第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午前81~85】

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問題81 筋細胞膜に発生した活動電位を筋細胞の深部に伝えるのはどれか。

1.神経線維
2.横行小管
3.筋小胞体
4.ミトコンドリア

解答

解説

筋収縮の機序

【筋収縮の機序】
①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。
②ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こる。
③アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

【運動による筋疲労によって起こる事象】
①代謝産物の蓄積(乳酸の増加やpHの低下)
②エネルギー供給率の低下(ATP低下、ADP増加、グリコーゲン低下)
③興奮収縮連関不全(筋小胞体へのCa2+取り込み低下)

1.× 神経線維は、筋肉を収縮させる指令を中枢(脳や脊髄)から末梢神経を通じて伝達する働きを持つ。

2.〇 正しい。横行小管は、筋細胞膜に発生した活動電位を筋細胞の深部に伝える。横行小管(T管)から伝わった脱分極電位により筋小胞体から、Ca2+が放出される。一般的な筋収縮は、細胞外からもしくは、筋小胞体から放出されるCa2+に依存する。

3.× 筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。筋収縮の機序として、まず、筋小胞体から放出されたCa2+(カルシウムイオン)がトロポニンと結合することから始まる。カルシウムイオンは、筋小胞体中に貯蔵されており、筋収縮時に細胞質内へ放出され、カルシウムイオンの濃度上昇が筋収縮の引き金となる。

4.× ミトコンドリアとは、細胞内に存在する細胞内小器官で、 ATPの生成やアポトーシス(細胞死)において重要な働きを担っている。

カルシウムイオンとは?

カルシウムイオンは、生体内の主要な陽イオンの1つで、血液の細胞外液中におけるその濃度は約1%である。骨石灰化や、心臓および骨格筋系の収縮、神経筋伝達、ホルモン分泌や血液凝固における一連の反応に寄与する。

 

 

 

 

 

問題82 神経細胞の軸索を伝導する活動電位で正しいのはどれか。

1.不応期はない。
2.全か無かの法則に従う。
3.隣接する別の軸索に伝わる。
4.軸索が細いほど速く伝わる。

解答

解説

神経線維の興奮伝導

①絶縁性(隔絶)伝導…1本の神経線維の興奮は、隣接するほかの神経線維を興奮させない。

②不滅衰伝導…興奮は減衰せずに伝わる。

③両方向(両側)性伝導…神経線維の一部を刺激すると、興奮は両方向に伝導する。ただし、シナプスからの出力は原則一方向性である。

④等速伝導…1本の軸索上の興奮は一定の速度で伝導していく。ただし、有髄線維では跳躍伝導が起こる。

1.× 不応期は「ある」。特に、活動電位の発火直後に不応期が存在する。一度活動電位が起こると、その後しばらくは次の活動電位を発生するための閾値は上昇する。この期間を不応期といい、大きな刺激電流を受けても興奮しない絶体不応期と、ある程度の刺激電流を与えると興奮する相対不応期とに分けられる。活動電位を発生させる最小の電気刺激の強さを閾値という。また、神経線維では絶体不応期は0.5~1ミリ秒程度である。

2.〇 正しい。全か無かの法則に従う。全か無の法則とは、神経線維は電気刺激が閾値未満では全く反応しないが、閾値以上では最大かつ同じ大きさの反応を示すこと。

3.× 隣接する別の軸索に「伝わらない」。これを絶縁性(隔絶)伝導という。

4.× 軸索が、「細い」ではなく太いほど、速く伝わる。これは、大きな直径を持つ神経は、完全な髄鞘を持つため、跳躍伝導が行えるからである。

 

 

 

 

 

問題83 ブローカ野で正しいのはどれか。

1.側頭葉に位置する。
2.音の意味の理解に関わる。
3.運動性皮質に情報を出力する。
4.損傷すると黙読が障害される。

解答

解説

ブローカ野とは?

ブローカ野とは、大脳皮質にある言語活動をつかさどる中枢で、運動性言語中枢(44野)の役割は、主に言葉を話したり書いたりする。

1.× 「側頭葉」ではなく前頭葉に位置する。

2.× 音の意味の理解に関わるのは、「ウェルニッケ野」である。ちなみに、ウェルニッケ失語とは、①復唱困難、②言語理解不良、③非流暢を特徴とした言語障害である。感覚性失語ともいう。話し方は滑らかであるが、言い間違いが多かったり、言葉が支離滅裂になったりして、自分の言いたいことが思うように伝えられなくなってしまうという特徴がある。

3.〇 正しい。運動性皮質に情報を出力する。ブローカ野は運動性皮質(一次運動野)に情報を出力し、言語を発するための口や喉、舌などの運動を制御する役割を持っている。

