第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午前91~95】

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問題91 定期的な二次性徴はどれか。

1.9歳男児で声変りが起きた。
2.10歳男児で腋毛が生えた。
3.16歳女子で初経が来た。
4.17歳女子で身長の伸びが止まった。

解答

解説

第二次性徴とは

二次性徴とは、性ホルモンの分泌が促進されることにより、性器および身体に現れる変化である。第二次性徴に関わるホルモンは、男性の場合はアンドロゲン、女性の場合はエストロゲンとプロゲステロンである。アンドロゲンは精巣から、エストロゲンとプロゲステロンは卵巣から分泌される。

平均的に見ると男児の場合は、10歳前後に始まり約5年間続く。 体の成長には決まった順番があり、①睾丸の発達→②陰毛の発生→③精通→④声変わり→⑤体型の変化という順番をたどる。女児の場合は、8歳前後から始まり①乳房発育→②陰毛発生→③初経という順に進行することが一般的である。その評価にはTanner分類が用いられている。

1.× 9歳男児で声変りが起きたのは、定期的とは言いにくい。なぜなら、一般的に、声変わりの平均は13歳頃に起こるため。したがって、9歳で声変わりが始まるのは早いと考えられる。

2.× 10歳男児で腋毛が生えたのは、定期的とは言いにくい。なぜなら、一般的に、男児の腋毛の成長は13~15歳頃に起こるため。したがって、10歳男児で腋毛が生えたのは早いと考えられる。

3.× 16歳女子で初経が来たのは、定期的とは言いにくい。なぜなら、一般的に、初経の平均は12歳前半に起こるため。したがって、16歳女子で初経は、やや遅めと考えられる。

4.〇 正しい。17歳女子で身長の伸びが止まった。これは、定期的な二次性徴で、第二次性徴の終了を示唆することが多い。

 

 

 

 

 

問題92 妊娠中に乳汁分泌を抑制しているのはどれか。

1.エストロゲン
2.オキシトシン
3.プロラクチン
4.成長ホルモン

解答

解説

エストロゲンとは?

エストロゲンとは、女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。

1.〇 正しい。エストロゲンは、妊娠中に乳汁分泌を抑制している。エストロゲンとプロゲステロンは、妊娠中に高レベルで分泌され、乳腺の発達を促進する。一方で、プロラクチンの作用を抑制し、実際の乳汁分泌を妊娠中に防ぐ。出産後、これらのホルモンのレベルが急激に低下することで、プロラクチンの作用が乳腺で発揮され、乳汁分泌が始まる。

2.× オキシトシンとは、脳下垂体後葉から分泌される。出産後に乳汁射出、子宮収縮作用がある。また、分娩開始前後には分泌が亢進し、分娩時に子宮の収縮を促し、胎児が下界に出られるように働きかける。児の吸啜刺激によって分泌が亢進し、分娩後の母体の子宮筋の収縮を促す。

3.× プロラクチンとは、乳腺刺激ホルモンともいい、脳の下垂体から分泌され、妊娠すると高くなり乳腺を成長させ乳汁産生を行う。一般的に出産後など授乳期間中において、乳頭の刺激で高くなり乳汁を分泌する。

4.× 成長ホルモンは、乳汁と直接関与しない。成長ホルモンとは、下垂体前葉から合成・分泌されるホルモンで、成長促進作用や代謝作用などの作用がある。

 

 

 

 

 

問題93 血小板の産生を促進するのはどれか。

1.フィブリノゲン
2.トロンボポエチン
3.顆粒球コロニー刺激因子(GーCSF)
4.マクロファージコロニー刺激因子(M-CFS)

解答

解説
1.× フィブリノゲンとは、血漿タンパクの一つであり、凝固因子の活性化によってフィブリンとなり、血液を凝固させる働きを持つ。増加した場合、血漿の粘稠度が上昇し血栓形成傾向を示す。 一方、低値の場合、播種性血管内凝固症候群(DIC)と肝機能障害が疑われる。

2.〇 正しい。トロンボポエチンは、血小板の産生を促進する。トロンボポエチンとは、肝臓で産生される造血因子である。骨髄にある巨核球の増加や成熟を促進し、血小板の増加を促す作用がある。

3.× 顆粒球コロニー刺激因子とは、主に顆粒球(特に好中球)の産生と成熟を促進する因子である。ちなみに、好中球とは、白血球の中で一番多く、細菌免疫の主役である。マクロファージが好中球に指令し、好中球は活性化・増殖する。末梢血白血球の40~70%を占め、生体内に細菌・真菌が侵入すると、まず好中球が感染部位に遊走し、菌を貧食する。

4.× マクロファージコロニー刺激因子とは、単球(マクロファージ系)の増殖・分化、単球に対する遊走作用、マクロファージの血管腔内への移動を阻害する作用をもつ。最近の研究では、マクロファージの局所への集積に関与している可能性があることも示唆されている。

単球とは?

単球とは、白血球の一種であり、核をもつ。最も大きなタイプの白血球である。マクロファージなどへ分化し、貧食・消化・殺菌などの機能を発揮する。単球は、末梢血白血球の2~9%を占める。ちなみに、マクロファージとは、単球から分化し、貧食能を有する。異物を貪食して抗原提示細胞になり、抗原情報がリンパ球に伝えられる。直径15~20μmの比較的大きな細胞で、全身の組織に広く分布しており、自然免疫(生まれつき持っている防御機構)において重要な役割を担っている。

 

 

 

 

 

問題94 血液型で正しいのはどれか。

1.日本人の約15%はRh陰性である。
2.A型の血漿には抗B抗体が存在する。
3.B型の赤血球膜表面にはA型抗原が存在する。
4.AB型の血漿には抗A抗体と抗B抗体が存在する。

解答

解説

抗Rh(D)抗体陰性とは?

