第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午前11~15】

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問題11 コーレス(Colles)骨折の整復手順で正しいのはどれか。

1.整復前に神経血管損傷の有無を確認する。
2.患者は坐位にて肘関節伸展位とする。
3.助手に患肢の上腕骨骨幹部を把持させる。
4.整復後、助手に変形の有無を確認させる。

答え.1

解説

コーレス骨折の屈曲整復法

コーレス骨折(橈骨遠位端部伸展型骨折)は、橈骨遠位端骨折の1つである。 橈骨が手関節に近い部分で骨折し、遠位骨片が手背方向へ転位する特徴をもつ。合併症には、尺骨突き上げ症候群、手根管症候群(正中神経障害)、長母指伸筋腱断裂、複合性局所疼痛症候群 (CRPS)などがある。

【屈曲整復法】
①肘関節:90°屈曲(助手:骨折部の近位部を把握固定)
術者:母指を背側に他の4指を掌側にあてがい手根部とともに回内位で軽く牽引する。

②回内位で軽く牽引し、橈側より遠位骨片を圧迫する(捻転転位、橈尺面の側方転位の除去、軸を合わせる)。
術者:軽く牽引をしたまま、遠位骨片に手とともに過伸展を強制する。

③その肢位のまま、両母指で遠位骨片近位端を遠位方向に引き出し、近位骨片遠位端に近づける(腕橈骨筋を弛緩させる、短縮転位を除去)。

④両骨折端背側が接合したのを確認して徐々に遠位骨片を手部とともに掌屈する。その際、両示指で近位骨片端を掌側から両拇指で遠位骨片端を圧迫して整復する(背側転位の除去)。その後の固定は、肘関節90°、手関節軽度掌屈、尺屈、前腕回内位とする。

1.〇 正しい。整復前に神経血管損傷の有無を確認する
なぜなら、整復の過程で、神経・血管がさらに損傷する可能性を避けるため。

2.× 患者は坐位にて、「肘関節伸展位」ではなく肘関節90°屈曲とする。

3.× 助手に患肢の「上腕骨骨幹部」ではなく骨折部の近位部を把持させる。
つまり、前腕(橈骨や尺骨)の近位部を把持させる。

4.× 整復後、「助手」ではなく、エコー(超音波)で変形の有無を確認する。
とはいえ、骨折患者の初期対応として専門医(整形外科)へ早急な紹介が原則である。整復後の変形の有無の確認は、通常、医師が行う。

コーレス骨折の固定

・固定範囲:前腕上1/3部から第2~第5MP関節まで背側シャーレ。前腕上1/3部から近位骨片遠位端部まで掌側シャーレ。
・固定肢位:手関節掌屈、軽度尺屈、前腕回内位。
・固定期間:4~6週間

 

 

 

 

 

問題12 肩鎖関節上方脱臼の整復法で誤っているのはどれか。

1.助手は患者の後方に立つ。
2.助手は患者の両上腕部を把持する。
3.術者は患肢を前下方に牽引する。
4.術者は患側の鎖骨遠位端部を下方へ圧迫する。

答え.3

解説

肩鎖関節脱臼の整復法・固定法

【整復法】
①助手:患者の後方に立ち、患肢上肢を後上方へ軽く引く。
②術者は下方に転位した患肢上肢を上方に押し上げながら鎖骨遠位端を下方へ圧迫して整復する。

【固定法】
①固定期間:4週~8週
②整復位は困難で完全固定が容易ではない。

1~2.〇 正しい。助手は患者の後方に立つ。助手は患者の両上腕部を把持する。
助手は、患者の後方に立ち、患肢上肢を後上方へ軽く引く。

3.× 術者は患肢を「前下方に牽引するの」ではなく上方に押し上げる
術者は、下方に転位した患肢上肢を上方に押し上げながら鎖骨遠位端を下方へ圧迫して整復する。

4.〇 正しい。術者は患側の鎖骨遠位端部を下方へ圧迫する。

 

 

 

 

 

問題13 ロバート・ジョーンズの絆創膏固定で最も圧迫をかける部位はどれか。

1.鎖骨近位
2.鎖骨遠位
3.肩鎖関節
4.肩峰

答え.2

解説

ロバート・ジョーンズの絆創膏固定とは?

