第28回(R2年)柔道整復師国家試験 解説【午前81~85】

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問題81 細胞膜でのグルコースの移動を担うのはどれか。

1.拡散
2.受容体
3.チャネル
4.輸送体

答え.4

解説

細胞膜の内外での物質のやり取り

①受容体:ある特定の分子を認識し結合するが、膜を通過させない。
②トランスポーター:細胞膜内外でイオンや低分子物質を通過させる装置。物質が透過できる間隙を持った構造の膜タンパク質。
③チャネル:特定の刺激に応じて開閉しイオンを通過させる。

1.× 拡散
拡散は、細胞膜を隔てた物質の移動である。主に3つある。
①受動拡散:濃度勾配に従って、高濃度側から低濃度側に物質が移動。
②促進拡散:透過する物質が選択的にトランスポーター(キャリア)に結合し、拡散過程が促進される。
③能動輸送:濃度勾配に逆らって、低濃度側から高濃度側に物質が移動。他の物質の濃度差ポテンシャルや ATP が利用される。

2.× 受容体
細胞膜上の受容体は、外部からの化学信号(ホルモン、神経伝達物質など)を認識し、細胞内の反応を引き起こすためのものである。つまり、ある特定の分子を認識し結合するが、膜を通過させない特徴を持つ。

3.× チャネル
チャネルは、細胞膜に存在し、特定の物質・条件下に応じて開閉しイオンを通過させる。

4.〇 正しい。輸送体は、細胞膜でのグルコースの移動を担う。
膜輸送体(トランスポーター)とは、細胞膜内外でイオンや低分子物質を通過させる装置である。生体膜を貫通し、膜を通して物質の輸送をするタンパク質の総称である。単に輸送体または輸送担体あるいは輸送タンパク質ともいう。物質が透過できる間隙を持った構造の膜タンパク質である。

細胞の構造

細胞は、核と細胞質からなり、細胞膜で覆われている。細胞膜は、リン脂質2重層から構成されており、この中に特殊なタンパク質(受容体、酵素、担体、チャネルなど)がはめ込まれている。脂溶性物質やガス(酸素や二酸化炭素)は、細胞膜を自由に通過できるが、水溶性物質(電解質や栄養素)は、通過できない。

 

 

 

 

 

問題82 代謝性アシドーシスの血中pHと一次性変化の組合せで正しいのはどれか。

答え.4

解説

代謝性アシドーシスとは?

代謝性アシドーシスとは、HCO₃⁻(重炭酸イオン)が低下している状態である。重炭酸イオンを含んだ膵液や胆汁の喪失、腎臓での再吸収障害、体内の酸性物質が過剰になり、その中和のための消費増大によって起こる。代償として、CO₂を排出する呼吸代償(呼吸性アルカローシス)が起こる。

1~2.× 7.65:増加/7.50:減少
なぜなら、アシドーシスは、pHが低下し酸性に傾いている状態であるため。pH7.50以上はアルカリ性に傾いている状態である。

3.× 7.32:「増加」ではなく低下する。
代謝性アシドーシスとは、HCO₃⁻(重炭酸イオン)が低下している状態である。

4.〇 正しい。7.31:減少
代謝性アシドーシスとは、HCO₃⁻(重炭酸イオン)が低下している状態である。重炭酸イオンを含んだ膵液や胆汁の喪失、腎臓での再吸収障害、体内の酸性物質が過剰になり、その中和のための消費増大によって起こる。代償として、CO₂を排出する呼吸代償(呼吸性アルカローシス)が起こる。

酸塩基平衡とは?

【酸塩基平衡】
血液(体液)のpH:7.40 ± 0.05
→pH7.30:酸性に傾いている状態
→pH7.50:アルカリ性に傾いている状態
アシドーシス(酸性):pHが低下している状態。
アルカローシス(アルカリ性):pHが上昇している状態。

 

 

 

 

 

問題83 分解されてビリルビンになるのはどれか。

1.へム
2.グロビン
3.グロブリン
4.アルブミン

答え.1

解説
1.〇 正しい。へムは、分解されてビリルビンになる。
赤血球とは、細胞内にヘモグロビンを含み、主に酸素の運搬を行う。血液中の細胞成分である。ちなみに、ヘモグロビンのヘム鉄が、酸素分子と結合する性質を持ち、肺から全身へと酸素を運搬する役割を担っている。ヘモグロビンは、血液中のビリルビンの由来である。つまり、ビリルビンはヘモグロビンの分解物である。血液中の成分の赤血球は古くなると分解され、このとき、赤血球の中にあるヘモグロビンも分解される。ビリルビンは、ヘモグロビンの構成物質であるヘムが代謝されて生じる。

2.× グロビン
ヘモグロビンは、①ヘムと②グロビンで構成されており、②グロビンとは、タンパク質とが結合して出来ている。その遺伝子は生物種を超えて高度に保存されている。