Rh不適合妊娠とは、お母さんのRh式血液型がおなかのなかの赤ちゃんと異なる場合に起こる。血液細胞(赤血球)の表面に、RhD抗原という物質を持っている人がRh陽性(プラス)、持たない人がRh陰性(マイナス)になる。赤ちゃんは、お母さんとお父さんの遺伝子を半分ずつ引継ぎますので、お母さんがRh陰性でも、お父さんがRh陽性であれば、Rh陽性の赤ちゃんが生まれてくる。日本人の場合、90%以上の赤ちゃんがRh陽性になる。Rh陽性の赤ちゃんを妊娠したRh陰性のお母さんは、妊娠中、特別な注意が必要となる。

1.× 日本人の「約15%」ではなく約0.5%はRh陰性である。白人は、15%のRh陰性となっている。ちなみに、Rh(-)とは、輸血などの際に強い影響を与えるD抗原を持たない血液型である。したがって、血液型不適合による反応が起こるのは、母親がRh(-)で授かった子供(胎児)がRh(+)の場合である。

2.〇 正しい。A型の血漿には、抗B抗体が存在する。A型のヒトの赤血球膜にはA抗原、血漿には抗B抗体がある。また、A型のヒトの血漿には抗B抗体があるが、これは生後3~6ヵ月から産生され始める。一方、B型のヒトの血漿には抗A抗体が、O型のヒトの血漿には両方の抗体がある。AB型のヒトの血漿にはこれらの抗体がない。

3.× B型の赤血球膜表面には、「A型抗原」ではなくB型抗原が存在する。B型のヒトの血漿には抗A抗体がある。ちなみに、A型のヒトの赤血球膜表面にはA抗原が、AB型のヒトの赤血球膜表面にはA抗原とB抗原がある。O型のヒトの赤血球はこれらの抗原をもたない。

4.× AB型の血漿には抗A抗体と抗B抗体が「両方とも存在しない」。AB型の人はA型抗原B型抗原の両方を持つ。(詳しく勉強したい方はこちら「外部リンク:血液型について」日本輸血・細胞治療学会HPより)

ABO式血液型におけるオモテ検査とウラ検査

ABO式血液型の検査には、オモテ試験とウラ試験があり、2つの検査を必ず行います。

オモテ試験では、赤血球を使って検査を行います。赤血球に抗A抗体(A型あるいはAB型と反応する、あるいは抗B抗体(B型あるいはAB型と反応する)を加えて、赤血球が凝集(赤血球が塊を作る)するかを肉眼的に判定します。凝集があれば反応陽性と判定します。また、ウラ試験では、血清(血液のうち血液細胞以外の液体部分)を使って検査を行います。血清に標準赤血球(血液型判定用のA型あるいはB型の赤血球)を加えて、赤血球が凝集するかを判定します。A型ではB型赤血球と反応し。B型ではA型赤血球と反応します。O型では両者の赤血球と反応し、AB型ではどちらとも反応しません。

ABO式血液型の決定には、オモテ試験とウラ試験の検査結果が一致することが重要です。結果が一致しない場合にはいろいろな原因が考えられますので、血液型の判定は保留して精査が必要になります。Rh式血液型検査では、オモテ試験と同様に赤血球を使って検査を行います。抗D抗体(D因子と反応する)と反応した場合、Rh陽性と判定します。(※「血液型の検査について」著:日本臨床検査専門医会 窪田 良次)

 

 

 

 

 

問題95 血中カルシウム濃度の低下に対する正常な生体反応はどれか。

1.骨吸収の減少
2.カルシトニン分泌の低下
3.活性型ビタミンD合成の低下
4.副甲状腺ホルモン(パラソルモン)分泌の低下

解答

解説
1.× 骨吸収が減少した場合、血中カルシウム濃度は増加する。骨吸収とは、その名の通り骨組織の吸収であり、つまり、破骨細胞が骨の組織を分解してミネラルを放出し、骨組織から血液にカルシウムが移動するプロセスである。

2.〇 正しい。カルシトニン分泌の低下した場合、血中カルシウム濃度の低下に対する。カルシトニンとは、甲状腺から分泌され、骨吸収を抑制する働きを持つ。つまり、血中カルシウム濃度を低下させる働きをもつ。

3.× 活性型ビタミンD合成の低下した場合、血中カルシウム濃度は増加する。ビタミンDとは、カルシウムとリンの吸収を促進する働きがある。ビタミンDを過剰に摂取すると、骨からカルシウムが促進され、血中のカルシウム濃度が高くなることで高カルシウム血症を引き起こす。

4.× 副甲状腺ホルモン(パラソルモン)分泌の低下した場合、血中カルシウム濃度は増加する。パラトルモン(副甲状腺ホルモン)は、副甲状腺から分泌され、腎臓のカルシウム再吸収およびリンの排泄促進作用などがあり、血中のカルシウム濃度を上昇させる。つまり、副甲状腺ホルモン〈PTH〉の分泌が低下すると、血中カルシウム濃度が低下する。それに伴い、しびれ感、テタニー(手指の不随意な筋収縮)、けいれんなどの症状が起こる。

 

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