4.× 損傷すると、「黙読」ではなく復唱や流暢性が障害される。黙読(静かに読むこと)は、主に視覚的な言語処理に関わる部位(視覚野:後頭葉)で行う。

 

 

 

 

 

問題84 運動単位で正しいのはどれか。

1.1つの運動単位は複数のα運動ニューロンを含む。
2.1つの運動単位は複数の筋線維を含む。
3.FF型運動単位は発揮する力が小さい。
4.S型運動単位は疲労しやすい。

解答

解説

1.× 1つの運動単位は、「複数」ではなく1つのα運動ニューロンをもつ。つまり、1つの運動単位に属する筋線維は同期して興奮する。1つの運動単位とは、①1つのα運動ニューロン、②軸索、③それが支配する筋線維群を指す。したがって、1つのα運動ニューロン(脊髄前角細胞)が活動したとき、この単位に属するすべての筋線維群は同時に収縮する。

2.〇 正しい。1つの運動単位は複数の筋線維を含む。運動単位とは、1つの運動神経が支配する筋線維のことである。筋によって支配する線維の数は異なる。
①粗大運動を行う筋:神経支配比が大きく、運動単位は大きい。
②精巧な運動を行う筋:神経支配比が少なく、運動単位は小さい。ちなみに、神経支配比とは、1つの運動神経が支配する筋線維の数のことをいう。

3.× FF型運動単位は発揮する力が、「小さい」ではなく大きい。FF型運動単位は、筋線維タイプⅡ(速筋線維)を支配し、ニューロンサイズ・神経支配比とも大きい。つまり、発揮する力は大きいが、疲労しやすい。

4.× S型運動単位は、疲労し「にくい」。S型運動単位は、筋線維タイプⅠ(赤筋線維)を支配し、ニューロンサイズ・神経支配比とも小さい。つまり、発揮する力は小さいが、疲労しにくい。

運動単位当たりの筋線維数

外眼筋:13
虫様筋:110
前脛骨筋:610
上腕二頭筋:750
側頭筋:930
腓腹筋:1720

 

 

 

 

 

問題85 頭部が左側に傾いた際に起こる姿勢反射で正しいのはどれか。

1.左上肢は屈曲する。
2.左下肢は伸展する。
3.右上肢は伸展する。
4.右下肢は伸展する。

解答
※必ずしも、頭部が左側に傾いた際に姿勢反射が起こるとは限らず、文章と解答を推測すると、「頭部が左側に傾くほどの重心が左側方へ変位したとき、どのような姿勢反射が起こるか?」という問題であろう。頭部左側屈、体幹左側屈した際に、四肢はどのような反射をするか?と言い換えるとイメージしやすい。(とはいえ、選択肢の上肢や下肢と記載してしまうと、上肢なら肩関節から手指関節、下肢なら股関節から足趾の関節まで含むため、あまり良い問題とはいえない。)

解説

MEMO

姿勢反射とは、体が傾いたときに、健常人は重心を移動してバランスを取る反射のことで、立ち直り反射やパラシュート反応などをいう。ちなみに、脳幹とは、中枢神経系を構成する部位が集まっている器官で、中脳、橋、延髄から構成されている。この脳幹は視床下部と通信をすることで覚醒と睡眠間の移行を制御する。

1.× 左上肢は、「屈曲」ではなく伸展する。なぜなら、バランスをとるために左側の体が伸展し、右側が屈曲することで安定を図るため。

2.〇 正しい。左下肢は伸展する。頭部が左側に傾いた場合、左側の下肢は伸展し、バランスを保つために反対側の下肢が屈曲する。これにより、体が傾く方向に対抗して姿勢を安定させる。

3.× 右上肢は、「伸展」ではなく屈曲する。

4.× 右下肢は、「伸展」ではなく屈曲する。

立ち直り反射とは?

立ち直り反射とは、姿勢反射の一つで、姿勢を保持するときに働く機能系である。例えば、①頸の立ち直り反射や②視性立ち直り反射などがあげられる。頸筋性や視覚性のほかにも、迷路性、体性があげられる。

①頸の立ち直り反応とは、背臥位の子どもの頭を一方に向けると、頸筋群の固有感覚受容器が刺激されて、肩・体幹・腰部がその方向に丸太様に全体的に回転する。4~6 ヵ月に出現し、5歳までに消失する。

②視性立ち直り反射とは、視覚刺激の誘発により、頭部の位置を正常に保持する反射のことで、例えば座位の場合、を座らせて左右に傾けると頭を垂直にしようとする。視性の刺激が立ち直りに関与する。腹臥位:3ヵ月、座位・立位:5~6ヵ月に出現し生涯継続する。

 

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