3.× グロブリン
(免疫)グロブリンとは、免疫活性を持つたんぱく質で、B細胞リンパ球より産生される。侵入した異物の排除に働く。

4.× アルブミン
アルブミンとは、肝臓で作られるたんぱく質で、肝臓や栄養状態の指標となる。血清総蛋白の60%程度を占め肝臓で生成される。アルブミンが低値の場合は、低栄養状態、がん、 肝硬変など、一方で高値の場合は、脱水により血管内の水分が減少し、濃縮効果によることが考えられる。

 

 

 

 

 

問題84 フィブリノゲンをフィブリンに変換するのはどれか。

1.コラーゲン
2.セロトニン
3.トロンビン
4.プラスミン

答え.3

解説
1.× コラーゲン
血小板の主な働きは、血小板凝集による止血作用である。 血管内腔の内皮細胞が剥がれるとコラーゲンが露出する。 露出したコラーゲンに血小板が接触すると血小板は活性化され、内容物が放出し、凝集反応が促進する。

2.× セロトニン
セロトニンとは、うつ病と関連が深い神経伝達物質である。脳内だけに分泌される神経伝達物質で、交感神経を刺激し、血圧を上昇させる作用がある。ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、心のバランスを整える作用のある伝達物質でもある。

3.〇 正しい。トロンビンは、フィブリノゲンをフィブリンに変換する。
トロンビンとは、血小板の凝集を増強するとともに、強固なフィブリン網を形成し、血栓を補強する(二次止血)。つまり、凝固因子の活性化の最後に活性化する因子である。血液凝固の最終過程では、トロンビンの作用でフィブリノーゲンがフィブリンに変化する。トロンビンの作用を阻害する抗凝固薬にヘパリンがある。

4.× プラスミン
プラスミンとは、線溶(線維素溶解系に働く物質)に重要な因子である。フィブリンを分解することで凝固した血液を溶かす。線維素溶解とは、血管から出血した際に一次止血→二次止血が終わり、血管の流れが元通りになると、血栓は血液が流れるのにジャマになるため、血栓を除去する作用が始まる。この現象を線維素溶解、略して「線溶」と呼ぶ。血栓ができると、血漿中に存在するプラスミノーゲンがプラスミノゲンアクチベーターにより活性化され、プラスミンという強力なたんぱく質分解酵素(線溶物質)になり、フィブリンを分解する。

 

 

 

 

 

問題85 スターリングの心臓の法則はどれか。

1.心室拡張期容積が増加すると1回拍出量が増加する。
2.電気的興奮は刺激伝導系によって心室全体に拡がる。
3.心臓は外部からの刺激がなくても自発的に興奮・収縮する。
4.プラトー相に細胞内へ流入するCa2+が収縮の引き金となる。

答え.1

解説

1.〇 正しい。心室拡張期容積が増加すると1回拍出量が増加する
Frank-Starlingの法則(フランクスターリングの法則)とは、心筋は伸展されればされるほど、収縮力が増加することである。一方、心機能が悪いと心拍出量の増加は期待できない。

2.× 電気的興奮は刺激伝導系によって心室全体に拡がる。
これは、心臓の刺激伝導系に関する一般的な説明である。心臓の刺激伝導系は、「洞結節(洞房結節)→右房→左房→房室結節→His束(房室束)→左脚・右脚→プルキンエ線維(Purkinje線維)→心室」となる。刺激伝導系を構成する細胞は特殊心筋と呼ばれ、心房・心室の壁を構成する一般の心筋細胞である固有心筋とは区別する。

3.× 心臓は外部からの刺激がなくても自発的に興奮・収縮する。
これは、心臓の心拍動の自動性に関する説明である。心臓は神経を切断しても、あるいは体外に取り出しても、適当な状態に置けばしばらくの間は一定のリズムで自発的に拍動を続ける特徴を持つ。

4.× プラトー相に細胞内へ流入するCa2+が収縮の引き金となる。
これは、心筋細胞の動作電位と収縮についての説明である。心筋収縮の引き金の役割を担うのは、Ca2+である。また、心筋収縮力を増加されるものは、ノルアドレナリン、アドレナリンである。

心筋の収縮のメカニズム

①隣接する細胞が興奮すると、静止膜電位がプラスに向かい、Na+チャンネルが開き、大量のNaが細胞内に流入する。
②Na+が大量に流れ込むため、膜電位は急峻に上昇する。分極していた細胞内外が極性を失うので脱分極という。
③活動電位となった細胞内にはNa+に引き続きCa2+チャンネルが開いて、Ca2+が入ってくる。Ca2+は心筋収縮の引き金の役割とともに、プラスイオンの性質から活動電位の持続にも貢献する。
④活動電位から静止電位に戻るために、K+チャンネルが開いて、細胞内に多いK+が、細胞外に出ていく。結果的にプラスイオンを減らした細胞内は静止電位まで下がる。再び分極するので、再分極という。

 

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