第30回(R4年)柔道整復師国家試験 解説【午前116~120】

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問題116 疾病の経過で自覚症状が認められない時期はどれか。

1.急性期
2.最盛期
3.慢性期
4.潜伏期

答え.

解説
1.× 急性期
急性期とは、病気が発症してから短期間のうちに症状が現れる時期を指す。この期間には、典型的な自覚症状や身体所見が認められることが多い。

2.× 最盛期
最盛期とは、疾患が最も活発で症状が最も強い時期を指す。この期間には、症状が顕著であることが一般的である。

3.× 慢性期
慢性期とは、疾患が長期間持続する時期を指す。慢性期では、症状が緩徐に進行することが一般的である。もちろん自覚症状もみられる。

4.〇 正しい。潜伏期は、疾病の経過で自覚症状が認められない時期である。
潜伏期とは、潜伏期間ともいい、病原体に感染してから、体に症状が出るまでの期間、あるいは感染性を持つようになるまでの期間のことを指す。この期間は、病原体が増殖し始めるが、自覚症状がまだ認められない時期である。

 

 

 

 

 

問題117 奇形の原因となるのはどれか。

1.結核菌
2.カンジダ
3.風疹ウイルス
4.B型肝炎ウイルス

答え.

解説
1.× 結核菌
肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。

2.× カンジダ
カンジダ症とは、カンジダ属の真菌による感染症である。接触感染の感染経路をとり、個室隔離の必要はない。症状として、発疹、鱗屑、かゆみ、腫れなどがみられる。湿潤部位の皮膚で発生しやすい傾向がある。境界のあまりはっきりしない、ジクジクした紅斑で、その中や周囲に小さい水ぶくれや膿が多数見られる。

3.〇 正しい。風疹ウイルスは、奇形の原因となる。
風疹とは、発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症である。難聴・白内障・心奇形である。妊婦が妊娠初期に風疹に感染すると、不顕性であっても経胎盤的に胎児に影響を与え、先天性風疹症候群と呼ばれる先天異常を引き起こすことがある。

4.× B型肝炎ウイルス
B型肝炎ウイルスとは、DNA型の肝炎ウイルスで、ヘパドナウイルス科に分類される。 直径約42nmの球状ウイルスで、外被(エンベロープ)とコアの二重構造を有している。母子感染、体液感染、血液感染が主な感染経路であり、母子感染、乳幼児感染では無症候性キャリアを経て慢性化し、肝硬変や肝細胞癌に至ることもある。さらに劇症肝炎の原因として最多でもある。

 

 

 

 

 

問題118 疾患の外因と悪性新生物の組合せで誤っているのはどれか。

1.紫外線:皮膚癌
2.ヒトパピロ-マウイルス:子宮体癌
3.タバコ:肺癌
4.アスベスト:中皮腫

答え.

解説

病因とは?

病因とは、病気の原因をといい、①内因と②外因に分けられる。

①内因とは、生体側の因子で,病気にかかりやすい準備状態を指す。内因のみでは病気は発現しない。内因は素因ともいう。
例:①生理的素因(年齢、人種、性など)、②病理的素因(個人的素因:皮膚癌を生じやすい紅皮症、アレルギー体質、糖尿病の易感染性など)

②外因とは、外部から生体に対し障害性に働くものをいう。
例:①栄養的外因(蛋白質過剰による痛風、ビタミンB1欠乏による脚気など)、②物理的外因(外傷、熱傷、放射線障害など)、③化学的外因(重金属中毒、医薬品、体内で産生されるエンドトキシン、アンモニア、アセトンなど)、④病原微生物(ウイルス、細菌、原虫など)

1.〇 紫外線:皮膚癌
紫外線は、皮膚癌の主要な外因である。紫外線エネルギーは細胞の遺伝子に傷をつけやすく、これによって発がんが促される。その他、放射線、感染、喫煙、ヒ素などの化学物質も関与するといわれている。

2.× ヒトパピロ-マウイルスは、「子宮体癌」ではなく子宮頸癌である。
子宮頸癌全体の50~70%の原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)である。ワクチンの接種によって予防できる。ちなみに、子宮体癌は、エストロゲンの過剰などが原因となることが一般的である。

3.〇 タバコ:肺癌
タバコの煙は、肺癌の主要な外因である。タバコに含まれる有害物質により、肺細胞の遺伝子に傷がつくことで、がん化を引き起こされる。たばこを吸うと肺がんにかかるリスクが、男性は約4.8倍、女性は約3.9倍に増加する。

4.〇 アスベスト:中皮腫
アスベストは、中皮腫(悪性胸膜腫)の主要な外因である。悪性胸膜中皮腫とは、胸膜(胸部にある膜)の中皮細胞(中間層の細胞)ががん化した状態を指す。悪性胸膜中皮腫は、アスベスト(石棉)の長期曝露によって引き起こされることが多いが、他にも遺伝子変異や環境因子、慢性的な感染などが考えられる。症状として、胸水、胸痛、呼吸器系の症状、疲れなどがあり、進行性に重症で、治療は困難であることが多い。早期発見と、アスベスト露出を減らすことが重要である。

 

 

 

 

 

問題119 脂肪肝の原因であてはまらないのはどれか。

1.肥満
2.アルコール
3.ウイルス感染
4.薬物

答え.