ロバート・ジョーンズ固定(Robert-Jones固定)は、肩鎖関節上方脱臼の第2~3度損傷で用いる固定法である。
【手順】
①胸部前面を斜めに上行し局所副子上を通過する。
②上腕部後面を通過し綿花沈子をあてた肘をまわる。
③上腕部前面を通過し局所副子上を通過し健側肩甲骨下部まで貼付する。

1.3~4.× 鎖骨近位/肩鎖関節/肩峰
最も圧迫をかける部位ではない。

2.〇 正しい。鎖骨遠位は、ロバート・ジョーンズの絆創膏固定で最も圧迫をかける部位である。
なぜなら、肩鎖関節上方脱臼(鎖骨が上方偏位している状態)であるため。鎖骨遠位を上方から圧迫する。

 

 

 

 

 

問題14 肩関節烏口下脱臼の症状で正しいのはどれか。

1.上腕長の短縮
2.三角筋部の腫脹
3.水平位で弾発性固定
4.三角筋胸筋三角の消失

答え.4

解説

烏口下脱臼とは?

烏口下脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。

1.× 上腕長は、「短縮」ではなく仮性延長がみられる。
なぜなら、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼であるため。

2.× 三角筋部の腫脹が消失する
なぜなら、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼であるため。三角筋が引っ張られるためにおこる。

3.× 水平位で弾発性固定では起こらない
烏口下脱臼の弾発性固定は、やや外転位の上腕を胸壁を近づけても手を離すと直ちに元の位置に戻る。

4.〇 正しい。三角筋胸筋三角の消失は、肩関節烏口下脱臼の症状である。
脱臼関節自体の変形として、三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角(モーレンハイム窩)の消失がみられる。

 

 

 

 

 

問題15 肩関節烏口下脱臼の合併症と症状の組合せで誤っているのはどれか。

1.大結節骨折:肩関節外側の圧痛
2.筋皮神経麻痺:肩関節外側の感覚障害
3.腋窩動脈損傷:橈骨動脈の拍動消失
4.肩腱板損傷:肩関節の外転障害

答え.2

解説
1.〇 正しい。大結節骨折は、「肩関節外側の圧痛」がみられる。
なぜなら、大結節骨折により、炎症が起こるため。大結節とは、上腕骨頭の後外側の隆起のことをさし、棘上筋、棘下筋、小円筋の停止である。

2.× 筋皮神経麻痺は、「肩関節」ではなく前腕外側の感覚障害がみられる。
筋皮神経とは、頚から出た腕神経の束から枝分かれした神経である。主に、上腕二頭筋と前腕外側の感覚を司る。

3.〇 正しい。腋窩動脈損傷は、「橈骨動脈の拍動消失」がみられる。
なぜなら、橈骨動脈は、腋窩動脈の分岐であるため。上肢の動脈は、「鎖骨下動脈→腋窩動脈→上腕動脈→橈骨動脈、尺骨動脈」となる。

4.〇 正しい。肩腱板損傷は、「肩関節の外転障害」がみられる。
腱板構成筋群の中でも棘上筋腱(作用:肩関節外転)は最も損傷・断裂しやすく、96.6%を占める。これは、棘上筋が身体の構造状引き起こされやすくなっている(衝突や摩擦)ためである。ちなみに、腱板(回旋筋腱板:ローテーターカフ)とは、肩甲骨と上腕骨をつないでいる4つの筋肉の腱の総称である。① 棘上筋、②棘下筋、③小円筋、④肩甲下筋から成る。

 

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