 

 

 

問題110 地域保健活動の進め方で正しいのはどれか。

1.費用は考慮しない。
2.PDCAのサイクルを意識して進める。
3.産業保健の対象者とは重複しない。
4.法律に基づき対象者を強制的に参加させる。

答え.2

解説

地域保健活動とは?

地域保健活動とは、健康課題の解決に向けて住民や組織同士をつなぎ、住民の主体的な行動の促進である。生活習慣病等の疾病の発症・重症化予防を徹底することで、要医療や要介護状態になることの防止する。地域の各種保健医療福祉計画に基づき、訪問指導、健康相談、健康教育、地区組織活動の育成及び支援等の活動方法を適切に用いて、ソーシャルキャピタルの醸成・活用を図りながら、保健サービス等を提供する。

1.× 費用は考慮「する」。
なぜなら、費用は無限ではないため。健康課題の解決に向けて、計画を立て、予算を組み、費用を決定する必要がある。

2.〇 正しい。PDCAのサイクルを意識して進める
PDCAサイクルを用いて、より良い地域保健活動を進めていく。ちなみに、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)は、計画(P)→実施(D)→再評価(C)→アセスメント(A)というサイクルのことを指す。

3.× 産業保健の対象者とも重複「する」。
なぜなら、地域保健活動は、地域全体の健康状態の改善を目指しているため。ちなみに、産業保健とは、産業医学を基礎とし、働く人々の生き甲斐と労働の生産性の向上に寄与することを目的とした活動である。 職場においては産業医、保健師、衛生管理者、衛生推進者等のスタッフが活動し、職場外から労働衛生コンサルタント、作業環境測定士、健康保持増進(THP)のスタッフ等の専門家が支援する。また、労働基準法とは、労働者の生存権の保障を目的として、①労働契約や賃金、②労働時間、③休日および年次有給休暇、④災害補償、⑤就業規則といった労働者の労働条件についての最低基準を定めた法律である。

4.× 法律に基づき対象者を強制的に参加させる必要はない
地域保健活動は、対象者の自発的な参加を促すことが望ましい。法律に基づく強制的な介入は、個々の自由や自主性を尊重する観点から避けられるべきである。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)