解説

脂肪肝とは?

脂肪肝とは、中性脂肪が肝臓に多くたまった状態である。原因としては、お酒の飲みすぎや肥満、メタボリックシンドロームなどである。初期は、ほとんど症状がないが、進行した場合は、①食欲不振、②体のだるさなどの症状がみられる。治療は、飲酒制限や食事療法、運動療法、減量に加えて、脂質異常症や糖尿病に対する薬物療法などがある。

1~2.4.〇 肥満/アルコール/薬物
脂肪肝の原因である。薬物は、特に脂質異常症や糖尿病に対し発症しやすい。

3.× ウイルス感染は、脂肪肝の原因であてはまらない。
脂肪肝の原因は、いわゆる生活習慣によるものである。原因としては、お酒の飲みすぎや肥満、メタボリックシンドロームなどが一般的で、そのほか、痩せすぎや治療薬によるもの、遺伝、妊娠などが原因として挙げられる。

メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積を基盤とし、動脈硬化の危険因子を複数合併した状態のことである。

【診断基準】
①腹部肥満(ウエストサイズ 男性85cm以上 女性90cm以上) 
②中性脂肪値(HDLコレステロール値 中性脂肪値 150mg/dl以上、HDLコレステロール値 40mg/dl未満のいずれか、または両方)
③血圧(収縮期血圧130mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上のいずれか、または両方)
④血糖値(空腹時血糖値110mg/dl以上)

 

 

 

 

 

問題120 間接ビリルビンが増加する疾患はどれか。

1.胆管炎
2.新生児黄疸
3.ファーター(Vater)乳頭部癌
4.デュビン・ジョンソン(Dubin-Johnson)症候群

答え.

解説

ビリルビンとは?

(総)ビリルビンとは、赤血球が壊れたときにできる黄色い色素のことである。総ビリルビンは、①間接ビリルビンと②直接ビリルビンをあわせていう。基準値:0.2〜1.2mg/dLである。肝細胞の障害により、直接ビリルビンが上昇する。急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がん、自己免疫性肝炎などがあげられる。腎臓からも排泄され、主に肝臓で代謝されるため、肝臓や胆嚢の状態を知るための重要な指標となる。一方、間接ビリルビンが上昇する代表的な疾患は溶血性貧血であり、溶血により多くの赤血球が壊れ、ビリルビンが肝臓の処理能力を超えて過剰に増加する。

1.× 胆管炎
(急性)胆管炎とは、胆管が、胆石や癌などで詰まることで、胆汁の流れが滞り、胆管内の圧力が高まり、身体症状として、腹痛や黄疸が生じ、腸内の細菌などが胆管に逆流し、細菌感染を引き起こし発熱することをいう。急性胆管炎の代表的な症状として、①シャルコー3徴、②レイノー5徴があげられる。シャルコー3徴の3つの症状が揃うのは約50〜70%で、症状が一つの場合や、二つの場合も少なくない。
・シャルコー3徴:腹痛、発熱、黄疸
・レイノー5徴:シャルコー3徴、ショック、意識障害

2.〇 正しい。新生児黄疸は、間接ビリルビンが増加する疾患である。
新生児黄疸とは、生理的黄疸ともいい、生後間もない新生児の大半にみられる黄疸である。黄疸になると、皮膚や白目の色が次第に黄色味を帯びるが、新生児でみられる黄疸のほとんどは、生理的におきる新生児黄疸(生理的黄疸)である。この新生児黄疸(生理的黄疸)は、およそ生後3~5日目をピークに自然と治まっていくものである。過度に心配する必要はない。起こる機序として、新生児でのビリルビン産生の亢進、グルクロン酸抱合能の未熟、腸肝循環の亢進などにより、出生後に一過性に高間接ビリルビン血症となり、生理的黄疸となる。

3.× ファーター乳頭部癌
ファーター乳頭とは、十二指腸の中間あたりには、胆のうからつながる胆のう管と、すい臓からつながるすい管の開口部のことを指す。初期の場合は、無症状であるが、進行に伴い、進行がんとなると胆道を閉塞するため、採血による肝機能異常や黄疸が起こる。

4.× デュビン・ジョンソン症候群
デュビン・ジョンソン症候群とは、皮膚粘膜眼症候群ともいい、直接ビリルビンの胆汁への排泄障害をきたす常染色体劣性遺伝性疾患である。口唇・口腔、眼、鼻、外陰部などの粘膜にびらん(ただれ)が生じ、全身の皮膚に紅斑(赤い斑点)、水疱(水ぶくれ)、びらんなどが多発する。

 

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